管理職として働いているものの月の残業時間が100時間を超えてしまい悩んでいませんか?
残業が100時間を超えるとプライベートへの影響も著しく、日常生活への支障も大きくなってきます。
管理職であっても、管理監督者に該当しない限りは、残業100時間超えは違法となります。
管理職が管理監督者に該当するのは、経営者との一体性、労働時間の裁量、対価の正当のいずれの要件も満たす場合に限られ、法律上、とくに厳格に解されています。
あなたが管理職であっても、法律上の管理監督者に該当しない場合には、これまでの残業代を3年の時効にかかっていない範囲で遡って請求できる可能性があります。
また、残業が100時間超えると、あなたの心身にも大きな悪影響を与え、健康上のリスクも出てきます。最悪の場合には死に至る可能性があります。
管理職の残業が100時間を超えてしまう場合には、いくつかの原因がありますので職場の環境や働き方を見直してみましょう。
もし、管理職として働いていて残業が100時間を超えてしまった場合には、おすすめの対処法があります。
実は、管理職=管理監督者と勘違いしている経営者が多く、管理職であることを口実に長時間残業を強いている企業が少なからず存在します。
この記事をとおして、管理職として働く方々に残業100時間超えの異常さとあなた自身の身を守るために是非しっておいていただきたいことをわかりやすくお伝えしていくことができれば幸いです。
今回は、管理職の残業100時間超えの違法性を説明したうえで、残業代や健康リスクと対処法4つを解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事を読めば、管理職として働いていて残業が100時間を超えてしまったらどうすればいいかがよくわかるはずです。



目次
管理職でも残業100時間超えは違法が原則|管理職と上限規制
管理職でも、月の残業が100時間を超える場合には、原則として、違法です。
労働基準法では、労働時間について1日8時間、週40時間までと定められており、これを超えて残業を命じる場合には36協定が必要となります。
36協定とは、会社と労働者の代表者が残業に関するルールを取り決めたものです。
この36協定を結んだ場合でも、残業を命じられるのは原則として45時間までとされており、例外的に特別条項に該当する場合も100時間を超えることはできません。
そのため、管理職でも、月の残業が100時間を超える場合には、労働時間の上限規制に反し違法となるのです。
ただし、例外的に、管理職の中でも、一部の管理監督者に該当する方については、労働時間に関する労働基準法の規定を適用しないと規定されています。
そのため、あなたが管理監督者に該当する場合には、例外的に月100時間を超える場合でも、労働時間に関する上下規制には違反しないことになります。
管理職が管理監督者に該当する条件と該当しないケース3つ
管理職であっても管理監督者に該当する方はほんの一部であり、その条件はとくに厳格に解されています。
管理監督者に該当すると労働者が最低限度の生活を送るための基準である労働基準法の一部が適用されないことになるためです。
具体的には、管理職が管理監督者に該当するためには、以下の3つの条件を満たす必要があるとされています。
条件1:経営者との一体性
条件2:労働時間の裁量
条件3:対価の正当性

管理監督者の条件については、以下の記事で詳しく解説しています。

例えば、管理職が管理監督者に該当しないケースを3つ挙げると以下のとおりです。
ケース1:経営会議に参加しておらず労務管理もしていない場合
ケース2:出勤日や出退勤の時間を自分で自由に決められない場合
ケース3:時給換算するとアルバイトと同程度になる場合

それでは、これらのケースについて順番に説明していきます。
ケース1:経営会議に参加しておらず労務管理もしていない場合
管理職が管理監督者に該当しないケースの1つ目は、経営会議に参加しておらず労務管理もしていない場合です。
管理監督者に該当するには、経営者との一体性の条件を満たすことが必要とされています。
経営者との一体性とは、会社の経営上の決定に参画し、労務管理上の決定権限を持っていることです。
例えば、経営会議に参加していなかったり、経営会議に参加していても発言権が乏しかったりする場合には、会社の経営上の決定に参画していないとされる傾向にあります。
また、採用権限や解雇権限、異動を決める権限、人事評価等をする権限が乏しいような場合には、労務管理上の決定権限を持っていないとされる傾向にあります。
とくに部下なし管理職の場合については、労務管理をしていないと評価される傾向にあります。

ケース2:出勤日や出退勤の時間を自分で自由に決められない場合
管理職が管理監督者に該当しないケースの2つ目は、出勤日や出退勤の時間を自分で自由に決められない場合です。
管理監督者に該当するには、労働時間の裁量の条件を満たす必要があるとされているためです。
労働時間の裁量とは、始業時間や終業時間がどの程度厳格に取り決められ、管理されていたかの問題です。
例えば、タイムカードや勤怠記録において上司の承認が必要であるなど、労働時間が厳格に管理されていた場合には、管理監督者に該当しにくい傾向にあります。
また、遅刻や欠勤をすると給料が減額されるような場合にも、労働時間の裁量はなかったと判断される傾向にあります。
管理職とタイムカードについては、以下の記事で詳しく解説しています。

ケース3:時給換算するとアルバイトと同程度になる場合
管理職が管理監督者に該当しないケースの3つ目は、時給換算するとアルバイトと同程度になる場合です。
管理監督者に該当するには、対価の正当性が認められる必要があるためです。
対価の正当性とは、その地位にふさわしい待遇を受けているか、一般労働者に比べて優遇されているかの問題です。
例えば、月の残業が100時間を超えて、月の残業時間が270時間の方がいたとします。
この方の給料は基本給25万円に役職手当が5万円の合計30万円です。
時給換算すると1111円(30万円÷270時間)となり、アルバイトと同水準の給与となる可能性があります。
管理監督者にふさわしい待遇については、以下の記事で詳しく解説しています。

管理職の残業100時間超えと残業代
あなたが管理職であっても、法律上の管理監督者に該当しない場合には、これまでの残業代を3年の時効にかかっていない範囲で遡って請求できる可能性があります。
あなたが管理監督者に該当しなければ、管理職であっても、通常の従業員と同様に労働時間や休日に関する規制が適用されるためです。
例えば、基本給25万円、役職手当5万円の方が、月に100時間の残業をしていた場合には、月平均所定労働時間を160時間とすると、3年分で残業代は、
30万円÷160時間×100時間×36か月=675万円
となります。
退職後であっても、時効にかかっていなければ、残業代を請求することができます。
管理職の残業100時間超えと健康へのリスク
残業が100時間超えると、あなたの心身にも大きな悪影響を与え、健康上のリスクも出てきます。最悪の場合には死に至る可能性があります。
100時間超の残業については、過労死ラインを超えているためです。
例えば、行政通達では、発症前1か月間におおよそ100時間にわたって時間外労働が認められる場合は、業務と脳心臓疾患との関連性が強いとされています。
つまり、過労死に至る可能性があることになります。
また、行政通達では、発症直前の連続した3か月間に、1か月あたりおおむね100時間以上の時間外労働を行い、その業務内容が通常その程度の労働時間を要するものであった場合には、業務の心理的負荷が強いとされています。
つまり、適応障害やうつ病との精神疾患を発症する可能性が高いことになります。そして、過労自殺に繋がってしまうこともあります。
そのため、管理職の残業が100時間を超えると健康へのリスクも大きいのです。
管理職の残業100時間超えの原因4つ
管理職の残業時間が月100時間を超えるのは、異常な事態です。
ですが、それが常態化してしまう背景には、いくつかの典型的な原因があります。
例えば、管理職の残業が100時間を超える原因としては以下の4つがあります。
原因1:人員不足で業務が集中している
原因2:管理職なのにプレイングマネージャー
原因3:権限がないのに責任だけ重い
原因4:「管理職=残業代なし」の誤解を利用している会社

それでは、これらの原因について順番に説明していきます。
原因1:人員不足で業務が集中している
人手が足りず、管理職に業務が集中している場合、残業が常態化しやすくなります。
部下の人数が少なかったり、離職者が補充されなかったりすると、管理職自身が本来部下の行うべき業務までカバーすることになります。
例えば、営業部のマネージャーが、部下の退職後にその業務を肩代わりし、月末には数字の取りまとめや報告書作成までこなさなければならず、帰宅は毎日深夜という状況になることもあります。
慢性的な人手不足の職場では、管理職が過剰に働かざるを得ず、長時間労働の温床となります。
原因2:管理職なのにプレイングマネージャー
「プレイングマネージャー型」の管理職は、業務量が膨大になりがちです。
プレイングマネージャーは、部下のマネジメントだけでなく、自身も一線で業務をこなす必要があり、負荷が2倍になります。
例えば、IT系企業の課長がプロジェクトの進行管理を行いながら、自らもプログラムを組んだり、トラブル対応をしたりしているケースでは、日中はマネジメント、夜は実務という働き方になりやすくなります。
プレイヤーとマネージャーを兼任する構造は、長時間労働の原因になりやすいため、役割の再定義が必要です。
原因3:権限がないのに責任だけ重い
責任は重いのに裁量権がないと、無理な指示でも従うしかなく、労働時間が増えていきます。
スケジュールや予算、人員配置の決定権がないまま、結果だけ求められると、無理な調整や突貫作業に頼ることになりがちです。
例えば、店舗責任者が本部の指示通りにイベント準備を進めなければならず、人員が足りない中、自らが休日出勤して穴埋めしているケースなどもあります。
裁量がない管理職に責任だけを課す体制では、長時間労働が不可避になります。
原因4:「管理職=残業代なし」の誤解を利用している会社
一部の会社では、管理職だから残業代は不要という誤った認識のもと、長時間労働を強いています。
働き方改革などとして、一般従業員の残業時間を減らしつつ、そのしわ寄せが管理職に来ているケースです。
例えば、現場スタッフの残業は厳しく制限されている一方で、管理職がその分の業務を引き受け、開店準備から閉店業務、さらには報告書作成や本社対応まで一人で担わされるような状況です。
それでも「管理職だから残業代はつかない」と言われ、実質的には無制限の労働時間を前提とした運用がされている場合もあります。
このような会社では、「管理職」という肩書きを労働時間・賃金規制を逃れる口実として使っているにすぎず、法律上の管理監督者の要件を満たしていない可能性があります。
管理職が残業100時間を超えた場合の対処法4つ
もし、管理職として働いていて残業が100時間を超えてしまった場合には、おすすめの対処法があります。
会社は、今の職場環境に問題があると認識していないことが多いため、あなた自身が行動を起こしていかなければ状況は改善しません。
例えば、管理職が残業100時間を超えた場合の対処法としては、以下の4つです。
対処法1:弁護士に相談する
対処法2:残業代を請求する
対処法3:健康への配慮を求める
対処法4:転職する

それでは、これらの対処法について順番に説明していきます。
対処法1:弁護士に相談する
管理職が残業100時間を超えた場合の対処法の1つ目は、弁護士に相談することです。
あなたが本当に管理監督者に該当するかどうか法的な見通しを確認することをおすすめします。
法的な見通しに基づいて、あなたの意向を踏まえた方針や手続について助言してもらうといいでしょう。
また、交渉や裁判手続きが必要な場合は、弁護士に対応について依頼し、サポートしてもらうといいでしょう。
対処法2:残業代を請求する
管理職が残業100時間を超えた場合の対処法の2つ目は、残業代を請求することです。
あなたが管理監督者に該当しない場合には、これまでの残業代を遡って請求できる可能性があります。
残業代を請求することによって、会社は、あなたに対して、無償で残業させることができるわけではないことを認識し、残業時間を改善することがよくあります。
また、併せて、あなたがこれまで払ってもらえていなかった残業代についても取り戻すことができます。
対処法3:健康への配慮を求める
管理職が残業100時間を超えた場合の対処法の3つ目は、健康への配慮を求めることです。
雇用主は、労働者の安全に配慮する義務を負っています。
長時間残業により労働者の健康に支障が生じる可能性がある場合には、残業を減らすよう配慮するなどの措置を講じる必要があります。
また、管理職でも、80時間を超えて労働する場合には、会社に対して、産業医面談を希望することができ、会社はこれを実施する義務があります。
そのため、管理職が会社に対して健康への配慮を求めることで、残業時間が改善する可能性があります。
対処法4:転職する
管理職が残業100時間を超えた場合の対処法の4つ目は、転職することです。
残業100時間超えが続いていて、改善を求めても変わらない場合には、転職することも視野に入れましょう。
このような会社はブラック企業としての体質が染みついてしまっていて、容易には改善が難しく、改善する前にあなたの心身に重大な支障を来してしまうためです。
もし、退職することを切り出しにくい場合には、弁護士に代わりに退職の通知を出してもらうことも検討しましょう。
管理職の残業代請求はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
管理職の残業代請求については、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
残業代請求については、交渉力の格差が獲得金額に大きく影響してきます。
とくに管理職の場合には、管理監督者性についての見通しを分析したうえで、有利な証拠や反論を準備することが成功の鍵となります。
リバティ・ベル法律事務所では、残業代請求について圧倒的な知識とノウハウを蓄積しておりますので、あなたの最善の解決をサポートします。
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残業代の未払いに悩んでいる方は、一人で抱え込まずにお気軽にご相談ください。
まとめ
以上のとおり、今回は、管理職の残業100時間超えの違法性を説明したうえで、残業代や健康リスクと対処法4つを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・管理職でも、月の残業が100時間を超える場合には、管理監督者に該当しない限り、違法です。
・管理職が管理監督者に該当しないケースを3つ挙げると以下のとおりです。
ケース1:経営会議に参加しておらず労務管理もしていない場合
ケース2:出勤日や出退勤の時間を自分で自由に決められない場合
ケース3:時給換算するとアルバイトと同程度になる場合
・あなたが管理職であっても、法律上の管理監督者に該当しない場合には、これまでの残業代を3年の時効にかかっていない範囲で遡って請求できる可能性があります。
・残業が100時間超えると、あなたの心身にも大きな悪影響を与え、健康上のリスクも出てきます。最悪の場合には死に至る可能性があります。
・管理職の残業が100時間を超える原因としては以下の4つがあります。
原因1:人員不足で業務が集中している
原因2:管理職なのにプレイングマネージャー
原因3:権限がないのに責任だけ重い
原因4:「管理職=残業代なし」の誤解を利用している会社
・管理職が残業100時間を超えた場合の対処法としては、以下の4つです。
対処法1:弁護士に相談する
対処法2:残業代を請求する
対処法3:健康への配慮を求める
対処法4:転職する
この記事が管理職として働いているものの月の残業時間が100時間を超えてしまい悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。

