未払残業代・給料請求

よく分かる付加金請求

 使用者は、残業代や解雇予告手当の支払いを怠った場合には、労働者に対して、付加金の支払いを命じられる場合があります。この付加金とはどのようなものでしょうか。今回は、付加金について解説していきます。

付加金とは何か

 付加金とは、使用者が一定の金員の未払いがある場合に、労働者の請求により、裁判所が未払金と同一額の支払いを命じることができるとされるものです(労働基準法114条)。そのため、労働者は、付加金も併せて請求することにより、金員の未払分と付加金で2倍の支払いを受けることができる可能性があります
 その趣旨は、労働者の保護にあり、➀使用者に対し制裁として経済的な不利益を課すことで支払義務の履行を促すことにより労基法上の各規定の実効性を高めるとともに、➁使用者による割増賃金等の支払義務の不履行によって労働者に生じる損害の填補を図る点にあります(最三小決平27.5.19民集69巻4号635頁)。

労働基準法114条
「裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第7項の規定による賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあった時から2年以内にしなければならない。」

付加金の対象となる賃金

 付加金の対象となる賃金は、以下の賃金です。

➀解雇予告手当
➁休業手当
➂割増賃金
➃年次有給休暇に係る賃金

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付加金の金額

 裁判所は、未払金と同一額の付加金の支払いを命じることができるとされていますが、付加金の支払を命じるか否かは、裁判所の裁量に委ねられています。割増賃金の不払いがある場合でも、悪質性の程度等によって、付加金の支払いを命じなかったり、付加金の額を減額したりする場合があります
 具体的には、使用者による労基法違反の程度・態様、労働者の不利益の性質・内容等諸般の事情を考慮して支払命令の可否及び額を決定すべきとされており、使用者に対し付加金という制裁を科すことが相当でない特段の事情を存する場合には、支払いを命じないものと考えられています。

訴訟係属中の支払い

 使用者が事実審の口頭弁論終結時までに、未払割増賃金の支払を完了した場合には、裁判所は付加金を命じることができないとされています(最一小判平26.3.6労判1119号5頁[甲野堂薬局事件])。一部の支払いのみが行われた場合には、裁判所が命じることのできる付加金の額も減額されます。
 第1審判決で割増賃金と付加金の支払いが命じられた場合でも、控訴審において使用者が割増賃金を支払い付加金の取り消しを求めた場合には、裁判所は付加金の支払いを命じることができなくなる点には注意が必要です(東京地判平28.10.14労判1157号59頁[損保ジャパン日本興亜事件])。

その他

⑴ 付加金の遅延損害金
 付加金に対する遅延損害金の起算日は判決確定の日の翌日とされています(最一小判昭43.12.19集民93号713頁)。
 付加金に対する遅延損害金の利率は民法所定の年5分とされています(最二小判昭51.7.9集民118号149頁[新井工務店事件])。
⑵ 仮執行宣言
 付加金は判決が確定して初めてその支払義務が生じるものであるため、仮執行宣言を付することはできないとされています。
⑶ 印紙代
 付加金の請求は、民事訴訟法9条2項にいう訴訟の附帯の目的である損害賠償又は違約金の請求に含まれるものとして、その価額を当該訴訟の目的の価額に算入されず、割増賃金の請求分に係る印紙のみを貼付すればよいとされています(最三小決平27.5.19民集69巻4号635頁)。
⑷ 除斥期間
 付加金の請求は、違反のあったときから2年以内にしなければなりません(労働基準法114条但書)。
 これは除斥期間であり、時効期間ではないため、催告等により中断されることはなく、使用者の援用も不要です。
⑸ 法内残業代部分
 付加金の対象は、法外残業部分であり、法内残業部分については、付加金を請求することはできません。
⑹ 労働審判と付加金請求
 付加金は、「裁判所」が命じるものなので(労働基準法114条)、「労働審判委員会」(労働審判法7条、20条1項)は、これを命じることはできません。そのため、労働審判において、付加金が命じられることはありません。
 もっとも、労働審判に対する異議が申し立てられると、労働審判申し立ての時に訴え提起があったものとみなされますので(労働審判法22条1項)、除斥期間との関係で、労働審判申立ての際に付加金の請求をするのが通例です。

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