不当解雇・退職扱い

パワーハラスメントと解雇

 パワーハラスメントはどのような場合に解雇事由になるのでしょうか。今回は、パワーハラスメントを理由とする解雇について解説します。

就業規則上の規定

 パワーハラスメントを理由に懲戒解雇される場合があります。就業規則などでは、以下のような規定がおかれている会社が多く見られます。

規定例

第〇条(職場のパワーハラスメント)
職務上の地位や人間関係などの職場内の優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。
第〇条(懲戒解雇)
労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第〇条に定める普通解雇、前条に定める減給、出勤停止とすることがある。
会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき(当該行為が軽微な違反である場合を除く。)。
第〇条、第〇条、第〇条、第〇条に違反し、その情状が悪質と認められるとき。

懲戒権濫用法理

 懲戒解雇は、①「懲戒することができる場合」において、②「客観的に合理的な理由を欠き」、③「社会通念上相当であると認められない場合」は、懲戒権の濫用として無効となります(労働契約法15条)。

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解雇の相当性

 パワーハラスメントを理由とする解雇の相当性は、以下の事情を考慮し判断します。

①業務上の必要性
②加害行為の悪質性
③被害の内容・程度
④加害者本人の反省の有無
⑤加害者に対する従前の注意指導の有無

【東京地判平28・11・16労経速2299号12頁[Y社事件]】
 「原告は,平成26年3月末に…ハラスメント行為により被告から厳重注意を受け,顛末書まで提出したにもかかわらず,そのわずか1年余り後に再度…ハラスメント行為に及んでおり、短期間に複数の部下に対するハラスメント行為に及んだ態様は悪質というべきである。また,原告による上記行為の結果,gは別の部署に異動せざるを得なくなり,fに至っては適応障害に罹患し傷病休暇を余儀なくされるなど,その結果は重大である。」
 「原告は,2度目のハラスメント行為に及んだ後も,自身の言動の問題性を理解することなく,あくまで部下への指導として正当なものであったとの態度を一貫して変えず,全く反省する態度が見られない。原告は,本人尋問において,1回目のハラスメント行為後のjらによる厳重注意について,『緩い会話』であったと評しており…,この点にも原告が自身の言動の問題性について軽視する姿勢が顕著に現れているというべきである。また,…自身の部下に対する指導方法は正当なものであり間違っていないという強固な信念がうかがわれ,原告の部下に対する指導方法が改善される見込みは乏しいと判断せざるを得ない。
 「このように,原告は,部下を預かる上司としての適性を欠くというべきである。」
 従って、「本件懲戒処分及び本件解雇は,客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当というべきである。」

【前橋地判平29.10.4労経速2329号9頁[群馬大学事件]】
 「原告は,〔1〕E講師に対する業務の適正な範囲を超えた指導,暴言のパワーハラスメント…、〔5〕N助教に対する業務の適正な範囲を超えた叱責,暴言等のパワーハラスメントを行った事実が認められ,これらの行為は,…懲戒事由に該当する。」
 「原告のパワーハラスメントはいずれも業務の適正な範囲を超えるものであるものの業務上の必要性を全く欠くものとはいい難い…ことからすれば,原告のハラスメント等の悪質性が高いとはいい難い。また,E講師が,平成24年5月12日に起立性調節障害,不安緊張状態の診断を受けた後,欠勤を余儀なくされたような事情はないし,N助教は,平成25年5月16日,神経症により約2週間の自宅療養を要する旨の診断を受け,欠勤するに至っているものの,証人尋問においては,欠勤した理由について,医師から『病欠をすることで相手の出方が変わるかもしれないし,とりあえず一度様子をみてはどうか』と言われた旨を供述しており,神経症により直ちに就労が制限される状態であったということができないことも考慮すべきである。さらに,原告は,過去に懲戒処分を受けたことがあることをうかがわせる事情はないし,…ハラスメントの一部を認め,反省の意思を示していたことも認められる。 」
 「そうすると,教職員に対する懲戒処分として最も重い処分であり,即時に労働者としての地位を失い,大きな経済的及び社会的損失を伴う懲戒解雇とすることは,上記懲戒事由との関係では均衡を欠き,社会通念上相当性を欠くといわざるを得ない。」

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弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、区民ニュース2023年8月21日
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