管理監督者と言われているもののふさわしい待遇をもらうことが出来ていないのではないかと疑問に感じていませんか?
管理監督者になっても、労働時間と責任が増えるばかり、もらえる給与が増えないと不満ですよね。
管理監督者にふさわしい待遇とは、労働時間や休日、休憩に関する労働基準法の規定が支給されなくても十分なほどの対価が与えられていることを言います。
管理監督者にふさわしい待遇がいくらかについて、明確な決まりはありませんが、裁判例には891万9300円の年収が客観的に特に高額であるとまではいえないとしたものがあります。
管理監督者にふさわしい待遇ではないケースの例としては、以下の4つがあります。
ケース1:一般職の給与と逆転現象が生じている
ケース2:時給換算すると最低賃金やバイトの給与と変わらない場合
ケース3:社内では高額でも客観的には高額ではない
ケース4:管理監督者以外にも役職手当が支給されている
管理監督者にふさわしい待遇でない場合に残業代を請求する場合には、自分から早めに行動を起こしていく必要があります。
実は、管理職と言われている方の中で、本当にふさわしい待遇を受けている方はほんの一握りに過ぎず、多くの方が名ばかり管理職に過ぎないというのが現状です。
この記事をとおして、皆さんが本当に管理監督者にふさわしい待遇を受けているのかどうかを一緒に確認していくことができれば幸いです。
今回は、管理監督者にふさわしい待遇について、相場やふさわしい待遇ではないケースの例を説明したうえで、残業代を請求する手順について解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、管理監督者にふさわしい待遇ではないと感じた場合に、どうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次
管理監督者にふさわしい待遇とは?
管理監督者にふさわしい待遇とは、労働時間や休日、休憩に関する労働基準法の規定が支給されなくても十分なほどの対価が与えられていることを言います。
法律では、管理監督者には、労働時間や休日、休憩に関する規定が適用しないとされています。
一方で、労働時間や休日、休憩についての法律は、人間らしく生きるための最低基準を定めたものであり、これらの規定が適用されない場合は、限定的にする必要があります。
そこで、裁判所は、管理監督者とするためには、名前だけ管理職にすればいいというものではなく、ふさわしい待遇を与えていることを条件の1つとしているのです。
例えば、会社側があなたは管理監督者なので残業代を支給しないと言っていたとしても、ふさわしい待遇でないとされれば、会社は遡って残業代払わなければいけません。
契約書などに管理監督者との記載がある場合も同様で、ふさわしい待遇でなければ、たとえ契約書上で管理監督者とされていても、会社は遡って残業代払わなければいけません。
そのため、管理職の方は、ふさわしい待遇を受けていない場合には、これまで支払ってもらえていなかった残業代を請求できることになります。
管理監督者にふさわしい待遇はいくらが相場
管理監督者にふさわしい待遇がいくらかについて、明確な決まりはありません。
労働時間や一般職の給与、給与体系、賞与等の算定方法などから、ふさわしい待遇かということが判断されるためです。
裁判例には891万9300円の年収が客観的に特に高額であるとまではいえないとしたものがありますので、これも一つの参考にはなるでしょう。
(参考:大阪地判令2年12月17日労働判例ジャーナル109号22頁福屋不動産販売事件)
ただし、裁判所は、主に、一般職が平均的な残業時間働いた場合よりも、高額な賃金の支給を受けているかという点を重視しているように感じます。
よりかみ砕いて言うと、一般職がいつも通り残業したのでは到底もらうことができないほどのお給料をもらっているかどうかという点が大切でしょう。
もっとも、管理職になり急激に労働時間が増えるような場合には、一般職に比べ給料も増えるのは当然のことであり、ふさわしい待遇と言えるかは更に検討が必要と思われます。
管理監督者にふさわしい待遇ではないケース4つ
管理監督者にふさわしい待遇ではないケースについては、一定の傾向があります。
どのような場合に管理監督者にふさわしい待遇ではないと言われやすいかを知ることにより、自分の待遇がふさわしいかを確認することができるでしょう。
例えば、管理監督者にふさわしい待遇ではないケースとしては、以下の4つがあります。
ケース1:一般職の給与と逆転現象が生じている場合
ケース2:時給換算すると最低賃金やバイトの給与と変わらない場合
ケース3:社内では高額でも客観的には高額ではない場合
ケース4:管理監督者以外にも役職手当が支給されている場合
それでは、これらのケースについて順番に解説していきます。
ケース1:一般職の給与と逆転現象が生じている場合
管理監督者にふさわしい待遇ではないケース1つ目は、一般職の給与と逆転現象が生じている場合です。
管理監督者とされて責任が増える一方で、これまでよりも給与が下がってしまうような場合には、ふさわしい待遇とは言い難いためです。
例えば、管理職になる前の後の源泉徴収票や給与明細を比較してみるとわかりやすいでしょう。
ケース2:時給換算すると最低賃金やバイトの給与と変わらない場合
管理監督者にふさわしい待遇ではないケース2つ目は、時給換算すると最低賃金やバイトの給与と変わらない場合です。
管理監督者として重い責任を負う一方で、最低賃金やバイトの給与と分からないようであれば、ふさわしい待遇とは言い難いためです。
例えば、月350時間の労働をしているような場合には、たとえ月額40万円の給与をもらっていたとしても、時給換算すると1142円となります。
ケース3:社内では高額でも客観的には高額ではない場合
管理監督者にふさわしい待遇ではないケース3つ目は、社内では高額でも客観的には高額ではない場合です。
その会社の平均給与高くないような場合には、たとえ社内で上位5本の指に入る給与をもらっていたとしても、十分な待遇とは言えないようなこともあります。
例えば、その会社では、年収700万円でも役員を除けば一番給与が高かったとしても、客観的に見ればとくに高額な年収をもらっているということはできないでしょう。
責任の重さや労働時間からは、ふさわしい待遇といえないこともあるでしょう。
ケース4:管理監督者以外にも役職手当が支給されている場合
管理監督者にふさわしい待遇ではないケース4つ目は、管理監督者以外にも役職手当が支給されている場合です。
管理監督者に対して役職手当を支給している場合には、その金額次第ではふさわしい待遇と言えることもあります。
一方で、管理監督者でない者に対しても役職手当が支給されているような場合には、一般職に比べて有利な取り扱いとは言えず、ふさわしい待遇と言えないことがあります。
例えば、定年後再雇用前につき管理監督者に該当するか争われた事案で、再雇用後も役職手当が支給されているためふさわしい待遇とは評価できないとされた事例があります。
(参考:東京地判令和3年6月30日D1-Law.com判例体系[三誠産業事件])
管理監督者にふさわしい待遇でない場合に残業代を請求する手順
管理監督者にふさわしい待遇でない場合に残業代を請求する場合には、自分から早めに行動を起こしていく必要があります。
残業代には時効がありますので、請求せずに放置していると未払い部分は消滅していってしまうためです。
例えば、管理監督者にふさわしい待遇でない場合に残業代を請求する手順は以下のとおりです。
手順1:弁護士に相談する
手順2:通知書を送付する
手順3:交渉する
手順4:労働審判・訴訟を提起する
それでは、これらの手順について順番に説明していきます。
手順1:弁護士に相談する
管理監督者にふさわしい待遇でない場合に残業代を請求する手順の1つ目は、弁護士に相談することです。
管理監督者に該当するかどうかは法的な事項ですので、法律の専門家である弁護士に相談するべきです。
弁護士に依頼すれば、代わりに未払い残業代を計算したり、請求の手続きをしてもらったりすることもできます。
ただし、労働問題は専門性の高い分野であるため、管理職の残業問題について実績のある弁護士を探すといいでしょう。
手順2:通知書を送付する
管理監督者にふさわしい待遇でない場合に残業代を請求する手順の2つ目は、通知書を送付することです。
残業代を請求するには、まずは時効の進行を止めることが先決です。時効を止めることで、準備や交渉をする期間の猶予ができるためです。
例えば、通知書において残業代を請求すれば、催告として、6か月の間、時効の完成が猶予されます。
また、併せて、残業代の計算に必要な資料等の開示を求めましょう。
手順3:交渉する
管理監督者にふさわしい待遇でない場合に残業代を請求する手順の3つ目は、交渉することです。
会社側回答があると、争点や見通しが明らかになりますので、話し合いにより折り合いをつけることが可能か協議するようにしましょう。
話し合いにより示談することができれば、少ない労力や負担で解決することができます。
手順4:労働審判・訴訟を提起する
管理監督者にふさわしい待遇でない場合に残業代を請求する手順の4つ目は、労働審判・訴訟を提起することです。
労働審判というのは、全3回の期日で調停を目指すものであり、調停が成立しない場合には裁判所が一時的な判断を下すものです。
労働審判については、以下の記事で詳しく解説しています。
訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。
残業代の訴訟については、以下の記事で詳しく解説しています。
管理職の残業代請求はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
管理職の残業代請求については、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
残業代請求については、交渉力の格差が獲得金額に大きく影響してきます。
とくに管理職の場合には、管理監督者性についての見通しを分析したうえで、有利な証拠や反論を準備することが成功の鍵となります。
リバティ・ベル法律事務所では、残業代請求について圧倒的な知識とノウハウを蓄積しておりますので、あなたの最善の解決をサポートします。
リバティ・ベル法律事務所では、残業代問題に関して、「初回相談無料」「完全成功報酬制」を採用していますので、少ない負担で気軽にご相談できる環境を整えています。
残業代の未払いに悩んでいる方は、一人で抱え込まずにお気軽にご相談ください。
まとめ
以上のとおり、今回は、管理監督者にふさわしい待遇について、相場やふさわしい待遇ではないケースの例を説明したうえで、残業代を請求する手順について解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・管理監督者にふさわしい待遇とは、労働時間や休日、休憩に関する労働基準法の規定が支給されなくても十分なほどの対価が与えられていることを言います。
・管理監督者にふさわしい待遇がいくらかについて、明確な決まりはありません。
・管理監督者にふさわしい待遇ではないケースとしては、以下の4つがあります。
ケース1:一般職の給与と逆転現象が生じている場合
ケース2:時給換算すると最低賃金やバイトの給与と変わらない場合
ケース3:社内では高額でも客観的には高額ではない場合
ケース4:管理監督者以外にも役職手当が支給されている場合
・管理監督者にふさわしい待遇でない場合に残業代を請求する手順は以下のとおりです。
手順1:弁護士に相談する
手順2:通知書を送付する
手順3:交渉する
手順4:労働審判・訴訟を提起する
この記事が管理監督者とされているのにふさわしい待遇をもらうことができていないと悩んでいる労働者の方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。