労働審判という制度を利用したいけど解決に至る具体的なイメージがわかないと悩んでいませんか?
利用したことがないと、裁判との違いなども分かりにくいですよね。
労働審判とは、全3回までの期日で話し合いによる解決を目指す手続きです。話し合いによる解決が難しい場合には、労働審判委員会により審判が下されます。
3~4か月で迅速に解決することが期待でき、解決金の平均も訴訟外のあっせんと比較して8倍以上となっています。
実際、労働審判は、使いこなせばかなり便利な制度で、多くの弁護士もこの手続きを利用しています。
しかし、専門性が高く、手続きを有利に進めたいと考えた場合には、その性質を理解して対策を講じることが不可欠です。
顧問弁護士を就けることが多い会社と対等な立場で手続きを進めていきたいと考えた場合には、労働審判に強い弁護士に依頼した方がいいでしょう。
ただし、弁護士に依頼する場合の費用の相場は35万円~80万円程度であり請求金額によっては、費用倒れになってしまう可能性があります。このような場合には、ひな形を用いて自分で申し立てることも検討する必要があります。
また、申立には、弁護士費用以外に必要な実費として7500円~3万3000円程度かかりますので、労働審判を検討する際には、これについても確認しておくべきです。
今回は、労働審判を使いこなすために必要な知識を整理して、本などではあまり知ることができない実務的な疑問も広く網羅していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば労働審判についての疑問が解消し使いこなせるようになるはずです。
労働審判とはどのような制度かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次
労働審判とは
労働審判とは、全3回までの期日で話し合いによる解決を目指す手続きです。話し合いによる解決が難しい場合には、労働審判委員会により審判が下されます。
労働審判がどのような制度かについては以下の順序で説明していきます。
・労働審判とあっせん・裁判の違い
・労働審判の流れ
・労働審判後の訴訟への移行
労働審判とあっせん・裁判の違い
労働審判とあっせん・裁判の違いを簡単に比較すると以下のとおりです。
労働審判と裁判の違いをより詳しく比較すると以下のとおりです。
労働審判は、裁判に比べて、安価に短期間で解決することが期待できます。
労働審判の流れ
労働審判は、おおよそ以下のような流れで進んでいきます。
第1回期日の前半1時間程度は、事実関係のヒアリングが行われるのが通常です。
第1回期日の後半以降は、和解の調整が行われます。
和解の調整が整えば調停が成立し、和解の調整が困難であれば審判が下されます。
労働審判後の訴訟への移行
労働審判では、以下の場合には、訴訟に移行することになります。
・審判に対して2週間以内に当事者のいずれかから異議が出された場合
・事件の性質から労働審判手続を行うことが適当でないとされた場合
労働審判が訴訟に移行した場合の流れは以下のとおりです。
労働審判制度の概要や流れ、期間、当日想定されるやり取りは、以下の記事で詳しく解説しています。
労働審判の管轄
労働審判は、地方裁判所において行われます。本庁で行われるのが通常ですが、一部労働審判を取り扱っている支部もあります。
労働審判を申し立てる地方裁判所は、通常、以下のいずれかです。
①会社の本店所在地(法務局で登記をとり確認できます)を管轄する地方裁判所
②あなたが現に働いている事業所又は最後に働いていた事業所の所在地を管轄する地方裁判所
③会社と労働者が書面で合意した地方裁判所
裁判所の管轄については、以下のページで確認できます。
裁判所の管轄区域
労働審判の費用
労働審判に必要な費用の概要と相場を整理すると、以下のとおりまとめることができます。
労働審判の費用については、原則、会社に請求することはできません。自分が負担しなければならないものと考えておいた方がいいでしょう。
労働審判費用を上手に節約したいと考えた場合には、例えば、以下の6つの方法があります。
節約方法1:現実的な金額を請求する|印紙代の節約
節約方法2:争点を意識したメリハリのある主張をする|コピー代の節約
節約方法3:自分の記録は電子データを活用する|コピー代の節約
節約方法4:証拠は質の高いものを厳選する|コピー代の節約
節約方法5:近くの裁判所に申し立てる|交通費の節約
節約方法6:弁護士の報酬体系と見積もりを確認する|弁護士費用の節約
労働審判の費用については、以下の記事で詳しく解説しています。
労働審判の解決金の相場
労働審判の解決金の相場は、全体としてみると50万円~300万円程度での解決が多くなっています。
類型ごとの解決金の考え方について、以下の順序で説明していきます。
・不当解雇の解決金
・残業代の解決金
・パワハラの解決金
不当解雇の解決金
不当解雇の場合の解決金は、おおよそ以下のような要素を考慮して決めます。
具体的には、不当解雇では、「賃金〇か月分」のような形で交渉されることが多く、相場は賃金の3か月分~6か月分程度と言われています。
もう少し詳しくまとめると以下のとおりとなります。
残業代の解決金
残業代請求の場合の解決金は、おおよそ以下のような要素を考慮して決めます。
ただし、未払い残業代の金額は、賃金額や残業時間により大きく異なるため、〇円程度などの相場を示しにくい傾向にあります。
パワハラの解決金
パワハラの解決金は、おおよそ以下のような要素を考慮して決めます。
例えば、「罵倒を伴う事案」と「暴行を伴う事案」でそれぞれの慰謝料の相場を整理するとおおよそ以下のようになります。
暴行を伴う事案につき10万円~200万円程度
解決金については、労働審判期日において、交渉をしながら決めますので、交渉技術も金額に影響を与えることになります。
解決金は、当事者間の合意が成立して初めて支払われるものだからです。
労働審判において誰でも実践しやすい交渉方法の一例をあげると以下の12個があります。
【事件一般】
方法1:見通しが明るい場合には予想される審判や判決を強調する
方法2:可能であれば会社に先に解決金を提案してもらう
方法3:労働審判員の心証を確認しながら提案金額を検討する
方法4:金額の根拠を言えるようにする
方法5:会社が歩みよってこない場合には安易に金額を下げない
方法6:時に感情面を強調してみるのも有効
方法7:切りのいい数字に繰り上げてもらう
方法8:悩んだら譲歩せずに次回期日に持ち越す
【不当解雇の事案】
方法9:復職の意思がある場合にはこれを強調する
方法10:退職を前提とする和解の場合には退職金を忘れずに指摘する
方法11:会社の落ち度で雇用保険に加入していない場合は指摘する
【残業代の事案】
方法12:訴訟の判決になると遅延損害金や付加金が必要となることを指摘する
労働審判の解決金の相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
労働審判に勝つ方法はある?勝率を上げる4つの対策
労働審判は、訴訟と異なり、第1回期日の前半でほとんど労働審判委員会の心証が形成されてしまうので、有利に進めるためには、事前準備を行うこと非常に重要です。
具体的には、最低限以下の対策は行っておくべきです。
対策1:争点を意識したメリハリのある申立書を作成する
対策2:客観的な証拠を集める
対策3:当日予測される質問への回答を考えておく
対策4:必要があれば補充書面を提出する
まず、短期間で審理されるので、争点とそれ以外の部分を区別して書く分量を変えるなど、円滑に理解してもらえるように工夫して申立書を書く必要があります。
次に、労働審判では審理により形成された労働審判委員会の心証をもとに、調停の話合いや審判が進むので、客観的な証拠を示せることが大切です。
労働審判当日は口頭で質問が行われ、それへの回答により労働審判委員会の心証が形成されます。咄嗟に回答を考えるのは難しいこともあるので、事前に想定される質問を検討しておきましょう。
最後に、労働審判当日に口頭のみで答弁書に反論すると理解が得られにくいこともあるため、反論の量が多い場合などには補充書面を出すことが有用です。
労働審判の勝率を上げる方法については、以下記事で詳しく解説しています。
労働審判の申し立ては自分でできる?|労働審判申立書の記載方法・部数
労働審判の申し立て自体は、自分で行うこともできるでしょう。
ひな形などを利用することで、最低限の申立書を作成することは可能であるためです。
しかし、顧問弁護士を代理人に就けることが多い会社と対等に手続きを進めるには、弁護士に依頼することがおすすめです。
もしも、請求金額と弁護士費用の関係により自分で労働審判を申し立てざるを得ない場合には、以下のチェックシートを活用してください。
【労働審判申立書に最低限記載しなければいけない事項】
☑当事者及び法定代理人
☑申立ての趣旨及び理由
☑事件の表示
☑年月日
☑裁判所の表示
☑予想される争点及び当該争点に関連する重要な事実
☑予想される争点ごとの証拠
☑当事者間においてされた交渉その他の申立てに至る経緯の概要
【質の高い労働審判申立書を作成するポイント】
☑メリハリを意識して記載する
☑争点と関係ない不満や感情論はほどほどにする
☑近い事案で有利な裁判例を調査する
☑不利な事実から逃げずにフォローする
☑申立書に証拠の見てほしい箇所を引用する
☑事実は具体的に記載する
☑一文は短くする
☑項目にタイトルをつける
☑誤字・脱字はなくす
【申し立ての際に裁判所に持参・郵送する部数】(相手方が1つの会社のみの場合)
☑申立書5通
☑証拠説明書2通
☑甲号証各2通
☑資格証明書1通
☑収入印紙
☑予納郵券
労働審判の申し立て方法については、以下の記事で労働審判申立書の書き方や部数をひな形や記載例を踏まえて詳しく解説しています。
労働審判は会社にダメージはある?|解決率が高い!
労働審判は、迅速かつ適正、実効的な紛争解決を目的とした制度ですので、会社にダメージを与えるような制度ではありません。
もしも、会社に対してダメージを与えるような目的で、この制度を利用しようとしているのであればやめた方がいいでしょう。
これに対して、労働審判は、紛争の解決を目指してこれを使っていく場合にはとても有効な制度です。
労働審判は申立から平均して70日余りで、70%超える事件が和解により解決しているとされています。
これまで交渉をしても、無視されたり、全く歩み寄ってきてもらえなかったりした方は、労働審判により本当に解決できるのか不安な方もいるでしょう。
しかし、労働審判を無視すると、5万円以下の過料に処される可能性(労働審判法31条)、申立人の主張のみにより不利な審判が下される可能性があります。
また、労働審判では、労働審判委員会が心証を踏まえて会社を説得してくれますし、会社が歩み寄ってこない場合には心証に基づいて審判が下されます。
そのため、労働審判では、これまで交渉がうまくいかなかったような場合であっても、解決できる可能性があるのです。
労働審判の会社への影響については、以下の記事で詳しく解説しています。
労働審判はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
労働審判は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください!
リバティ・ベル法律事務所は、労働審判事件について、以下の3つの強みを持っています。
・完全成功報酬制
・労働審判の経験が豊富な弁護士が担当
・迅速なやり取り
完全成功報酬制
リバティ・ベル法律事務所は、ご依頼者様に安心して少ない負担でご依頼いただけるように完全成功報酬制を採用しています。
弁護士費用については、委任終了時に獲得できた経済的利益の範囲でいただいています。
ご依頼いただく際に、可能な限り明確に報酬体系をお伝えするように努めていますので、ご不明点がある場合には、お気軽にお尋ねください。
労働審判の経験が豊富な弁護士が担当
労働審判は専門性が高い手続きです。限られた期日で、あなたの権利を説得的に伝えていく必要があります。
自分一人で労働審判を行おうとすることはおすすめしません。また、依頼する場合には、労働事件に力を入れている弁護士に頼むことが望ましいでしょう。
労働事件に関する法律や判例の知識、労働審判事件経験の有無により、どのような解決になるかは大きく変わってきます。
労働審判事件で適正な金額による解決をするためには、顧問弁護士のいる会社と対等な立場で戦う必要があるのです。
リバティ・ベル法律事務所では、労働審判の経験が豊富な弁護士があなたの事件を担当します。
残業代事件や解雇事件に圧倒的な知識・経験がある弁護士が全力であなたをサポートします。
労働事件の解決実績の一部を公開していますので、よろしければ確認してみてください。
解決実績
迅速なやり取り
リバティ・ベル法律事務所は、原則、弁護士と直接のやり取りをしていただきますので迅速な意思疎通が可能です。
必要に応じて、電話・メール・オンライン面談を活用することで、ストレスなくやり取りできるように配慮しています。
労働審判では、短い期間で充実した準備を行う必要があるため弁護士と迅速なやり取りが可能かどうかは非常に重要な課題です。
まとめ
以上のとおり、今回は、労働審判を使いこなすために必要な知識を整理して、本などではあまり知ることができない実務的な疑問も広く網羅しました。
この記事が労働審判をもっと知りたいと感じている方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。