外資系企業からポジションクローズを告げられて焦っていませんか?
あまり聞きなれない言葉なので、どのように対処すればいいのか悩んでしまいますよね。
ポジションクローズとは、会社において特定の部門の役職等のポジションがなくなることをいいます。
本来的には、組織体制を最適化するために行われますが、特定の従業員を企業から排除するために狙い撃ち的に行われることもあります。
会社において自分の仕事がなくなってしまうと聞くと、会社の言うとおりに退職合意書(separation agreement)にサインするしか選択肢がないと感じてしまう方もいるでしょう。
しかし、実は、法律上は、ポジションクローズになったとしても、あなたが退職に応じる義務は全くありません。
むしろ、会社側はあなたを他のポジションに配置することを検討しなければならず、このような努力をせずに労働者を一方的に企業から排除することはできません。
そのため、労働者としては、ポジションクローズを告げられたとしても、今後の生活に不安がある場合には、安易に退職に合意するべきではないのです。
今回は、外資系企業におけるポジションクローズとは何かを説明したうえで、その対処法を簡単に説明していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めばポジションクローズを告げられた場合にどのように行動すればいいのかがよくわかるはずです。
ポジションクローズについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次
ポジションクローズとは
ポジションクローズとは、会社において特定の部門の役職等のポジションがなくなることをいいます。
例えば、「営業部」の「マネージャー」というポジションで働いていた方がいるとしましょう。
この方がポジションクローズを宣告される場合には、通常、会社において「営業部」の「マネージャー」というポジションをなくすという意味合いとなります。
外資系企業では、従業員とポジションの結びつきが強く、採用についてもポジションごとに行われます。例えば、ある事業を行う際に必要な能力や資質を明らかにした上で、それに見合う人材を採用しようとします。
これに対して、日系企業では、従業員とポジションの結びつきが希薄であり、採用後に適性に応じた業務を割り振る傾向にあります。係長、課長、部長などの役職についても、労働者個人との結びつきが強く、年功序列的に昇進していくことが通常です。
そのため、外資系業は、日系企業と異なり、「あなたの」ポジションがなくなることになったと従業員に宣告するのです。
~転職活動におけるポジションクローズ~
外資系企業では、転職活動においてもポジションクローズという言葉が使われることがあります。
転職活動におけるポジションクローズとは、当該ポジションにつき既に採用する人材を決めており、採用活動を打ち切っている状態のことをいいます。
つまり、そのポジションの募集は終了したという意味になります。
ポジションクローズとなるケース2つ
ポジションクローズを宣告されるケースとしては、以下の2つがあります。
ケース1:組織体制の変更
ケース2:狙い撃ち的な排除
それぞれのケースについて説明していきます。
ケース1:組織体制の変更
ポジションクローズとなるケースの1つ目は、組織体制の変更です。
組織の在り方を検討して合理的ではないポジションをなくすという、本来的な意味におけるポジションクローズとなります。
このような場合には、他のポジションへ移籍することを勧めてもらえることも多く、会社側も雇用の継続に協力的なことがあります。
ケース2:狙い撃ち的な排除
ポジションクローズとなるケースの2つ目は、狙い撃ち的な排除です。
特定の従業員を排除しようとして、ポジションクローズという理由が用いられることがあります。
このような場合には、あなたに用意できるポジションはもうないとして、他のポジションへの移籍の機会さえも与えられないことがあります。
ポジションクローズによる退職勧奨
ポジションクローズになる場合には、通常、退職勧奨が行われることになります。
退職勧奨というのは、会社があなたに自主的に退職するように促すものです。
法的には、会社は社会的相当性を逸脱しない範囲で退職勧奨を行うことができますが、労働者が退職勧奨に応じる義務はありません。つまり、退職勧奨を断ることも自由です。
例えば、ポジションクローズを宣告される場合には、ある日面談に呼ばれます。
そして、その面談においてポジションクローズとなる旨が告げられ、「他のポジションを探すか」又は「退職するか」を選ぶように言われます。
しかし、他のポジションを探す場合であっても、一定期間内にポジションを見つけられない場合には、退職になる旨を宣告されます。
具体的には、会社側は、あなたに退職合意書(separation agreement)にサインをするように求めてきます。
会社は、あなたに対して選択肢はないなどと告げて、退職合意書にサインをさせようとしますが、あなたがこれに応じる義務は全くありません。
そして、会社は、労働者にサインを拒まれた場合には、ポジションがなくなることのみを理由に解雇をすると違法となる可能性が高いため、配置転換や退職条件の提案を行わざるを得なくなるのです。
そのため、会社は、「退職勧奨に応じない場合には解雇する」、「あなたに選択肢はない」などの発言により、どうにかして退職合意書へサインさせようとしてきます。
退職勧奨された場合のNG行動と正しい対処法は、以下の動画でも詳しく解説しています。
ポジションクローズの場合の退職金
ポジションクローズにより退職する場合の退職金には2種類あります。
「通常の退職金」と「特別退職金(パッケージ)」です。
通常の退職金
通常の退職金とは、会社の退職金規程に従い、勤続年数と退職理由に応じて支給の有無及び金額が決定されるものです。
会社都合退職の場合には、自己都合退職の場合よりも、退職金の金額が優遇されている傾向にあります。
ポジションクローズの場合には会社都合の退職になるのが通常でしょうが、事前に退職金規程、退職合意書の退職理由の記載などをよく確認しておきましょう。
通常の退職金については、以下の記事で詳しく解説しています。
特別退職金(パッケージ)
特別退職金とは、労働者が退職に応じる条件として、会社側が特別に支給する退職金です。外資系企業では、パッケージと呼ばれることもあります。
特別退職金については、法的には、会社に支払い義務があるものではありません。
そのため、会社は、特別退職金を支払わなくても退職に応じる労働者に対しては、特別退職金の提案をしないこともあります。
特別退職金とは何かについては以下の記事で詳しく解説しています。
特別退職金については、以下の動画でも詳しく解説しています。
特別退職金の相場は、賃金の3か月分から1年半分程度です。
再就職までに必要な生活費の補填として3~6か月分、その他にこれまでの貢献度合いや勤続年数などに応じて0~1年分程度加算されることがあります。
特別退職金の相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
外資系企業における退職勧奨の特別退職金については、以下の動画でも詳しく解説しています。
ポジションクローズへの対処手順
ポジションクローズを告げられた場合には、冷静に対処しましょう。
焦って会社に言われるまま従ってしまうと、生活に困ることになりますし、キャリア上のブランクも空いてしまいます。
具体的には、ポジションクローズを告げられた場合には以下の手順により対処していくことがおすすめです。
手順1:ポジション変更に応じる意向を示す
手順2:退職合意書にサインしない
手順3:弁護士に相談する
手順4:パッケージ交渉を行う
それでは、各手順について順番に解説していきます。
なお、ポジションクローズに関する人事との面談については録音しておくことをおすすめします。
退職勧奨の録音については、以下の動画でも詳しく解説しています。
手順1:ポジション変更に応じる意向を示す
ポジションクローズを告げられた場合の対処手順の1つ目は、ポジション変更に応じる意向示すことです。
会社は、労働者を解雇する前に解雇を回避する努力をしなければなりません。
例えば、労働者が現実的に配置可能なポジションを挙げて、そのポジションへの変更にも応じる意向を示している場合には、会社はそのポジションへ変更して雇用を継続することができないかを検討しなければいけないのです。
これに対して、労働者がポジション変更には一切応じないとの意向を示していると、会社側は、労働者が現在のポジションに固執したため雇用を継続できなかったと主張することが可能となってしまいます。
そのため、まずは他のポジションへの変更についても応じる意思がある旨を示す必要があるのです。
労働者の給料を減額するには、理由が必要となります。
会社は、ポジションの変更を理由に給料を変更する場合であっても、賃金規程等により給料が変更となる理由を説明できなければなりません。
ポジションが変わる場合であっても、当然に給料の金額を変更することまで許されるわけではないのです。
特に、役職手当などについては給与体系上、ポジションと紐づけられていることも多いため減額の根拠があることもありますが、基本給の減額についてはポジションの変更のみで正当化することは容易ではありません。
また、仮に、賃金規程等により形式的な根拠があるとしても、例えば給料の金額が半分になるような大幅な減額は濫用として無効とされる傾向にあります。
そのため、ポジションの変更を受け入れる場合でも、根拠のない給料の減額や大幅な給料の減額については受け入れる必要はありません。
給料の減額については以下の記事で詳しく解説しています。
手順2:退職合意書にサインしない
ポジションクローズを告げられた場合の対処手順の2つ目は、安易に退職合意書にサインしないことです。
一度、退職合意書にサインしてしまうと、その後撤回することは非常に困難となります。また、退職合意書を示されてその場で内容を正確に理解するのは至難の業です。
しかも、退職合意書にサインした後に、会社都合退職にしてほしいと言ったり、パッケージ交渉をしたいと言ったりしても、会社は話を聞いてくれません。会社は、退職合意書へのサインを得た時点で、あなたに退職してもらうという目的を達成しているのです。
そのため、退職合意書にサインを求められても、その場ではサインせずに一度持ち帰りましょう。
退職合意書にサインをしてしまった場合の撤回や取り消しについては、以下の記事で詳しく解説しています。
手順3:弁護士に相談する
ポジションクローズを告げられた場合の対処手順の3つ目は、弁護士に相談することです。
退職勧奨に対してどのような対応していくかについては、解雇された場合の見通し、交渉期間中の生活の維持、今後のキャリア等を考慮した上で判断する必要があります。
対応方針を策定するには、専門的な知識や経験、ノウハウが必要となるので、外資系企業からの退職勧奨対応に力を入れている弁護士に相談するべきです。
手順4:パッケージ交渉を行う
ポジションクローズを告げられた場合の対処手順の4つ目は、パッケージ交渉を行うことです。
労働者が退職に応じない場合には、会社によっては特別退職金の提案をしてくることがあります。
特別退職金の提案を受けて退職することに納得した場合には、パッケージの支払い方法や、退職理由、退職日など細かい条件をつめていくことになります。
これに対して、特別退職金をいくら出されても退職に応じるつもりがない場合には、その旨を伝えて交渉には応じられない旨を回答します。
ポジションクローズにおける転職の注意点
ポジションクローズの場合に転職をする際には、以下の2つの注意が必要です。
注意点1:業務時間中に転職活動はしないこと
注意点2:退職を決めるまでは転職すると言わないこと
それでは、これらの注意点につき順番に説明していきます。
注意点1:業務時間中に転職活動はしないこと
ポジションクローズにおける転職の注意点の1つ目は、業務時間中に転職活動をしないことです。
会社によっては、退職勧奨を始めると業務を指示しなくなることがあります。
そうすると、社内失業のような状態となり、業務時間中、暇な時間を持て余すことになります。
人によっては、このような状況になると、業務時間中に会社のPCやスマートフォンで、転職サイトに登録したり、求人情報を見たりしてしまう方がいます。
しかし、退職勧奨が始まった後の業務時間中の行動は、観察されていることも多く、業務時間中に転職活動を行っていることにつき、会社側が解雇理由として主張してくることがあります。
そのため、業務時間中には転職活動はしないようにしましょう。
注意点2:退職を決めるまでは転職すると言わないこと
ポジションクローズにおける転職の注意点の2つ目は、退職を決めるまでは転職すると言わないことです。
会社によっては、退職勧奨を始めると、以後の出社を免除したうえで、その時間を転職活動などに自由に使うようにと指示してくることがあります。
この場合には定期的に面談が行われ、退職勧奨に応じるかどうか尋ねられたり、転職活動の状況を報告するように求められたりします。
ここで転職活動を行っている旨を回答すると、退職に応じる意思があるものとして、退職を前提に話が進められていくことになります。
自宅待機命令については以下の記事で詳しく解説しています。
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まとめ
以上のとおり、今回は、外資系企業におけるポジションクローズとは何かを説明したうえで、その対処法を簡単に説明しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・ポジションクローズとは、会社において特定の部門の役職等のポジションがなくなることをいいます。
・ポジションクローズを宣告されたケースとしては、以下の2つがあります。
ケース1:組織体制の変更
ケース2:狙い撃ち的な排除
・ポジションクローズを告げられた場合には以下の手順により対処していくことがおすすめです。
手順1:ポジション変更に応じる意向を示す
手順2:退職合意書にサインしない
手順3:弁護士に相談する
手順4:パッケージ交渉を行う
・ポジションクローズの場合に転職をする際には、以下の2つの注意が必要です。
注意点1:業務時間中に転職活動はしないこと
注意点2:退職を決めるまでは転職すると言わないこと
この記事が突然ポジションクローズを告げられて悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。