労働一般

有期契約労働者の無期転換権

 有期労働契約者の無期転換権が認められるのはどのような場合でしょうか。2012年8月に成立した労働契約法改正により規定され、2018年4月1日の時点で無期転換権の発生が開始しています。今回は、有期契約労働者の無期転換権について解説します。

無期転換権とは

 無期転換権とは、同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間満了までの間に、当該満了日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなすものです。
 無期転換権の趣旨は、5年を超えて反復更新されている有期契約下にある労働者の雇用の安定と常用的雇用への有期労働契約の安易な利用の抑制にあります。

労働契約法18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
1項「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。」
2項「当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く。以下この項において「空白期間」という。)があり、当該空白期間が6月(当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が1年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に2分の1を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間)以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない。」

無期転換申込権の発生要件

 有期労働契約者の無期転換申込権の発生要件は、以下のとおりです。

①「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約」
②「契約期間を通算した期間…が5年を超える」こと

 ①「同一の使用者」かどうかは、事業場単位ではなく事業主単位で判断されます。そのため、同一事業主の複数の異なる事業場において有期労働契約を順次締結した場合にも、「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約」に該当します。これに対して、親子会社や同一グループ企業であっても、原則として「同一の使用者」とはいえません。下請企業と発注企業についても、原則として「同一の使用者」とはいえません。
 ②無契約期間(使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との次の有期労働契約の契約期間の初日との間の期間)が6カ月以上あるときは、当該期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算期間に算入されません。ただし、この6カ月というクーリング期間は、無契約期間の直前に満了した有期労働契約の期間(当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。)が1年に満たない場合には、当該契約期間に2分の1を乗じて得た数に1月未満の端数がない場合にはその月数をクーリング期間の長さとされ、1月未満の端数がある場合には、その端数を切り上げた月数をクーリング期間の長さとされています。

無期転換申込権の行使

 無期転換申込権は、現に締結している有期労働契約の契約期間の満了までに行使することを要し、満了までに行使しなければ当該無期転換権は消滅することになります
 もっとも、無期転換申込権は、その後の更新によっても発生しますので、通算期間が5年を超える有期労働契約の期間が満了したとしても、その後改めて有期労働契約が締結された場合には改めて無期転換申込権が発生することになります。

無期労働契約の成立・内容

 労働者が上記無期転換申込権を行使した場合には、使用者は当該申込みを承諾したものとみなされます。そのため、その時点で契約期間満了日の翌日を就労開始日とする無期労働契約が成立します。
 無期転換申込権の行使により成立した無期労働契約の労働条件は、別段の定めがある部分を除き、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件と同一のものとなります
 別段の定めは、労働協約、就業規則、個別労働契約のいずれによっても可能であり、転換後の労働条件を、有利に変更する定め及び不利に変更する定めの双方が予定されています。例えば、就業規則等で無期転換社員の労働契約はフルタイム勤務のみとする旨が定められている場合には、その定めに従って勤務することになります。ただし、無期転換申込権発生後あるいは行使後に就業規則等の内容を変更した場合には不利益変更が問題となることに留意が必要です。

無期転換権の行使に対して使用者が労働条件の変更を条件とした場合

 労働者が無期転換権の行使をした際に使用者が労働条件の変更を条件とすることがあります。
 これについて、無期転換権の行使をした時点で、使用者は承諾したものとみなされるため、労働者が労働条件の変更に応じる必要はありません。
 もっとも、労働者が労働条件の変更に同意した場合には、「別段の定め」として、個別合意が成立することになるため注意が必要です。

転換申込権の放棄

 無期転換権は、合理的な理由があってそれが本人の真意に出ていると認められれば、放棄できます。
 もっとも、交渉力の弱い一般の有期労働者が、無期転換申込権の発生前にこれを放棄する場合には、真意に基づくものとは認められにくいでしょう。また、行政通達(平24.8.10基発0810第2、最終改正:平30.12.28基発1228第17)は、「無期転換申込権が発生する有期労働契約の締結以前に、無期転換申込権を行使しないことを更新の条件とする等有期労働契約労働者にあらかじめ無期転換申込権を放棄させることを認めることは、雇止めによって雇用を失うことを恐れる労働者に対して、使用者が無期転換申込権の放棄を強要する状況を招きかねず、法第18条の趣旨を没却するものであり、こうした有期契約労働者の意思表示は、公序良俗に反し、無効と解されるものである」としています。
 無期転換申込権の発生後にこれを放棄する場合には、真意に基づくものと認められやすいといわれています。ただし、申込権を行使することが可能な有期労働契約期間満了日より数カ月前までに申込権行使の有無を書面で提出させるように会社が指示していたような場合には、自由意思による放棄とは認められない可能性があります。

無期転換申込権の例外

大学等および研究開発法人における有期労働契約の研究者・技術者・教員

 大学等及び研究開発法人における有期労働契約の研究者・技術者・教員等は、「契約期間を通算した期間…が5年を超える」ときではなく、「10年」を超えるときに、無期転換権が発生すると例外が定められています。研究資金の確保が不安定であり5年を超えて継続雇用する場合の無期転換は困難である一方、5年を超える前の契約打ち切りは研究・教育を困難ならしめると懸念されるためです。

研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律[研究開発力強化法]15条の2(労働契約法の特例)
「次の各号に掲げる者の当該各号の労働契約に係る労働契約法…第18条第1項の規定の適用については、同項中『5年』とあるのは『10年』とする。」

一「科学技術に関する研究者又は技術者(科学技術に関する試験若しくは研究又は科学技術に関する開発の補助を行う人材を含む。第3号において同じ。)であって、研究開発法人又は大学等を設置する者との間で期間の定めのある労働契約(以下この条において「有期労働契約」という。)を締結したもの」
二「科学技術に関する試験若しくは研究若しくは科学技術に関する開発又はそれらの成果の普及若しくは実用化に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の科学技術に関する試験若しくは研究若しくは科学技術に関する開発又はそれらの成果の普及若しくは実用化に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。)に従事するものであって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結したもの」
三「試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者が試験研究機関等、研究開発法人又は大学等との協定その他の契約によりこれらと共同して行う科学技術に関する試験若しくは研究若しくは科学技術に関する開発又はそれらの成果の普及若しくは実用化(次号において「共同研究開発等」という。)の業務に専ら従事する科学技術に関する研究者又は技術者であって当該試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの」
四「共同研究開発等に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の共同研究開発等に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。)に専ら従事する者であって、当該共同研究開発等を行う試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外のものとの間で有期労働契約を締結したもの」

2項「前項第1号及び第2号に掲げる者(大学の学生である者を除く。)のうち大学に在学している間に研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約(当該有期労働契約の期間のうちに大学に在学している期間を含むものに限る。)を締結していた者の同項第1号及び第2号の労働契約に係る労働契約法第18条第1項の規定の適用については、当該大学に在学している期間は、同項に規定する通算契約期間に算入しない。」
大学教員等の任期に関する法律[大学教員等任期法]7条(労働契約法の特例)
1項「第5条第1項(前条において準用する場合を含む。)の規定による人気の定めがある労働契約を締結した教員等の当該労働契約に係る労働契約法…第18条第1項の規定の適用については、同項中『5年』とあるのは『10年』とする。」
2項「前項の教員等のうち大学に在学している間に国立大学法人、公立大学法人若しくは学校法人又は大学共同利用機関法人等との間で期間の定めのある労働契約(当該労働契約の期間のうちに大学に在学している期間を含むものに限る。)を締結していた者の同項の労働契約に係る労働契約法第18条第1項の規定の適用については、当該大学に在学している期間は、同項に規定する通算契約期間に算入しない。」

高度専門職関係の特例

 5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている業務に従事する高収入且つ高度の専門的知識、技術または経験を有する有期雇用労働者については、業務完了までの期間(期間が10年を超える場合には10年間)は、無期転換申込権は発生しません。
 具体的には、①年収が厚生労働省令で定める額(1075万円[有期特措法施行規則1条])を超え、かつ②厚生労働大臣が定める基準により定められた以下の者が、当該特例の対象となります(有期特措法2条1項、3項1号)。

⑴ 博士の学位を有する者
⑵ 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術史、弁理士
⑶ ITストラテジスト、システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者
⑷ 特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
⑸ 大学卒で5年、短大・高卒で6年、高卒で7年以上の実務経験を有する農林水産業・鉄鋼業・機械・電気・建築・土木の技術者、システムエンジニア、デザイナー
⑹ システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタント
⑺ 国等によって知識等が優れたものであると認定され、上記⑴乃至⑺に掲げる者に準ずるものとして厚労省労働基準局長によって認める者

 なお、この特例を享受するには、事業主が厚生労働大臣に対し、対象労働者の特性に応じて適切な雇用管理を行うための計画を提出して、同計画が厚生労働大臣の定める基本指針に合致するものとしての認定を受ける必要があります。

専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法[有期特措法]8条(労働契約法の特例)
1項「第1種認定事業主と当該第1種認定事業主が雇用する計画対象第1種特定有期雇用労働者との間の有期労働契約に係る労働契約法第18条第1項の規定の適用については、同項中『5年』とあるのは、『専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法…第5条第2項に規定する第1種認定計画に記載された同法第2条第3項第1号に規定する特定有期業務の開始の日から完了の日までの期間(当該期間が10年を超える場合にあっては、10年)』とする。」

継続雇用の高齢者関係の特例

 60歳以上の定年に達した後に同一の事業主または高年齢者雇用安定法上の特殊関係事業主に引き続き雇用される者が同一事業主または特殊関係事業主に継続雇用されている期間は、無期転換申込権発生の源となる通算契約期間に算入されないものとされています。
 特殊関係事業主とは、いわゆるグループ会社のことです。元の事業主の子法人等、元の事業主の親法人等、元の事業主の親法人等の子法人等、元の事業主の関連法人等、元の事業主の親法人等の関連法人等をいいます。
 なお、この特例を享受するには、事業主が厚生労働大臣に対し、対象労働者の特性に応じて適切な雇用管理を行うための計画を提出して、同計画が厚生労働大臣の定める基本指針に合致するものとしての認定を受ける必要があります。

専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法[有期特措法]8条(労働契約法の特例)
2項「第2種認定事業主と当該第2種認定事業主が雇用する計画対象第2種特定有期雇用労働者との間の有期労働契約に係る労働契約法第18条第1項の規定の適用については、定年後引き続いて当該第2種認定事業主に雇用されている期間は、同行に規定する通算契約期間に算入しない。」

無期転換後の有期雇用への変更の申出

 労働者は、無期労働契約申込権の行使後に、有期雇用へ戻してほしいと申し出ることはできるのでしょうか。
 これについて、既に無期労働契約が成立している以上、労働者は一方的に申し込みを撤回することはできないとされています。もっとも、使用者が有期労働契約に戻ることに同意した場合には、双方の合意のもと改めて有期労働契約が成立することになります。
 無期転換後に有期労働契約に戻った場合であっても、二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える場合は、再度、無期転換申込権が発生することになります。

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