労働一般

就業規則とは何か-よくわかる就業規則の効力-

 皆さんは自分の会社の就業規則をご存知でしょうか。就業規則は、事業所ごとに労働に関するルールを規定したものであり、労働者の利益にもなるものです。現実の労働環境が就業規則に違反していることもよく見られます。それでは、この就業規則とは法的にはどのようなものなのでしょうか。就業規則にはどのような効力があるのでしょうか。今回は、就業規則について解説します。

就業規則とは

 就業規則とは、事業場の労働者集団に対して適用される労働条件や職場規律に関する規則類をいいます。
 多数の労働者を協働させる事業においては、労働条件を公平・統一的に設定し、かつ職場規律を規則として設定することが、効率的な事業経営のために必要となります。そのため、多くの企業において就業規則が作成されています。

就業規則の効力

締結における労働契約規律効

 就業規則には、労働契約規律効があります。
 労働契約の締結における労働契約規律効とは、①就業規則が合理的な労働条件を定めており、②これを労働者に周知している場合には、労働契約の内容は就業規則で定める労働条件によることになるという効果です(労働契約法7条)。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則で定める基準以上の労働条件を合意している場合には、この限りではありません
 合理性は、就業規則が定める当該の労働条件それ自体の合理性であり、企業の人事管理上の必要性があり、労働者の権利・利益を不相当に制限してなければ肯定されるべきとされています。裁判例上も、この合理性が否定されたことはほとんどありません。もっとも、服務規律・懲戒規程等について、裁判所は、労働者の利益に配慮して、就業規則の規制内容を合理的に限定解釈することは頻繁に行っています
 周知は、実質的に見て事業場の労働者集団に対して当該就業規則の内容を知りうる状態に置いていたことと解されています。そのような方法がとられていれば、当該労働者が実際に就業規則の内容を知ったかどうかは問われません。

労働契約法7条
「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。」

就業規則の周知-周知の方法や程度-就業規則が労働契約を規律するためには、これが周知されていることが必要です。では、どのような場合に、就業規則が周知されているといえるのでしょうか。今回は、就業規則の周知について解説します。...

変更における労働契約規律効

 労働契約の変更における労働契約規律効とは、就業規則の不利益変更につき、労働者の合意を原則としつつも、これを欠く場合であっても、合理的な理由があるときは、労働契約の内容である労働条件は変更後の就業規則の定めによるとする効果です(労働契約法9条、10条)。
 ここでいう労働者の合意は、使用者の行う就業規則変更による労働条件変更に対する合意を指します。

労働契約法9条(就業規則による労働契約の内容の変更)
「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。」
労働契約法10条
「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等々の交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。」

就業規則の不利益変更-合理性が認められない場合-使用者により就業規則が不利益に変更されることがあります。就業規則の不利益変更はどのような場合に認められるのでしょうか。今回は、就業規則の不利益変更について解説します。...

就業規則の最低基準効

 就業規則には、最低基準効があります。
 最低基準効とは、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は無効となり、その部分については、就業規則の定める基準によることになる効果です(労働契約法12条)。
 例えば、就業規則に規定された基準よりも不利益に労働条件を引き下げることは、労働者の個別的な合意があっても許されないことになります。

労働契約法12条(就業規則違反の労働契約)
「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」

法令・労働協約に反する場合

 就業規則が法令または労働協約に反する場合には、就業規則の当該条項については労働契約法で定める労働契約規律効、最低基準効は発生しません(労働契約法13条)。

労働契約法13条(法令及び労働協約と就業規則との関係)
「就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、第7条、第10条及び前条の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しない。」

就業規則の作成義務・手続等

就業規則の作成義務

 使用者は、常時10人以上の労働者を使用する場合には、就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければなりません
 「常時」10人以上…使用するとは、常態として10人以上を使用しているとの意味です。一時的に10人未満となることがあっても通常は10人以上していればこれに該当します。
 「10人以上」は、企業単位ではなく事業場単位で計算すると解されています。
 「労働者」には、正社員、パート、契約社員などの雇用形態のいかんを問わず当該事業場で使用されている労働者が入ります。ただし、下請労働者、派遣労働者など使用者を異にする労働者は含まれません。
 なお、10人未満の労働者しか使用しない事業場であっても就業規則の作成をすることはでき、作成した場合には、労働契約規律効や最低基準効が生じることになります。

労働基準法89条(作成及び届出の義務)
「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。…以下略」

就業規則の記載事項

 就業規則の必要的記載事項は以下のとおりです。

⑴「始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交代に就業させる場合においては就業時転換に関する事項」(89条1号)
⑵「賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」(89条2号)
⑶「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)(89条3号)
⑷「退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項」(89条3号の2)
⑸「臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項」(89条4号)
⑹「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」(89条5号)
⑺「安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項」(89条6号)
⑻「職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項」(89条7号)
⑼「災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項」(89条8号)
⑽「表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」(89条9号)
⑾「前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項」(89条10号)

 1号~3号(上記⑴~⑶)については、いかなる場合にも必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」とされています。
 3号の2~10号(上記⑷~⑾)については、定めをする場合においては記載しなければならない「相対的記載事項」とされています。

労働者の意見聴取

 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければなりません(労働基準法90条1項)。そして、就業規則の作成または変更を届け出る際には、意見を記した書面を添付しなければなりません(労働基準法90条2項)。ただし、この義務は常時10人以上の労働者を使用する使用者にのみ課されたものとされています。
 「労働者の過半数で組織する労働組合」とは、当該事業場のすべての労働者のうち過半数の者で組織する労働組合です。
 「労働者の過半数を代表する者」とは、選出の目的を明示し当該事業場の労働者全員が参加しうる投票または挙手等の方法によって選出した代表者をいいます(労基則6条の2)。
 「意見を聴かなければならない」とは、意見を聴けばよい(諮問)との意味であり、同意を得るとか協議をするという意味ではないとされています。
 意見聴取、届出の手続を欠いた場合においても、労働契約締結における労働契約規律効は生じるとされています。就業規則の変更の場合の労働契約規律効についてはこれらの手続を踏むべきことが規定されていますが(労働契約法11条)、労働契約の締結における労働契約規律効については規定されていないからです(労働契約法7条)。
 また、同様に、意見聴取、届出の手続を欠いた場合においても、最低基準効は生じるとされています。

労働基準法90条(作成の手続)
1項「使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
2項「使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。」

賃金規程等の別規則

 就業規則は、その記載内容が多岐にわたるため、就業規則の一部を「賃金規程」「退職金規程」「安全衛生規程」などとして、別規則とすることがあります。
 「賃金規程」等の名称が付され別規則とされていても、就業規則の一部であることに変わりはありませんので、本規則と同時に作成しなければならず、その作成手続も効力も本規則と同様とされています。

ABOUT ME
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。主な取扱分野は、人事労務、離婚・男女問題、相続、企業法務、紛争解決(訴訟等)、知的財産、刑事問題等。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。
残業代に注力している弁護士に相談してみませんか?

・「残業代を請求したいけど、自分でやるのは難しそうだな…」
・「会社と直接やりとりをせずに残業代を請求する方法はないのかな?」
・「働いた分の残業代は、しっかり払ってほしいな…」

このような悩みを抱えていませんか。このような悩みを抱えている方は、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

残業代には2年の時効がありますので、早めに行動することが大切です。

初回の相談は無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください。

365日受付中
メール受付時間:24時間受付中
電話受付時間:09:00~22:00

メールでの相談予約はこちら

お電話での相談予約はこちら

▼PCからご覧になっている方・お急ぎの方はこちらへお電話ください(直通)▼
090-6312-7359
※スマホからならタップでお電話いただけます。