不当解雇・退職扱い

セクシュアルハラスメントと解雇

 セクシュアルハラスメントは、どのような場合に解雇事由になるのでしょうか。今回は、セクシュアルハラスメントを理由とする解雇について解説します。

就業規則上の規定

 セクシュアルハラスメントを理由に懲戒解雇される場合があります。就業規則などでは、以下のような規定がおかれている会社が見られます。

規定例

第〇条(セクシュアルハラスメントの禁止)
性的言動により、他の労働者に不利益や不快感を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。
第〇条(懲戒解雇)
労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第〇条に定める普通解雇、前条に定める減給、出勤停止とすることがある。
会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき(当該行為が軽微な違反である場合を除く。)。
第〇条、第〇条、第〇条、第〇条に違反し、その情状が悪質と認められるとき。
③…

懲戒権濫用法理

 懲戒解雇は、①「懲戒することができる場合」において、②「客観的に合理的な理由を欠き」、③「社会通念上相当であると認められない場合」は、懲戒権の濫用として無効となります(労働契約法15条)。

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セクシュアルハラスメントの存在

 セクシュアルハラスメントを理由とする解雇が有効とされるには、当然セクシュアルハラスメント行為の存在が前提となります。

セクハラに該当するような客観的事実の存否

 セクハラ行為は密室で行われることも多く、加害者供述、被害者供述しか証拠がないことも多いです。この場合それぞれの供述の信用性が問題となります(大阪高判平24.2.28労判1048号63頁[P大学事件])。

性的な関係についての合意の有無

 合意の有無を判断するに当たっては、双方の立場、関係性、前後の事実経過等を考慮する必要があります。

【京都地判平25.1.29判時2194号131頁】
 大学教授が学生と性的関係を続けて研究環境を害したとして懲戒解雇された事案について、同裁判例は、学生が性的関係について教授を非難する内容のメールは存在するものの、学生が教授に対して愛情を表明するものや性交について肯定的に表現するものが多数存在したこと等から、セクシュアルハラスメントには該当しないと判断しました。

解雇の相当性

 セクシュアルハラスメントを理由とする解雇の相当性は、以下の事情を考慮し判断します。

①行為態様の悪質性(就業時間内か否か、密室か否か、身体的接触があるか否か、回数・期間、被害者の人数)
②行為者の職位
③反省の有無
④行為者の過去の懲戒歴

 裁判例は、強姦罪や強制わいせつ罪に該当するような特に悪質な類型では、その他の考慮要素について詳細には検討せずに、懲戒解雇を有効とする傾向にあります(東京地判平10.12.7[コンピューター・メンテナンス・サービス事件])。
 裁判例は、強制わいせつ等に至らない程度の身体的接触を伴う性的要求や交際要求の場合には、安易に懲戒解雇を認めない傾向にあります(東京地判平21.4.24労判987号48頁[Y社(セクハラ・懲戒解雇)事件])。

【東京地判平10.12.7労判751号18頁[コンピューター・メンテナンス・サービス事件]】
 派遣従業員が、就業先の女性社員に対して、女性社員が不快感を示していたにもかかわらず、下着に手をかけたり、暗闇の中で抱きついたりした事案について、同裁判例は、「原告の…一連の行為は、…不快感を示していたにもかかわらずなされたもので、その態様も執拗かつ悪質であり、…相当程度の苦痛と恐怖を与えたものである」として、懲戒解雇を有効としています。

【東京地判平21.4.24労判987号48頁[Y社(セクハラ・懲戒解雇)事件]】
 取締役兼東京支店長が、宴席で女性従業員に対して自身の膝の上に座るよう申し向けて酌をさせたり、手を握る、肩を抱くなどしていた事案について、同裁判例は、「日頃の原告の言動は、前記発言のほか、宴席等で女性従業員の手を握ったり、肩を抱くという程度のものに止まっているものであり、本件宴会での一連の行為も、いわゆる強制わいせつ的なものとは、一線を画すものというべきものであること…、原告は被告(会社)に対して相応の貢献をしてきており、反省の情も示していること、これまで、原告に対して、セクハラ行為についての指導や注意がされたことはなく、いきなり本件懲戒解雇に至ったものであること」などを理由に懲戒解雇を無効としました。

【東京地判平28.7.19労判1150号16頁[クレディ・スイス事件]】
 アシスタント・ヴァイス・プレジデントである原告が、飲み会の席で、女性被害者に対し、「どうやってお客さんを攻略してるの?」「『枕』とかやったの?」(いわゆる枕営業をしたことがあるのか?)という発言をしたり、日頃から、「誰と付き合っているの?彼氏はいるの?」「(婚約者と)最近どうなの?」「そのボッテガ(のハンドバッグ)可愛いね。自分で買ったの?高かったんじゃないの?」「何人(の男性)と付き合っているの?」「どういうの(男性)がタイプなの?」などといった発言をしたり、これまでに性交渉をもった男性の人数を尋ねたりしていた事案について、同裁判例は、「たしかに、原告の各行為はそれぞれ懲戒事由に該当し、その内容からして、原告は相応の懲戒処分を受けて然るべきであると考えられるが、いずれの行為についても懲戒処分を検討するに当たって考慮すべき事情等があり、従前注意、指導といった機会もなかった(弁論の全趣旨)のであるから、これらの行為全てを総合考慮しても、懲戒処分における極刑といわれる懲戒解雇と、その前提である諭旨退職という極めて重い処分が社会通念上相当であると認めるには足りないというべきである」として、懲戒解雇を無効としました。

懲戒手続

 セクシュアルハラスメントを理由とする懲戒解雇は、弁明の機会が十分に与えられていなかったり、セクシュアルハラスメントから期間が経過したりしている場合には、無効となることがあります。

【大阪高判平22.8.26労判1016号18頁[北部クリーンセンター事件]】
 同裁判例は、「控訴人からの事情聴取時に示された内容は、「あなたから性的な発言をされ不愉快な思いをしたとの話を複数の者から聞いた」として、事情聴取対象者の氏名も明かさずに、「要約すると、〔1〕場所は、やまごえ温水プール内の事務室もしくは和室で、〔2〕状況は、所長であるあなたと二人きりの状況下で、〔3〕内容は、あなたがその女性と性的関係を持つことを希望していること、あなたの性的な経験もしくは考え方を明らかにすること、その女性の性的経験を聞くこと等である。」という程度であり、発言内容は抽象化されており、とても具体的とはいい難い。そして、これらのことについては事実かと尋ねられた控訴人が、「いいえ。仕事以外のことは何も言っていない。相手が嫌がる話は一切しない。言ってない。」と否定しても、それ以上に具体的な事実を示すことなく、今後はセクシュアルハラスメント調査委員会で専門家の意見をふまえて判断すると告げただけで、この件の事情聴取を終えている…。」
 上記事情からは、「当該臨時職員がだれであるのかすら特定されておらず、発言内容について具体的に控訴人に告げて弁明の機会を与えていない。したがって、仮に、控訴人が、…本件調査報告書に記載されたような発言をした事実があったとしても、これを処分理由とするのは手続的に著しく相当性を欠くというべきである」と判示しています。

【東京地判平24.3.27労判1053号64頁[霞アカウンティング事件]】
 同裁判例は、「仮にこのセクシュアル・ハラスメントの事実が認定できるとしても、処分が遅延する格別の理由もないにもかかわらず約2年も経過した後に懲戒解雇という極めて重い処分を行うことは、明らかに時機を失しているということができる上、上記課長職からの解任との関連で言えば、二重処分のきらいがあることも否定できないところであって、これを本件懲戒解雇の理由とすることには、問題があるといわざるを得ない」と判示しています。

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