外資系企業から突然リストラを宣告されて困っていませんか?
外資系企業の人事評価はシビアであると覚悟していたとしても、いざその場面に直面すると冷静な対処ができない方も多いはずです。
外資系企業は、日本企業と異なり、定年まで一つの会社に勤め続けるという文化が希薄であるため、リストラについても冷酷な決断をする傾向にあります。
しかし、外資系企業といえども、日本でビジネスを行う以上は、日本の法律に拘束されることになりますので、安易なリストラは違法となる可能性が高いです。
実際、私が日々多くの解雇の事件の相談を受けている中でも、外資系企業にリストラされたとの相談が占める割合は多いですが、話を聞いてみると法律上はリストラが正当化される余地がない事案がほとんどです。
このような状況であるため、外資系企業に勤める労働者の方たちは、会社からリストラを仄めかされても慌ててはいけません。
その後のあなたの生活やキャリアを守るためには正しい手順で対処していくことが求められます。
間違っても、会社から示された退職合意書(separation agreement)にその場ですぐにサインしてはいけません。
一度、退職合意書(separation agreement)にサインしてしまうと、会社との交渉が難しくなってしまいますので、その後に弁護士にご相談いただいても対処できない可能性があります。
そこで、この記事をとおして、外資系企業のリストラがどのようなものであり、どのような点に気を付けて対処していかなければならないのかを伝えることができればと思い、執筆させていただきます。
今回は、外資系企業におけるリストラの実態と対処手順について解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば外資系企業からリストラを宣告された場合にどのように行動すればいいかがよくわかるはずです。
リストラについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次
外資系で多い突然のリストラの実態
外資系企業では、突然リストラを宣告されることがよくあります。
外資系企業が日本企業に比べてリストラを行うことが多い理由は、文化の違いです。
日本企業では終身雇用のもと定年まで一つの企業に勤め続ける文化がありますが、外資系企業ではアップオアアウトの考え方が強く出世できない者は企業から排除していく傾向にあります。
そして、外資系企業の日本法人も本社の意向には逆らうことができませんので、本社から解雇するように命じられたら、日本の法律では難しくても、それを実行せざるを得ないのです。
そのため、ある日外国の本社から日本法人に連絡が入り、突然リストラを宣告されるということが起こります。
具体的には、リストラを宣告される場合には以下のような流れとなることが一般的です。
流れ1:本社から日本法人にリストラの指示が入る
流れ2:リストラ対象となったことを宣告される
流れ3:自宅待機となり・定期的に面談が繰り返される
流れ4:解雇される
外資系でもリストラは違法となることが多い
外資系企業であっても、十分な理由なくリストラを行う場合には違法となることが多い傾向にあります。
なぜなら、外資系企業であっても、日本で事業を行う以上は、日本の法律が適用されるためです。
具体的には、日本ではリストラ(=整理解雇)を行う場合には、以下の4つの要素が必要となります。外資系企業がリストラを行う場合であってもこれは同様です。
要素1:経営上の必要性
要素2:解雇回避努力
要素3:人選の合理性
要素4:手続の相当性
リストラは、労働者側に落ち度がないにもかかわらず、会社側の都合で解雇するものであるため、通常の解雇に比べて、有効とされる条件が厳格なのです。
リストラの条件については、以下の記事で詳しく解説していますので読んでみてください。
裁判例(東京高判平25.4.24労判1074号75頁[ブルームバーグ・エル・ピー事件]】)も、外資系企業における解雇に関して、人事制度がいわゆる一般的な日本企業と異なることが、労働契約法16条に規定する解雇権の濫用の判断に影響しないと直ちに言い切ることもできないとしつつも、会社が主張する雇用文化の多様性は、単なる一般論にすぎず、個別具体的な事件における解雇事由の判断に影響を与えるようなものではないと判断しています。
外資系がリストラを行うケース4つ
外資系がリストラを行うケースとしては、例えば、以下の4つがあります。
ケース1:経営難による人件費削減
ケース2:能力不足
ケース3:部門廃止
ケース4:日本からの撤退
ただし、実際には、これらのケースのどれか一つに該当するというよりは、複合的となっていることが多いように感じます。
それでは、それぞれのケースについて見ていきましょう。
ケース1:経営難による人件費削減
外資系がリストラを行うケースの1つ目は、経営難による人件費削減です。
外資系のリストラの相談を受ける中でも、よく耳にするものです。
例えば、「外資系本社の経営が悪く、世界的に人員削減が行われている。日本からも人件費を〇%までカットするようにとの指示がされている。」といったケースです。
お給料が高い社員ほど対象となりやすい傾向にあります。
ただし、外国本社が経営難であると言っても、日本法人自体は経営難に陥っているわけではないということであれば、リストラは難しいでしょう。
あくまでも雇用契約については、外資系企業の日本法人との間で結ばれているためです。
また、人員削減というよりも人員の入れ替えのためにリストラを行っているケースも多く、単に安いお給料の労働者を雇うためにお給料の高い労働者を解雇することは違法となる傾向にあります。
加えて、経営難によるリストラについては、労働者に対して、経営状況に関する資料を開示したり、希望退職を募ったりなどの手続きが必要とされていますが、これがしっかりと行われている会社はほとんどありません。
ケース2:能力不足
外資系がリストラを行うケースの2つ目は、能力不足です。
会社が期待する能力に達していないなどと言われるケースです。
リストラの際に併用的に、能力不足の理由も付け加えられることが多い傾向にあります。
例えば、外資系企業全体の経営がよくなく世界的に人員削減を行っており、かつ、あなたの能力が期待されたものではなかったことから、あなたをリストラするというものです。
能力不足を理由に解雇を行う場合には、外資系企業ではPIPという業務改善プログラムを組まれることが多く、そこで設定された目標を達成できないと解雇の際に材料とされます。
ただし、PIPで設定される目標については、リストラありきで過大なものとされていることもあります。
そのため、目標を達成できなかったとしても、その理由をしっかりと説明することができれば解雇は違法となる可能性があります。
外資系のPIPについては以下の記事で詳しく解説しています。
ケース3:部門廃止
外資系がリストラを行うケースの3つ目は、部門廃止です。
成績の芳しくない部門を廃止するため、その部門に所属する従業員をリストラしようとすることがあります。
これについては、職種を限定する合意がされているなど他の部門への配置転換が難しい場合には、解雇の正当性が認められてしまうリスクがあります。
リストラを回避するという観点からは、他の部門への配置転換にも応じる意思があることを明確に示したうえで、証拠に残しておいた方が良いでしょう。
配置転換に応じる意向を示すと、大規模な外資系企業では、いくつかの部門へ面接などが設定されることになります。
どの部門からも配置転換を拒否されることが多いですが、このような申し出をしていたこと自体が労働者に有利な事情として機能することになります。
ケース4:日本からの撤退
外資系がリストラを行うケースの4つ目は、日本からの撤退です。
日本法人の成績が芳しくない場合に、部門廃止にとどまらず日本法人自体を消滅させてしまうパターンです。
日本法人自体が消滅してしまう場合には、解雇自体を争うことが難しくなってしまうケースもあります。
まずは具体的にどのような段取りで撤退する予定なのかを確認した方が良いでしょう。
外資系のリストラとパッケージ(特別退職金)相場
外資系は、リストラを行う際にパッケージの提案をしてくることがあります。
パッケージというのは、退職に応じることを条件とする特別退職金等の優遇措置のことをいいます。
先ほど説明したように、外資系企業であっても日本の法律が適用されますので、解雇を強行すると違法となることがあります。
また、外資系の本土において、解雇の際に補償金を支払う文化などがあることも少なくありません。
そのため、一定の金額を退職金として上乗せすることを条件に退職することに同意してもらおうとするのです。
外資系のリストラのパッケージ相場は、給料の3か月分~1年6カ月分程度であり、かなり幅があります。
パッケージについては、会社から提案がない場合もありますし、提案があっても最初は適正な金額よりも低いことが多いので、増額交渉を行うことになります。
ただし、パッケージ交渉は、法的な事項であり、労働問題の中でも専門性が高い分野です。
そのため、パッケージ交渉を多く取り扱っている弁護士に依頼して、代わりに交渉してもらうことをおすすめします。
外資系のパッケージ相場と増額交渉の方法については、以下の記事で更に詳しく解説しています。
外資系企業における退職勧奨のパッケージについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
外資系にリストラされそうになった場合の対処手順
外資系にリストラされそうになった場合には、冷静に対処することが大切です。
なぜなら、慌てて退職届を出してしまったり、退職合意書(separation agreement)にサインしてしまったりすると、パッケージ交渉は難しくなってしまうためです。
再就職までの十分な補償もないまま職を失うことになりかねません。
外資系にリストラされそうになった場合には、以下の手順で対処することがおすすめです。
手順1:働き続ける意思があることを示して退職合意書は持ち帰る
手順2:弁護士に相談する
手順3:会社に対して通知書を送付してもらう
手順4:パッケージ交渉をしてもらう
それでは順番に説明していきます。
退職勧奨された場合のNG行動と正しい対処法は、以下の動画でも詳しく解説しています。
手順1:働き続ける意思があることを示して退職合意書は持ち帰る
外資系にリストラされそうになった場合の対処手順の1つ目は、働く意思を示して退職合意書(separation agreement)を持ち帰ることです。
パッケージ交渉を行う前提として、あなたに働き続ける意思があることが必要となります。
なぜなら、パッケージは退職に応じたくない労働者を説得するために提示されるものであるため、既に退職したいとの意思を形成している労働者に提案する理由がないためです。
これまでも繰り返し説明しているように、退職合意書(separation agreement)については、その場ではサインせずに一度持ち帰るようにしましょう。
例えば、面談では、ひとまず、「私は、生活があるので、これからも御社で働きたいと考えています。退職合意書は専門家に相談したいので、一度持ち帰らせていただきます。」と述べるだけで十分です。
手順2:弁護士に相談する
外資系にリストラされそうになった場合の対処手順の2つ目は、弁護士に相談することです。
外資系のパッケージ交渉に力を入れている弁護士を探し、アポイントをとりましょう。
パッケージ交渉を依頼する弁護士を選ぶ際には、以下の3つの点を重視します。
・解雇及び退職勧奨へ注力していること
・キャリアや生活の相談にも親身になってくれること
・外資系企業とのパッケージ交渉の実績が豊富であること
弁護士に相談する際には、雇用契約書や給与明細、持ち帰ってきた退職合意書を持参するといいでしょう。
また、事前にPIPなどを受けていたのであれば、これも持っていきましょう。
必要な事実関係について弁護士がヒアリングしてもらい、方針や見通し、注意点、費用について、教えてもらうことができます。
手順3:会社に対して通知書を送付してもらう
外資系にリストラされそうになった場合の対処手順の3つ目は、会社に対して通知書を送付してもらうことです。
弁護士にパッケージ交渉を依頼したら、あなたの主張を書面に整理したうえで通知書として、会社に送付してもらいましょう。
通知書には、今後の連絡は全て弁護士にするように記載をするのが通常ですので、それ以降の交渉は、あなたに代わって弁護士が行うことになります。
そのため、あなたは定期的に行われる人事との面談から解放されることができます。
手順4:パッケージ交渉をしてもらう
外資系にリストラされそうになった場合の対処手順の4つ目は、パッケージ交渉をしてもらうことです。
通知書が会社に届くと、通常、会社側も弁護士をつけます。
後は、弁護士間で交渉することになりますので、あなたの意向や事実関係について弁護士から質問があった場合には回答するようにしましょう。
外資系でリストラされたその後|40代・50代でも大丈夫?
外資系でリストラされたその後については、私が相談を受けている中では、みなさん比較的スムーズに再就職できています。
40代~50代の方も相談も、特に再就職に苦労している様子はありませんでした。
退職合意後から就職活動を始めて、1~3か月くらいで、再就職の報告をいただけることが多いです。
外資系企業に勤めている方ですと、それなりのキャリアがある方が多いためかと思います。
もっとも、業界にもよりますので、やはり中には時間がかかってしまっている方もいます。
外資系でリストラされた後の再就職をスムーズに行いたい場合には、パッケージ交渉の際に在籍期間を延長する条項を入れるなども検討した方が良いでしょう。
在籍期間を延長すると、その期間失業保険はもらえなくなってしまいますが、面接などでも転職理由を説明しやすいですし、キャリアにブランクが空いてしまうのを防ぐことができます。
パッケージとしての在籍期間延長については、以下の記事で詳しく解説しています。
また、外資系企業によっては、パッケージの一部として転職サポートを付加してくれることがあります。退職の決め手にはならないでしょうが安心材料にはなるでしょう。
50代での外資系への転職については、「Apex」という外資系転職サイトの以下の記事が参考になりおすすめです。是非、見てみてください。
【外資系への転職】50代に求められるスキルや経験とは? | Apex(エイペックス) (apexkk.com)
外資系企業とのパッケージ交渉はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
外資系企業とのパッケージ交渉については、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
パッケージ交渉は、専門性が高い分野であるため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
解雇された場合の見通しを分析したうえで、あなたの意向を踏まえて、外資系企業の性質に応じて適切に方針を策定する必要があります。
リバティ・ベル法律事務所では、解雇や退職勧奨事件に力を入れており、特に外資系企業とのパッケージ交渉について圧倒的な知識とノウハウを蓄積しています。
外資系企業で働く労働者に関するリバティ・ベル法律事務所の解決実績の一部は以下のページで紹介しています。
解決事例 | 外資系労働者特設サイトbyリバティ・ベル法律事務所 (libertybell-tokusetu.com)
また、パッケージ交渉を含む退職勧奨対応については、依頼者の方の負担を軽減するために着手金無料、完全成功報酬としております。
初回相談は無料となっておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
以上のとおり、今回は、外資系企業におけるリストラの実態と対処手順について解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・外資系企業であっても、十分な理由なくリストラを行う場合には違法となることが多い傾向にあります。
・外資系がリストラを行うケースとしては、例えば、以下の4つがあります。
ケース1:経営難による人件費削減
ケース2:能力不足
ケース3:部門廃止
ケース4:日本からの撤退
・外資系のリストラのパッケージ相場は、給料の3か月分~1年6カ月分程度であり、かなり幅があります。
・外資系にリストラされそうになった場合には、以下の手順で対処することがおすすめです。
手順1:働き続ける意思があることを示して退職合意書は持ち帰る
手順2:弁護士に相談する
手順3:会社に対して通知書を送付してもらう
手順4:パッケージ交渉をしてもらう
この記事が外資系企業からリストラを宣告され悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。