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辞めた会社から損害賠償請求!?請求書がきた場合の正しい4つの対応

辞めた会社から損害賠償請求!?請求書がきた場合の正しい4つの対応
悩み

辞めた会社から損害賠償請求をされて困っていませんか

いきなり高額の請求書が届いたら焦りますよね。

辞めた会社から損害賠償請求されることは、珍しいことではありません

例えば、辞めた会社から損害賠償請求される例として多いケースは以下のとおりです。

例1:引継ぎをせずにいきなり辞めた場合
例2:業務上会社に重大な損害を与えた場合
例3:無断欠勤への対応に費用を要した場合
例4:不当な態様により引き抜きをした場合
例5:会社から詐取・横領した場合

辞めた会社から損害賠償請求の損害賠償請求については、当然無条件に認められるわけではなく、厳格な条件があります。

損害賠償請求された場合には、すぐに振り込まずに冷静に対処していくことが重要です。

一度、振り込んでしまうと、たとえその金額が適正ではなかったとしても、取り戻すことは簡単ではありません

実は、辞めた会社からの損害賠償請求書には、当初、過大な金額が記載されていることが多く、適正な金額とはかけ離れたものになっていることも珍しくないのです

この記事をとおして、辞めた会社に過大な損害賠償の支払いをしてしまう方が少しでも減れば幸いです。

今回は、辞めた会社から損害賠償請求について、請求書がきた場合の正しい4つの対応を解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事で分かること

この記事を読めば、辞めた会社から損害賠償請求をされたらどうすればいいのかがよくわかるはずです。

       

辞めた会社から損害賠償請求されることも珍しくない

辞めた会社から損害賠償請求されることも珍しくありません

退職後、ある日、いきなり会社から損害賠償を請求するとの請求書が送られてくるのです。

例えば、以下のような請求書が送られてくることがあります。

損害金のお振込みのお願い

私が多くの労働相談を受ける中でも、最近、このような請求を受けたとの相談が増えてきています。

中には労働者に落ち度があるケースも存在しますが、それを考慮しても損害金額が過大であると感じることが多いです。

よくある辞めた会社からの損害賠償請求の例5つ

辞めた会社から損害賠償請求されるケースには、一定の傾向があります

何も原因なく損害賠償請求されるということはありません。

例えば、辞めた会社から損害賠償請求される例としては以下のとおりです。

例1:引継ぎをせずにいきなり辞めた場合
例2:業務上会社に重大な損害を与えた場合
例3:無断欠勤への対応に費用を要した場合
例4:不当な態様により引き抜きをした場合
例5:会社から詐取・横領した場合

よくある辞めた会社からの損害賠償請求の例5つ

 

それでは、順番に説明していきます。

例1:引継ぎをせずにいきなり辞めた場合

辞めた会社から損害賠償請求される例の1つ目は、引継ぎせずにいきなり辞めた場合です。

労働者には信義則上の引継ぎ義務があるとされています。そのため、引継ぎ自体を一切拒否すると、義務違反として損害賠償を請求されます

また、期間の定めのない労働者は、民法上、2週間以上前に退職を申しでなければなりません。会社の承諾があれば別ですが、一方的に即日で退職するようなことは通常許されないのです。

最近は、退職代行などを使って強引な退職の仕方をする方も増えてきており、損害賠償などのトラブルとなることもあります。

例2:業務上会社に重大な損害を与えた場合

辞めた会社から損害賠償請求される例の2つ目は、業務上会社に重大な損害を与えた場合です。

労働者が業務を行っていれば、ミスや事故により会社に損害を与えてしまうこともあるでしょう。会社の規模によっては莫大な損害となってしまうこともあります。

会社によっては、この損害を労働者に負担するよう求めてくることがあるのです

中には、トラブルになった際に、数か月、数年前のミスや事故を蒸し返してくる会社もあります。

例3:無断欠勤への対応に費用を要した場合

辞めた会社から損害賠償請求される例の3つ目は、無断欠勤への対応に費用を要した場合です。

労働者の方の中には、やる気が出ないなどの理由で、無断で欠勤をする方がいます。

また、上司とのトラブルなどで働きたくなくなったなどとの理由で、早退したり、欠勤したりする方もいます。

このような場合、「人員を補充するための費用」や「取引先に生じた損失の補てん費用」などの損害が生じることになります

そのため、無断欠勤への対応に要した費用を賠償するように請求されることになります。

無断欠勤を理由とする解雇については以下の記事で詳しく解説しています。

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無断欠勤をした従業員への損害賠償について、企業側の視点は以下の記事で詳しく解説しています。

無断欠勤による解雇は14日が相場!企業としての正しい対応手順4つ

例4:不当な態様により引き抜きをした場合

辞めた会社から損害賠償請求される例の4つ目は、不当な態様により引き抜きをした場合です。

単なる転職の勧誘に留まるようであれば違法とはなりません。しかし、その域を超えて、社会的相当性を逸脱し極めて背信的方法で行われた場合には、違法となります

そのため、不当な態様により引き抜きをした場合には、それによって生じた損害の賠償を請求されることになります。

従業員の引き抜きについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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例5:会社から詐取・横領した場合

辞めた会社から損害賠償請求される例の5つ目は、会社から詐取・横領した場合です。

会社から詐取・横領した場合には、犯罪となるだけではなく、それによって生じた損害については当然賠償しなければなりません

例えば、交通費の不正受給や残業の不正申請などについても、損害賠償を請求されることがあります。

従業員による横領について企業側の視点は、以下の記事で詳しく解説しています。

従業員による横領と懲戒解雇|発覚後の対処手順4つと懲戒解雇通知書

       

辞めた会社からの損害賠償請求には厳格な条件がある

辞めた会社から労働者への損害賠償請求には厳格な条件があります

法律上定められた条件を満たさなければなりませんし、会社は労働者の行為により利益を得ている以上損失だけすべて労働者に負担させるというのは不公平であるためです。

具体的には、以下のような条件を満たしていることが必要となります。

条件1:損害との間に因果関係が必要
条件2:業務上のミスや事故には重大な過失が必要
条件3:信義則上労働者が負担すべき範囲内であることが必要

それでは、順番に解説していきます。

条件1:損害との間に因果関係が必要

辞めた会社からの損害賠償請求の条件の1つ目は、損害との間に因果関係があることです。

損害賠償を請求する以上は、当然会社に損害が生じて言いることが必要となりますし、その損害が労働者によって生じたものであることが必要です。

具体的な裏付けや根拠なく、信用が大きく毀損された、多大な労力を要した等の抽象的な主張にとどまる場合には、損害と因果関係が立証されているとは言えません。

条件2:業務上のミスや事故には重大な過失が必要

辞めた会社からの損害賠償請求の条件の2つ目は、業務上のミスや事故について重大な過失があることです。

通常の損害賠償請求であれば、通常の過失があれば損害賠償を請求することができます。

しかし、会社から従業員への損害賠償請求は、通常の過失では足りず、重大な過失まで必要とされる傾向にあります

会社は、労働者の労働によって利益を得ているため、これにより生じる危険も負担すべきであると考えられているためです。

例えば、従業員が注意を怠ったことにより会社に損害が生じた場合であっても、会社側も対策を講じることが怠ったなどの事情があり、従業員を強く責めることが難しいような場合には、損害賠償請求が否定されることがあります。

条件3:信義則上労働者が負担すべき範囲内であることが必要

辞めた会社からの損害賠償請求の条件の3つ目は、信義則上労働者が負担すべき範囲内であることが必要です。

事故やミスについて労働者に重大な過失があり損害賠償請求が認められる場合であっても、その全額を労働者に負担させることは信義則に反するとして制限されます。

信義則上労働者が負担すべき範囲は、おおよそ、損害金額の4分の1~2分の1程度とされる傾向にあります。

ただし、過失ではなく、故意に会社に損害を与えた場合には、とくに損害賠償の請求金額は制限されない傾向にあります。

辞めた会社から損害賠償請求された場合の正しい4つの対応

辞めた会社から損害賠償請求をされた場合には、適切に対処していく必要があります

一度振り込んでしまうと、請求金額が過大であったとしても、取り戻すことは簡単なことではありません

具体的には、辞めた会社から損害賠償請求をされたら以下のような対応をすべきです。

対応1:請求の理由や金額を確認する
対応2:未払いの賃金等がないかを確認する
対応3:免除や減額の交渉をする
対応4:弁護士に相談する

会社から損害賠償請求をされたらすべき対応4つ

対応1:請求の理由や金額を確認する

辞めた会社から損害賠償請求をされた場合の対応の1つ目は、請求の理由や金額を確認することです。

どのような理由で、いくらの金額を請求されているのかを確認しましょう。

請求されている理由についてあなたに心あたりがあるのか、本当にそのような高額の金額が発生したのかによっても、支払いに応じるべきか否かが変わってきます。

請求内容について心当たりがなかったり、不明確な部分があったりするようであれば、会社側に根拠となる資料を示すように求めていくことになります。

対応2:未払いの賃金等がないかを確認する

辞めた会社から損害賠償請求をされた場合の対応の2つ目は、未払いの賃金等がないかを確認することです。

会社から損害賠償請求をされているケースの中には、むしろ労働者が会社に対して請求をできる場合も多くあります。

例えば、残業代の未払い、根拠のない賃金の減額、不当な解雇等がされている場合などです。

以下の残業代チェッカーで登録不要、かつ、無料で簡単におおよその残業代を調べることができるので利用してみてください。

対応3:免除や減額の交渉をする

辞めた会社から損害賠償請求をされた場合の対応の3つ目は、免除や減額の交渉をすることです。

会社側の適正な金額からは乖離した金額を請求してきていることも多くあります。

仮にあなたが損害賠償を支払うべき場合であっても、適正な金額を超えて支払いに応じる必要はありませんので、免除や減額の交渉を行うことになります。

対応4:弁護士に相談する

辞めた会社から損害賠償請求をされた場合の対応の4つ目は、弁護士に相談することです。

会社側の請求が不当なものなのかどうか、労働者側から会社に対して請求できる権利があるか等については、法的な事項になります。

専門家である弁護士でなければ正確な見通しを判断することができず、適切な方針を立てることも難しいでしょう

そのため、会社から損害賠償を請求された場合には自分だけで解決しようとするのではなく、弁護士に相談することが大切です。

       

【補足】辞めた会社から損害賠償請求されないための上手な辞め方

辞めた会社から損害賠償請求をされないためには、「辞め方」が大切です

辞めた会社からの損害賠償請求は、退職時のトラブルが引き金になっていることが非常に多いのです。

具体的には、辞めた会社から損害賠償請求をされないためには、以下の4つを守ってください。

辞め方1:2週間以上前に退職を告げる
辞め方2:出勤したくないなら有給休暇を使う
辞め方3:引継ぎには協力する
辞め方4:データを削除しない

辞めた会社から損害賠償請求されないための上手な辞め方

それでは、順番に解説していきます。

辞め方1:2週間以上前に退職を告げる

辞めた会社から損害賠償請求をされないためには、2週間以上前に退職を告げることが大切です。

期間の定めのない労働者は、民法上、2週間以上前に退職を申しでなければならないためです。

会社の承諾を得て円満に退職することができれば何よりですが、会社からの承諾が得られない場合には2週間以上の期間をおいて書面等の証拠が残る形で退職を告げましょう。

辞め方2:出勤したくないなら有給休暇を使う

辞めた会社から損害賠償請求をされないためには、出勤したくないなら有給休暇を使うことが大切です。

2週間以上前に退職を告げても、退職日まで理由もなく欠勤すれば無断欠勤であるとして責められるリスクがあります。

そのため、出勤したくない場合には、有給休暇を使用しましょう。

辞め方3:引継ぎには協力する

辞めた会社から損害賠償請求をされないためには、引き継ぎに協力することが大切です。

労働者には信義則上、引き継ぎの義務があるためです。

会社の人と会うことが決まずい場合には、例えば、紙に引き継ぎ内容をまとめたり、メールに引き継ぎ内容をまとめたりして、送付する方法もあります。

辞め方4:データを削除しない

辞めた会社から損害賠償請求をされないためには、データを削除しないことが大切です。

退職の際に会社を困らせる目的で、「WORDデータ」や「エクセルデータ」などを削除する方がいます。

しかし、業務時間中にデータを作成したのであれば、そのデータについては当然会社側にも利用する権利があります

自分が作ったデータだからという理由で削除を行い紛争となるケースが非常に多いので注意しましょう。

会社から損害賠償請求されたらリバティ・ベル法律事務所にお任せ

会社から損害賠償請求をされた場合の対応は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。

人事労務問題については専門性が高く、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません

とくに会社からの高額な請求については、事実上又は法律上の根拠があるか否か分析したうえで、適切に反論を講じていく必要があります。

リバティ・ベル法律事務所では、不当訴訟への対応に注力しており、日々、知識やノウハウを蓄積して、最高の弁護を目指しております

会社から損害賠償請求への対応については、相談者の負担を軽減するため、初回相談無料としておりますので、お気軽にご相談ください。

       

まとめ

以上のとおり、今回は、辞めた会社から損害賠償請求について、請求書がきた場合の正しい4つの対応を解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

・辞めた会社から損害賠償請求されることも珍しくありません。

・辞めた会社から損害賠償請求される例としては以下のとおりです。
例1:引継ぎをせずにいきなり辞めた場合
例2:業務上会社に重大な損害を与えた場合
例3:無断欠勤への対応に費用を要した場合
例4:不当な態様により引き抜きをした場合
例5:会社から詐取・横領した場合

・辞めた会社からの損害賠償請求には以下のような条件があります。
条件1:損害との間に因果関係が必要
条件2:業務上のミスや事故には重大な過失が必要
条件3:信義則上労働者が負担すべき範囲内であることが必要

・辞めた会社から損害賠償請求をされたら以下のような対応をすべきです。
対応1:請求の理由や金額を確認する
対応2:未払いの賃金等がないかを確認する
対応3:免除や減額の交渉をする
対応4:弁護士に相談する

・辞めた会社から損害賠償請求をされないためには、以下の4つを守ってください。
辞め方1:2週間以上前に退職を告げる
辞め方2:出勤したくないなら有給休暇を使う
辞め方3:引継ぎには協力する
辞め方4:データを削除しない

この記事が辞めた会社から損害賠償請求をされて困っている方の助けになれば幸いです。

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弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、区民ニュース2023年8月21日
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