労働者の協調性が不足していることを理由に使用者から解雇されることがあります。
では、協調性不足を理由として、解雇することは許されるのでしょうか。
今回は、協調性不足を理由とする解雇について解説します。
目次
就業規則上の規定
協調性不足を理由とする解雇につき、就業規則などでは以下のような規定が置かれている会社が多いです。
第〇条(解雇)
労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。
①勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。
②…
第〇条(懲戒の事由)
労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。
①故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき。
②素行不良で著しく社内の秩序又は風紀を乱したとき。
③数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度等に関し、改善の見込みがないとき。
④…
解雇の有効性
普通解雇及び懲戒解雇いずれも、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には、濫用として無効になります(労働契約法15条、16条)。
協調性不足自体が懲戒解雇事由に該当するのは稀です。裁判例の中には、世界的にも有名な高級ブランドを扱っている企業の特殊性が加味して、他の従業員との協調性不足、不適切な接客態度を理由に懲戒解雇が有効としたものがありますが(東京地判平11.5.14労経速1709号25頁[カルティエジャパン事件])、通常は、普通解雇を問題とすべき類型です。
普通解雇であっても、労働者に協調性に欠ける態度があれば直ちにこれが有効となるわけではありません。その労働者の協調性不足により使用者に具体的な支障が生じていない場合や、支障が生じていたとしてもこれを指摘した上で改善の機会を十分に与えていない場合には、解雇権の濫用として無効になるでしょう。
協調性不足を理由とする解雇の有効性の判断に当たっては以下のような事情を考慮することになります。
☑ 使用者の業種
☑ 労働者の地位
☑ 協調性不足の具体的な内容・程度
☑ 協調性不足による具体的な支障の有無・程度
☑ 業務改善の機会の付与の有無
☑ 他の労働者との均衡
協調性不足を指摘された場合の対応
上記のように、協調性不足を理由とする解雇については、労働者に対して、まず注意指導して改善の機会を与える必要があります。
では、労働者は、使用者から協調性不足を指摘された場合には、どのように対応すればいいのでしょうか。
ポイント1:対象となる事実を確認する
使用者が、いかなる事実を根拠として協調性不足を指摘しているのかを明確にする必要があります。そのため、労働者は、協調性不足を指摘された場合には、使用者に対して、日時や態様、発言等を確認して、認識の共有を図ることが重要です。
使用者が、「それは自分で考えるように」などと言い、対象となる事実を具体的にすることを避ける場合には、説明を求めたことを書面やメールなど形に残しておくといいでしょう。
ポイント2:事実との異なる場合にはその旨説明する
使用者から協調性不足について具体的な説明があったものの、それが事実と異なる場合には、その旨を説明するべきでしょう。
労働者と使用者で認識の共有が図れない場合には、使用者がいかなる根拠・裏付けに基づいて主張しているのかにつき確認をすることになります。
協調性不足については、言った言わないになりがちで、争いになった場合には他の従業員の証言などが提出されることになります。労働者と使用者との間の証拠収集能力に差があるため、労働者としても、争いになりそうな場合には発言や行動を記録に残しておくなどの対策を採ることも考えられます。もっとも、協調性不足が指摘されている状況ですので、いかなる方法により記録に残すかについては、慎重に検討するべきでしょう。例えば、使用者からやめるように言われても録音をし続けるような方法は、労働者に不利益に考慮される場合があります。
ポイント3:事実に沿う場合には改善に努める
使用者が指摘した具体的な事実が自らの認識とも合致する場合には、今後はそのような行動をしないよう改善に努めることになります。
解雇された場合に「やるべきこと」と「やってはいけないこと」は、以下の動画でも詳しく解説しています。