会社からアウトプレースメントをつけるので退職してほしいと言われていませんか?
アウトプレースメントと言われても何のことかよくわからないですよね。
アウトプレースメントとは、従業員が会社の都合により退職する際に、会社が外部企業に委託し再就職を支援することです。
会社が外部企業との間で契約を締結している場合において、会社からの提案を受けて、労働者が当該サービスの利用を希望した場合に提供されます。
アウトプレースメントのサービスの内容は、再就職先の紹介というよりは、再就職の支援が中心であり、コンサルティング的な側面が強いです。
支援期間は3か月~1年であり、費用は1人50万円~150万円が相場です。
ただし、再就職支援と言っても、既に転職に慣れている人にとっては、支援により得られる情報やノウハウは真新しいものではないことが多く、期待のし過ぎは禁物です。
結局は、転職サイトのなどをとおして自分で転職先を見つけている方が多いように印象を受けます。
退職勧奨時に、会社からアウトプレースメントの提案を受けたとしても、すぐに利用を希望するのではなく、まずは納得できる退職条件を交渉することが大切です。
退職条件が決まっていない段階でアウトプレースメントを利用し始めてしまうと、退職に納得したものとして交渉を行いにくくなってしまうこともあります。
アウトプレースメントは会社が退職条件に任意に付加してくれるということであれば断る理由はありませんが、多くの場合には退職を決心する決定打となりうるものではありません。
実は、外資系企業の退職勧奨では、このようなアウトプレースメントの提案があることがよく見られます。
この記事をとおして、会社からアウトプレースメントの話が出た場合にどのように対応していけばいいのかを知っていただければ幸いです。
今回は、アウトプレースメントとは何かその意味を説明したうえで、サービス内容や退職勧奨時の注意点を解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、アウトプレースメントがどのようなものかがよくわかるはずです。
アウトプレースメントについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次
アウトプレースメントとは|意味
アウトプレースメントとは、従業員が会社の都合により退職する際に、会社が外部企業に委託し再就職を支援することです。英語ではOutplacement、日本語では再就職支援といいます。
アウトプレースメントの発祥はアメリカです。1962年にジェームス・チャレンジャーという弁護士がチャレンジャー、グレイ&クリスマス社を設立したことによって始まりました。
日本に入ってきたのは1982年であり、業界大手のドレーク・ビーム・モリン社(現在のパーソナルキャリアコンサルティング)が日本法人を設立しました。
2003年時に市場規模はピークとなりその後は下火となっていましたが、リーマンショックによる不景気で市場が一定程度回復しました。
人材紹介事業には、一般登録型(employment agency)、サーチ型(executive search)、再就職支援型(outplacement)の3種類があります。
一般登録型(employment agency)は、求人企業と求職者双方からの依頼に基づき、求職者を企業に紹介するものです。
サーチ型(executive search)は、求人企業の依頼に基づき、候補者を探し企業に紹介するものです。いわゆるヘッドハンティングやスカウトです。
再就職支援型(outplacement)は、送り出し企業からの依頼に基づき、求職者に再就職支援を提供するものです。
一般登録型とサーチ型の場合の費用は求人企業が負担しますが(顧客は求人企業)、再就職支援型の場合の費用は送り出し企業が負担します(顧客は送り出し企業)。
アウトプレースメントについて、送り出し企業、求職者それぞれのメリットは以下のとおりです。送り出し企業は、会社の都合で労働者に退職してもらう際に、労働者に納得してもらいやすく、労働紛争も回避しやすくなるため、費用を負担し人材紹介会社とアウトプレースメントを契約します。
これによって、労働者は、再就職支援を受けることができ、心理的負担を軽減でき、短い期間で転職を成功させやすくなります。
アウトプレースメントを利用できる条件3つ
アウトプレースメントを利用するに以下の3つの条件が必要です。
条件1:会社が人材紹介会社と契約していること
条件2:会社都合の退職であり会社から提案があること
条件3:労働者が利用を希望すること
それでは各条件について順番に説明していきます。
条件1:会社が人材紹介会社と契約していること
アウトプレースメントを利用する際の条件の1つ目は、会社が人材紹介会社と契約をしていることです。
アプトプレースメントの契約は、求職者と人材紹介会社が締結するのではなく、会社と人材紹介会社が締結するのが通常です。
そのため、これを利用する前提として、会社が人材紹介会社との間で再就職支援サービスを提供する契約を締結していることが必要です。
条件2:会社都合の退職であり会社から提案があること
アウトプレースメントを利用する際の条件の2つ目は、会社都合の退職であり会社から提案があることです。
アウトプレースメントについては、人員削減等の会社の都合で退職する労働者に対して、再就職支援を提供するものです。
一身上の都合等で退職するようなケースでは、このようなサービスの提案がないことが通常です。
また、アウトプレースメントの契約者は会社であり、費用を負担するのも会社です。
そのため、当該サービスを利用するには、会社から退職条件としてアウトプレースメントをつけるとの提案されることが必要です。
条件3:労働者が利用を希望すること
アウトプレースメントを利用する際の条件の3つ目は、労働者が利用を希望することです。
アウトプレースメントのサービスを受けるのは労働者です。
労働者の意思に反して再就職支援を行うことはできません。
そのため、会社から提案を受けて、労働者が利用を希望することが必要となります。
アウトプレースメントサービスの内容
アウトプレースメントのサービスは、再就職支援です。
再就職先の紹介というよりは、再就職の支援が中心であり、コンサルティング的な側面が強いです。
具体的には、アウトプレースメントのサービスは以下のような流れで進んでいきます。
STEP1:カウンセリング(ミーティング)
STEP2:履歴書や職務経歴書の作成と面接指導
STEP3:再就職候補の情報提供
STEP4:選考後のサポート等
STEP5:再就職後のフォロー
STEP1:カウンセリング(ミーティング)
STEP1は、カウンセリング(ミーティング)です。
支援の内容につき説明を受け、スケジュールなどを作成します。
心構え等についてレクチャーを受けたり、ワークシートの記入や自己分析・目標設定などを行ったりします。
STEP2:履歴書や職務経歴書の作成と面接指導
STEP2は、履歴書や職務経歴書の作成と面接指導です。
そして、キャリアカウンセラーから正しいノウハウのレクチャーを受けることにより選考を通過する可能性が高まります。
STEP3:再就職候補の情報提供
STEP3は、再就職候補の情報提供です。
自社開拓求人の紹介や提携転職エージェントの持っている求人案件の紹介などが行われます。
その企業の概要や詳細、求人条件や求められる人物像などが説明されます。
STEP4:選考後のサポート等
STEP4は、選考後のサポート等です。
選考の手ごたえについてのカウンセリングや今後の対策、採用条件の確認や交渉等を行います。
また、入社準備や退職手続についても助言を得ることができます。
STEP5:再就職後のフォロー
STEP5は、再就職後のフォローです。
再就職後の新たな職場に慣れるまで、人間関係や職場環境等について、フォローアップしてもらうことができます。
~活動場所や設備の提供~
アウトプレースメントでは、活動場所(オフィス)や設備(パソコン・電話等)の提供もしてもらえることが通常です。
例えば、家に居場所がない方やモチベーションを維持したい方は、週に何日かはオフィスで求職活動を行うなどの使い方もあります。
アウトプレースメントを提供している会社
アウトプレースメントを提供している会社は、いくつかありますが、例えば、有名なのは以下の2社です。
・パソナ
・リクルート
順番に説明していきます。
パソナ
パソナでは、再就職支援(アウトプレースメント)として、1984年から約5900社を支援してきたとされており、従業員1名から人事制度と組み合わせて対応できるとされています。
アウトプレースメント(再就職支援) | 再就職支援のパソナキャリア (pasonacareer.com)
リクルート
リクルートでは、あらゆる角度から再就職活動を支えるとしており、83%が6か月以内に再就職しているとしています。
再就職支援のリクルートキャリアコンサルティング (recruit-cc.co.jp)
アウトプレースメントの費用
アウトプレースメントについて、支援期間は3か月~1年であり、費用は1人50万円~150万円が相場です。
近年は、市場競争により、価格がこれまでもよりも安くなってきており、50万円でサービスを提供する会社も出てきました。
人材紹介会社と契約するのは(送り出し)会社なので、通常、上記費用を負担するのは(送り出し)会社です。
ただし、会社によっては、労働者がアウトプレースメント費用相当額を負担することを前提に、上記サービスの利用を提案してくる場合もあります。
退職勧奨でアウトプレースメントを提案された場合の注意点
退職勧奨でアウトプレースメントを提案された場合には、以下の2点に注意が必要です。
注意点1:退職条件に納得するまでは利用しないこと
注意点2:過度な期待をしないこと
それでは、これらの注意点について、それぞれ説明していきます。
注意点1:退職条件に納得するまでは利用しないこと
アウトプレースメントの注意点の1つ目は、退職条件に納得するまでは利用しないことです。
なぜなら、退職条件に納得する前に、アウトプレースメントを利用してしまうと、既に退職する意思を示したものとして、退職条件の交渉が困難となるリスクがあるためです。
例えば、あなたが会社から退職勧奨を受け、悩んでいる段階において、アウトプレースメントの提案をされたとします。
会社側は定期的に再就職活動の状況を報告するようになどとの指示をされます。
あなたは言われたとおりにアウトプレースメントを利用して、再就職活動の定期報告を会社にしました。
そのような状況において、会社から特別退職金が提示された場合において、当該退職金額が納得のいかないものである場合には、オファーを断りたいと考えるでしょう。
しかし、既に、再就職活動を始めており、その状況も会社側は把握しているため、退職自体にあなたは納得していて、既に働き続ける意思を喪失しているではないかなどの指摘をされます。
退職の意思表示は必ずしも書面である必要はなく、口頭や行動によっても認められます。
そのため、アウトプレースメントを利用するのは、パッケージや退職日等の条件がすべて決まった後にするべきなのです。
外資系企業における退職勧奨のパッケージについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
注意点2:過度な期待をしないこと
アウトプレースメントの注意点の2つ目は、過度な期待をしないことです。
アウトプレースメントについては、あくまでも再就職の支援であり、そのサービスの中心はコンサルティングになります。
当該サービスを利用すれば必ず再就職できるものではないですし、結局は自分でWEBサイトなどにより再就職先を見つけている方も多いです。
そのため、アウトプレースメントは会社が退職条件に任意に付加してくれるということであれば断る理由はありませんが、多くの場合には退職を決心する決定打となりうるものではありません。
アウトプレースメントを付けてもらえるからと言って、安易に退職に応じてしまうことにはリスクがあるため気を付けましょう。
退職時にアウトプレースメントを合意する際の条項
会社から退職勧奨を受け、退職条件にアウトプレースメントの利用を組み入れる場合には、これを合意書に記載することになります。
退職合意書の案文は会社から示されることが多いですが、アウトプレースメントに関する一般的な条項は以下のとおりです。
「乙は、再就職支援会社と甲の再就職支援の契約を乙の負担で行い、退職日から1年間、甲の再就職に伴うサポートを行う。再就職支援会社の選定は乙が行う。」
※甲が退職者、乙が会社
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まとめ
以上のとおり、今回は、アウトプレースメントとは何かその意味を説明したうえで、サービス内容や退職勧奨時の注意点を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・アウトプレースメントとは、従業員が会社の都合により退職する際に、会社が外部企業に委託し再就職を支援することです。
・アウトプレースメントを利用するに以下の3つの条件が必要です。
条件1:会社が人材紹介会社と契約していること
条件2:会社都合の退職であり会社から提案があること
条件3:労働者が利用を希望すること
・アウトプレースメントのサービスは以下のような流れで進んでいきます。
STEP1:カウンセリング(ミーティング)
STEP2:履歴書や職務経歴書の作成と面接指導
STEP3:再就職候補の情報提供
STEP4:選考後のサポート等
STEP5:再就職後のフォロー
・アウトプレースメントについて、支援期間は3か月~1年であり、費用は1人50万円~150万円が相場です。
・退職勧奨でアウトプレースメントを提案された場合には、以下の2点に注意が必要です。
注意点1:退職条件に納得するまでは利用しないこと
注意点2:過度な期待をしないこと
この記事がアウトプレースメントが何かよくわからず悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので現代見てください。
退職勧奨された場合のNG行動と正しい対処法は、以下の動画でも詳しく解説しています。