労働一般

就労請求権が認められるのはどのような場合か

 労働者は、使用者に対して、就労を請求することはできるのでしょうか。
 例えば、使用者が労働者に自宅待機を命じた場合や、業務の指示を行わないなど就労を妨害する場合に、労働者が使用者に対して就労を受領するように請求することができるかが問題となります。
 今回は、就労請求権が認められるのはどのような場合かについて解説します。

就労請求権とは

 就労請求権とは、労働契約関係の存在を前提に、労働者が使用者に対して自らの就労を求める権利です。
 つまり、使用者は、労働者が就労できるようになるため、必要な指揮命令などを与えつつ自己が統御する労働過程に組み込み、当該労働の提供が実効的なものとなるようにする義務を負うかどうかの問題です。

就労請求権は原則として認められない

 労働者は、原則として、使用者に対して、就労請求権を有しないとされています。労働義務は、あくまでも「義務」であって、権利ではないとされるためです

【東京高決昭33年8月2日労民集9巻5号831頁[読売新聞社事件]
 「労働契約においては、労働者は使用者の指揮命令に従つて一定の労務を提供する義務を負担し、使用者はこれに対して一定の賃金を支払う義務を負担するのが、その最も基本的な法律関係であるから、労働者の就労請求権について労働契約等に特別の定めがある場合又は業務の性質上労働者が労務の提供について特別の合理的な利益を有する場合を除いて、一般的には労働者は就労請求権を有するものでないと解するのを相当とする。本件においては、抗告人に就労請求権があるものと認めなければならないような特段の事情はこれを肯認するに足るなんの主張も疎明もない。」

例外1:労働契約等に特別の定めがある場合

 労働者は、例外的に、就労請求権について労働契約等に特別の定めがある場合には、使用者に対して、就労を請求することができます。
 そのため、雇用契約書や就業規則に就労請求権についての記載があるかを確認することになります。
 裁判例では、大学教員の事案で就業規則で学問研究を行うことが明確に予定されていることを理由に、大学で学問研究を行うことを雇用契約上の権利とする旨の黙示の合意があるとしたものがあがあります(仙台地判平9年7月15日労判724号34頁[栴檀学園(東北福祉大学)事件])。

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例外2:特別の合理的な利益を有する場合

 また、労働者は、例外的に、業務の性質上労務の提供について特別の合理的な理由を有する場合には、使用者に対して、就労を請求することができます。
 裁判例では、調理人の就労に関して、調理人はその仕事の性質上単に労務を提供するというだけでなく、調理長等の指導を受け、調理技術の錬磨習得を要するものであることは明らかであり、調理人としての技量はたとえ少時でも職場を離れると著しく低下するとして、就労請求権を認めたものがあります(名古屋地判昭45年9月7日労経速731号7頁[レストラン・スイス事件])。
 もっとも、この例外は容易には認められない傾向にあります。裁判例では、勤務医の事案について、長時間の不就労によって診断、治療に要請される高度の判断力、決断力が急速に失われることを認めつつ、かかる不利益につき他病院での臨時就労または自己研鑽および職場復帰後の研修等でかなりの程度まで回復することができるとして、就労請求権を認めなかったものがあります(仙台地決昭和60年2月5日労民集36巻1号32頁[日本海員掖済会事件])。

賃金及び休業手当の請求

 仮に、労働者が使用者に対して就労を請求することができなくとも、労働者が就労できないのが使用者の責めにすべき事由による場合には、労働者は、使用者に対して、就労できない期間の賃金若しくは休業手当を請求することができます(民法536条2項、労働基準法26条)。

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