会社から退職するように言われたものの「退職勧奨が何か」「どのような問題点あるのか」と言うことがよくわからず悩んでいませんか?
退職勧奨とは、会社があなたに自主的に退職することを促すものです。
このように意味自体は単純ではありますが、実際には、退職勧奨をされた場合には多くの注意点があります。
あなたが退職勧奨をされた場合には、退職勧奨がどのようなものなのかについて知っておかなければなりません。
「退職勧奨が何かよくわからず、言われるままに退職してしまった」という相談が非常に多くなっています。
退職勧奨に応じてしまった後ですと、退職届を撤回できる場合もありますが、退職勧奨に応じる前に比べてこれを争う難易度が格段に上昇してしまいます。
そのため、退職勧奨をされた場合には、直ぐにこれに応じるのではなく、退職勧奨を正しく理解して、必要があれば専門家の力も借りるべきです。
今回は、退職勧奨と戦うために必要な知識を網羅的に説明していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
退職勧奨をされた方には、まずはこの記事で退職勧奨がどのようなものなのかを知っていただければ幸いです。
目次
退職勧奨とは
退職勧奨とは、会社があなたに自主的に退職することを促すものです。
これに対して、解雇は、あなたの意思は関係なく、会社が一方的にあなたを辞めさせるものです。あなた自身の意思が尊重されない点で退職勧奨とは異なります。
会社から退職勧奨を行われる場合には、例えば、以下のようなことを言われます。
例1:「あなたはこの会社に向いていないので辞めてくれないか?」
例2:「あなたを懲戒解雇することを考えている。解雇の経歴が残るとあなたにも不利になるので、その前に自分で辞めてはどうか?」
会社が労働者に対して退職勧奨をする主な理由は、解雇をした場合にこれを争われることを回避するためです。解雇には法律上厳格な条件があり、会社にとってもリスクとなるので、これを避けようとしているのです。
退職勧奨とは何かについては、以下の記事で詳しく解説しています。
よくある退職勧奨される理由3つ
退職勧奨をされる理由は色々ありますが、よくあるのは以下の3つです。
・成績が悪い
・勤務態度が悪い
・会社の業績が悪い
1つ目は成績が悪い場合です。他の従業員の方と比べてあなたのミスが多いことや、売り上げが低いこと、会社へ貢献できていないことなどを理由に退職を促されます。
2つ目は勤務態度が悪いことです。業務命令違反や協調性不足を理由に退職を促されます。
3つ目は会社の業績が悪いことです。会社の売り上げの低下や業務の減少を理由に退職を促されます。
退職勧奨が違法となる4つのケースと慰謝料
退職勧奨は、社会的相当性を逸脱して半強制的ないし執拗な態様で行われた場合には、違法になります。
なぜなら、退職勧奨というのは、労働者の自由な意思を尊重して行わなければならないためです。
退職勧奨が違法となるケースとして、例えば以下の4つがあります。
ケース1:拒否しても長時間又は繰り返し行われる退職勧奨
ケース2:いじめや嫌がらせを伴う退職勧奨
ケース3:降格や転勤等の人事上の措置を伴う退職勧奨
ケース4:不利益措置が禁止されている事由を理由とする退職勧奨(※直ちに違法になるわけではありませんが相当性につき厳しく判断される傾向にあります)
退職勧奨が違法とされる場合には、労働者は、会社に対して、慰謝料を請求できることがあります。
違法な退職勧奨の慰謝料相場は20万円~100万円程度と言われています。
退職勧奨が違法となる場合や慰謝料については、以下の記事で詳しく解説しています。
また、退職勧奨は、強要に至っている場合には、犯罪(強要罪)やパワハラにもなり得ます。
退職強要と犯罪(強要罪)やパワハラとの関係については、以下の記事で詳しく解説しています。
失業保険受給の際に会社都合としてもらえる傾向にある
退職勧奨による退職については、解雇と同様に、失業保険を受給する際に会社都合退職として扱ってもらえる傾向にあります。
会社都合退職としてもらえると、失業保険を受給するまでの期間や受給できる日数について、自己都合退職よりも優遇してもらえることになります。
しかし、会社は、会社都合退職としてしまうと、助成金を受給する際の障害になることがあるため、これを嫌います。
そのため、会社によっては、退職勧奨をした場合でも、労働者に対して、退職届に「一身上の都合」などと記載するように強要することがありますので注意が必要です。
万が一、退職勧奨による退職であるにもかかわらず、会社に自己都合退職として処理されてしまった場合には、ハローワークに行き実際には退職勧奨により退職したものであることを説明しましょう。
会社都合退職については、以下の動画でも詳しく解説しています。
退職勧奨をされた場合の選択肢2つ
退職勧奨をされた場合、あなたには、「退職勧奨に応じる」又は「退職勧奨を拒否する」という2つの選択肢があります。
退職勧奨をされた場合の流れや対処法については、以下の記事で詳しく解説しています。
退職勧奨された場合のNG行動と正しい対処法は、以下の動画でも詳しく解説しています。
それでは、「退職勧奨に応じる」と「退職勧奨を拒否する」の2つの選択肢について、それぞれ対処法を整理します。
退職勧奨に応じる
退職勧奨に応じる場合の対処法は、以下の4つです。
対処法1:条件に納得するまでは会社で働き続ける意思を示しておく、
対処法2:退職条件の提案は書面でしてもらう
対処法3:特別退職金又は解決金の交渉をする
対処法4:退職条件がまとまったら合意書にする
②退職条件の提案を書面でもらう方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
③退職勧奨における退職金の上乗せ相場は、賃金3か月分~6か月分程度と言われていますが事案により異なります。以下の記事で詳しく解説しています。
④退職勧奨に応じる場合には、退職届ではなく、退職合意書を作成するようにしましょう。その理由や退職合意書の書き方は以下の記事で詳しく解説しています。
退職勧奨を拒否する
退職勧奨を拒否する場合の対処法は、以下の4つです。
対処法1:面談で退職勧奨に応じる意思がないことを明確に伝える
対処法2:何度も退職勧奨をされる場合にはメールや書面により警告する
対処法3:自宅待機を命じられた場合には業務指示をするように求めておく
対処法4:解雇予告手当や退職金は受け取らない
退職勧奨を拒否する方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
退職届の撤回・取り消しの方法
あなたが退職勧奨を受けて、退職届を提出してしまった場合でも、
退職届は人事部長などの権限がある方が受理するまでは、撤回が認められる傾向にあります。
ただし、辞職と解される特段の事情がある場合には、会社に到達した時点で撤回ができなくなってしまいます。
退職届には、辞職の意思表示(会社の承諾とは関係なく、一方的に退職する意思を示すもの)、合意退職の申し込み(会社に承諾を求めて、退職の申し入れをするもの)の2つの可能性があります。
法律上は辞職と合意退職で撤回できる時期が以下のように異なります。
そして、辞職か合意退職の申し込みか曖昧な場合には、合意退職の申し込みにあたるとされています。
そのため、辞職に当たる事情がなければ、人事部長などの権限がある方が受理するまでは撤回できる傾向にあるのです。
また、退職届の撤回をすることができない場合でも、以下の3つのケースでは退職届の取り消しや無効が主張できる可能性があります。
ケース1:害悪を示して脅された場合(強迫)
ケース2:勘違い(錯誤)や騙された場合(詐欺)
ケース3:本心でないことを会社が知り得た場合(心理留保)
退職届の撤回や取り消しについては、以下の記事で詳しく解説しています。
退職勧奨の相談窓口
退職勧奨をされた場合におすすめの相談窓口には、弁護士、労働組合、労働局の3つがあります。
それぞれの特徴を整理すると以下のとおりです。
これらの特徴を踏まえた上で、あなたにおすすめの相談先をまとめると以下のとおりです。
退職勧奨の相談窓口については、以下の記事で詳しく解説しています。
退職勧奨対応を頼む弁護士の選び方や費用
退職勧奨対応を頼む弁護士を選ぶポイントは、以下の3つです。
①解雇事件に注力している弁護士を選ぶ
②あなたの意向を尊重してくれる弁護士を選ぶ
③話しやすい弁護士を選ぶ
退職勧奨対応を弁護士に相談・依頼する場合の費用相場は、以下のとおりです。
退職勧奨対応を依頼する場合の弁護士の選び方や費用は、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
以上のとおり、今回は、退職勧奨と戦うために必要な知識を網羅的に説明しました。
この記事の要点を簡単にまとめると以下のとおりです。
・退職勧奨とは、会社があなたに自主的に退職することを促すものです。
・退職勧奨は、社会的相当性を逸脱して半強制的ないし執拗な態様で行われた場合には、違法になります。
・違法な退職勧奨の慰謝料相場は20万円~100万円程度と言われています。
・退職勧奨をされた場合には、あなたには、「退職勧奨に応じる」又は「退職勧奨を拒否する」という2つの選択肢があります。
・退職勧奨に応じる場合の対処法は、①条件に納得するまでは会社で働き続ける意思を示しておく、②退職条件の提案は書面でしてもらう、③特別退職金又は解決金の交渉をする、④退職条件がまとまったら合意書にする、の4つです。
・退職勧奨を拒否する場合の対処法は、①面談で退職勧奨に応じる意思がないことを明確に伝える、②何度も退職勧奨をされる場合にはメールや書面により警告する、③自宅待機を命じられた場合には業務指示をするように求めておく、④解雇予告手当や退職金は受け取らない、の4つです。
・退職届は、辞職に当たる事情がなければ、人事部長などの権限がある方が受理するまでは撤回できる傾向にあります。撤回できない場合でも、取り消しや無効が主張できる可能性があります。
・退職勧奨をされた場合におすすめの相談窓口には、弁護士、労働組合、労働局の3つがあります。
この記事が、退職勧奨がどのようなものか不安に感じている方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください