そろそろ60歳定年を迎えようとしているけど、59歳11ヶ月で退職した方が良いのか分からないとの悩みを抱えていませんか?
年金を受給することができる65歳までの間どのようにして生活を維持していくかについては大切な問題ですよね。
失業保険の給付金額や日数は、退職事由や年齢により大きく異なってきます。
結論から言うと、会社都合退職であれば59歳11ヶ月で退職した方が失業保険上は有利となります。
自己都合退職の場合には、60歳~64歳の賃金日額の上限額(令和2年8月1日現在で15970円)を超える場合には、59歳11ヶ月で退職した方が失業保険上は有利となります。
ただし、59歳11ヶ月で退職する場合には、以下のようなデメリットがありますので注意が必要です。
デメリット1:退職金が減る可能性がある
デメリット2:1か月分賃金が減る
デメリット3:自己都合退職だと給付制限期間がある
加えて、60歳以降の生活を維持していく方法については、失業保険を受給する以外にも、「定年後65歳までの再雇用を希望する」という方法もあります。
現在は、法律により、会社は65歳までの雇用確保措置を講じることが義務付けられています。
そのため、60歳定年を迎える労働者が再雇用を希望しているにもかかわらず、会社がこれを拒否する場合には違法となり、60歳以降の賃金や慰謝料の請求が認められる可能性があるのです。
今回は、59歳11ヶ月で退職すると失業保険上有利になるのかを説明した上で、60歳以降の生活を確保する方法についても解説していきます。
この記事を読めば、退職すべき時期や60歳以降の生活を維持する方法がわかるはずです。
目次
59歳11ヶ月で退職すると失業保険は有利?
59歳11ヶ月で退職すると60歳で定年退職するよりも失業保険上有利かについては、以下の3つの視点が重要となります。
視点1:給付日数
視点2:基本手当日額の上限
視点3:受給開始時期
結論から言うと、会社都合退職であれば59歳11ヶ月で退職した方が失業保険上は有利となります。
なぜなら、定年退職よりも給付日数が長く(視点1)、基本手当日額の上限が大きいことに加えて(視点2)、給付制限もない(視点3)ためです。
これに対して、自己都合退職の場合には、60歳~64歳の賃金日額の上限額(令和2年8月1日現在で15970円)を超える場合には、59歳11ヶ月で退職した方が失業保険上は有利となります。
なぜなら、定年退職と給付日数は変わりませんが(視点1)、基本手当日額の上限は60歳定年退職の場合よりも大きいためです(視点2)。
ただし、59歳11ヶ月で自己都合退職した場合には、2~3ヶ月の給付制限がありますので、受給を開始できる時期は定年退職の場合よりも遅くなります(視点3)。
それでは、視点1~視点3について、以下で詳しく解説していきます。
会社都合退職については、以下の動画でも詳しく解説しています。
視点1:給付日数
給付日数については、59歳11ヶ月で会社都合退職することで有利になります。
失業保険の給付日数は、「自己都合退職」か「会社都合退職」で異なっており、定年退職については自己都合退職と同様に扱われるためです。
例えば、20年以上勤務した人を例にすると給付日数は、定年退職又は自己都合退職の場合には150日ですが、59歳11ヶ月で会社都合退職すると330日となります。
そのため、失業保険を180日分多く受給することができます。
ただし、あくまでも、59歳11ヶ月で退職した方が失業保険上有利になるのは、「会社都合退職」した場合です。
そのため、もしも定年前の退職を考えている場合には、離職票上の離職理由がどのように処理されることになるのかについて、会社に十分に確認しておきましょう。
視点2:基本手当日額の上限
基本手当日額の上限については、59歳11ヶ月で退職した場合の方が有利となります。
失業保険の基本手当については上限額が定められており、離職時の年齢が60歳だと日額7186円、離職時の年齢が59歳だと8370円とされています(2020年8月1日現在)。
(出典:厚生労働省 雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ)
そのため、賃金日額が1万5970円を超えている方は、60歳で定年退職をすると上記の基本手当日額の上限にかかってしまいますので、59歳11ヶ月で退職した方が受給金額が増える可能性があります。
例えば、賃金日額が1万6740円の方を想定すると、基本手当日額は59歳11ヶ月で退職した場合には8370円、60歳で退職した場合には7186円となり、1184円もの差があることになります。
視点3:受給開始時期
失業保険の受給開始時期については、59歳11ヶ月で自己都合退職した場合には、60歳で定年退職した場合に比べて1~2ヶ月遅くなります。
自己都合退職の場合には、2~3ヶ月の給付制限があるためです。
定年退職については、会社都合退職の場合と同様、このような給付制限は課されていません。
例えば、59歳11ヶ月で自己都合退職した場合には、7日の待期期間の後に、更に2~3ヶ月間の給付制限期間が経過した後に失業保険の支給が開始されます。
これに対して、60歳で定年退職した場合には、7日の待期期間が経過すれば、失業保険の支給が開始されます。
59歳11ヶ月で退職する場合の3つのデメリット
定年前に59歳11ヶ月で退職した場合のデメリットを整理すると以下の3つがあります。
デメリット1:退職金が減る可能性がある
デメリット2:1か月分賃金が減る
デメリット3:自己都合退職だと給付制限期間がある
それでは各デメリットについて順番に説明していきます。
デメリット1:退職金が減る可能性がある
59歳11ヶ月で退職した場合のデメリットの1つ目は、退職金が減る可能性があることです。
会社は、定年退職とそれ以外の退職で退職金の金額に差を設けていることがよくあります。
そのため、59歳11ヶ月で退職することにより、退職金が大きく減少してしまうリスクがあるのです。
退職を決める前にまずは会社の退職金規程をよく確認しておいた方がいいでしょう。
デメリット2:1か月分賃金が減る
59歳11ヶ月で退職した場合のデメリットの2つ目は、1か月分賃金が減ることです。
失業保険の受給可能日数が増えたとしても、会社からもらえる賃金は減ってしまいますし、失業保険として支給される基本手当日額は従前の賃金日額よりも少ないものです。
そのため、あなたがもらっている賃金額によっては、1ヶ月分長く働いた方が得な場合もありますので注意しましょう。
デメリット3:自己都合退職だと給付制限期間がある
59歳11ヶ月で退職した場合のデメリットの3つ目は、自己都合退職だと給付制限があることです。
自己都合退職をしてしまうと、7日の待期期間の後に、2~3ヶ月の給付制限があるため、この期間については収入が途絶えてしまうことになります。
そのため、資金的な余力が全くない状態ですと、失業保険を受給するまでの生活を維持することが難しいことがあります。
65歳までの生活を維持する方法3つ
65歳までの生活を維持する方法としては、例えば以下の3つの方法が考えられます。
方法1:定年後再雇用【おすすめ度★★★】
方法2:失業保険の受給+転職【おすすめ度★★】
方法3:年金前倒し【おすすめ度★】
ただし、どの方法をとるにしても注意すべき点があります。
以下では、これらの方法について順番に説明していきます。
方法1:定年後再雇用【おすすめ度★★★】
65歳までの生活を維持する方法の1つ目は、定年後再雇用です。
定年後再雇用とは、60歳で定年を迎えた後も、会社に対して再雇用を希望して、60歳以降も嘱託社員として雇用してもらうことを言います。
日本の法律では、会社は、65歳までの労働者の雇用を確保する義務があります。
例えば、定年を60歳としている会社は、原則として、希望する労働者全員を65歳まで継続雇用しなければなりません。
ただし、会社によっては、60歳の定年を迎える労働者が再雇用を希望しているにもかかわらず、これを拒否することがあるので注意が必要です。
実際、再雇用を拒否されてしまうと、会社の言い分を真に受けてしまい、継続雇用してもらうことを諦めてしまう方も多いでしょう。
しかし、労働者は、会社から65歳までの再雇用を拒否された場合でも、定年後の賃金や慰謝料を請求することができる可能性があるのです。
そして、定年後に労働者が他の会社に再就職することが難しい実情などもあり、解決金額も高額になる傾向にあります。
定年後の再雇用拒否については、以下の記事で詳しく解説しています。
方法2:失業保険の受給+転職【おすすめ度★★】
65歳までの生活を維持する方法の2つ目は、失業保険の受給をしつつ、転職活動を行うことです。
失業保険を受給するには、ハローワークで失業保険の申請をする必要があります。
具体的には、以下の流れにより受給することになります。
まず、ハローワークで求職の申し込みをすることになります。その際に、ハローワークには離職票を提出する必要があります。
その後7日の待機期間がありますので、この期間は失業保険を受給できません。定年退職や会社都合退職の場合にはその後の給付制限はありませんが、自己都合退職の場合には2~3か月間の給付制限があります。
求職申込から2~3週間後に雇用保険説明会があります。
その後、失業保険認定を受けて、認定日から5~7日後に失業保険が振り込まれることになります。
ただし、定年後の転職活動については、その後働くことができる期間が限られていることもあり、難航しがちです。
失業保険を受給することができる期間にも限りがあるので注意が必要です。
方法3:年金前倒し【おすすめ度★】
65歳までの生活を維持する方法の3つ目は、年金を前倒し受給することです。
現在では、年金の受給年齢が65歳まで引き上げられていますが、これを前倒しして受給することができます。
前倒し受給するには、老齢厚生年金・老齢基礎年金支給繰上げ請求書を年金事務所または街角の年金相談センターに提出します。
ただし、年金を前倒しで受給すると、一生減額された年金を受けることになりますので注意が必要です。65歳以降も一度減額された金額は戻りません。
具体的には、60歳から前倒して年金を受給した場合には、年金の受給金額は30%減少します(1か月あたり0.5%減少×60か月)。
定年後再雇用を拒否された場合はリバティ・ベル法律事務所へ相談
定年後も働きたいのに会社から拒否されているという方は、是非、リバティ・ベル法律事務所にご相談ください。
65歳まで働けない場合の慰謝料や賃金請求については、法的な事項ですので弁護士のサポートを受けるのが安心です。
ただし、65歳までの雇用確保については、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」や「再雇用拒否の判例の傾向」を熟知している必要があり、専門性の高い分野になります。
そのため、定年後の再雇用拒否に注力している弁護士を探すことがおすすめです!
リバティ・ベル法律事務所では、解雇問題に注力していることに加えて、更に定年後の再雇用拒否の問題についても圧倒的な知識とノウハウを有しております。
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まとめ
以上のとおり、今回は、59歳11ヶ月で退職すると失業保険上有利になるのかを説明した上で、60歳以降の生活を確保する方法についても解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・「59歳11ヶ月での退職」と「60歳での定年退職」を考える際の3つの視点を比較すると以下のとおりとなります。
・定年前に59歳11ヶ月で退職した場合のデメリットは以下の3つがあります。
デメリット1:退職金が減る可能性がある
デメリット2:1か月分賃金が減る
デメリット3:自己都合退職だと給付制限期間がある
・定年後に65歳までの生活を維持する方法としては、例えば以下の3つの方法が考えられます。
この記事が退職時期に悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。