セクハラでクビを言い渡されてしまい悩んでいませんか?
性的な意図で行ったわけではなくても、セクハラと指摘されてしまうと不安になってしまいますよね。
昨今、ハラスメントについての意識が高まっており、セクハラを理由に解雇までされてしまう事案が増えています。
セクハラを理由とする解雇も、その程度次第では有効とされることもありますが、悪質性がとくに高いものに限定されています。
実際、判例でも、セクハラを理由とした解雇が無効とされた例があります。
セクハラでクビを言い渡された場合でも、生活やキャリアを守るためには焦らずに冷静に対処することが大切です。
実は、セクハラと指摘された際に、焦って、退職合意書にサインしたり、事実関係を十分に確認せずに謝罪をしてしまったりすることにより、不利になってしまうことが多いのです。
この記事をとおして、セクハラでクビにすると言われた際に、知っておいていただきたい知識をお伝えすることができれば幸いです。
今回は、セクハラでクビになるかを説明したうえで、不当解雇の基準や判例と簡単な対処法4つを解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、セクハラでクビを言い渡された際にどうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次
セクハラでクビになる?
セクハラでクビになることがあります。法的にも、セクハラの程度によっては、解雇が正当とされることがあります。
セクハラの程度次第では、当該労働者の雇用を継続することが困難と言えることもあるためです。
実際、昨今、セクハラを理由にクビを言い渡されてしまう事案が増えています。
ハラスメントについての意識が高まっており、コンプライアンスの観点からハラスメントの防止に努める会社も増えてきているのです。
例えば、ある日、突然、人事からミーティングなどを設定されて、セクハラ被害の申告があったことを告げられます。
その場で概要などを伝えられ、心当たりがあるかどうか、弁解することがあるかどうかなどを確認されます。
会社によっては、その場に貸与PCやスマートフォンをすべて置いて、明日から自宅で待機しているように指示されることがあります。
そして、その後、退職勧奨をされたり、解雇を通知されたりすることがあるのです。
ただし、労働者が重大なセクハラを行ったわけではないのに、重大なセクハラを行ったかのごとく仕立て上げて、解雇するための材料とされるケースも少なくありません。
そのため、労働者としても、セクハラにおけるクビについて知っておく必要があるのです。
セクハラによるクビと不当解雇の基準
セクハラによるクビについては、セクハラの有無や内容によっては不当となることがあります。
解雇は、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当と言えなければ、濫用となるためです。
具体的には、セクハラの程度ごとに区分したうえで、解雇の不当性について説明していきます。
犯罪に該当するセクハラ|有効となりやすい
繰り返される執拗なセクハラ|有効となりやすい
配慮を欠くにとどまる初犯のセクハラ|無効となりやすい
性的な意図のないセクハラ|無効となりやすい
それでは、順番に説明していきます。
犯罪に該当するセクハラ|有効となりやすい
犯罪に該当するセクハラは、解雇が有効となりやすい傾向にあります。
被害者に与える精神的衝撃や企業の秩序に与える悪影響が著しく、当該従業員の雇用を継続することが難しいことが多いためです。
例えば、無理やり陰部に触れる、乳房を弄ぶ、キスをするなどの行為などです。
繰り返される執拗なセクハラ|有効となりやすい
繰り返される執拗なセクハラは、解雇が有効となりやすい傾向にあります。
会社から指導をされて、改善の機会があったにもかかわらず、セクハラをやめずに繰り返す場合には、雇用の継続が困難とされることがあるためです。
例えば、注意されたにもかかわらず、執拗に、食事に誘う場合や何度も交際を求める場合、職場で性的な言動をする場合、肩や手、髪などに触れる場合などです。
配慮を欠くにとどまる初犯のセクハラ|無効となりやすい
配慮を欠くにとどまる初犯のセクハラは、解雇が無効となりやすい傾向にあります。
勿論、異性が不快に感じないよう配慮を心がけることは当然のことではありますが、完成は人それぞれであり主観的になりやすい傾向にあります。
解雇が有効されるには客観的に合理的な理由が必要となりますので、その被害者が不快に感じたにとどまり、一般に悪質と言えないような場合には解雇は難しいでしょう。
とくに初犯となれば、誰しもがそのような発言や態様をしてしまう可能性がありますし、指導があれば改善の余地があります。
そのため、配慮を欠くにとどまる初犯のセクハラは、無効となりやすいのです。
性的な意図のないセクハラ|無効となりやすい
性的な意図のないセクハラは、解雇が無効となりやすい傾向にあります。
性的な意図なく行われる際には、性的な意図により行われる場合と比べて被害者の精神的な衝撃や企業秩序への悪影響も大きくない傾向にあります。
労働者自身も悪意をもって行っているわけではないため、指導を行うことにより、十分に改善の余地があります。
そのため、性的な意図のないセクハラは、無効となりやすいのです。
セクハラによるクビ(解雇)の判例3つ
セクハラによるクビについては、いくつかの裁判例が蓄積されています。
これまでにも、セクハラを理由とした解雇について、不当解雇であるとしてその有効性が争われたものがあるのです。
例えば、セクハラを理由としたクビの裁判例としては、以下の3つを挙げることができます。
・東京地判平成17.1.31判時1891号156頁[日本HP本社セクハラ解雇事件]
・東京地判平22.12.27労経速2097号3頁[X社事件]
・東京地判平21.4.24労判987号48頁[Y社(セクハラ・懲戒解雇)事件]
それでは、これらの判例について順番に説明していきます。
東京地判平成17.1.31判時1891号156頁[日本HP本社セクハラ解雇事件]
【事案】
本件の原告は、日常的に性的な発言をしたり、身体的接触を繰り返した上、飲食を共にした際に無理やりキスをしたり、深夜自宅付近まで押し掛けて自動車に乗せ、車中で手を握るなどし、残業中に胸に触ったりしました。
【裁判所の判断】
裁判所は、役員に次ぐ地位で従業員を管理監督する立場であったのもかかわらず、立場上拒絶が困難なものに対して上記行為に及んだことにつき、その責任は極めて重いとしました。
また、裁判所は、当該雇用主が、セクハラ防止に関して周知徹底する措置等を告知していたにもかかわらず、これらを軽視して上記行為に及んだという点を指摘しています。
最終的に、懲戒解雇は相当であるとされ、濫用ではないと判断されました。
東京地判平22.12.27労経速2097号3頁[X社事件]
【事案】
原告は、3月18日の未明から早朝にかけて、女性2名(DとE)が宿泊しているホテルの客室に居座り、帰宅を促されても無視し続け、嫌がる女性に対して、わいせつ行為を繰り返しました。
わいせつ行為の内容は、頭を撫で、ほほや唇にキスをして口の中に2、3回舌を入れるなどし、服の中に手を入れて腹や太ももを直接撫で、下着の中にまで手を入れようとするなどの行為を繰り返すものでした。
さらに、嫌がるEに対しても、服の中に手を入れて直接乳首を触り、これを避けようとした腕をつかんで舐め、指で唇を触り、口の中に指を入れるなどしたとされています。
【裁判所の判断】
裁判所は、本件わいせつ行為の悪質性、重大性に照らせば、被告が懲戒処分の中でもっとも厳しい解雇処分を選択することも十分に合理性を有するものであると判断しました。
東京地判平21.4.24労判987号48頁[Y社(セクハラ・懲戒解雇)事件]
【事案】
原告は会社の宴会や日常の業務において、複数の女性従業員に対し不適切な言動を行っていました。
宴会では新人の女性に膝の上に座るように求めたり、他の女性に対しても不適切な発言をしていました。
また、日常的にも女性従業員の身体的特徴に触れる発言を繰り返していました。
ただし、強制的な性的行為には至らなかったと判断されています。また、会社は、原告に対して、指導や注意も行っていませんでした。
【裁判所の判断】
裁判所は、原告のセクハラ行為は違法で懲戒に値するものであると認めましたが、会社が懲戒解雇を即座に選択したことは過剰であると判断しました。
会社は原告を降格または異動させるなどの他の措置を講じることができたと考えられます。
したがって、懲戒解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上も相当ではないとし、権利の濫用として無効であると認めました。
セクハラでクビにされた場合の対処法
セクハラでクビを言い渡された場合でも、生活やキャリアを守るためには焦らずに冷静に対処することが大切です。
セクハラと指摘された際に、焦って、退職合意書にサインしたり、事実関係を十分に確認せずに謝罪をしてしまったりすることにより、不利になってしまうことが多いのです。
具体的には、セクハラでクビにされた場合の対処法は、以下のとおりです。
対処法1:弁護士に相談する
対処法2:証拠を保全する
対処法3:交渉する
対処法4:労働審判又は訴訟を提起する
それでは、これらの対処法について順番に説明していきます。
対処法1:弁護士に相談する
セクハラでクビを言い渡された際の対処法の1つ目は、弁護士に相談することです。
セクハラの有無や内容を踏まえて、見通しやリスクを分析して慎重に対応していくべきだからです。
会社に対して一度発言した内容や態様は後から撤回することは容易ではありません。
とくにハラスメントの事案については、ハラスメントを指摘された後の自分自身の発言や態様が自身に不利な証拠として提出されるケースが圧倒的に多いのです。
私が多くのハラスメント解雇の相談を受ける中でも、もっと早く相談していただきたかったと感じることが少なくなりません。
そのため、セクハラでクビを言い渡されても、その場では何も回答せず、「弁護士に相談したうえで回答します。」とだけ答えて、一度持ち帰るべきなのです。
対処法2:証拠を保全する
セクハラでクビを言い渡された際の対処法の2つ目は、証拠を保全することです。
セクハラで解雇された際にその不当性を争うには、その発言の文脈や態様の経緯、具体的な内容を丁寧に説明していくことが大切です。
会社側は、発言や態様の一部のみを切り取って強調して主張してくることが多いためです。
セクハラを指摘されると、貸与PCからロックアウトされたり、業務用スマートフォンの返却を求められたりします。
場合によっては、被害者とされる異性とのLINEの履歴のその場で削除するよう求められることもあります。
そうなると、労働者側がセクハラの有無や程度を争うための事実や証拠を集めることが難しくなってしまいます。
そのため、セクハラを指摘された際には、早急にあなた自身を守るための証拠を保全することが大切なのです。
どのような証拠を集めればいいのかについては、事案によっても異なりますので、弁護士に相談するといいでしょう。
対処法3:交渉する
セクハラでクビを言い渡された際の対処法の3つ目は、交渉することです。
まずは、弁護士から、会社に対して、解雇は無効であること、解雇理由証明書の交付を求めること等を記載した通知書を送付してもらいましょう。
会社側から回答があると争点が明らかになりますので、折り合いをつけることが可能かどうか協議をすることになります。
対処法4:労働審判又は訴訟を提起する
セクハラでクビを言い渡された際の対処法の4つ目は、労働審判又は訴訟を提起することです。
話し合いにより解決することが難しい場合には、裁判所を用いた解決を検討することになります。
労働審判は、全三回の期日で調停による解決を目指す手続きであり、調停が成立しない場合には労働審判委員会が審判を下します。迅速、かつ、適正に解決することが期待できます。
労働審判については、以下の記事で詳しく解説しています。
労働審判については、以下の動画でも詳しく解説しています。
訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。
解雇の裁判については、以下の記事で詳しく解説しています。
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まとめ
以上のとおり、今回は、セクハラでクビになるかを説明したうえで、不当解雇の基準や判例と簡単な対処法4つを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・セクハラでクビになることがあります。法的にも、セクハラの程度によっては、解雇が正当とされることがあります。
・セクハラの程度ごとに区分したうえで、解雇の不当性について説明していきます。
犯罪に該当するセクハラ|有効となりやすい
繰り返される執拗なセクハラ|有効となりやすい
配慮を欠くにとどまる初犯のセクハラ|無効となりやすい
性的な意図のないセクハラ|無効となりやすい
・セクハラを理由としたクビの裁判例としては、以下の3つを挙げることができます。
・セクハラでクビにされた場合の対処法は、以下のとおりです。
対処法1:弁護士に相談する
対処法2:証拠を保全する
対処法3:交渉する
対処法4:労働審判又は訴訟を提起する
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。