残業代を計算する際には、計算の基礎となる賃金を1時間当たりの時給に引き直す必要があります。
では、どのようにして基礎時給を計算すればいいのでしょうか。
今回は、基礎時給の計算方法について解説します。
基礎時給とは
残業代は、以下の計算方法により計算します。
このうち、「基礎賃金÷所定労働時間」というのは、時給制以外の賃金制度がとられている場合において、残業代の計算の基礎となる1時間当たりの賃金を算出するために行われるものです。
「基礎賃金÷所定労働時間」により求められた1時間当たりの賃金額を「基礎時給」と呼びます。
基礎時給の計算方法
基礎時給は、「基礎賃金÷所定労働時間」により計算することになります。ただし、時給制の場合には、既に1時間当たりの賃金になっているため、所定労働時間により除する必要はありません。
基礎賃金
基礎賃金は、残業代の計算をする上で基礎に含める賃金です。以下の①乃至⑦の賃金を除いた賃金の合計金額となります。これらの除外賃金に該当するかは、実質により判断されます。
① 家族手当
② 通勤手当
③ 別居手当
④ 子女教育手当
⑤ 住宅手当
⑥ 臨時に支払われた賃金
⑦ 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金
このように、基礎賃金には、基本給以外の賃金も含まれます。基本給のみを基礎賃金として計算すると、残業代の金額が小さくなってしまいますのでご注意ください。
所定労働時間
日給制がとられている場合には、1日の所定労働時間数(日によって所定労働時間数が異なる場合には、1週間における1日平均所定労働時間数)で除することになります。
週休制がとられている場合には、1週間における所定労働時間数(週によって所定労働時間数が異なる場合には、4週間における1週平均所定労働時間数)で除することになります。
月給制がとられている場合には、1か月における所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異なる場合には、1年における1月平均所定労働時間数)で除することになります。
年俸制がとられている場合には、1年間の所定労働時間数で除することになります。
<所定労働時間の数え方の例>
では、実際に所定労働時間数を計算してみましょう。月給制がとられている会社を例にして見ていきます。
まず、1日の所定労働時間数を確認しましょう。1日の所定労働時間数については、就業規則や雇用契約書に記載されています。始業時刻と終業時刻、休憩時間などが記載されていますので、それをもとに計算することができます。例えば、始業時刻が9時00分、終業時刻が18時00分、休憩時間が12時00分~13時00分までの場合には、1日の所定労働時間は8時間となります。
次に、1年間の就労日を数えることになります。休日数の方が少ない方が多いと思いますので、「365日(閏年の場合は366日)-年間休日数」により、就労日を計算するのが効率的でしょう。年間の休日数については会社のカレンダーをもとに計算するか、就業規則や雇用契約書等に記載されている所定休日をカレンダーに書き込むことにより計算することができます。例えば、年間休日数が以下のとおりであったとしましょう。
この場合、1年間の就労日は、「365日-120日=245日」となります
最後に、「1日の所定労働時間数×1年間の就労日数÷12か月」により月平均所定労働時間数が計算できます。
上記の例では、「8時間×245日÷12か月=163.33時間」となります。
<年間休日総日数の実態>
年間休日総日数については、厚生労働省による「平成26年就労条件総合調査結果の概況」では、「69日以下」が「3.1%」、「70~79日」が「5.8%」、「80~89日」が「6.5%」、「90~99日」が「10.5%」、「100~109日」が「31.5%」、「110~119日」が「16.4%」、「120~129日」が「25.5%」、「130日以上」が「0.8%」となっています。
(出典:平成26年就労条件総合調査結果の概況)
計算例
以下の例で基礎時給を計算してみましょう。
【労働者Aさん】
1か月の賃金 基本給25万円、役職手当5万円、通勤手当1万円
1日の所定労働時間 8時間
1年間の就労日数 245日
労働者Aさんの場合、基礎賃金の金額は、基本給と役職手当の合計金額である30万円となります。通勤手当は、基礎賃金に含まれません。
1か月当たりの所定労働時間数は、8時間×245日÷12か月=163.33時間となります。
従って、基礎時給は、30万円÷163.33時間=1836円となります。
【労働者Bさん】
1か月の賃金 基本給20万円 家族手当5万円 住宅手当3万円 通勤手当1万円
1日の所定労働時間 7時間30分
1年間の就労日数 260日
労働者Bさんの場合、基礎賃金の金額は、20万円となります。家族手当、住宅手当、通勤手当は、基礎賃金に含まれません。
1か月当たりの所定労働時間数は、7時間30分×260日÷12か月=162.5時間となります。
従って、基礎時給は、20万円÷162.5時間=1230円となります。
基礎時給早見表
以下の基礎時給早見表を参考にしてください。