不当解雇・退職扱い

変更解約告知-労働条件の変更に同意しないことによる解雇-

 使用者が労働条件を変更する手段として解雇を用いる場合があります。このように労働条件を変更する手段として解雇を行うことは許されるのでしょうか。このような場合、労働者はどのような対応すればよいのでしょうか。
 今回は、変更解約告知について解説します。

変更解約告知とは

 変更解約告知とは、労働者との労働契約の解約それ自体のためではなく、労働条件を変更する手段として解雇が行われる場合をいいます。
 変更解約告知には、様々な類型があり、代表的には以下のような類型が挙げられます。

Ⅰ 労働条件変更の申込みをしつつ、同時に、それが受け入れられない場合における労働契約の解約を行う類型
Ⅱ 新労働条件の再雇用の申込みをしつつ、同時に、労働契約の解約をする類型
Ⅲ 労働条件の変更の申込みをして、これが拒否された場合に拒否されたことを理由として労働契約の解約を行うという類型
Ⅳ 新労働条件での募集と解雇とを同時に行ったうえ、応募者を絞って再雇用し、人員削減と労働条件変更との双方を達成する類型

留保付き承諾の可否

 労働者は、使用者から労働条件の変更の申し込みをされた場合に、その合理性を争うことを留保しつつ、これを承諾して、暫定的に新労働条件で就労することにより、解雇を回避できないのでしょうか。
 民法528条では、「申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす」と規定しています。そのため、留保を付けて承諾することは認められないのが原則です。
 もっとも、労働関係を維持しつつ労働条件変更の合理性を争う手段を認めることは、雇用の安定や労使関係の安定に資する面もありますので、留保付き承諾を肯定する考え方もあります。
 裁判例には、留保付き承諾の考え方を認めた地裁判決(東京地判平14.3.11労判825号13頁[日本ヒルトンホテル事件])がありますが、控訴審(東京高判平14.11.26労判843号20頁[日本ヒルトンホテル事件])はこれを否定しております。
 従って、判例上は、留保付き承諾についての労働者の権利が確立しているとはいえず、立法的な解決も望まれています。

東京地判平14.3.11労判825号13頁[日本ヒルトンホテル事件]

 「原告らは,被告に対し,本件通知書に基づく労働条件の変更の効力について争う権利を留保しつつ,本件通知書の内容に基づいて変更された労働条件の下での就労に同意する旨の通知をしたことが認められるのであって(本件異議留保付き承諾の意思表示),この事実によれば,本件通知書に基づく労働条件の変更に伴う紛争の解決を裁判所等による判断に委ね,変更後の労働条件に基づく労働契約の締結の申入れをしていたものというべきであり,被告は,原告らが本件労働条件の変更を争う権利を留保したことを理由に本件雇止めをし,原告らとの間で日々雇用契約の更新(締結)を拒否することは許されないというべきである。」

東京高判平14.11.26労判843号20頁[日本ヒルトンホテル事件]

 「一審原告らの本件異議留保付き承諾の回答は,一審被告の変更後の条件による雇用契約更新の申込みに基づく一審被告と一審原告らの間の合意は成立していないとして後日争うことを明確に示すものであり,一審被告の申込みを拒絶したものといわざるを得ない。」
 「なお,一審原告らは,本件異議留保付き承諾の意思表示は,単純な拒絶の意思表示ではなく,本件労働条件変更について裁判所等でその法的効力について争う権利を留保し,最終的には裁判所による法的判断の確定に従うが,裁判所によって労働条件の変更が認められることを条件として就労義務を承諾するものであり,このような条件付き承諾の意思表示は,借地借家法32条によっても認められているように,有効と解すべきであると主張する。」
 「しかし,借地借家法32条は,賃料増減額請求について当事者間に協議が調わないときは,仮の賃料として相当額を支払い又はこれを受領することを認め,終局裁判が確定した場合には,正当とされた賃料との不足額又は超過額に年1割の損害金を付加して相手方に支払うことで双方の利害の調整を図ったものであり,立法により特に認められた制度である。これを本件のような日々雇用契約における労働条件変更の申込と承諾の場合に類推して,本件異議留保付き承諾の意思表示により雇用契約の更新を認めることは,そのような意思表示を受けた相手方の地位を不安定にするものであり,終局裁判の確定時における当事者双方の利害の調整を図るための立法上の手当てもされていない現状においては許されないと解すべきである。」

変更解約告知の効力

 変更解約告知は、解雇としての側面を持つため、解雇権濫用法理が適用されます。そのため、「客観的に合理的な理由を欠き」、「社会通念上相当であると認められない場合」は、解雇権を濫用したものとして無効になります(労働契約法16条)。
 もっとも、変更解約告知については、労働条件変更の手段として行われているという特殊性があるため、かかる特殊性を考慮に入れて判断する必要があります。
 従って、①労働条件を変更する必要性・相当性、②これを解雇という手段によって行うことの相当性を要件にすべきとされています。そして、類型により具体的な判断枠組みは、異なるとされています。

類型Ⅰの場合は、労働条件変更の相当性に重点を置いて判断されます。
類型ⅡⅢの場合は、解雇に重点を置いて判断されます。
類型Ⅳの場合は、整理解雇そのものとして判断されます。

 裁判例は、Ⅱの類型につき、労働条件の変更は労働者の同意を得ることが必要であるとしつつ、「労働者の職務、勤務場所、賃金及び労働時間等の労働条件の変更が会社業務の運営にとって必要不可欠であり、その必要性が労働条件の変更によって労働者が受ける不利益を上回っていて、労働条件の変更をともなう新契約締結の申込みがそれに応じない場合の解雇を正当化するに足りるやむを得ないものと認められ、かつ、解雇を回避するための努力が十分に尽くされているときは、会社は新契約締結の申込みに応じない労働者を解雇することができるものと解するのが相当である」と判断しました(東京地決平7.4.13労民集46巻2号720頁[スカンジナビア航空事件])。
 なお、労働条件が特定されておらず、使用者が変更権限を有しているにもかかわらず、新契約の申し込みをし、解雇をいわば圧力手段として労働者の承諾を迫った場合には、解雇回避努力を怠ったものとして、変更解約告知は無効になるとされています。

東京地決平7.4.13労民集46巻2号720頁[スカンジナビア航空事件]

1 変更解約告知の有効性の判断基準
 「会社と債権者ら従業員との間の雇用契約においては、職務及び勤務場所が特定されており、また、賃金及び労働時間等が重要な雇用条件となっていたのであるから、本件合理化案の実施により各人の職務、勤務場所、賃金及び労働時間等の変更を行うためには、これらの点について債権者らの同意を得ることが必要でなり(原文ママ)、これが得られない以上、一方的にこれらを不利益に変更することはできない事情にあったというべきである。」
 「しかしながら、労働者の職務、勤務場所、賃金及び労働時間等の労働条件の変更が会社業務の運営にとって必要不可欠であり、その必要性が労働条件の変更によって労働者が受ける不利益を上回っていて、労働条件の変更をともなう新契約締結の申込みがそれに応じない場合の解雇を正当化するに足りるやむを得ないものと認められ、かつ、解雇を回避するための努力が十分に尽くされているときは、会社は新契約締結の申込みに応じない労働者を解雇することができるものと解するのが相当である。」
2 労働条件変更の必要性
 「会社は、平成二年以降、世界的不況及びヨーロッバ域内の航空規制緩和等により、航空部門の経営悪化が激しく、年々赤字が増大していく一方、日本支社も平成三年以降の全世界的な景気の後退及び格安航空券の市場への出回りにより、乗客数減と航空券の販売単価の低落が急速に進み、部分的なコスト削減策では到底合理化目標を達成できないことから、日本支社について抜本的な合理化案を早急に実施する必要に迫られていたところ、空港業務及び予約発券業務については業務運営方式を変更して外部委託化する、自社便が乗り入れていない二事務所については事務所を閉鎖する、営業等については組織を縮小する、ついては一一一名の組織であった地上職を三二名程度の組織に変更するなど、全面的な人員整理、組織再編が必要不可欠となり、その計画が図られた結果、雇用契約により特定されていた各労働者の職務及び勤務場所の変更が必要不可欠なものとなったということができる。」
 「本件労働条件の変更には、賃金体系の変更、退職金制度の変更及び労働時間等の変更も含まれるが、本件合理化案を実現するためには、右変更の必要性が大きいものといえるところ、日本支社のコストの約六〇パーセントを人件費が占めるという実状に鑑み、(1)従来の賃金体系は、勤続年数に応じて賃金が上昇し続ける年功賃金体系であって、業務の違いが賃金に反映されなかった結果、全体の賃金水準が高過ぎる、各自の貢献が反映されないために熱意のある従業員の意欲をそぐなどの問題点を有しており、他の類似企業の賃金実態も加味しつつ、是正する必要があった、(2)また退職金制度については、従来の退職金が年功に応じて高騰し続ける基本給に一定の勤続年数による係数を乗じて定められるものであったため、その支給水準は著しく高いものであったうえ、従前の従業員数が本件合理化により約三分の一に激減した状態では、従前の退職年金制度では整合がとれなくなり、新しい退職金制度を設ける必要があった、(3)さらに労働時間については、新組織における業務内容の変化に応じ、労働時間も一部で延長、一部で短縮する必要があったのであり、いずれもその変更には高度の必要性が認められる。」
3 労働者が受ける不利益
 「新雇用契約締結の結果、労働者が受ける不利益について検討すると、前記三の疎明事実のとおり、右賃金体系の変更は、従業員の賃金が総体的に切り下げられる不利益を受けることは明らかであるが、地上職の場合、会社により提案された新賃金(年俸)と従来の賃金体系による月例給とを比較すると、新賃金(年俸)は従来の賃金体系による月例給に一二(月)を乗じることにより得られる金額を必ずしもすべて下回るものではないし,債権者らが新労働条件での雇用契約を締結する場合には、会社は、従来の雇用契約終了にともなう代償措置として、規定退職金に加算して、相当額の早期退職割増金支給の提案を行ったことをも合わせ考えると、前記の業務上の高度の必要性を上回る不利益があったとは認められない。」
4 結語
 「以上によれば、会社が、…職務、勤務場所、賃金及び労働時間等の労働条件の変更をともなう再雇用契約の締結を申し入れたことは、会社業務の運営にとって必要不可欠であり、その必要性は右変更によって右各債権者が受ける不利益を上回っているものということができるのであって、この変更解約告知のされた当時及びこれによる解雇の効力が発生した当時の事情のもとにおいては、右再雇用の申入れをしなかった右各債権者を解雇することはやむを得ないものであり、かつ解雇を回避するための努力が十分に尽くされていたものと認めるのが相当である。」
 「よって、本件変更解約告知は有効であると解するのが相当であ」る。

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