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減給処分が違法となるケース3つ!よくある減給理由の違法性と対処法

減給処分が違法となるケース3つ!

会社からお給料を減らされてしまって困っていませんか?

ある日、会社からお給料を減額すると言われて、突然のことに何も言えず家に帰り途方に暮れてしまっている方もいますよね。

結論からいうと、減給処分は、違法となることがあります

例えば、以下のようなケースです。

ケース1:減給の根拠がない場合
ケース2:減給の金額が大きすぎる場合
ケース3:退職や嫌がらせ目的の減給の場合

そして、減給処分に不満がある場合には、安易に、

同意書にサインしない

ように十分に気を付けてください。

減給が違法となる場合には、労働者としても、これに適切に対処していくことにより、生活が脅かされてしまうことを回避する必要があります

「会社の言うことだから仕方がないか…」と諦めかけている方も多いでしょうから、この記事で少しでも多くの方に、減給が違法となるケースについて知っていただければと思います。

今回は、減給が違法となる3つのケースを説明した上で、よくある減給理由についてその違法性を説明していきます。

具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事を読めば、違法な減給処分へどのように対処すればいいのかがよくわかるはずです。

 

 

 

 

 

 

減給が違法となる3つのケース

会社による減給は、常に許されるわけではありません

十分な理由がなく行われる場合や減給の程度・目的が不当な場合には、違法となることがあります

具体的には、減給が違法となるケースとしては、以下の3つがあります。

ケース1:減給の根拠がない場合
ケース2:減給の金額が大きすぎる場合
ケース3:退職や嫌がらせ目的の減給の場合

それぞれのケースについて順番に見ていきましょう。

ケース1:減給の根拠がない場合

減給は、根拠がない場合には違法となります。

減給の根拠としては、例えば、以下の6つがあります。

根拠1:懲戒処分としての減給
根拠2:降格に伴う減給
根拠3:給料の査定条項に基づく減給
根拠4:就業規則の給与テーブルの変更による減給
根拠5:労働協約に基づく減給
根拠6:合意に基づく減給

給料の引き下げ根拠

懲戒処分としての減給は、就業規則に規定された事由に該当する場合に、制裁として減給が行われるものです。一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならないとされています。

降格に伴う減給は、役職や等級が引き下げられた結果、給与も下がってしまうものです。

給料の査定条項に基づく減給は、給料を固定額としないで、査定により決定するとされているような場合であり、査定基準が明確で、それが公正に運用されることが必要です。

就業規則の給与テーブルの変更による減給は、就業規則や給与規程に等級ごとの給与の一覧表がある場合に、その金額を減額することにより、労働者の給料を減らすことです。

労働協約に基づく減給とは、労働組合と会社の取り決めにより、給与を減額するものです。

合意に基づく減給とは、個別の労働者が合意した場合にそれを根拠として減給をするものです。例えば、合意書にサインを求められるケースがこれです。

いずれの根拠もない場合には、減給は違法となり許されません。

ケース2:減給の金額が大きすぎる場合

次に、減給の金額が大きすぎる場合にも、違法となることがあります。

そのような処分は濫用とされることが多く、労働者が合意している場合でも真意によるものではないと評価されることが多いためです。

例えば、給与を2分の1にカットするような減給は、労働者の生活に甚大な影響を与えることになります。

そのため、このように減給の金額が大きすぎる場合には違法となることがあります。

ケース3:退職や嫌がらせ目的の減給の場合

また、会社が労働者に対する退職や嫌がらせ目的で減給を行う場合にも違法とされることがあります。

例えば、労働者が退職勧奨に応じないような場合に、「今まで通りの給与を払うことはできない」などとして、減給を行う会社が多くあります。

しかし、このような減給は、労働者の退職についての自由な意思を抑圧するものですし、報復的な意味合いが含まれる場合もあります。

そのため、このような減給については、違法となることがあるのです。

よくある減給の理由3つと違法性

よくある減給の理由ごとにその違法性を一緒に確認していってみましょう。

例えば、よくある減給の理由としては、以下の3つがあります。

理由1:能力不足による減給
理由2:配置転換に伴う減給
理由3:業績不振による減給

理由1:能力不足による減給

まず、能力不足による減給としては、降格に伴う減給給料の査定条項に基づく減給などが行われる傾向にあります。

それぞれについて説明していきます。

能力不足による降格

能力不足による降格は、職位等級の引き下げにより行われる傾向にあります。

職位等級の引き下げについては、「職能資格制度」・「職務・役割等級制度」のいずれが取られているかにより判断方法が異なります。

職能資格制度とは、職務遂行能力に応じて資格等級を定めて社員を格付ける制度です。この場合、等級の引き下げには就業規則上の根拠が必要となり、労働者の不利益が大きい場合には濫用となります

職務・役割等級制度とは、組織における職務の価値や職務遂行上の責任・権限の大きさによって社員を格付ける制度です。人事評価の手続きと決定権に基づいている限りは、等級の引き下げは会社の裁量に委ねられます。ただし、この場合も、不当な動機に基づく場合などには人事評価権を濫用したものとして無効となることがあります。

能力不足と給料の査定

給料を固定額としないで、査定により決定するとされている場合があり、このような査定も人事考課制度の枠内における裁量に委ねられています。

しかし、査定は、公正なものである必要があるとされていますので、以下のような場合には違法となる可能性があります

☑査定基準や手続きが不明確である場合
☑査定基準の運用が不公平である場合

理由2:配置転換(いわゆる降格配転)に伴う減給

配置転換に伴う減給については、配置転換の有効性とは別に、等級や役職を引き下げる根拠や同意の有無を慎重に検討する傾向にあります。

つまり、配置転換が有効というだけでは、減給を認められません

特に、給与の2分の1程度の減額がされる場合には、会社側に厳しい判断となっている裁判例が目立ちます。

また、労働者が退職勧奨を断りその後に自宅待機を命じられるなど、紛争が顕在化した後になされた降格配転では、必要性や合理性が認められにくい傾向にあります。

降格配転の裁判例

東京地判平成9年1月24日判時1592号137頁[デイエファイ西友事件]
配転と賃金とは別個の問題であって、法的には相互に関連しておらず、労働者が使用者からの配転命令に従わなくてはならないということが直ちに賃金減額処分に服しなければならないということを意味するものではない。使用者は、より低額な賃金が相当であるような職種への配転を命じた場合であっても、特段の事情のない限り、賃金については従前のままとすべき契約上の義務を負っているのである。したがって、本件においても、債務者から債権者に対する配転命令があったということも契約上の賃金を一方的に減額するための法的根拠とはならない。」

東京地判平成14年6月21日労判835号60頁[西東社事件]
「労働契約も契約の一種であり,賃金額に関する合意は雇用契約の本質的部分を構成する基本的な要件であって,使用者及び労働者の双方は,当初の労働契約及びその後の昇給の合意等の契約の拘束力によって相互に拘束されているから,労働者の同意がある場合,懲戒処分として減給処分がなされる場合その他特段の事情がない限り,使用者において一方的に賃金額を減額することは許されない。」

東京地判平成18年9月29日労判930号56頁[明治ドレスナー・アセットマネジメント事件]
「使用者の人事権は労働契約によって労働者から使用者に付託された相当の裁量権の範囲内で行使され濫用にわたるものは許されないし、契約更改時の賃金決定に際しても新たな労働契約の条件として労使間で合意が交わされることが予定されているものというべきである。」
「このような本件給与減額は、原告の同意のもとに行われたものでないことは明らかであり、労働契約における合意から基礎付けることのできるものとはいえず、使用者の人事権の発動としても、発端は被告からの一方的な退職勧奨とそれに引き続く自宅待機命令に始まり、結局原被告間で紛争状態となった労働関係について話し合いがまとまらない中で、さらに被告が退職勧奨をするとともに一方的に原告を部長から係長へ降格して給与を従前の半額に減額したものであり、上記経緯からは合理性、必要性が基礎付けられておらず、人事権の濫用にわたるものと評価せざるを得ない。」
「また、被告の本件給与減額は、業務活動費及び事務打合せ会費の不正請求が部長としての適格性に欠けることを理由に係長に降格したことによるものと見る余地があるが、後記のように不正請求かどうかは未だ確定的ではなく、原告の部長としての不適格性が明らかになったとはいえないので、この点を理由とすることも妥当とは思われない。」

仙台地決平14.11.14労判842号56頁[日本ガイダント仙台営業所事件]
「本件配転命令は,債権者の職務内容を営業職から営業事務職に変更するという配転の側面を有するとともに,債務者においては職務内容によって給与等級に格差を設けているところ…,債権者が営業職のうちの高位の給与等級であるP〈3〉に属していたことから,営業事務職に配転されることによって営業事務職の給与等級であるP〈1〉となった結果,賃金の決定基準である等級についての降格(昇格の反対措置にあたる。以下この意味で「降格」という。)という側面をも有している。」
「配転命令の側面についてみると,使用者は,労働者と労働契約を締結したことの効果として,労働者をいかなる職種に付かせるかを決定する権限(人事権)を有していると解されるから,人事権の行使は,基本的に使用者の経営上の裁量判断に属し,社会通念上著しく妥当性を欠き,権利の濫用にわたるものでない限り,使用者の裁量の範囲内のものとして,その効力が否定されるものではないと解される。」
「他方,賃金の決定基準である給与等級の降格の側面についてみると,賃金は労働契約における最も重要な労働条件であるから,単なる配転の場合とは異なって使用者の経営上の裁量判断に属する事項とはいえず,降格の客観的合理性を厳格に問うべきものと解される。」
「労働者の業務内容を変更する配転と業務ごとに位置付けられた給与等級の降格の双方を内包する配転命令の効力を判断するに際しては,給与等級の降格があっても,諸手当等の関係で結果的に支給される賃金が全体として従前より減少しないか又は減少幅が微々たる場合と,給与等級の降格によって,基本給等が大幅に減額して支給される賃金が従前の賃金と比較して大きく減少する場合とを同一に取り扱うことは相当ではない。従前の賃金を大幅に切り下げる場合の配転命令の効力を判断するにあたっては,賃金が労働条件中最も重要な要素であり,賃金減少が労働者の経済生活に直接かつ重大な影響を与えることから,配転の側面における使用者の人事権の裁量を重視することはできず,労働者の適性,能力,実績等の労働者の帰責性の有無及びその程度,降格の動機及び目的,使用者側の業務上の必要性の有無及びその程度,降格の運用状況等を総合考慮し,従前の賃金からの減少を相当とする客観的合理性がない限り,当該降格は無効と解すべきである。そして,本件において降格が無効となった場合には,本件配転命令に基づく賃金の減少を根拠付けることができなくなるから,賃金減少の原因となった給与等級P〈1〉の営業事務職への配転自体も無効となり,本件配転命令全体を無効と解すべきである(本件配転命令のうち降格部分のみを無効と解し,配転命令の側面については別途判断すべきものと解した場合,業務内容を営業事務職のまま,給与について営業職相当の給与等級P〈3〉の賃金支給を認める結果となり得るから相当でない。)。」

大阪高判平成25年4月25日労判1076号19頁[新和産業事件]
1 配置転換命令の有効性
「一審原告は営業担当の総合職としての適性を欠いていなかったことが認められるところ、…本件配転命令は、一審原告の職種を総合職から運搬職に変更し、これに伴い賃金を2分の1以下へと大幅に減額するものであることが認められる。そうすると、本件配転命令は、一審原告に対し、社会通念上、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものというべきである。」
「以上によれば、本件配転命令は、業務上の必要性が乏しいにもかかわらず、業務上の必要性とは別個の不当な動機及び目的の下で行われたものであり、かつ、一審原告に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるから、権利の濫用として無効というべきである。」
2 降格命令の有効性
「本件降格命令は、一審被告が一審原告の職種を総合職から運搬職に変更したことに伴うものであるところ、上記…で認定判断したとおり、その前提となる本件配転命令は、…権利の濫用として無効であり、また、…一審被告は、本件降格命令までの間、一審原告について総合職としての適性を問題視したことはなく、課長職からの降職を具体的に検討したこともなかったのに、本件配転命令に伴って突然なされたことからすると、本件降格命令は、一審被告の人事上の裁量権の範囲を逸脱したものであり、権利の濫用として無効というべきである。」

理由3:業績不振による減給

業績不振による減給は、就業規則の給与テーブルの変更による減給として行われることが多い傾向にあります。

この場合、就業規則の不利益変更に該当しますので、原則として、就業規則の変更について労働者の合意があることが必要となります

ただし、例外的に、不利益変更が「合理的」なものである場合には、労働者の合意がなくても、有効に減給が行われる場合があります

労働契約法第9条(就業規則による労働契約の内容の変更)
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。」

労働契約法第10条
「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。…」

具体的には、以下の場合には、就業規則上の給与テーブルの変更は違法とされる可能性があります。

☑給与を減額する必要性に乏しい場合
☑減額される給与の金額が大きすぎる場合
☑労働者の不利益を緩和する措置がとられていない場合
☑労働者への説明や協議が行われていない場合

 

違法な減給への対処法

減給が違法であると感じた場合には、以下の手順で対処していきましょう。

手順1:減給根拠の確認
手順2:通知書の送付
手順3:交渉
手順4:労働審判・訴訟

違法な減給への対処法

ただし、これらの手続きは専門的な判断が求められることも多いので、可能であれば弁護士に依頼してしまった方がいいでしょう。

それでは順番に説明していきます。

手順1:減給根拠の確認

違法な減給への対処手順の1つ目は、減給根拠の確認です。

減給の根拠を確認することで、減給処分に理由があるかどうかを判断することができますし、会社側が後付けで減給の理由を追加しにくくなります

ただし、口頭で会社側から減給の理由を聞いても、会社側は顧問弁護士に相談した後などに、異なる減給の理由を主張してくる場合があります。

減給の理由については、書面やメールなどの形で残るものでもらっておくか、口頭での説明を録音しておいた方がいいでしょう。

手順2:通知書の送付

違法な減給への対処手順の2つ目は、通知書を送付することです。

通知書の送付は、後日、証拠とできるように、内容証明郵便に配達証明を付して行います。

例えば、「減給が無効である」旨と「減給された分の金額を請求する」旨を相手方に対して通知しましょう。

通知書を送付することにより、あなたが減給に同意していないということを示す意味もあります。

手順3:交渉

違法な減給への対処手順の3つ目は、交渉です。

通知書に対して、会社から回答があると争点が明確になりますので、双方歩み寄ることが可能かどうかを協議します。

もしも、折り合いがつくようであれば、和解をして、解決金等の支払いを受けることになります。

手順4:労働審判・訴訟

違法な減給への対処手順の4つ目は、労働審判・訴訟です。

話し合いでの解決が難しい場合には、裁判所を用いた手続きを検討することになります。

労働審判というのは、全3回の期日で調停を目指すものであり、調停が成立しない場合には裁判所が一時的な判断を下すものです。労働審判を経ずに訴訟を申し立てることもできます。

労働審判については、以下の記事で詳しく解説しています。

労働審判を使いこなすための必携マニュアル!
労働審判を使いこなすための必携マニュアル!気になる実務を完全網羅労働審判という制度を知っていますか?迅速、且つ、適正な解決が期待でき、近年利用率が高まっています。今回は、労働審判を使いこなすために必要な知識を整理して、本などではあまり書いてない実務的な疑問も広く網羅していきます。...

訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。

会社が違法な減給をしてくる理由

会社が、なぜ違法な減給をしてくるのかその理由が気になりますよね。

会社が違法な減給をしてくる理由としては、例えば、以下の3つがあります。

理由1:減給のルールに詳しくない
理由2:人件費を削減しようとしている
理由3:退職を促そうとしている

それぞれの理由について説明していきます。

理由1:減給のルールに詳しくない

会社によっては、減給の法律上のルールに詳しくないことがあります。

会社側が自由に給与を決めることができると考えているのです。

例えば、ワンマン経営の中小企業などでは、ある日社長の一存でいきなり給与を下げられてしまうようなケースがあります。

理由2:人件費を削減しようとしている

減給が法的に難しいことを認識しながらも、人件費削減のために違法な減給をする会社があります。

違法な減給をしたとしても、労働者が異を唱えなければ会社が支払う給与は少なくなります。

例えば、「法律的な話ではなくて、会社が苦しいのを分かってよ」などと言われることがあります。

理由3:退職を促そうとしている

労働者に退職を促すために減給を行う会社もあります。

給与が少なくなれば労働者の生活が苦しくなるので、もっと給与が高い会社に転職するだろうと考えるのです。

例えば、よくあるのが退職勧奨を断った途端に給与を減額されるようなケースです。「うちの会社にいても未来はない」「今の君に払える給与はこれだけだ」などと言われることがよくあります。

 

減給についてのよくある疑問

減給についてのよくある疑問として、例えば、以下の5つがあります。

Q1:年俸制の減給は許される?
Q2:基本給の減給と手当の減給は違う?
Q3:減給の同意書にサインした後でも争える?
Q4:管理職の減給は違法?
Q5:アルバイトの減給は違法?

それでは、これらの疑問を順番に解消していきましょう。

Q1:年俸制の減給は許される?

年俸制には、「契約期間を1年とする年俸制(固有の意味の年俸制)」と「契約期間を無期とする年俸制」があります。

契約期間を1年とする年俸制においては、次年度以降については契約上の拘束力がないため、提示された年俸が今年度のものより低かったとしても、違法ということはできません

これに対して、契約期間を無期とする年俸制においては、目標達成度の評価に関して会社と労働者の意見が対立して折り合いがつかない場合には、会社側に評価決定権があると言われています。ただし、評価決定権は、目標の設定とその評価に関する公正な手続き及び苦情処理の手続きとともに就業規則で制度化されている必要があります。そのため、評価決定権が適正な制度のもとに行使されていない場合には違法となります

東京地判平成9年1月24日判時1592号137頁[デイエファイ西友事件]
「固有の意味での年棒は、契約期間を一年とする雇用契約における賃金であって、その金額に関する契約上の拘束力も契約期間である一年間に限定される。したがって、固有の意味における年棒にあっては、一年間の契約期間が経過した後、年棒額も含めて従前通りに契約更新をする旨の合意が存在しない限り、前年度の年棒額がそのまま次年度の年棒額となるわけではなく、仮に雇用することのみについて契約更新をすることの合意が成立し、年棒額については合意が成立しないというような事案があるとすれば、そのような年棒額に関する合意未了の労働者は、賃金債権につき契約上の何らの発生原因を有しないことになり、たかだか当該年度において当該契約当事者双方に対して適用のある最低賃金の額の限度内での賃金債権を有するに過ぎないことになるであろう。右のように、かかる固有の年棒制による労働契約にあっては、各契約年度の賃金債権は、使用者と労働者との間の合意によってのみ形成されることになるから、労働者の前年度における勤務実績や当年度における職務内容等の諸要素によって、事実上、前年度よりも年棒額が減少する結果となることもあり得ることであり、それが当事者間の合意に基づくものである限り、年棒額の減少は、適法・有効である。」
「しかしながら、前記のとおり、本件雇用契約は、期間の定めのない労働契約であり、右のような意味での固有の年棒制による労働契約ではないのであるから、この意味においても、本件において、使用者たる債務者から労働者たる債権者に対してした一方的な賃金の減額措置は、無効である。」

東京地判平成19年3月26日労判943号41頁[中山書店事件]
「原告らは,労働契約が継続的な契約関係であることを根拠として,一旦された年俸額に関する合意は,新たな合意がされるまで効力を有する旨主張するが,上記のとおり,このような主張を採用することはできない。」
「そして,本件年俸制において,社員の年俸額は,被告と当該社員との面談を経て決定に至る…が,両者の協議が整わない場合には,使用者である被告が社員との協議を打ち切って,その年俸額を決定することができると解するのが相当であり,この場合には,被告のした決定に承服できない当該社員は,被告が決定した年俸額がその裁量権を逸脱したものかどうかについて訴訟上争うことができると解するのが相当である。」
「しかしながら,被告が上記決定権を行使せず,年俸額に関する社員との協議を継続し,社員もこの協議に応じながら労務の提供を継続する場合には,被告が提案した年俸額よりも低い金額で合意が成立することは通常想定し得ないから,被告が提案した金額を年俸額の最低額とする旨の合意がされていると解することができ,したがって,社員は,被告が提案した金額を被告に請求することができる(同金額を前提として算定される残業代についても同様)が,これを上回る年俸額についての合意がない以上,被告提案額を上回る金員を被告に請求することはできないと解するのが相当である。」

東京高判平成20年4月9日労判959号6頁[日本システム開発研究所事件]
期間の定めのない雇用契約における年俸制において、使用者と労働者との間で、新年度の賃金額についての合意が成立しない場合は、年俸額決定のための成果・業績評価基準、年俸額決定手続、減額の限界の有無、不服申立手続等が制度化されて就業規則等に明示され、かつ、その内容が公正な場合に限り、使用者に評価決定権があるというべきである。上記要件が満たされていない場合は、労働基準法15条、89条の趣旨に照らし、特別の事情が認められない限り、使用者に一方的な評価決定権はないと解するのが相当である。」

Q2:基本給の減給と手当の減給は違う?

基本給と手当いずれについても、減給を行うには根拠が必要となります

ただし、手当については、業務内容や職種に紐づけられていることが多いため、配置転換や降職が有効になされた場合には、それに伴い、不支給とされることや減給とされることが正当化されやすい傾向にあります。

また、手当については、後述のように、その支給を受けるための条件を満たす必要があり、その条件を満たしていないがために支給されないことになる場合には、減給の問題とは異なることがあります。

Q3:減給の同意書にサインした後でも争える?

減給の同意書にサインした場合でも、減給を争える場合はあります

本心から同意したわけではない場合、並びに、勘違いにより同意した場合、騙されたり、脅されたりして同意した場合には、無効若しくは取り消しを主張できる可能性があるためです。

特に、労働条件を不利益に変更することについての合意の有無は、当該変更によりもたらされる不利益の内容および程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯およびその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供または説明の内容に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点から、慎重に判断されます。

ただし、同意書がない場合に比べて争点が増えてしまい、争う難易度は上がりますので、減給に不満がある場合には同意書には署名押印しないように十分に注意しましょう。

最二小判平28.2.19民集70巻2号123頁[山梨県民信用組合事件]
労働者の退職金支給規程が不利益変更され、退職金が大幅に減額された際に、経営側は職員に変更理由を説明した上で、第1回目については変更への同意書、第2回目については説明会報告書への署名押印を得た事案について、
労働契約の内容である労働条件は、労働者と使用者間の個別の合意によって変更できるが(労働契約法8条・9条本文)、当該変更に対する労働者の同意の有無については慎重に判断すべきであり、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく、当該変更によりもたらされる不利益の内容および程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯およびその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供または説明の内容に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも判断すべきであるとしました。

Q4:管理職の減給は違法?

管理職の減給についても、非管理職の場合と同様、当然、違法となり得ます。

ただし、例えば、部長から係長に降職したり、係長から役職を外したりすること自体については、会社の裁量の範囲で認められる場合があり、これに伴い、給与規程に従い役職手当などが減額されることは通常違法とはいえません。

Q5:アルバイトの減給は違法?

アルバイトの減給についても、正社員の場合と同様、当然、違法となり得ます。

アルバイトであっても、労働者であることに変わりはないため、減給についてのルールは同様に適用されるためです。

減給とは異なるケース5つ

減給とは、本来ならばその労働者が現実になした労務提供に対応して受けるべき賃金額から一定額を差し引くことを言います。

しかし、給与が少なくなる場合でも、減給とは異なるケースもあります。

例えば、以下の5つのようなケースは減給とは異なります。

①支給条件を満たしていないことによる不支給
②支給金額が具体的に確定していない場合における不支給
③欠勤による控除
④会社に債務を負っている場合の天引き
⑤再雇用をする場合の労働条件の変更

まず、①について、例えば、残業代などは毎月もらえる金額が違いますが、前月よりも残業時間が少なかった場合に、残業代の金額が前月よりも少なかったとしても、それは減給されたということはできません。現実に労務提供をしていないためにそれに対応する賃金が発生していないに過ぎないためです。

次に、②について、例えば、賞与などについては、業績により支給するなどと合意されており、確定的な金額で合意されていないことがよくあります。このような場合には、賞与の金額が労働条件として合意されたわけではない以上、受けるべき賃金額が決められておらず、前年度よりも賞与が少なくなったとしても、減給にあたるということはできないでしょう。

また、③について、欠勤による控除は、ノーワーク・ノーペイの原則に基づき働いていない時間の賃金が発生しないとするものであり、減給ということはできません。現実に所定労働時間に対応する労務を提供していないためにそれに対応する賃金が発生していないに過ぎないためです。

加えて、④について、天引きは、労務提供に対応して受けるべき賃金額は発生するものの、会社に対して負っている債務に充当されるものです。現実の労務提供に対応する利益自体は労働者に帰属することになるため減給とは異なります。ただし、労働基準法上は、天引きについても、労働者の生活を脅かす可能性があるため禁止されています。

最後に、⑤について、再雇用をする場合の労働条件の変更は、雇用契約が終了したことにより、過去の雇用契約の拘束力は及ばなくなりますので、給与金額が減っても労務提供に対応して受けるべき金額から差し引かれたとはいえないため、減給には当たりません。ただし、債務不履行や不法行為となる場合があります。

 

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まとめ

以上のとおり、今回は、減給が違法となる3つのケースを説明した上で、よくある減給理由についてその違法性を説明しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

・減給が違法となるケースとしては、以下の3つがあります。
ケース1:減給の根拠がない場合
ケース2:減給の金額が大きすぎる場合
ケース3:退職や嫌がらせ目的の減給の場合

・減給が違法であると感じた場合には、以下の手順で対処していきましょう。
手順1:減給根拠の確認
手順2:通知書の送付
手順3:交渉
手順4:労働審判・訴訟

・会社が違法な減給をしてくる理由としては、例えば、以下の3つがあります。
理由1:減給のルールに詳しくない
理由2:人件費を削減しようとしている
理由3:退職を促そうとしている

この記事が違法な減給に悩んでいる方の助けになれば幸いです。

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弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。主な取扱分野は、人事労務、離婚・男女問題、相続、企業法務、紛争解決(訴訟等)、知的財産、刑事問題等。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。
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