労働一般

偽装請負-違法となる場合とその効果・派遣元と派遣先の責任-

 労働者派遣法が2003年に改正され、製造業への労働者派遣が解禁されて以降、偽装請負が社会的問題となっています。このような状況にある場合には、労働者の権利が侵害されていることが多く、正しい知識を身に着けておく必要があります。今回は、偽装請負について解説します。

偽装請負とは

 偽装請負とは、実態は労働者派遣(または労働者供給)ですが、業務処理請負(委託)を偽装して行われているものをいいます。
 労働者派遣は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律により規定されており、以下では、この法律のことを「労働者派遣法」と呼びます。
 労働者供給については、職業安定法により規定されています。
 偽装請負には以下の類型があるとされています(労働法[第12版]菅野和夫著392頁)。

1 典型例

 「業者AがB社から業務処理を請け負い(受託し)、Aの雇用する労働者XをB社の事業場に派遣し就労させている状況において、Xの就労についての指揮命令(労務管理)をA自身が行わずB社が行っているもの、ないしは、AがXに対する指揮命令の責任者を置いて自ら指揮命令を行う形にしているが実質的にはB社が指揮命令を行っているもの。」

2 個人請負型

 「業者AがB社から業務処理を請け負い(受託し)、その遂行を個人事業主である業者Xに下請けさせて(再委託し)、XがB社の事業場でB社の指揮命令を受けて業務処理に従事するという」もの。

3 多重請負型

 「業者AがB社から業務の処理を請け負った(受託した)うえ、これを業者Cに下請させ(再委託)、業者Cがさらに業者Dに下請させ(再委託)、業者Dの労働者がB社の事業場でその指揮命令を受けて業務に従事するという」もの。

労働者派遣法2条(用語の意義)
「この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。」
1号「労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。」
職業安定法4条(定義)
7項「この法律において『労働者供給』とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下『労働者派遣法』という。)第2条第1号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないものとする。」

派遣・供給をしている者の責任

1 派遣をしている事業主

 偽装請負が「労働者派遣」(労働者派遣法2条1号)に該当する場合は、派遣している事業主には、以下の責任が生じます。
 派遣禁止業務への労働者派遣(労働者派遣法4条1項)、派遣事業の許可なしの労働者派遣(労働者派遣法5条1項)については、罰則があります(労働者派遣法59条1号・2号)。
 労働者派遣事業の許可を得ている事業主が行う場合でも、労働者派遣契約の締結(労働者派遣法26条)、派遣就業条件の明示(労働者派遣法34条)、派遣元責任者の責任(労働者派遣法36条)等の枠組みを満たしていないため、労働者派遣法に違反し、行政監督の対象となります。

2 供給をしている事業主

 個人請負型や多重請負型のように「労働者派遣」に該当しない偽装請負は、請負業者と労働者間に支配関係が認められ「業として」の要件を満たすかぎり、労働者供給事業の禁止(職業安定法44条)に違反するものとして、その罰則(職業安定法64条9号)の適用を受けます。

派遣・供給を受けている者の責任

1 派遣を受けている事業主

 偽装請負が「労働者派遣」(労働者派遣法2条1号)に該当する場合は、派遣を受けている事業主には、以下の責任が生じます。
 労働者派遣事業主としての許可のない業者から労働者派遣を受けている場合には、その禁止規定(労働者派遣法24条の2)に違反するため、行政指導(労働者派遣法48条1項)、改善命令(労働者派遣法49条)、勧告(労働者派遣法49条の2第1項)、企業名の公表(労働者派遣法49条の2)がなされる可能性があります。
 また、労働者派遣事業の許可のある業者からの偽装請負の派遣であったとしても、派遣先事業主が、派遣先責任者の選任、版権先管理台帳の作成などの法定義務を履行していない点で、労働者派遣法の規定に違反していることとなり、行政指導(労働者派遣法48条1項)、改善命令(労働者派遣法49条1項)の対象となります。

2 供給を受けている事業主

 供給をしている事業主の場合と同様です。
 個人請負型や多重請負型のように「労働者派遣」には該当しない偽装請負は、請負業者と労働者間に支配関係が認められ「業として」の要件を満たすかぎり、労働者供給事業の禁止(職業安定法44条)に違反するものとして、その罰則(職業安定法64条9号)の適用を受けます。

派遣先による雇用申込み擬制

 偽装請負について、労働者派遣の役務の提供を受けた者は、一定の場合に、派遣労働者に対して直接雇用の申し込みをしたものとみなすとの規定が2015年10月1日から施行されました(労働者派遣法40条の6第1項本文)。
 具体的には、以下の場合には、その時点において、当該労働者派遣の役務の提供を受けるものから当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなされます。

①「労働者派遣の役務の提供を受ける者」が、
②「次の各号のいずれかに該当する行為を行った場合

⑴派遣労働者を禁止業務に従事させたこと(同項1号)
⑵厚生労働大臣の許可を受けていない会社からの派遣労働者による役務提供を受けること(同項2号)
⑶派遣可能期間を超えて派遣労働者を受け入れること(同項3号、4号)
⑷偽装請負に該当すること(同項5号)

 この規定は、偽装請負の典型例のみならず、個人請負型、多重請負型にも発動されうると考えられています。
 ただし、労働者派遣の役務の提供を受ける者が、その行った行為が上記各号のいずれかの行為に該当することを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかったときは、この限りではありません(労働者派遣法40条の6第1項但書)。
 派遣先等が労働契約の申込みをしたものとみなされた場合、みなされた日から1年以内に派遣労働者がこの申込みに対して承諾する旨の意思表示をすることにより、派遣労働者と派遣先等との間の労働契約が成立します(労働者派遣法40条の6第2項、3項)。

労働者派遣法40条の6
1項「労働者派遣の役務の提供を受ける者…が次の各号のいずれかに該当する行為を行つた場合には、その時点において、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす。ただし、労働者派遣の役務の提供を受ける者が、その行つた行為が次の各号のいずれかの行為に該当することを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかつたときは、この限りではない。」

1号「第4条第3項の規定に違反して派遣労働者を同条第1項各号のいずれかに該当する業務に従事させること。」
2号「第24条の2の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること」
3号「第40条の2第1項の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること(同条第4項に規定する意見の聴取の手続のうち厚生労働省令で定めるものが行われないことにより同条第1項の規定に違反することとなつたときを除く。)。」
4号「第40条の3の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること。」
5号「この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、第26条第1項各号に掲げる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること。」

2項「前項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提供を受ける者は、当該労働契約の申込みに係る同項に規定する行為が終了した日から一年を経過する日までの間は、当該申込みを撤回することができない。」
3項「第1項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提供を受ける者が、当該申込みに対して前項に規定する期間内に承諾する旨又は承諾しない旨の意思表示を受けなかったときは、当該申込みは、その効力を失う。」
4項「第1項の規定により申し込まれたものとみなされた労働契約に係る派遣労働者に係る労働者派遣をする事業主は、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から求めがあった場合においては、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者に対し、速やかに、同項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた時点における当該保険労働者に係る労働条件の内容を通知しなければならない。」

派遣労働者の解雇と雇止め派遣労働者の解雇と雇止めは、正社員の場合と違いはあるのでしょうか。そもそも、派遣労働者の解雇や雇止めをする権限は誰にあるのでしょうか。今回は、派遣労働者の解雇と雇止めについて解説します。...
ABOUT ME
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。主な取扱分野は、人事労務、離婚・男女問題、相続、企業法務、紛争解決(訴訟等)、知的財産、刑事問題等。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。
残業代に注力している弁護士に相談してみませんか?

・「残業代を請求したいけど、自分でやるのは難しそうだな…」
・「会社と直接やりとりをせずに残業代を請求する方法はないのかな?」
・「働いた分の残業代は、しっかり払ってほしいな…」

このような悩みを抱えていませんか。このような悩みを抱えている方は、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

残業代には2年の時効がありますので、早めに行動することが大切です。

初回の相談は無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください。

残業代請求の相談・依頼はこちらのページから

365日受付中
メール受付時間:24時間受付中
電話受付時間:09:00~22:00

メールでの相談予約はこちら

お電話での相談予約はこちら

▼PCからご覧になっている方・お急ぎの方はこちらへお電話ください(直通)▼
090-6312-7359
※スマホからならタップでお電話いただけます。