不当解雇・退職扱い

定年後再雇用の給与減額は違法?同一労働同一賃金による対処手順4つ

定年後再雇用の給与減額は違法?

定年後再雇用を希望したものの、会社から提案された給与が少なすぎるとの悩みを抱えていませんか?

老後の生活費の足しにしようと考えていたのにもらえる給与が少なすぎると困ってしまいますよね。

フルタイム勤務の継続雇用者の61歳時点の給与水準は、平均すると60歳直前の水準の73.5%程度となっています。

つまり、定年前の給与に比べて26.5%も減額されていることになるのです

しかし、定年後再雇用だからといって、会社の裁量でいくらでも賃金を減額することができるわけではありません。

法律には同一労働同一賃金という原則がありますので、差別的取り扱いや合理性がない待遇差は禁止されているのです

更に、定年後再雇用における労働条件の著しい切り下げについては、慰謝料の対象となる場合もございます

最近、定年後再雇用のトラブルの相談を受けることが非常に多くなってきていますので、この記事で労働者の権利についてよく知っていただければと思います。

今回は、定年後再雇用の給与減額について、同一労働同一賃金の原則や慰謝料を説明した上で、対処手順を分かりやすく解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事を読めば、定年後再雇用の労働条件の切り下げについてどのように対処すればいいのかがわかるはずです。

働く高齢者応援シリーズ

定年後再雇用の給与水準|60歳直前と61歳時点の賃金相場と平均

60歳直前の賃金と61歳時点の賃金定年後再雇用の給与水準の平均は、61歳時点において、60歳直前の給与の73.5%となっています。

つまり、定年後再雇用では、平均すると定年前の給与よりも26.5%程度少なくなることになります

例えば、定年前に30万円の給与をもらっていた方であれば、定年後の給与は22万0500円くらいになってしまいます。

しかも、最近の企業では55歳になった時点で役職定年などとして給与の減額を始めている場合もありますので、60歳直前の73.5%というのは、労働者にとっては苦しいと感じる数字でしょう。

定年後再雇用給与水準(出典:JILPT調査シリーズNO.156 2016年5月高年齢者の雇用に関する調査(企業調査))

給与の減額割合について、回答企業が多い順に並べると以下のとおりであり、「減額なし」と回答している企業が相当数ある反面、「30~40%減額」としている企業が最も多いことがわかります。

定年後再雇用の減額割合ごとの企業割合

このように定年後再雇用の給与については、大きく減額されることになりますので、老後のライフプランを考えるに当たっては、収支についてよく考える必要があります。

定年後再雇用と同一労働同一賃金の原則|長澤運輸事件

「定年後再雇用労働者」と「定年前の正規労働者」の間の賃金格差は、同一労働同一賃金の原則に違反することがあります

同一労働同一賃金の原則とは、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

具体的には、以下の2つ原則があります。

【均等待遇の原則】:短時間有期雇用労働者法9条
職務の内容及び雇用の全期間における職務内容・配置の変更範囲が同一である場合における差別的取り扱いを禁止するものです
【均衡待遇の原則】:短時間有期雇用労働者法9条
職務の内容や変更範囲が異なる場合であっても、それらの事情とその他の事情とを総合勘案して、両者の待遇間の不合理な相違を禁止するものです

上記に原則に違反する労働条件は無効となります。

そして、上記原則に違反したことは不法行為となり、賃金の差額につき損害賠償請求をすることになります

~長澤運輸事件~

定年後再雇用における同一労働同一賃金が争われた有名な重要判例として、長澤運輸事件(最二小判平30.6.1民集72巻2号202頁)があります。

運送会社において、定年後再雇用されて正社員と同じ運転業務に従事し配転義務にも服する嘱託社員と正社員間の賃金の相違が、均等待遇規定(労働契約法20条)に違反するとして、差額の賃金請求等(予備的に不法行為に基づく損害賠償請求)がされた事案です。

正社員の給与は、基本給(在籍給と年齢給)、能率給、職務給、精勤手当、無事故手当、住宅手当、家族手当、役付手当、超勤手当、通勤手当、賞与、退職金により構成されていました。これに対して、嘱託社員の給与は、基本賃金、歩合給、無事故手当、調整給、通勤手当、時間外手当から構成されています。同社は組合との協議で、定年退職者の再雇用に関して、基本賃金10万円、歩合給一律10%、無事故手当1万円等とする労使協定を締結しています。

判例は、定年後の再雇用であるという事情を考慮した上で、以下の判断をしました。

定年後再雇用であることについては、①長期雇用が予定されていないこと、②定年退職まで無期契約労働者として賃金の支給を受けてきたこと、③一定の要件を満たせば老齢厚生年金の受給も予定されていることから、労働者に厳しい方向に判断されています

長澤運輸事件

定年後再雇用の減額が違法となる目安は6割?|最新裁判例の傾向

最近の裁判例では、定年後再雇用時の基本給が定年退職時の基本給の60%を下回る限度で違法とする判決がされたものがあります(名古屋地判令和2年10月28日労働判例1233号5頁[名古屋自動車学校事件])。

同裁判例については、実務において一定程度影響があるものと想定され、会社側においても60%を下回らないように配慮する会社が増えることが予想されます。

労働者においても、60%を下回るような基本給とされた場合には、その合理性について、慎重に吟味した方が良いでしょう。

ただし、同裁判例については、あくまでも個別の事案において60%を下回る限度で違法としたにすぎず、他の事案においても60%を下回れば必ずしも違法となるとしたものではありません

同事案においては、他にも、以下のような事情があったことには注意が必要です。

・正職員定年退職時の賃金は賃金センサス上の平均賃金を下回る水準であったこと
・嘱託職員時の基本給はそれが労働契約に基づく労働の対償の中核であったこと
・職務上の経験に劣り基本給に年功的性格があることから将来の増額に備えて金額が抑制される傾向にある若年正職員の基本給をも下回ること
・労使自治が反映された結果ではないこと

~名古屋自動車学校事件~

自動車学校を経営する会社における定年後再雇用における賃金に関して、裁判例(名古屋地判令和2年10月28日労働判例1233号5頁)は、以下のように判示しました。

「原告らは、被告を正職員として定年退職した後に嘱託職員として有期労働契約により再雇用された者であるが、正職員定年退職時と嘱託職員時でその職務内容及び変更範囲には相違がなく、原告らの正職員定年退職時の賃金は、賃金センサス上の平均賃金を下回る水準であった中で、原告らの嘱託職員時の基本給は、それが労働契約に基づく労働の対償の中核であるにもかかわらず、正職員定年退職時の基本給を大きく下回るものとされており、そのため、原告らに比べて職務上の経験に劣り、基本給に年功的性格があることから将来の増額に備えて金額が抑制される傾向にある若年正職員の基本給をも下回るばかりか、賃金の総額が正職員定年退職時の労働条件を適用した場合の60%をやや上回るかそれ以下にとどまる帰結をもたらしているものであって、このような帰結は、労使自治が反映された結果でもない以上、嘱託職員の基本給が年功的性格を含まないこと、原告らが退職金を受給しており、要件を満たせば高年齢雇用継続基本給付金及び老齢厚生年金(比例報酬分)の支給を受けることができたことといった事情を踏まえたとしても、労働者の生活保障の観点からも看過し難い水準に達しているというべきである。」
「そうすると、原告らの正職員定年退職時と嘱託職員時の各基本給に係る金額という労働条件の相違は、労働者の生活保障という観点も踏まえ、嘱託職員時の基本給が正職員定年退職時の基本給の60%を下回る限度で、労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。」

定年後再雇用の労働条件と慰謝料請求

定年後再雇用において会社から提示される労働条件が不当なものであったため、労働者がこれを受け入れることができない場合には、慰謝料請求の対象となることがあります

例えば、以下のようなケースです。

ケース1:労働条件の著しい切り下げ|賃金が定年前の25%の事案
ケース2:全く異なった職種への転換|事務職から単純労務職とされた事案

それでは、これらのケースについて順番に説明していきます。

ケース1:労働条件の著しい切り下げ|賃金が定年前の25%の事案

まず、労働条件の著しい切り下げについては、慰謝料請求の対象となる場合があります。

裁判例(福岡高判平29.9.7労判1167号49頁[九州惣菜事件])は、定年退職前のものとの継続性・連続性に欠ける労働条件の提示が継続雇用制度の下で許容されるためには、同提示を正当化する合理的な理由が必要であるとしています。

そして、賃金が月収ベースで定年前の約25%に過ぎないような場合には、継続性・連続性を確保するものとはいえないとしています。

その他、会社側にも店舗数の減少という事情があることや労働者側にも遺族厚生年金を受給しており高年齢雇用継続基本給付金も受給見込みであったことを考慮して、100万円の慰謝料を認容しました。

同事案では、労働者は、会社の提示する労働条件に納得できず、会社の提示する再雇用契約を応諾していません。

そして、裁判例は、合意されたであろう賃金の額を認定することは困難であるとして、逸失利益(本来であれば得られたであろう賃金金額)の請求は認めませんでした。

仮に、逸失利益の請求が認められるような場合には、財産的損害が填補されれば精神的苦痛は癒えるものとして、慰謝料請求が認められないことが多いでしょう(名古屋地判令和2年10月28日労働判例1233号5頁参照)。

~九州惣菜事件~

裁判例は、労働条件の著しい切り下げに関して、以下のように判示しました(福岡高判平29.9.7労判1167号49頁[九州惣菜事件])。

1 不法行為

高年「法9条1項に基づく高年齢者雇用確保措置を講じる義務は,事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件の雇用を義務付けるといった私法上の効力を有するものではないものの,その趣旨・内容に鑑みれば,労働契約法制に係る公序の一内容を為しているというべきであるから,同法(同措置)の趣旨に反する事業主の行為,例えば,再雇用について,極めて不合理であって,労働者である高年齢者の希望・期待に著しく反し,到底受入れ難いような労働条件を提示する行為は,継続雇用制度の導入の趣旨に違反した違法性を有するものであり,事業主の負う高年齢者雇用確保措置を講じる義務の反射的効果として当該高年齢者が有する,上記措置の合理的運用により65歳までの安定的雇用を享受できるという法的保護に値する利益を侵害する不法行為となり得ると解するべきである。」
「その判断基準を検討するに,継続雇用制度(高年法9条1項2号)は,高年齢者の65歳までの「安定した」雇用を確保するための措置の一つであり,「当該定年の引上げ」(同1号)及び「当該定年の定めの廃止」(同3号)と単純に並置されており,導入にあたっての条件の相違や優先順位は存しないところ,後二者は,65歳未満における定年の問題そのものを解消する措置であり,当然に労働条件の変更を予定ないし含意するものではないこと…からすれば,継続雇用制度についても,これらに準じる程度に,当該定年の前後における労働条件の継続性・連続性が一定程度,確保されることが前提ないし原則となると解するのが相当であり,このように解することが上記趣旨…に合致する。また,有期労働契約者の保護を目的とする労働契約法20条の趣旨に照らしても,再雇用を機に有期労働契約に転換した場合に,有期労働契約に転換したことも事実上影響して再雇用後の労働条件と定年退職前の労働条件との間に不合理な相違が生じることは許されないものと解される…。したがって,例外的に,定年退職前のものとの継続性・連続性に欠ける(あるいはそれが乏しい)労働条件の提示が継続雇用制度の下で許容されるためには,同提示を正当化する合理的な理由が存することが必要であると解する。」
「賃金についてみると,…月収ベースで比較すると,…定年前の賃金の約25パーセントに過ぎない。この点で,本件提案の労働条件は,定年退職前の労働条件との継続性・連続性を一定程度確保するものとは到底いえない。したがって,本件提案が継続雇用制度の趣旨に沿うものであるといえるためには,そのような大幅な賃金の減少を正当化する合理的な理由が必要である。」
「…被控訴人が,本件提案をしてそれに終始したことは,継続雇用制度の導入の趣旨に反し,裁量権を逸脱又は濫用したものであり,違法性があるものといわざるを得ない。よって,控訴人の主張するその余の違法事由…を検討するまでもなく,控訴人に対する不法行為が成立すると認められる。」
2 損害
⑴ 逸失利益
「控訴人は,被控訴人の上記不法行為がなければ,退職前賃金の少なくとも8割の賃金を得られた旨主張するが,本件に顕れた諸般の事情を総合しても,本件提案がなければ,控訴人と被控訴人が,退職前賃金の8割以上の額を再雇用の賃金とすることに合意した高度の蓋然性があると認めることはできず…,合意されたであろう賃金の額を認定することは困難である。」
「したがって,被控訴人の上記不法行為と相当因果関係のある逸失利益を認めることはできない。」
⑵ 慰謝料
「〔1〕月収ベースで約75パーセントの賃金を削減する本件提案の内容が定年退職前の労働条件との継続性・連続性を著しく欠くものであること,〔2〕他方で,前記認定のとおり,店舗数減少を踏まえて被控訴人が本件提案をしたことにはそれなりの理由があったといえることに加え,〔3〕控訴人が,遺族厚生年金(月額7万7475円)を受給しており,本件提案により再雇用された場合には高年齢雇用継続基本給付金(1万4610円程度)も受給できる見込みであったこと,控訴人には扶養すべき親族はいなかったことからすれば,本件提案の内容は,控訴人につき特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給が開始していない年齢であったことを考慮してもなお,直ちに控訴人の生活に破綻を来すようなものではなかったといえること,〔4〕その他(控訴人の勤続年数等)の諸事情を総合考慮すれば,慰謝料額は100万円とするのが相当である…。」

ケース2:全く異なった職種への転換|事務職から単純労務職とされた事案

次に、全く異なった職種への転換については、慰謝料請求の対象となる場合があります。

裁判例(名古屋高判平28.9.28労判1146号22頁[トヨタ自動車ほか事件])は、60歳以前の業務内容と全く別個の職種に属する性質の異なった業務を命じる場合には、通常解雇と新規採用の複合行為というほかないとして、従前の職種全般について適格性を欠くなど解雇を相当とする事情がない限り、そのような業務内容を提示することは許されないと判示しています。

そして、事務職としての業務内容ではなく、シュレッダー機ごみ袋交換及び清掃(シュレッダー作業は除く)、再生紙管理、業務用車掃除、清掃(フロアー内窓際棚、ロッカー等)等の単純労務職としての業務を提示したことについて、全く別個の職種に属するもの判断しています。

これらの事情から解雇の理由がない限り上記提示は違法であり、パートタイマーとして継続雇用される機会を奪われたとして、賃金等の給付見込額と同額が支払われれば精神的苦痛は癒えることを理由に127万1500円を慰謝料として認容しました。

ただし、労働者側が逸失利益の賠償請求はしていないので、逸失利益は認められていない事案となります。

~トヨタ自動車ほか事件~

裁判例は、全く異なった職種への転換の提示について以下のように判示しました(名古屋高判平28.9.28労判1146号22頁[トヨタ自動車ほか事件])。

1 債務不履行又は不法行為
「被控訴人会社の提示した業務内容について見ると,控訴人に対して提示された業務内容は,シュレッダー機ごみ袋交換及び清掃(シュレッダー作業は除く),再生紙管理,業務用車掃除,清掃(フロアー内窓際棚,ロッカー等)というものであるところ,当該業務の提示を受けた控訴人が「隅っこの掃除やってたり,壁の拭き掃除やってて,見てて嬉しいかね。…これは,追い出し部屋だね。」などと述べているように,事務職としての業務内容ではなく,単純労務職(地方公務員法57条参照)としての業務内容であることが明らかである。」
「上記の改正高年法の趣旨からすると,被控訴人会社は,控訴人に対し,その60歳以前の業務内容と異なった業務内容を示すことが許されることはいうまでもないが,両者が全く別個の職種に属するなど性質の異なったものである場合には,もはや継続雇用の実質を欠いており,むしろ通常解雇と新規採用の複合行為というほかないから,従前の職種全般について適格性を欠くなど通常解雇を相当とする事情がない限り,そのような業務内容を提示することは許されないと解すべきである。」
「そして,被控訴人会社が控訴人に提示した業務内容は,上記のとおり,控訴人のそれまでの職種に属するものとは全く異なった単純労務職としてのものであり,地方公務員法がそれに従事した者の労働者関係につき一般行政職に従事する者とは全く異なった取扱いをしていることからも明らかなように,全く別個の職種に属する性質のものであると認められる。」
「したがって,被控訴人会社の提示は,控訴人がいかなる事務職の業務についてもそれに耐えられないなど通常解雇に相当するような事情が認められない限り,改正高年法の趣旨に反する違法なものといわざるを得ない。」
「…したがって,控訴人の従前の行状に被控訴人らが指摘するような問題点があることを考慮しても,被控訴人会社の提示した業務内容は,社会通念に照らし労働者にとって到底受入れ難いようなものであり,実質的に継続雇用の機会を与えたとは認められないのであって,改正高年法の趣旨に明らかに反する違法なものであり,被控訴人会社の上記一連の対応は雇用契約上の債務不履行に当たるとともに不法行為とも評価できる。」
2 損害額
「不法行為に基づく慰謝料請求については,控訴人が上記賃金等の給付見込額と同額の損害賠償金を得ることができれば,その精神的苦痛も慰謝されるものと認められる。」
「よって,控訴人の被控訴人会社に対する請求は,不法行為に基づいて127万1500円及びこれに対する不法行為の後の日である平成25年7月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余の請求は棄却すべきである。」

定年後再雇用の給与を争う手順4つ

定年後再雇用の給与を争うには、以下の手順がおすすめです。

手順1:証拠収集
手順2:通知書の送付
手順3:交渉
手順4:労働審判又は訴訟

それでは順番に説明していきます。

手順1:証拠収集

定年後再雇用の給与を争う手順の1つ目は、証拠収集です。

定年後再雇用の給与が不当だというためには、定年前と定年後の業務内容や配置転換の可能性、定年前と定年後の賃金の差額や他の正社員との賃金の差額に関する証拠が必要となります。

そのため、定年前の給与明細や定年後の給与明細、業務内容を示す資料(雇用契約書や労働条件通知書、再雇用契約書等、業務日報、業務マニュアル等)、就業規則、給与規程、定年後再雇用規程などが必要となります。

特に業務内容に関する資料については集めるのが難しいので、上記の例の他にも、業務を行いながらメモをしたり、メールやチャットの記録を用いたり、業務指示に関する書面を探したりして集めていくことになります。

手順2:通知書の送付

定年後再雇用の給与を争う手順の2つ目は、通知書の送付です。

定年後再雇用時の給与が定年前正規社員の給与に比べて少なく、これを正当化する事情が存在しないことを記載した上で、同一労働同一賃金の原則に反する賃金部分については差額の賃金相当額の損害賠償を請求する旨を通知します。

通知書を送付する方法については、証拠となるように内容証明郵便に配達証明を付して送付するといいでしょう。

手順3:交渉

定年後再雇用の給与を争う手順の3つ目は、交渉です。

通知書を送付すると、通常2週間程度で会社から回答があります。

会社からの回答があると争点が明確になりますので、双方の折り合いがつく解決が可能かどうかについて、話し合いを行うことになります。

手順4:労働審判又は訴訟

定年後再雇用の給与を争う手順の4つ目は、労働審判又は訴訟です。

話し合いでの解決が難しい場合には、裁判所を用いた手続きを検討することになります。

労働審判というのは、全3回の期日で調停を目指すものであり、調停が成立しない場合には裁判所が一時的な判断を下すものです。労働審判を経ずに訴訟を申し立てることもできます。

労働審判については以下の記事で詳しく解説しています。

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訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。

~給与金額に不満がある場合には定年後再雇用を拒否するべき?~

給与金額に不満がある場合であっても、安易に会社側の提示する条件を拒否してしまうと、その後、定年後の給与を争うことが難しくなってしまう場合がありますので注意が必要です。

例えば、裁判例は、労働契約法20条は、「『有期労働契約を締結している労働者』の労働契約の内容である労働条件について規定するものであるが、控訴人は、定年退職後、被控訴人と再雇用契約を締結したわけではないから、本件において、少なくとも直接的には、本条を適用することはできないというべきである」(福岡高判平29.9.7労判1167号49頁[九州惣菜事件])と判示しています。

労働者が受け入れることが困難な条件が提示された場合には、これを拒否しても慰謝料請求をすることができる場合がありますが、定年後再雇用により働いていた場合に比べて得られる金額は低廉になりがちです。

そのため、定年後再雇用の給与金額に不満がある場合であっても、一度再雇用契約自体は締結したうえで、同一労働同一賃金の原則を主張して差額の賃金を請求した方がリスクを抑えることができる可能性があります

減額された給与を補填する方法3つ

定年後再雇用により減額された給与を補填する方法としては、例えば以下の3つがあります。

方法1:高年齢雇用継続給付の受給
方法2:資産運用
方法3:年金の前倒し

方法1:高年齢雇用継続給付の受給

高年齢雇用継続基本給付金とは、60歳以後の賃金(みなし賃金を含む)が60歳時点の75%未満となっている場合に一定の条件を満たすことにより支給される給付金です。

高年齢雇用継続基本給付金の金額は、賃金の低下率に応じた支給率を、支給対象月に支払われた賃金額に乗ずることにより計算します。

例えば、60歳到達時の賃金月額が30万円である場合において、
・支給対象月に支払われた賃金が20万円のときは支給額は1万6340円となります。
・支給対象月に支払われた賃金が18万円のときは支給額は2万7000円となります。

給付期間は、60歳に到達した月から65歳に達する月までです。

申請手続は、原則として、会社を経由して行います。

方法2:資産運用

老後の生活資金を貯めるために早い段階から資産を運用して貯蓄を作っておく方法があります。

定年後の生活資金を貯める目的の場合には、できるだけリスクを抑えなから増やしていくというバランス型投資信託が好まれる傾向にあります。

一つのファンドの中で分散投資がされていますので、一種類の投資信託を購入するだけで、様々な地域・種類の資産へ投資することができ、リスクを分散することができます。

現在は、NISA口座を利用して定年前から毎月3万円程度、資産運用をしている方が増え始めています。

NISAとは、「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる制度です。

通常は、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金がかかります。

セカンドライフ資金 : 金融庁 (fsa.go.jp)

方法3:年金の繰り上げ受給

60歳以降の生活を維持する方法として年金を繰り上げて受給する方法があります。

ただし、60歳から繰り上げて年金を受給した場合には、年金の受給金額は30%減少します(1か月あたり0.5%減少×60か月)。

85歳まで年金を受給すると想定すると生涯でもらえる金額が大きく減少してしまうのでおすすめしません。

また、「賃金+年金」の月額が65歳未満の方は28万円、65歳以上の方は47万円を超えた場合には、年金の一部または全部が支給停止となることにも注意が必要です。

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65歳まで働けない場合の慰謝料や賃金請求については、法的な事項ですので弁護士のサポートを受けるのが安心です。

ただし、65歳までの雇用確保については、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」や「再雇用拒否の判例の傾向」を熟知している必要があり、専門性の高い分野になります

そのため、定年後の再雇用拒否に注力している弁護士を探すことがおすすめです!

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まとめ

以上のとおり、今回は、定年後再雇用の給与減額について、同一労働同一賃金の原則や慰謝料を説明した上で、対処手順を分かりやすく解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

・定年後再雇用の給与水準の平均は、61歳時点において、60歳直前の給与の73.5%となっています。

・「定年後再雇用労働者」と「定年前の正規労働者」の間の賃金格差は、同一労働同一賃金の原則に違反することがあります。

・最近の裁判例では、定年後再雇用時の基本給が定年退職時の基本給の60%を下回る限度で違法とする判決がされたものがあります

・定年後再雇用において会社から提示される労働条件が不当なものであったため、労働者がこれを受け入れることができない場合には、慰謝料請求の対象となることがあります。

・定年後再雇用の給与を争うには、以下の手順がおすすめです。
手順1:証拠収集
手順2:通知書の送付
手順3:交渉
手順4:労働審判又は訴訟

・定年後再雇用により減額された給与を補填する方法としては、例えば以下の3つがあります。
方法1:高年齢雇用継続給付の受給
方法2:資産運用
方法3:年金の前倒し

この記事が定年後再雇用の給与が大きく減額されてしまい困っている方の助けになれば幸いです。

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