労働一般

労働者性-業務委託契約でも労働者に当たる場合-

 労働基準法の適用される、「労働者」とは、どのような方を指すのでしょうか。労働契約は、基本的に民法上の雇用契約(民法623条)と同一の概念であると解されています。もっとも、業務委託契約や請負契約、有償(準)委任契約との形式で契約が締結されている場合においても、その実態等から労働者に該当する場合があります。今回はどのようにして「労働者」性を判断するかを見ていきましょう。

労働者性の判断方法

 裁判例では、労働者性は、雇用、請負、委任といった外形的な契約形式・名称によるのではなく、労務遂行過程における事実上の使用従属関係の有無によって判断すべきとされています(東京地判昭48.2.6労判179号74頁等)。
 具体的に考慮要素とされているのは、①指揮監督関係の存在、②報酬の労務対償性、③その他労働者性の判断を補強する要素です。
 類型ごとに考慮すべき具体的な要素は異なるとされているため、以下では、個別の類型ごとに分けて見ていきます。

個人事業者的類型

 労働大臣(当時)の私的諮問機関である労働基準法研究会は、昭和60年12月19日付け報告書(労判465号69頁)において、「労働基準法の『労働者性』の判断基準について」を取りまとめています(以下、「労働基準報告書」といいます。)。
 個人事業主的類型について、これまでの裁判例は、労働基準報告書を踏まえつつ具体的な事情を総合考慮した判断しています。
 労働基準報告書は、労働者該当性の判断要素につき以下のように整理しています。

1 ①指揮監督関係の存在
⑴ 具体的な仕事の依頼、業務指示等に対する諾否の自由の有無
⑵ 業務遂行上の指揮監督関係の存否・内容
⑶ 時間的および場所的拘束性の有無・程度
⑷ 労務提供の代替性の有無
2 ②報酬の労務対償性
支払われる報酬の性格・額等
3 ③労働者性の判断を補強する要素
⑴ 業務用機材等機械・器具の負担関係
⑵ 専属性の程度
⑶ 服務規律の適用の有無
⑷ 公租公課の負担関係等

【最一判平8.11.28[横浜南労基署事件]】
 自己の所有するトラックをA社の工場に持ち込む形態の運転手Xが倉庫内で運送品をトラックに積み込む作業中に足を滑らせて転倒し、負傷したため、これによる療養と休業について労働者災害補償保険法に基づき療養補償給付及び休業補償給付の支給を求めた事案に関し、同裁判例は、以下のように判示しています。
 「Xは、業務用機材であるトラックを所有し、自己の危険と計算の下に運送業務に従事していたものである上、A社は、運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、Xの業務の遂行に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず時間的、場所的な拘束の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、XがA社の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りないものと言わざるを得ない。そして、報酬の支払方法、公租公課の負担等についてみても、Xが労働基準法上の労働者に該当すると解するのが相当とする事情はない。」
 「そうであれば、Xは、専属的にA社の製品の運送業務に携わっており、同社の運送係の指示を拒否する自由はなかったこと、毎日の始業時刻及び終了時刻は、右運送係の指示内容のいかんによって事実上決定されることになること、右運賃表に定められた運賃は、トラック協会が定める運賃表による運送量よりも1割5分低い額とされていたことなど…を考慮しても、Xは、労働基準法上の労働者ということはできず、労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しない。」

経営者(取締役等)的類型

 株式会社の取締役は、会社と委任関係にあり(会社法330条)、会社の業務執行に関する意思決定を行いまたは自ら業務執行に当たる者であるため、原則として労働者に該当しないと解されます。
 もっとも、名目上は取締役であっても上司の指揮命令を受けて労働に従事する者については、労働基準法、労働者災害補償保険法の適用の関係で労働者性が肯定される場合があります
 取締役の労働者性の判断について、裁判例は、以下の要素を考慮していると整理されています。

1 ①指揮監督関係の存在
⑴ 法令上の業務執行権限の有無・内容
⑵ 取締役としての業務遂行の有無・内容
⑶ 代表取締役からの指揮監督の有無・内容
⑷ 拘束性の有無・内容
⑸ 提供する労務の内容
2 ②報酬の労務対償性
⑴ 会計上、賃金として処理されているか、役員報酬として処理されているか
⑵ 一般の従業員との異同
⑶ 取締役就任時の支給額の増額の有無・程度
3 ③労働者性の判断を補強する要素
⑴ 取締役就任経緯等
⑵ 労働保険・社会保険上の取扱い

【保存版】取締役の報酬金請求と名ばかり取締役の賃金請求取締役はどのような場合に報酬金を請求することができるのでしょうか。また、取締役は、残業代等の賃金を請求することはできないのでしょうか。今回は、取締役の報酬金請求と名ばかり取締役の賃金請求について解説します。...

教育訓練的類型

 研修生等の教育訓練を受ける者は、労務の提供をするものといえるのかが問題になります。
 最二判平17.6.3民集59巻5号938頁[関西医科大学事件]は、医師法所定の臨床研修を行う医師の労働者性について、研修医が医師法所定の臨床研修において医療行為等に従事する場合には、これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり、病院の開設者の強い監督の下にこれを行ったと評価することができる限り、労働基準法上の労働者に当たるとしています。

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弁護士 籾山善臣
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