未払残業代・給料請求

【誰でもわかる】残業代とは何か?-残業代の意味とルール-

 自分の残業代がしっかり支払ってもらえているかどうか気になったことはありませんか。そもそも、残業代とは法律上どのようなものなのでしょうか。どのような種類があり、どのように計算すればよいのでしょうか。
 残業代について正しい知識を身に着けることができれば、給与明細を見たときに残業代が適切に支払われているかどうかも判断することができます。
 今回は、残業代の意味とルールについて解説します。

残業代とは何か

残業代の意味

 残業代とは、所定・法定労働時間を超えて働いた場合、所定・法定休日に働いた場合、深夜に働いた場合に支払われるべき賃金のことを言います。つまり、実際に働くべき時間よりも長い時間働いた場合に支払われるべき賃金です。
 厚生労働省による「毎月勤労統計調査 令和2年4月分結果確報」によると、「就労形態計」の「所定時間外労働時間」は「9.0」時間、「所定外給与」は「17,861円」となっています。
出典:厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和2年4月分結果確報

残業代の種類

⑴ 法定外割増賃金

 法定外割増賃金には、法定時間外割増賃金、法定休日割増賃金、深夜割増賃金があります。
 法定時間外割増賃金とは、1日又は1週間の法定労働時間を超えて労働した場合の割増賃金です。1日の法定労働時間は8時間、1週間の法定労働時間は40時間です。
 法定休日割増賃金とは、法定休日に労働した場合の割増賃金です。法律上、毎週1日の休日を与えなければなりません。
 深夜割増賃金とは、深夜労働をした場合の割増賃金です。深夜労働は、午後10時から午前5時までの間の労働です。

⑵ 所定外手当

 所定外手当は、就業規則等の定めによることになります。
 所定時間外手当とは、所定労働時間を超えて働いた場合に支払われる手当です。所定労働時間とは、所定就業時間から所定休憩時間を差し引いた時間をいいます。所定就業時間は労働契約で決められた始業時から終業時までの時間です。
 所定休日手当とは、所定休日に働いた場合に支払われる手当です。

残業代の計算方法

法定割増賃金

 残業代について、法定割増賃金については以下の方法により計算します。

⑴ 法定時間外割増賃金
基礎賃金÷所定労働時間×1.25×法定時間外労働時間数
⑵ 法定休日割増賃金
基礎賃金÷所定労働時間×0.25×深夜労働時間数
⑶ 法定休日割増賃金
基礎賃金÷所定労働時間×1.35×法定休日労働時間数

 所定労働時間については、月給制の場合には月平均所定労働時間、日給制の場合には1日の所定労働時間数により計算することになります。
 より正確な計算方法については下記のリンクを参照ください。

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所定外手当

 所定外手当については、原則として、通常の労働時間の賃金を支払わなければならないとされています(昭和23年11月4日基発1592号)。つまり、少なくとも、1.0倍により計算した手当の支払いが必要となります。もっとも、労働協約や就業規則等によって、別に賃金額を定めることは差し支えないとされています。
 会社が就業規則で所定休日と法定休日を区別することなく割増率を定めている場合には、所定外休日についても法定休日と同じ取り扱いをする趣旨であると解されます(東京地判平12.2.23労判784号58頁[最上建設事件])。

計算例

 試しに、基礎賃金月30万円、月平均所定労働時間が160時間の労働者の法定時間外労働割増賃金について計算してみましょう。
 例えば、当該労働者が1か月あたり100時間の法定時間外労働を行った場合には、1か月当たりの法定時間外割増賃金は、

30万円÷160時間×1.25×100時間=23万4375円

となります。
 もしも、これまで残業代の支払いが全くされておらず、使用者に対して、残業代を請求する場合には、消滅時効との関係で2年分の残業代を請求するのが通常です。上記法定時間外割増賃金を2年分にすると、

23万4375円×24か月=562万5000円

となります。
 以下の残業代早見表をご参照ください。

残業代の請求方法

では、実際に会社に対して残業代を請求するにはどうすればいいのでしょうか。

ステップ1:消滅時効を止める

 残業代の消滅時効期間は、2年間とされています(但し、2020年4月1日以降が支払い日とされる残業代の消滅時効期間は3年となります)。そのため、未払いの残業代がある場合でも支払い日から2年が経過したものについては、消滅し続けていることになります。
 残業代を請求することに決めた場合には、まず消滅時効を止める必要があります。具体的には、使用者に対して2年分の残業代を請求する意思を伝えることにより、未払い残業代の支払いを「催告」します。これにより、「催告」から6か月を経過するまでは、消滅時効の完成が猶予されます。

ステップ2:計算資料の開示を求める

 次に、残業代を計算するには、労働時間や割増率に関する資料が必要です。そのため、使用者に対して、タイムカード、就業規則、給与規程等の開示を求めることになります
 使用者は、労働者に対して、信義則上タイムカードの開示義務を負っていますので、開示を拒めば不法行為となることがあります。

ステップ3:残業代の計算をする

 計算資料を集めることができたら残業代を計算することになります。
 残業代を計算するに際しても、基礎賃金の計算方法、所定労働時間の確認、労働時間該当性の判断、割増率の適用などについて、法的な判断が明確でないことがあります。残業代は計算方法により金額が大きく変わることもあるため、一度、弁護士に相談に行かれるのがいいでしょう。

ステップ4:残業代の請求を行い交渉する

 具体的な残業代金額が計算できた場合には、会社に対して、その支払いを求めていくことになります。
 もっとも、労働者から残業代の請求があった場合、会社も通常は顧問弁護士に相談をすることになります。残業代の計算方法につき会社からも反論がなされるため、話し合いにより解決が可能かどうか裁判例などを踏まえて交渉を行うことになります。

ステップ5:労働審判・訴訟等の申立を行う

 話し合いにより解決を行うことが難しい場合には、労働審判や訴訟など裁判所を用いた手続きを検討することになります。

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まとめ

 労働者
 労働者
残業代とは、法的にはどのようなものなのでしょうか。
弁護士
弁護士
残業代とは、実際に働くべき時間を超えて働いた場合に支払われるべき賃金です。より正確に言うと、所定・法定労働時間を超えて働いた場合、所定・法定休日に働いた場合、深夜に働いた場合に支払われるべき賃金のことをいいます。
  労働者
  労働者
なるほど。残業代にはどのような種類があるのですか。
弁護士
弁護士
残業代には、大きく分けて法定割増賃金と所定外手当があります。法定割増賃金には、法定時間外割増賃金、法定休日割増賃金、深夜割増賃金があります。所定外手当については、会社ごとの就業規則などを確認することになります。
 労働者
 労働者
残業代についてはどのように計算すればいいのですか。
弁護士
弁護士
残業代を計算するに当たっては、まず残業代の計算の基礎となる時給金額を算定する必要があります。そのため、基礎賃金をその労働時間数で除することになります。これにより算定された基礎時給に割増率と残業時間数を乗じることになります。
 労働者
 労働者
割増率についてはどのように決まっていますか。
弁護士
弁護士
基本は、法定時間外労働については1.25倍、法定休日労働については1.35倍、深夜労働については0.25倍することになります。所定外手当については、会社ごとの就業規則を確認することになります。なお、正確には、時間外労働の時間が1か月60時間を超えた場合など、より細かい割増率が定められています。
  労働者
  労働者
分かりました。残業代は、会社に対して、どのように請求すればいいのですか。
弁護士
弁護士
残業代を請求する場合には、まず消滅時効を止める必要があります。そのため、残業代の支払いを催告することになります。これにより、消滅時効の完成が6か月間猶予されることになります。そのうえで、使用者に対して計算資料の開示を求めて、具体的な金額を計算出来たら、その支払いを求めることになります。任意の交渉が難しい場合には、労働審判や訴訟等の手続き検討することになります。
 労働者
 労働者
残業代の計算については誰でもできるのでしょうか。
弁護士
弁護士
煩雑ですが時間をかけて行えば、不可能ではないと思います。もっとも、交渉の途中からご相談いただく場合ですと、自分に不利益な計算方法により残業代を算出して、使用者に請求していることが多く見られます。事後的に、自己に有利な計算方法を主張することが難しい場合もありますので、初めに一度弁護士に相談されるのがおすすめです。
  労働者
  労働者
ありがとうございます。ひとまず弁護士に相談に行ってみようと思います。
ABOUT ME
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、区民ニュース2023年8月21日
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