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スラップ訴訟とは?意味や判例の定義と問題点3つをわかりやすく解説

スラップ訴訟とは?意味や判例の定義と問題点3つをわかりやすく解説
悩み

スラップ訴訟とは何かを知りたいと悩んでいませんか

相手方から提起された訴訟が不当なスラップ訴訟にあたるのではないかと感じている方も多いですよね。

スラップ訴訟とは、わかりやすく言うと、嫌がらせ等の目的で法律上認められないことが明らかな訴訟を提起することです。

言論や運動を威圧する目的、経済や時間や労力的に消耗させる目的、見せしめにする目的等で用いられることがあり、社会的にも問題となっています

例えば、記者会見やマスコミ記事への名誉棄損訴訟、法律上の権利行使への報復的損害賠償訴訟がその例です。

スラップ訴訟については、日本でも少しずつ裁判例が蓄積しており、裁判所の判断の傾向も整理されてきました

また、スラップ訴訟以外にも、これと同様の目的で行われる、刑事告訴や代理人弁護士への懲戒請求等についても、同じく問題となっています。

このようなスラップ訴訟の被害者になった場合にはすぐに弁護士に相談することがおすすめです

実は、近年スラップ訴訟では法外な損害賠償を請求されるケースが相次いでおり、私自身が対応する中でもこのような問題に直面するケースが増えてきています

スラップ訴訟がどのようなものかを知っていただくことで、嫌がらせ目的で行われる訴訟から身を守っていただければと思います。

今回は、スラップ訴訟とは何か、その意味や判例の定義を説明したうえで、問題点3つをわかりやすく解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事で分かること

この記事を読めばスラップ訴訟とは何かがよくわかるはずです。

スラップ訴訟とは何かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。

 

 

 

スラップ訴訟とは?判例の定義と意味をわかりやすく解説

スラップ訴訟とは、わかりやすく言うと、嫌がらせ等の目的で法律上認められないことが明らかな訴訟を提起することです。

英語のスペルはSLAPP(strategic lawsuit against public participation)であり、正確に訳すと「公的参加を排除するための戦略的訴訟」となります。(SLAPPというのは、平手打ちを意味する「slap」をかけた呼称と言われています。)

スラップ訴訟は、威圧訴訟、恫喝訴訟、嫌がらせ訴訟と呼ばれることが多いですが、これにとどまるものではありません

不当訴訟に関するリーディングケースとなる判例は、「訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係…が事実的、法律的根拠を欠くものであるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるとき」と判示しています(最高三小判昭和63年1月26日最高裁判所民事判例集42巻1号1頁)。

スラップ訴訟のイメージをよりかみ砕いて説明すると、以下のとおりです。

訴訟の提起自体は、その請求が認められるかどうかにかかわらず、誰でも行うことができます

裁判を受ける権利というものが憲法上保障されているためです。

裁判を受ける権利

これを利用して、嫌がらせ等の目的で、到底認められるはずがない法外な請求が行われることがあります

例えば、企業や法人等が自己に不都合な発言を行う者に対して、これらの発言を抑圧する目的で、根拠なく数億円の損害賠償を請求すると言った場合です。

嫌がらせ目的の法外な請求

これによって、スラップ訴訟を提起されたものは、経済的・時間的・肉体的に疲弊し、言論や運動が抑圧されることになります

スラップ訴訟が提起されると…

~スラップ訴訟と公的参加の排除~

これまでスラップ訴訟は、公的参加を排除するという文脈において論じてこられてきました。

そのため、「表現の自由」と「裁判を受ける権利」の対立という形で、問題点が生じるケースが多く存在しました。

しかし、近年では、公的参加を排除するという目的ではなく、個人間による報復や嫌がらせなどの目的で、不当訴訟が提起されるケースも増えてきています

このようなケースであっても、訴訟への対応に費用や労力、時間を要することからすれば、スラップ訴訟と同様、訴えの提起自体が不法行為を構成することがあります

スラップ訴訟が提起される目的と問題点3つ

スラップ訴訟は、戦略的に用いられるものであり、法律上認められないことが明らかな場合であっても、法的な権利の実現とは別の目的のもとに提起されます

スラップ訴訟を提起する者にとっては、訴訟が認められるかどうかは関心事項ではなく、これを提起して、訴訟係属させること自体で目的が達成されることになります

例えば、スラップ訴訟を提起される目的と問題点を3つ整理すると以下のとおりです。

・威圧効果
・消耗効果
・見せしめ効果

スラップ訴訟が提起される目的と問題点3つ

それでは順番に説明していきます。

威圧効果

スラップ訴訟が提起される目的及び問題点の1つ目は、威圧効果です。

法外な損害賠償により、スラップ訴訟を提起された者を不安な気持ちにさせ、これ以上の言論や運動、発言等が委縮されることになります

また、法外な損害賠償請求訴訟を提起するというような警告の文書を送る場合も同様に威圧効果がもたらされることになります

例えば、あなたがある企業のパワハラ問題を告発したところ、これが週刊誌に取り上げられ、これ以上活動を続けるのであれば、5000万円の損害賠償を請求すると言われたとしましょう。

万が一、あなたは5000万円なんて大金を支払うことになってしまえば、今後の生活もできなくなってしまいます。

そうすると、仮に損害賠償請求が認められない可能性が高いと感じていても、紛争に巻き込まれたくないと考え、これ以上、その企業と関わるのを避けることを選ぶ方も多いでしょう。

そのため、スラップ訴訟を提起されることによって、威圧されることになるのです。

消耗効果

スラップ訴訟が提起される目的及び問題点の2つ目は、消耗効果です。

スラップ訴訟が提起されることにより、被告とされた者は、代理人弁護士を付けるための費用、反論のために事実関係を整理し証拠を集める時間を消耗することになります

そして、これに伴い、肉体的精神的疲労も蓄積されていきます

このようにスラップ訴訟を提起された被告は、仮に請求を退けたとしても、多大な不利益を被ることになります。

例えば、あなたが1億円の損害賠償請求を提起された場合において、完全に勝利して請求を0円に抑えたとしても、旧弁護士報酬基準に従うと、弁護士費用は1107万0000円(着手金は369万円、報酬金は738万円)となります。

また、請求を退けるためには反論を行わなければいけないので、時系列等を整理して事実関係を具体的に摘示し、これの根拠となる資料を探すことになります。そして、訴訟については第1審のみで1年程度は要します。

そのため、スラップ訴訟を提起されること自体によって、提起された者は消耗することになります。

見せしめ効果

スラップ訴訟が提起される目的及び問題点の3つ目は、見せしめ効果です。

スラップ訴訟が提起されることにより、他の者も関わり合いになることを避けようとして、言論や運動が委縮することになります

例えば、ある大企業の経営方針について批判的な意見を述べた者が、当該企業から1億円の損害賠償を請求されたとします。

そうすると同様の意見を持っている者が多数いたとしても、自分も紛争に巻き込まれるのではないかと畏怖して、関わり合いになるのを避けることになります。

そのため、見せしめ的な目的で一部の者に対して、法外な請求が行われることがあります。

 

 

 

スラップ訴訟となりうるケース3つ

スラップ訴訟が問題とされることが多いケースとしては、例えば以下の3つがあります。

ケース1:記者会見やマスコミ記事等への名誉棄損訴訟
ケース2:SNSへの投稿に対する名誉棄損訴訟
ケース3:法律上の権利行使への報復的損害賠償訴訟

スラップ訴訟となりうるケース3つ

ただし、いずれのケースについても、事実及び法律の根拠があって行われるのであれば、スラップ訴訟ではないこともあることに留意が必要です

それでは各ケースについて順番に説明していきます。

ケース1:記者会見やマスコミ記事等への名誉棄損訴訟

スラップ訴訟となりうるケースの1つ目は、記者会見やマスコミ記事等への名誉棄損訴訟です。

信用が低下して損害を被ったなどとして、高額な損害賠償が提起されるケースがあります

例えば、記者会見やマスコミ記事等により客観的な事実に合致する内容が発信された場合において、算定根拠を明らかにしないままに高額の損害賠償を請求されるようなケースです。

ケース2:SNSへの投稿に対する名誉棄損訴訟

スラップ訴訟となりうるケースの2つ目は、SNSへの投稿に対する名誉棄損訴訟です。

これについてもケース1と同様で、信用が低下して損害を被ったなどとして、高額な損害賠償が提起されることがあります

例えば、投稿の内容が客観的な事実に合致していて、貶めるような目的ではなく公益的な見地から投稿した場合において、算定根拠を明らかにしないままに高額の損害賠償を請求されるようなケースです。

ケース3:法律上の権利行使への報復的損害賠償訴訟

スラップ訴訟となりうるケースの3つ目は、法律上の権利行使への報復的損害賠償請求訴訟です。

ハラスメントや長時間残業、不当解雇等に対して問題提起をしたような場合に、会社側が労働者に高額の損害賠償を請求するなどと申し向けるような場合です

例えば、労働者が会社に対して、長時間残業に対する残業代が未払いであることを指摘して、正当な残業代を支払うように求める訴訟を提起したところ、十分な根拠もなく、業務態度などを理由に数百万~数千万円の損害賠償を請求してくるケースです。

会社から損害賠償請求されたらどうすればいいのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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~社会的な注目を集めることを目的とした訴訟~

近年では、上記に見たスラップ訴訟以外にも、知名度や影響力のある者を被告として訴訟を提起することで社会的な注目を集めようとする類型の不当訴訟が増えてきました

例えば、フォロワーや登録者数が多い人物や政治家、芸能人、公的団体等に対して、法律上認められないことが明らかな訴訟を提起して、その状況をリアルタイムでSNS等に発信する手法です。

社会的な関心を集め認知度を上げるために提起される訴訟なので、請求自体が認容されなくても、訴訟を提起した者の目的は達成されてしまいます。この点はスラップ訴訟と同様です。

現在の日本では、裁判所に印紙代さえ納めれば簡単に訴訟を提起できてしまう反面、不当訴訟へのペナルティはほとんどありません

仮に、不当訴訟を理由に損害賠償が認められても数十万円~数百万円程度であり、不当訴訟による訴求効果によるメリットの方が上回ってしまっている状況です。

そのため、今後も、このような不当訴訟による問題が増加していく可能性があります。

他方で、日本では裁判を受ける権利が保障されていますので、訴訟提起に大きなペナルティを課すことは、裁判を行うことへの委縮効果を生んでしまいます

従って、このような裁判を受ける権利にも配慮しつつ、判例の見直しや法律の整備によって、不当訴訟を利用して利益を得ることを予防するような、仕組みを作っていくことが望まれます

スラップ訴訟が問題となった判例

スラップ訴訟が問題となった判例を整理すると、例えば、以下のものがあります。

スラップ訴訟の判例5つを整理-2

スラップ訴訟に関する事例については、以下の記事で詳しく解説しています。

スラップ訴訟の事例(判例)5つを整理|最新事例の動向とブログ2選
スラップ訴訟の事例(判例)5つを整理|最新事例の動向とブログ2選スラップ訴訟に対する社会的な関心が高まっており、ニュースやテレビ番組でも「スラップ訴訟」という単語を聞くことが増えてきました。今回は、スラップ訴訟の事例(判例)5つを整理したうえで、最新事例の動向とおすすめのブログ2選を紹介します。...

 

 

スラップと同様の目的で行われる訴訟以外の手口2つ

スラップ以外にも、嫌がらせ等の目的で行われる手口があります

訴訟の提起以外にも、威圧や消耗といった目的を達成する方法が存在してしまっているためです。

例えば、スラップと同様目的で行われる訴訟以外の手口としては以下の2つがあります。

手口1:刑事告訴
手口2:懲戒請求

スラップと同様の目的で行われる訴訟以外の手口2つ

それでは、各手口について順番に説明していきます。

手口1:刑事告訴

スラップと同様の目的で行われる訴訟以外の手口の1つ目は、刑事告訴です。

名誉棄損などを理由に刑事告訴を行う旨を申し向けるなどによって、発言や運動を委縮させる方法です。

発言や運動を行う際には、当該発言や運動の根拠となる事実が真実であると信じるに足る裏付けをもって行っていく必要があります

手口2:懲戒請求

スラップと同様の目的で行われる訴訟以外の手口の2つ目は、懲戒請求です。

代理人弁護士について、弁護士会に懲戒を請求するなどの方法で、負担を強いられます

また、代理人弁護士が懲戒に対して反論するために手持ちの証拠等を用いた反論をせざるを得なくなることがあったり、依頼者との信頼関係にも亀裂が入ったりする問題点があります

スラップ訴訟を提起された場合には弁護士に相談するのがおすすめ

スラップ訴訟を提起された場合には、スラップ訴訟への対応を得意とする弁護士へ相談することをおすすめします。

スラップ訴訟に関する議論は、日本では未だ発展途上の段階にあり、判例や学説等の理論が十分に整理されていない段階にあります。

どのような訴訟がスラップ訴訟に該当するのか、どのように反論していくべきかについては、専門性の高い内容となっています

また、発言や運動、権利行使を行う際に、どのようにして反撃されないように防御をしていくのかということについても、事前に法律家の助言を受けておくべきです。

スラップ訴訟を得意とする弁護士に相談すれば、これらの事項につき適切に助言を受けることができます。

そのため、スラップ訴訟を提起された場合には、スラップ訴訟への対応を得意とする弁護士へ相談することがおすすめなのです。

 

 

 

スラップ訴訟への対応はリバティ・ベル法律事務所にお任せ

スラップ訴訟への対応は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。

スラップ訴訟への対応は専門性が高く、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません

請求に事実上又は法律上の根拠があるか否か分析したうえで、適切に反論を講じていく必要があり、請求が拡大されることを防ぐために防御を図っていく必要もあります。

リバティ・ベル法律事務所では、スラップ訴訟への対応に注力しており、日々、知識やノウハウを蓄積して、最高の弁護を目指しております。

スラップ訴訟への対応については、相談者の負担を軽減するため、初回相談無料としておりますので、お気軽にご相談ください。

まとめ

以上のとおり、今回は、スラップ訴訟とは何か、その意味や判例の定義を説明したうえで、問題点3つをわかりやすく解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

・スラップ訴訟とは、わかりやすく言うと、嫌がらせ等の目的で法律上認められないことが明らかな訴訟を提起することです。

・スラップ訴訟を提起される目的と問題点を整理すると、威圧効果・消耗効果・見せしめ効果などがあります。

・スラップ訴訟が問題とされることが多いケースとしては、例えば以下の3つがあります。
ケース1:記者会見やマスコミ記事等への名誉棄損訴訟
ケース2:SNSへの投稿に対する名誉棄損訴訟
ケース3:法律上の権利行使への報復的損害賠償訴訟

・スラップと同様目的で行われる訴訟以外の手口としては以下の2つがあります。
手口1:刑事告訴
手口2:懲戒請求

・スラップ訴訟を提起された場合には、スラップ訴訟への対応を得意とする弁護士へ相談することをおすすめします。

この記事がスラップ訴訟とは何かを知りたいと考えている方の助けになれば幸いです。

以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。

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弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、区民ニュース2023年8月21日
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