不当解雇・退職扱い

横領・背任行為を理由とする懲戒処分

 労働者は、業務に関連して横領・背任行為を行ったことを理由として懲戒処分されることはあるのでしょうか。また、懲戒処分が許されるとした場合に、懲戒解雇などの重い処分は許されるのでしょうか。
 今回は、横領・背任行為を理由とする懲戒処分について解説します。

横領・背任とは

 横領とは、自己の占有する他人の財物に対する不法領得の意思の発現行為いいます(刑法252条)。例えば、会社から預かっている金銭を費消、着服するような行為です。
 背任とは、他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えることをいいます(刑法247条)。
 就業規則では、以下のような懲戒規定が置かれている会社が多く見られます。

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第〇条(懲戒の事由)
1 労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停
止とする。
素行不良で社内の秩序及び風紀を乱したとき。
②…
2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第〇条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。
素行不良で著しく社内の秩序又は風紀を乱したとき。
会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事
実が明らかとなったとき(当該行為が軽微な違反である場合を除く。)。

③…

刑法247条(背任)
「他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」
刑法252条(横領)
1「自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。」
2「自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。」
刑法253条(業務上横領)
「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。」
刑法254条(遺失物等横領)
「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。」

業務上の横領・背任を理由とする懲戒処分

総論

 懲戒処分は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、その権利を濫用したものとして無効となります(労働契約法15条)。
 では、業務上における横領・背任行為については、どのような懲戒処分が相当なのでしょうか。
 これについて、使用者が解雇の予告なく労働者を解雇できる「労働者の責に帰すべき事由」(労働基準法20条1項但書)として認定すべき事例として、行政通達は(昭和23年11月11日基発1637号、昭和31年3月1日基発111号)は、以下の例を挙げています。

「原則として極めて軽微なものを除き、事業場内における盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為のあった場合、また一般的に見て『極めて軽微』な事案であつても、使用者があらかじめ不祥事件の防止について諸種の手段を講じていたことが客観的に認められ、しかもなお労働者が継続的に又は断続的に盗取、横領、傷害等の刑法犯又はこれに類する行為を行つた場合」

 また、国家公務員に関するものですが、人事院が作成した「懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職-68)」が参考になります。これによると公金の横領行為については、以下のように規定されています。

2 公金官物取扱い関係
⑴ 横領
公金又は官物を横領した職員は、免職とする。

業務上における横領を理由とする懲戒処分

 横領行為についての懲戒処分は、以下の要素を考慮し判断します。

① 横領した金額・回数・期間
② 横領行為を行った者の地位(現金を取扱者か責任者地位にあるか)
③ 目的の悪質性
④ 返金の有無

 業務上における横領行為については、裁判所はその責任を重く見る傾向にあり、原則として、懲戒解雇事由に該当すると考えられます。

東京地判平13.10.26労経速1791号3頁[東日本旅客鉄道(懲戒解雇)事件]

1 懲戒解雇された理由
 「被告は、同年一二月八日、原告に下記理由で懲戒解雇の処分(以下「本件処分」という)をした。

 「取手駅輸送係として勤務した際、平成一一年四月一二日に取手警察署から受領した遺失還付金六万四四三五円を会社に納付せず着服したのみならず、さらに同年七月二三日同署から受領した同還付金六万四五六三円を約一箇月にわたり、所定の手続を行わずに放置したことは、社員として極めて不都合な行為であるため。」
2 懲戒解雇の有効性
 上記「の本件処分の理由の事実はこれを認めることができるところ、これは…就業規則一三九条6号に該当する行為であり、かつ、…業務上現金の取扱いが多い被告において現金の着服はその額の多寡にかかわらず解雇が原則であることから、本件処分は懲戒手段として相当な範囲を超えないというべきであり、一四〇条(1)の規定による懲戒解雇として有効である

大阪地判平10.1.28労判733号72頁[ダイエー(アサヒセキュリティーシステムズ事件)

1 懲戒解雇された理由
 「原告は、平成七年一月二二日、朝日東日本統括本部からの応援者に対する慰労会を手配し、右飲食代金一六万四三六八円(二〇人分)を仮払いし、領収書の交付を受けた。原告は、平成七年一月二三日、右仮払の飲食費を精算するに当たり、右領収書の一〇万円の位の『1』を『2』に改竄し、飲食代金を二六万四三六八円に見せかけ、経費請求申請書に、右改竄後の金額である二六万四三六八円を記入して、仮払金の清算手続をし、もって差額の一〇万円を着服した(本件着服)。」
 「被告は、原告の本件着服は懲戒処分に相当すると考えたので、平成七年八月三日、被告賞罰委員会規則に基づき、原告を出頭させた上、賞罰委員会を開催した。被告は、平成七年八月七日、原告を懲戒解雇することに意思決定し、八月一〇日、原告に対し、解雇予告手当を送金するとともに、懲戒解雇する旨の意思表示をした(本件懲戒解雇)。」
2 懲戒解雇の有効性
 「原告による本件着服は、周到に計画された犯行であるとまではいえないものの意図的なもので、その性質上、会社に対する重大な背信行為であるというべきであり、右発覚後、被告が、原告に対し、退職金が支給できるよう依願退職の申出を繰り返し勧めたにもかかわらず、これが拒否されたため、賞罰委員会の議を経た上で、本件懲戒解雇に至ったことが認められ、その一方、原告が、本件着服当時、阪神・淡路大震災の復旧作業等に精力的に従事していたものの、右作業に伴うストレスに起因する『行為障害を伴う適応障害』等により事理弁識能力が喪失し又は著しく減退していたと認めることはできず、解離症状を前提とする心神耗弱も認めることができない。」
 「したがって、右事実によれば、前記認定の原告の本件着服前の勤務態度、本件着服当時の心身にわたる疲労の蓄積、本件着服に係る金員の返還の事実、原告が、本件着服のほかは不正行為を行ったことがないこと、本件懲戒解雇が原告の家計等に与える影響等、原告のために有利に斟酌すべき事情を考慮しても、本件着服に懲戒解雇をもって臨むことが著しく苛酷であるということはできない。」

業務上における背任を理由とする懲戒処分

 背任行為についての懲戒処分は、以下の要素を考慮し判断します。

① 背任行為の金額・回数・期間
② 背任行為を行った者の地位
③ 業務関連性

 業務上における背任行為についても、裁判所はその責任を重く見る傾向にあり、原則として、懲戒解雇事由に該当すると考えられます。
 なお、リベートを収受する行為については、下記リンクのとおりです。

取引先からのリベート・謝礼の受領と解雇取引先へのリベートの要求や受領、個人的な謝礼の受領等の不正行為は、どのような場合に解雇事由になるのでしょうか。今回は、背任行為を理由とする解雇について解説します。...

大阪地判平11.9.27労経速1740号3頁[バイエル薬品事件]

 「原告の行為は、不正購入の金額が、約一四四〇万円という多額にのぼる上に、長期にわたって反復、継続しており、被告会社の経理の手続の盲点をついて、実際に納品された物品とは全く異なる二〇万円未満の消耗品に分割した内容虚偽の納品書及び請求書を業者に指示して提出させるなど、その方法が計画的かつ巧妙であるから、原告に有利なあらゆる事情を考慮しても、被告会社のした本件懲戒解雇が著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないとはいえず、解雇権の濫用にはあたらない。」

業務外における横領・背任

 私生活上の非行については、当該行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類、態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から綜合的に判断して、当該行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合には、懲戒処分の対象となることがあります(最判昭49.3.15民集28巻2号265頁[日本鋼管事件])。
 これについて、使用者が解雇の予告なく労働者を解雇できる「労働者の責に帰すべき事由」(労働基準法20条1項但書)として認定すべき事例として、行政通達は(昭和23年11月11日基発1637号、昭和31年3月1日基発111号)は、以下の例を挙げています。

「事業場外で行われた盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為であつても、それが著しく当該事業場の名誉もしくは信用を失ついするもの、取引関係に悪影響を与えるもの又は労使間の信頼関係を喪失せしめるものと認められる場合」

 また、国家公務員に関するものですが、人事院が作成した「懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職-68)」が参考になります。これによると公務外における横領行為については、以下のように規定されています。

3 公務外非行関係
⑹横領
ア 自己の占有する他人の物を横領した職員は、免職又は停職とする。
イ 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した職員は、減給又は戒告とする。

 以上より、業務外における横領・背任行為については、会社の事業の種類、態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等を考慮して、それが著しく当該事業場の名誉もしくは信用を失ついするもの、取引関係に悪影響を与えるもの又は労使間の信頼関係を喪失せしめるものである場合には、懲戒解雇などの重い処分が許されることがあると考えられます。

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