170時間もの残業に苦しんでいませんか?
毎月の残業時間が170時間を超えると、趣味や家族との時間も作れず、体調も崩してしまいますよね。
結論から言うと、170時間の残業は法律違反です。
これは、残業時間の限度は法律で定められており、36協定を結んでいても月に100時間を超えることはできないためです。
つまり、月の残業時間が170時間を超えている場合には、労働基準法に違反することになります。
さらに、月に170時間の残業が発生している場合、会社に対して未払いの残業代を請求することも考えられます。
170時間もの残業をさせる会社は、残業代を適切に支払っていない会社が多いためです。
たとえば、基本給が30万円で、月の所定労働時間が160時間の方が、月170時間の残業(時間外労働)をした場合、3年間で約1434万3750円の残業代が発生します。
この記事を通じて、月に170時間の残業をしている場合の適切な対応方法を理解していただきたいと思います。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、法律上の考え方や、対処法がわかるはずです。
目次
残業170時間の一日の生活は危険
月170時間の残業をした場合の一日の生活は、常軌を逸しています。
月22日出勤する方ですと、月170時間の残業をする場合には、平日は毎日
170時間÷22日=7.73時間=7時間43分程度
の残業をすることになります。
ここでは、この1日の残業時間を、以下の2つに分けて説明していきます。
・平均残業時間
・1日の生活スケジュール
平均残業時間
昨年1月から12月までの日本の残業時間の平均は、約24時間になっています。(データ出典:⽇本の残業時間 定点観測 |OpenWork 働きがい研究所 (vorkers.com))
そのため、月の残業時間170時間は平均残業時間の約7倍であり、一般的な労働者と比べ、多くの残業をしていることがわかります。
1日の生活スケジュール
月の残業170時間というのは、1日に換算すると7時間43分程度です。
これを基に1日のタイムスケジュールの例を見てみると、以下の通りになります。
家に着く時間は深夜2時を過ぎており、睡眠時間も4時間以下となります。
このような生活では、家族との時間を作ることは難しく、健康面での問題も大きいです。
そのため、月170時間の残業は労働者の生活に大きな影響を与えることになります。
月170時間の残業は違法
労働者に月170時間の残業を命じることは違法です。
労働基準法には、残業に関する規則が明確に定められており、これに違反するような残業を命じることは違法となります。
ここでは、月に170時間の残業をさせることの法的問題について、以下の2つに分けて解説します。
・残業の上限規制
・会社の責任
残業の上限規制
労働者に残業を命じる場合、会社は労働者の代表と共に「36協定」を締結する必要があります。
36協定とは、法定労働時間を超えて残業をさせる場合に必要な合意事項をいいます。
しかし36協定結んでも、通常は月の残業時間は45時間を超えて命じることはできません。
労働基準法36条(時間外及び休日の労働)
4「……限度時間は、一箇月について四十五時間…とする。」
もっとも、例外的に予測できない業務の増加などが発生した場合、月45時間を超える残業を命じることができます。その場合でも、月の残業時間は100時間までが上限とされています。
労働基準法36条(時間外及び休日の労働)
6「…当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)…を定めることができる。」
予見できない業務の増加であっても、月の残業時間は100時間を超えることはできません。そのため、会社が労働者に月に170時間の残業を命じる行為は、労働基準法に違反します。
会社の責任
労働者が月に170時間を超える残業をした場合、会社対しては次の二つの責任が発生する可能性があります。
・刑事責任
・民事責任
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
刑事責任
企業が労働者に170時間以上の残業をさせた場合、特別な合意がなければ、最大6か月または懲役刑や30万円以下の罰金が科されることがあります。
民事責任
さらに、労働者に170時間以上の残業をさせた際には、会社は残業の支払いだけでなく、損害賠償責任を負う場合があります。
会社には、労働者の安全と健康を守る責任があり、適切な対策をしなければ、過失が認められることがあります。
実際、判例には、恒常的に著しく長時間にわたり業務に従事していること及びその健康状態が悪化していることを上司らが認識しながら、その負担を軽減させるための措置を採らなかったことにつき過失があるとして、労働者が自殺したことについて会社の損害賠償責任を認めたものがあります(最二判平12.3.24民集54巻3号1155頁[電通事件])。
そのため、労働者が170時間以上の残業を行ったことで健康上の問題が生じた場合、会社が安全と健康の確保義務を怠ったと主張し、損害賠償を請求できます。
残業170時間に潜む健康被害・過労死の危険
月170時間以上の残業が続くと、健康被害や命に係わる問題が生じる可能性があります。
具体的には、以下のことが考えられます。
①心臓や脳の疾患による過労死
②うつ病や適応障害などによる過労自殺
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
心臓・脳の疾患 – 過労死
月に170時間以上残業が常態化していると、心臓病や脳疾患を引き起こし、最悪の場合、死にいたります。
行政では、過労死を判断する基準の一つとして、「発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる」とされています。
そのため、170時間以上の残業は過労死のリスクを高め、心臓病や脳疾患の危険があります。
うつ病・適応障害等-過労自殺
月170時間を超える残業は、うつ病や適応障害など心理的な問題を引き起こし、自殺の可能性を高めることがあります。
これは、170時間以上の残業が労働者に大きな心理的ストレスを与えるためです。
政府は、精神的負担が「強」とみなされる例として、「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」ことを指摘しています。
出典:STOP過労死|厚生労働省
そのため、月170時間以上の残業は、心理的ストレスを大きく増加させ、うつ病や適応障害等の過労自殺の危険があります。
残業170時間の残業代はいくら
月170時間を超える残業をした場合には、請求できる残業代も高額になる可能性が高いです。
なぜなら、残業代の金額は残業時間数に比例するためです。
残業代の計算方法は以下のとおりです。
基礎賃金÷所定労働時間×割増率×残業時間数
残業代の詳しい計算に関しては、以下の記事で詳しく説明しています。
それでは、以下の月収における残業代を計算していきましょう。
月給20万円
月給30万円
月給40万円
月給20万円の場合
月給20万円の場合には、170時間の残業(法定時間外労働)をした場合の3年分の残業代金額は、
基礎賃金20万円÷月平均所定労働時間160時間×割増率1.25×残業170時間×36か月=956万2500円
程度となります。
月給30万円の場合
月給30万円の場合には、170時間の残業(法定時間外労働)をした場合の3年分の残業代金額は、
基礎賃金30万円÷月平均所定労働時間160時間×割増率1.25×残業170時間×36か月=1434万3750円
程度となります。
月給40万円の場合
月給40万円の場合には、170時間の残業(法定時間外労働)をした場合の3年分の残業代金額は、
基礎賃金40万円÷月平均所定労働時間160時間×割増率1.25×残業170時間×36か月=1912万5000円
程度となります。
残業代早見表
1か月の残業時間が170時間よりも少ない場合や多い場合の残業代金額が気になる方は、以下の残業代早見表をご確認ください。
※この表の残業代の金額は、1ヶ月のおおよその残業時間をもとに、残業代の金額を概算したものです。具体的事案により金額は異なります。あくまでも参考にとどめてください。
※この表は、3年分の未払い残業代を前提として計算しています。
※月平均所定労働時間は160時間としています。休日が年間125日程度の場合を前提としています。概ね、土日、祝日、夏季5日、年末年始(12月29日~1月4日)を休日とした場合です。(休日数は年により異なります)
※この表の残業代の金額は3年分(36ヶ月分)です。
※上記の残業代は、法定時間外割増賃金(割増率1.25)に限定しています。遅延損害金や付加金は含まれていません。請求できる具体的な金額は、所定時間外労働や所定休日労働、深夜労働により、異なります。
※上記の残業代は、これまでに使用者からの支払いがない場合を前提としています。
長時間のみなし残業代は無効の可能性
月170時間の残業が常態化している会社では、みなし残業代の制度を悪用している可能性が高いです。
みなし残業代については以下の記事で解説しているため、是非一読してください。
残業170時間の方が残業代を請求する4つのステップ
未払いの残業代を請求するためには、手順を踏む必要があります。
必要な手順は以下の通りです。
STEP1:通知書の送付
STEP2:残業代の計算
STEP3:交渉
STEP4:労働審判・訴訟
それでは順番に説明していきます
STEP1:通知書の送付
残業代を請求するためのSTEPの1つ目は、通知書の送付です。
まず、内容証明郵便を利用して、会社に通知書を送付します
理由は以下の2つです。
・時効を一時的に止めるため
・資料の開示を請求するため
具体的には、以下のような通知書を送付することが多いです。
※御通知のダウンロードはこちら
※こちらのリンクをクリックしていただくと、御通知のテンプレが表示されます。
表示されたDocumentの「ファイル」→「コピーを作成」を選択していただくと編集できるようになりますので、ぜひご活用下さい。
STEP2:残業代の計算
残業代を請求するためのSTEPの2つ目は、残業代の計算です。
会社から開示があった資料に基づき、残業代を計算します。
残業代の計算方法に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
会社が資料の提出を拒む場合は、自ら撮影したタイムカードの写真や、出勤・退勤時刻が確認できる記録を使用して計算をします。
そのため、あらかじめ証拠を保全しておくことが重要です。
残業代の証拠集めについては以下の記事で詳しく説明しています。
STEP3:交渉
残業代を請求するためのSTEPの3つ目は、交渉です。
まずSTEP2で計算した残業代を、書面等で会社に請求します。
その後、会社からは請求金額や計算方法について、反論があることが通常です。
会社と主張が分かれる点に関しては、裁判例や法律を根拠に、説得力のある主張をし交渉を行っていきます。
STEP4 労働審判・訴訟
残業代を請求するためのSTEPの4つ目は、労働審判・訴訟です。
交渉がまとまらない場合、労働審判や訴訟等の裁判所を用いた手続きに移行します。
労働審判では、裁判官が加わる形で最大3回の話し合いが行われ、調停を通じた解決を図ります。調停で合意に至らない場合は、裁判所が暫定的な判決を下します。
訴訟の場合、期日の設定に厳密な制限はなく、大体月に一度の割合で、双方がそれぞれの主張を展開します。
通常、訴訟による解決には約1年ほどの時間が必要になることが多いです。
残業代を減らす4つの方法
残業170時間は過労死等の危険があるため、速やかに対処する必要があります。
具体的な対処法は以下の通りです。
対処法1:上司に相談する
対処法2:残業を拒否する
対処法3:労働基準監督署に相談する
対処法4:転職する
それでは順番に説明していきます。
対処法1:上司に相談する
残業を減らすための対処法の1つ目は、上司に相談することです。
170時間の残業に悩んでいる場合、まず上司に相談することが大切です。
その際には、具体的に以下のような内容を説明することが効果的です。
・先月の残業時間
・体調不良の場合の症状
・睡眠時間やプライベートへの影響
具体的な説明をすることで、上司があなたの状況を認識してくれます。
労働者の健康と安全を守る責任が企業にはあるため、上司はこのような相談をされた場合に対応してくれる可能性が高いです。
対処法2:残業を拒否する
残業代を減らすための対処法の2つ目は、残業を拒否することです。
月に170時間の残業は違法です。
違法な残業を命じられても、従う必要はありません。また違法な残業に従わなかったことを原因に解雇をすることもできません。
そのため違法な残業を命じられた場合には、違法な残業には応じられない旨を明確にすることが大切です。
残業を拒否する方法については、以下の記事で詳しく説明されています。
対処法3:労働基準監督署に相談する
残業を減らすための対処法の3つ目は、労働基準監督署に相談することです。
労働基準監督署に連絡することで、違法な残業が行われている会社に対する調査を依頼できます。
月170時間を超える残業が当たり前になっている会社は、労働基準法に違反するため、労働基準監督署への相談をすることで問題が解決できる場合があります。
ただし、労働基準監督署は人手不足であり、全ての案件に対応できないことがあります。そのため、緊急性の高い案件が優先されることが多いです。匿名や電話での相談では、重要性が低いと判断される可能性があります。
そのため労働基準監督署からの対応を促すには、直接訪問し、自分の名前と企業名を明らかにして相談するのが効果的です。
匿名を希望する場合は、その旨を伝えて配慮を求めることも可能です。
対処法4:転職する
残業を減らすための対処法の4つ目は、転職することです。
これは、残業を減らすうえでは最も有効な手段になります。
具体的な転職するための手順は、以下の3つです。
手順1:証拠を集める
手順2:退職届を出す
手順3:残業の少ない会社に転職する
それでは、順番に解説していきます。
手順1:証拠を集める
転職する手順の1つ目は、証拠を集めることです。
残業代請求だけでなく、失業保険を受給する際や健康被害が生じた場合に備えて、長時間の残業をしていたことを証明できる必要があります。
ただし、170時間以上の残業が当たり前になっている状況は労働基準法に違反しています。そのような違法行為を行う会社は、証拠を隠滅する可能性があります。
退職する前に、残業時間の証明に役立つ資料を確保しておくことが大切です。最も有効な証拠はタイムカードの記録ですが、それが利用できない場合は、出入り記録、業務用メール、日報など、第三者が労働を確認できる証拠を集めておくといいです。
証拠がまったくない場合には、日々の作業開始時刻、休憩時刻、作業終了時刻、行った業務の内容などを詳細に記録することも役立ちます。
残業代の証拠集めについては以下の記事で詳しく説明しています。
手順2:退職届を出す
転職する手順の2つ目は、退職届を出すことです。
退職する意思を会社に伝えるための退職願は、退職希望日の少なくとも2週間前に提出する必要があります。
提出は直接手渡しでも、内容証明郵便を使用してもかまいませんが、手渡しの場合はそのコピーを保管しておくことが大切です。
退職届には、以下の内容を記載して提出しましょう
・退職する意思と退職の日付
・離職票の交付請求
・退職する理由(必須ではありません)
・有給休暇の取得申請(必須ではありません)
例えば以下のような内容を記載します。
※退職届御通知のダウンロードはこちら
※こちらのリンクをクリックしていただくと、退職届御通知のテンプレが表示されます。
表示されたDocumentの「ファイル」→「コピーを作成」を選択していただくと編集できるようになりますので、ぜひご活用下さい。
手順3:残業の少ない会社に転職する
転職する手順の3つ目は、残業の少ない会社に転職することです。
残業の少ない会社に転職するために確認すべきポイントは、以下の4つです。
・長時間分の固定残業代がないか
・タイムカードがあるか
・業務量と比較して人員が少なすぎないか
・社員数に対して採用人数が多すぎないか
これらのポイントに注意することで、長時間労働や未払い残業が当たり前になっている会社を見分けれる可能性が高ります。
従って、転職の際には、これらのポイントを考慮に入れることが重要になります。
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まとめ
今回は、残業170時間の危険性と対処法について解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると、以下の通りです。
まとめ
残業170時間方の一日の生活は以下の通りです。
・平均残業時間は月約24時間であり、月170時間の残業は平均を大幅に超えています。
・月170時間の残業をしていると、プライベートや家族との時間を取ることは困難となります。
残業170時間の法律上の問題点は以下の通りです。
・月170時間の残業は違法です。
・残業170時間の会社は民事・刑事どちらでも責任が生じる可能性があります。
・残業170時間に潜む健康被害・過労死の危険があります。
・残業160時間が常態化している場合の請求できる残業代は、月給別で以下の通りです。
・月給20万円の場合 残業代956万2500円円
・月給30万円の場合 残業代1434万3750円
・月給40万円の場合 残業代1912万5000円
・長時間のみなし残業代は無効の可能性があります。
・残業170時間の方が残業代を請求するステップは、以下の4つです。
STEP1:通知書の送付
STEP2:残業代の計算
STEP3:交渉
STEP4:労働審判・訴訟
・残業を減らす対処法は、以下の4つです。
対処法1:上司に相談する
対処法2:残業を拒否する
対処法3:労働基準監督署に相談する
対処法4:転職する
この記事が長時間残業に苦しんでいる人の助けになれば幸いです
以下の記事も参考になるはずですので、読んでみてください。
また、YouTubeでも解説をしていますので、よろしければご参照ください。