不当解雇・退職扱い

不倫を理由とする懲戒処分 -社内不倫や取引先関係者・顧客との不倫-

 使用者は、労働者が不倫をしていることを理由として懲戒処分をすることは許されるのでしょうか。
 不倫問題については、私生活上の行為としての側面があるため、直ちに懲戒処分が許されるわけではなく、その事案ごとに検討することが必要となります。
 今回は、社内不倫や取引先関係者・顧客との不倫を理由とする懲戒処分について解説します。

私生活上の非行と懲戒処分

 私生活における労働者の行為について、懲戒を行うことができるのは、それが企業秩序の維持の観点から許されないような場合に限られます。
 そのため、会社と何ら関係のない異性との不倫行為については、通常、懲戒の対象にはなりません。ただし、不倫相手が同僚の配偶者であったような場合には、その同僚との間に不和が発生するおそれがあり、企業秩序に関わりますので、下記の社内不倫と類似の問題が生じます。

私生活上の非行を理由とする解雇-私生活を理由とする解雇は許されるのか-労働者の私生活を理由に解雇することは許されるのでしょうか。私生活は会社とは離れた労働者のプライベートな時間です。今回は、私生活上の非行を理由とする解雇について解説します。...

社内での不倫

 では、社内での不倫(同じ会社の従業員同士の不倫)は、懲戒の対象になるのでしょうか。
 確かに、職場内における不倫関係が判明すれば、企業秩序に影響があるともいえそうです。しかし、社内不倫についても、通常は、私生活上の範囲の行為として行われるため原則として懲戒の対象にはなりません(旭川地判平元.12.27労判554号17頁[繁機工設備事件])。
 例外的に、懲戒処分の対象になるのは、例えば、職場で不埒な行為を行っていた場合や、当該労働者の役職が上位で会社の信用への影響が大きいような場合に限定されます
 また、懲戒の対象になる場合であっても、懲戒解雇は厳格にすぎますので、直ちにこれを行うことは相当性を欠くものと考えられます。通常は、まず当該労働者の配転を行うことで職場秩序の回復をすることになります。

旭川地判平元.12.27判時1350号154頁[繁機工設備事件]

 「社内の秩序、風紀を乱した」との就業規則の規定は、「企業の運営に具体的な影響を与えるものにかぎる」として、社内不倫自体は、水道工事業の有限会社の経理事務担当の女性労働者の「地位、職務内容、交際の態様、会社の規模、業態等に照らして」「職場の風紀・秩序を乱し、その企業運営に具体的な影響を与えた」とはいえないとして、懲戒解雇が無効とされています。

取引先関係者や顧客との不倫

 次に、取引先関係者や顧客との不倫は、懲戒対象になるのでしょうか。
 これについて、取引先関係者や顧客との不倫については、自社の企業秩序が害されるのみならず、取引先や他の顧客からの信頼が失われ業務への支障が出るリスクもあります。また、顧客と不倫関係にあることが明らかになれば、企業の社会的評価も低下する可能性があります。そのため、取引先関係者や顧客との不倫については、単なる私生活上の非行とはいえず、懲戒処分の対象になることがあります
 もっとも、この場合であっても、直ちに懲戒解雇が許されるというわけではありません配転により対応することが可能かどうかや、害された企業秩序や信用の程度等を考慮し懲戒解雇が相当といえるかを検討することになります。

名古屋地決昭56.7.10労判370号42頁[豊橋総合自動車学校事件]

1 自動車学校卒業前
 「申請人と」H氏「との交際のうち、昭和五四年三月一六日頃までのものは、自動車学校従業員と教習生との交際であり、右はスクールバス運行中に知り合つたことから始まり、同バス内で会話しているうち親密になり、更に駅前線に乗車させて貰つた謝礼の趣旨で申請人は飲食物の提供を受けており、これらを総合すると右交際は業務関連性が認められ、企業内の行為ということができる。」
 「そして指定自動車学校の既婚従業員と在籍中の女性教習生が親密な関係になることは、それ自体が不道徳的行為として非難される虞があるばかりかその従業員が地位を利用して女性教習生に交際を強要したのではないか、又は女性教習生が免許取得の便宜のため従業員にとり入つているのではないか、その結果教習課程で得られる法的特典たる仮免許検定、実技卒業検定等の試験の公正が損われるのではないか等他の教習生にあらぬ波紋と疑惑を生じさせ、もつて被申請人の職場規律、ないしは業務運営に関する教習生の信頼や評価を低下させる虞なしとしないのであつて、被申請人がかねてより従業員に対し、機会ある毎に女性教習生との関係については厳に公正であるべき旨指導しているのも右の理由によるものと解される。すると右指導は単なる道徳上の助言にとどまらず、被申請人会社における職場の規律にまでなつていたと解され、申請人が右指導に反して女性教習生と親密な交際を始めたことは右規律違反であり、しかも右交際が主として勤務時間外に、企業施設外で行われたものではあるが、前記の如く業務関連性が認められる以上、企業内の非行として評価すべきものである。」
 「しかしながら交際の程度は喫茶店で数回話合うといつた程度であり、この時期においてはまだ噂が広まつていたとは認められず、勿論試験の公正が阻害された事実は認められないから、職場規律違反ではあるが顕著なものではなく、またその結果、被申請人に財産上の損害は勿論業務阻害、取引阻害その他社会的評価の低下毀損等の損害が生じたものとも認められない。」
 「すると、右時期における申請人と」H氏「との交際は就業規則第七五条第一号に該当しない。
2 自動車学校卒業後
 「申請人と」H氏「との交際のうち、昭和五四年三月中旬以降のものは、」H氏「が本件自動車学校を卒業し免許試験にも合格した後のものであり、本件自動車学校との関係がなくなつた後の交際であるうえ、申請人についていえば、勤務時間外かつ企業施設外での交際であるから、一私人との交際というべく、右は企業外の行為ということができる。」
 「そこで右交際によつて申請人に『損害』が生じたか否かにつき判断するに、前認定によると、右期間の交際によつて申請人は」H氏「と情交関係に陥り、近隣の人々の噂となつたこと、」H氏「の親戚の者から苦情が持込まれ、社内班長会議でも問題となり、学校案内所からも苦情が申込まれたこと、行為の性質、態度からみて申請人の所為は被申請人と関係のない私生活上の行為であるとの良き理解が得られるとも考えられないことなどを総合すると、その結果、被申請人の社会的評価の低下並びに企業秩序の紊乱が生じたと認めるのが相当である。また教習生の入校が昭和五四年四月以降減少しており、そのうち何名かは申請人の本件所為の影響と認められることは前認定のとおりであるから、被申請人にとつては現実に会社取引上の損失が生じたものというべきである。すると、以上社会的評価の低下、企業秩序の紊乱、取引上の損失が、被申請人の損害として発生したものというべく、それらは多面的であるばかりでなく、その質的側面を考えると被申請人にとつてその損害は重大であるといわざるを得ず、右期間の申請人の所為は就業規則第七五条第一号に該当するといわねばならない。」
※就業規則第七五条第一号には、懲戒解雇事由として「故意又は重大な過失によつて会社に損害を与えたとき」と定められている。
3 権利濫用について
 「申請人の信用失墜行為は、被申請人の社会的評価の低下、企業秩序の紊乱及び取引上の損失をもたらしたが、前認定事実によると、社会的評価の低下、企業秩序の紊乱等は噂が原因となつたものであり、いわば一過性のものというべく、また取引上の損失も質的にはともかく、損害額として具体的に把握できないことが明らかであり、これを量的には過大に評価することができないこと、そして申請人と」H氏「との交際は、発端から問題化する過程を含めて」H氏「側に原因があり、」H氏「は申請人との関係では被害者とはなつていないこと、申請人が所属する被申請会社労働組合も女性教習生と従業員とのトラブルは企業経営に悪影響が出ることを理解しており、申請人若しくは他従業員につき同種事件の再発の虞は少いと考えられること等が認められ、これら諸事情を総合すると、申請人の右所為は懲戒解雇事由に該当するが、これを理由に申請人を懲戒解雇にすることは著しく妥当を欠くものというべきである。」

大阪地判平9.8.29労判725号40頁[学校法人白頭学院事件]

1 懲戒事由該当性について
 「教育者たるものには教育者にふさわしい高度の倫理と厳しい自律心が要求されているところ、…教育者としての地位にあり結婚して子供もありながら、真摯な愛情に基づくわけでもなく、生徒に対する部活動の指導の中で知り合った当該生徒の母親と情交関係を繰り返していた原告の行為は、社会生活上の倫理及び教育者に要求される高度の倫理に反しており、被告の勤務規定三一条が懲戒事由として定める『教職員としての品位を失い、学院の名誉を損ずる非行のあった場合』に該当するということができる。」
 「なお、原告は、生徒の母親と教師が交際することは、何ら非難される行為ではない旨主張するが、子供の教育という観点からは、毎日のように指導を受けていた妻子ある教師と自分の母親が情交関係を持っていたことを知った生徒が受ける打撃は計り知れないものがあり、たとえ事後に原告の配偶者が宥恕したとしても、原告の行為は社会通念上許されるものではないというべきであって、原告の右主張は採用できない。」
2 懲戒権濫用の有無
 「前記一認定事実によれば、教師には生徒の保護者と協力して生徒の健全な育成を目指すことが期待されるところ、原告は妻子がありながら原告の指導する生徒の母親と情交関係を持ったものであって、原告の行為は単なる私生活上の非行とはいえず、社会生活上の倫理及び教育者に要求される高度の倫理に反しており、教職員としての品位を失い、被告の名誉を損ずる非行に該当すること、月子の子供二人と、二郎の兄の子供は、三人とも被告の中学校に通い被告サッカー部に所属していたが、平成八年三月末をもって被告の中学校を退学しており、子供らに対する教育上の悪影響が心配されること、被告は、その生徒のほとんどが韓国籍を有し、在日韓国人の子女であるか韓国企業の日本駐在員の子女であって、在日韓国人団体、在日韓国人篤志家、韓国政府から多額の授助を受けている等の民族的特色を有しているところ、韓国刑法は姦通罪を規定しているなど、韓国においては儒教的な性的倫理観・道徳観が強いことから、原告の行為は、被告がその基盤とする韓国人社会からの被告に対する信用を傷つけるものであること、校長が、二郎に対する対応等事後処理を余儀なくされ、警察から事情聴取を受け、韓国政府から監督不行き届きを指導されたことに照らすと、原告が問われるべき責任は軽いものとはいえない。なお、原告は、被告の民族的特殊性を過度に強調することは相当ではない旨主張するが、前記一認定事実、原告本人によれば、原告は被告の民族的特殊性を十分了解した上で被告に就職したことが認められ、被告の民族的特殊性を事情として考慮することは許されるというべきである。」
 「右によれば、花子が原告を宥恕していること、原告と月子の関係の発覚時には、その関係が終了していたこと、懲戒解雇の意思表示時点では、右発覚時より約七か月が経過していたこと等原告に有利な点を考慮しても、原告に対する懲戒解雇が相当性を欠き懲戒権を濫用したものとは認めることはできない。」
 「なお、原告は、被告の平成八年七月一九日本件第三回口頭弁論期日でした懲戒解雇の意思表示は、原告の提起した本件訴訟の報復として行われたものであり、懲戒権の濫用であって無効である旨主張するが、原告の右主張は、以上の認定事実に照らして採用することができない。」

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