労働審判を利用してみたいものの、いくらかかるかわからずに悩んでいませんか?
どのような制度により解決するかについては、ある程度、費用の見通しを立ててから決めたいですよね。
労働審判をするのに必要な費用を簡単にまとめると以下のとおりです。
といっても、印紙代や弁護士費用は、請求額や類型によって異なってきます。そのため、より正確な、費用を知りたい場合には、計算の方法や類型ごとの相場を知ることが大切となります。
また、労働審判の費用について、できれば会社側に負担してほしいと考えている方もいますよね。しかし、実際には、これらの費用を会社に負担してもらえることはほとんどありません。
労働審判の費用については、あなた自身が負担するものと考えておいた方がいいでしょう。
そのため、可能な限り、あなたの負担を軽減するためには、労働審判の費用をいかに上手に節約していくかということが重要となります。
意識せずに労働審判の手続きを行ってしまうと、必要以上の費用を負担することになりかねません。
今回は、労働審判の費用を説明したうえで、私の労働審判事件の経験をもとに上手に費用を節約する方法を紹介していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、労働審判で必要以上の費用を負担することがなくなるはずです。
労働審判とはどのような制度かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次
労働審判の費用一覧
労働審判を行う場合に必要な費用としては、以下の6つの費用が挙げられます。
費用1:印紙代
費用2:予納郵券代
費用3:印刷代
費用4:郵送費
費用5:交通費
費用6:弁護士費用(着手金・報酬金)
それぞれの費用の概要と相場を整理すると、以下のとおりまとめることができます。
以下では、これらの費用について、もう少し詳しく説明していきます。
費用1:印紙代
印紙代とは、労働審判の申し立てをする際に裁判所に納める手数料です。
印紙代は、「労働審判を求める事項の価額」により決まっています。
具体的には、「労働審判を求める事項の価額」が1000万円までの印紙代は、以下のとおりです。
残業代請求事件や不当解雇事件ですと労働審判を求める事項の価額は100万円~750万円程度に納まることが多いでしょうから、印紙代の相場としては5000円~2万円程度となります。
労働審判を求める事項の価額の算定方法について、「残業代事件」と「不当解雇事件」のそれぞれについて説明していきます。
残業代事件
残業代事件の労働審判を求める事項の価額については、以下の方法により算定します。
①残業代請求
請求金額
②付加金
訴訟の附帯の目的であるため求める事項の価額に含めない(民事訴訟法9条2項、最決平成27年5月19日民集69巻4号635頁)
①の金額が労働審判を求める事項の価額になります。
民事訴訟法第9条(併合請求の場合の価額の算定)
2「果実、損害賠償、違約金又は費用の請求が訴訟の附帯の目的であるときは、その価額は、訴訟の目的の価額に算入しない。」
最決平成27年5月19日民集69巻4号635頁
「労働基準法114条の付加金の請求については、同条所定の未払金の請求に係る訴訟において同請求とともにされるときは、民訴法9条2項にいう訴訟の附帯の目的である損害賠償又は違約金の請求に含まれるものとして、その価額は当該訴訟の目的の価額に算入されないものと解するのが相当である。」
不当解雇事件
不当解雇事件の労働審判を求める事項の価額については、以下の方法により算定します。
①雇用契約上の権利を有する地位の確認
160万円(民事訴訟費用等に関する法律4条7項)
②解雇後の賃金請求
申立時に発生している賃金額+3か月分の賃金額
※運用上、既発生分+未発生分により計算することになっており、未発生分については平均審理期間を基準に算定されています。
※訴訟の場合には、「訴訟提起時に発生している賃金額+1年分の賃金額」とされています。
③慰謝料請求
請求金額
①②はいずれも解雇無効を原因とするもので1つの請求と扱われるため、金額の低い方は高い方に吸収されることになります(民事訴訟法9条1項但書)。
そのため、最終的な労働審判を求める事項の価額は、①②のいずれか高い方+慰謝料請求金額となります(民事訴訟法9条1項本文)。
ただし、労働審判を求める事項の価額の計算については、裁判所の運用により異なることがありますので、補正があった場合にはそれに従うことになります。
民事訴訟費用等に関する法律4条(訴訟の目的の価額等)
7「前項の価額は、これを算定することができないか又は極めて困難であるときは、百六十万円とみなす。」
民事訴訟法9条(併合請求の場合の価額の算定)
1「一の訴えで数個の請求をする場合には、その価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする。ただし、その訴えで主張する利益が各請求について共通である場合におけるその各請求については、この限りでない。」
具体例
Xが、Y社から不当解雇された事案において、解雇の無効の主張と残業代請求いずれも行う場合を前提に労働審判の申し立て事項の価額を計算してみましょう。
XのY社に対する請求は以下のとおりとします。
①残業代:200万円
②付加金:150万円
③雇用契約上の権利を有する地位の確認
④解雇後の賃金:月額25万円(3か月分が既発生)
⑤慰謝料:150万円
②は、付帯の目的であるため労働審判の申し立ての事項の価額に含まれません。
③は算定の不能のため160万円となります。④は、既発生3か月分と未発生3か月分の合計6か月分となりますので、25万円×6か月分=150万円となります。③の方が④よりも高額ですので、④は③に吸収されます。
そのため、この事案における労働審判の申し立ての事項の価額は、①200万円+③160万円+⑤150万円=510万円となります。
したがって、印紙代は1万6000円です。
費用2:予納郵券代
予納郵券代とは、裁判所から事件当時者等に郵便物を送付するための郵便料です。
申立をする際に、裁判所に郵便切手を預けて、余ったものは終了時に返却されます。
預ける郵便切手の金額は、裁判所により異なりますので、電話で確認してみるのが確実です。
東京地方裁判所と横浜地方裁判所の労働審判申立ての際の予納郵券代は、以下のとおりです。
費用3:印刷代
印刷代とは、申立書や証拠の写しなどの書面を印刷するのにかかる費用です。
申立書については15頁~30頁程度、証拠は事案によりますが証拠説明書を含めて50頁~200頁程度になることが多いでしょう。
申立書については、正本、副本、写し3部の合計5部印刷する必要があります。
証拠は、正本、副本で合計2部印刷する必要があります。
整理すると、おおよそ以下のとおりとなります。
費用4:郵送費
郵送費とは、あなたが裁判所や相手方に書面を郵送するのに必要な費用です。
申立書や補正申立書を裁判所に郵送により提出する場合には、その郵送費用がかかります。
また、補充書面をFAXではなく郵送により裁判所や相手方に提出する場合にも、その郵送費用がかかります。
例えば、レターパックプラスで郵送する場合には1回520円、レターパックライトで郵送る場合には1回370円となります。
費用5:交通費
交通費とは、期日に裁判所に出頭するために必要な交通費です。
電車やバス、タクシーなどを使う場合には、その費用がかかります。
費用6:弁護士費用(着手金・報酬金・日当)
弁護士費用とは、弁護士に依頼する場合に支払うこととなる費用のことです。
弁護士に依頼する場合には、着手金や報酬金がかかります。
着手金とは、弁護士に事件を依頼して、弁護士が実際に事件にとりかかるために必要となる費用です。
労働審判の着手金の相場は、0円~30万円程度です。
報酬金とは、弁護士に事件を依頼して、事件が実際に解決した場合に、その成功の程度に応じてかかる費用です。
労働審判の報酬金の相場は、経済的利益の10%~30%程度です。
日当は、労働審判の期日に出頭することについてかかる費用です。1期日0円~3万円程度です。
ただし、労働審判の事件の種類や弁護士事務所により報酬体系は異なりますので、ご依頼を検討している弁護士事務所に確認してみるのがいいでしょう。
相場としては、弁護士費用合計で35万円~80万円程度となるでしょう。
労働審判の費用は訴訟よりも安い|訴訟に移行した場合には追納が必要
労働審判の費用は、おおむね訴訟よりも安くなっています。
まず、印紙代や予納郵券代は、労働審判ですとおおむね訴訟の2分の1程度の金額となっています。
もしも、労働審判から訴訟に移行した場合には、その時点で、裁判所に印紙代と予納郵券代の差額を納めることになります。
また、印刷代については、第1回の期日でほとんど事実関係の審理が終了するため、主張書面を訴訟よりも3部多く印刷しなければいけないことを踏まえても、安価になることが通常です。
郵送費や交通費についても、期日が全3回までしか行われないため、安価に済むことが通常です。
弁護士費用については、事務所により異なりますが、訴訟となった場合には追加の着手金として10万円~20万円ほどかかる場合があります。また、訴訟ですと期日の回数が多いので労働審判に比べて出頭日当が高額になりがちです。
そのため、労働審判による解決の方が訴訟に比べて、費用を抑えることができるのです。
残業代の裁判の費用については、以下の記事で詳しく解説しています。
不当解雇の裁判の費用については、以下の記事で詳しく解説しています。
労働審判の費用は通常は相手方に請求できない
労働審判の費用は、原則、会社に請求することはできません。
そのため、上記の費用については、自分が負担しなければならないものと考えておいた方がいいでしょう。
以下では、「印紙代や郵券代」と「弁護士費用」に分けて説明します。
印紙代や郵券代
印紙代や郵券代については、労働審判では、原則、相手方に請求することはできません。
訴訟では、印紙代や郵券代については、敗訴した当事者が負担することとされています(民事訴訟法61条)。
民事訴訟法61条(訴訟費用の負担の原則)
「訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする。」
これに対して、労働審判では、印紙代や郵券代については、原則、各自の負担とされています(労働審判法29条1項、非訟事件手続法26条)。
労働審判法29条(非訟事件手続法及び民事調停法の準用)
1「特別の定めがある場合を除いて、労働審判事件に関しては、非訟事件手続法第二編の規定(同法第十二条(同法第十四条及び第十五条において準用する場合を含む。)、第二十七条、第四十条、第五十二条、第五十三条及び第六十五条の規定を除く。)を準用する。この場合において、同法第四十三条第四項中「第二項」とあるのは、「労働審判法(平成十六年法律第四十五号)第五条第三項」と読み替えるものとする。」
非訟事件手続法26条(手続費用の負担)
1「非訟事件の手続の費用(以下「手続費用」という。)は、特別の定めがある場合を除き、各自の負担とする。」
2「裁判所は、事情により、この法律の他の規定(次項を除く。)又は他の法令の規定によれば当事者、利害関係参加人その他の関係人がそれぞれ負担すべき手続費用の全部又は一部を、その負担すべき者以外の者であって次に掲げるものに負担させることができる。」
一「当事者又は利害関係参加人」
二「前号に掲げる者以外の裁判を受ける者となるべき者」
三「前号に掲げる者に準ずる者であって、その裁判により直接に利益を受けるもの」
…
通常、労働審判申立書の「申立の趣旨」では「申立費用は、相手方の負担とする」との審判を求めていきますが、審判では「申立費用は、各自の負担とする」とされるケースが多いのです。
和解の話し合いでも、申立費用は各自の負担とすることが当然の前提として話し合いが進められるのが慣例となっており、通常、「申立費用は、各自の負担とする」との条項が入れられます。これは、訴訟における和解の場合も、同様です。
弁護士費用
弁護士費用については、原則として、相手方に請求することはできません。
①弁護士に委任するかどうかは任意であること、②敗訴した場合に相手方の弁護士費用を負担しなければならないリスクがあり裁判を起こしにくくなること、③契約関係に入る時点で裁判のリスクも想定できることなどが理由です。
ただし、例外的に、不法行為に基づく損害賠償請求をする際には、相当と認められる範囲内に限り、相手方に弁護士費用を請求できるとされています(最判昭和44年2月27日民集23巻2号441頁)。
実務上は、損害賠償請求が認容された金額の1割程度を弁護士費用として請求することが認められる傾向にあります。
不法行為の場合には、①相手方の故意過失により権利を侵害されるため弁護士費用を全額自己負担とすることは不公平であること、②被害者が加害者を選べないことなどがその理由です。
<最判昭和44年2月27日民集23巻2号441頁>
「思うに、わが国の現行法は弁護士強制主義を採ることなく、訴訟追行を本人が行なうか、弁護士を選任して行なうかの選択の余地が当事者に残されているのみならず、弁護士費用は訴訟費用に含まれていないのであるが、現在の訴訟はますます専門化され技術化された訴訟追行を当事者に対して要求する以上、一般人が単独にて十分な訴訟活動を展開することはほとんど不可能に近いのである。従つて、相手方の故意又は過失によつて自己の権利を侵害された者が損害賠償義務者たる相手方から容易にその履行を受け得ないため、自己の権利擁護上、訴を提起することを余儀なくされた場合においては、一般人は弁護士に委任するにあらざれば、十分な訴訟活動をなし得ないのである。そして現在においては、このようなことが通常と認められるからには、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。」
例えば、会社に対して150万円の慰謝料請求が認容される場合には、15万円の弁護士費用を相手方に請求できることになります。
ただし、和解の話し合いなどでは、通常、弁護士費用の支払いまでは応じてもらえないのが慣例です。
労働審判の費用を上手に節約する方法6つ
労働審判の費用は、意識をせずに手続きを進めていると必要以上に支払うこととなってしまうことがあります。
労働審判の費用を抑えたい場合には、意識的に節約することが大切です。
私がこれまで労働審判を経験した中で、労働審判費用を上手に節約する方法としては、例えば以下の6つがあります。
節約方法1:現実的な金額を請求する|印紙代の節約
節約方法2:争点を意識したメリハリのある主張をする|コピー代の節約
節約方法3:自分の記録は電子データを活用する|コピー代の節約
節約方法4:証拠は質の高いものを厳選する|コピー代の節約
節約方法5:近くの裁判所に申し立てる|交通費の節約
節約方法6:弁護士の報酬体系と見積もりを確認する|弁護士費用の節約
ただし、安易に労働審判費用を節約しすぎて、判断に影響が出てしまうことは避けなければなりません。
節約をするのであれば、申立書や証拠の質を維持したうえで、不必要な部分について上手に行うべきです。
労働審判にかかる費用に比べて請求金額の方が何倍も大きな金額ですので、請求自体に悪影響がでてしまっては元も子もないためです。
それでは、労働審判の費用の節約方法について一つ一つ説明していきます。
節約方法1:現実的な金額を請求する|印紙代の節約
労働審判の費用の上手な節約方法の1つ目は、現実的な金額を請求することです。
先ほど説明したように、印紙代は、労働審判を求める事項の価額により決まるためです。
特に、注意した方がいいのは、慰謝料の金額です。
例えば、不当解雇の事案ですと慰謝料の金額の相場は50万円~100万円程度とされており、労働事件では高額な慰謝料請求は認められにくい傾向にあります。
また、不当解雇の和解の話し合いでは慰謝料金額はあまり考慮せず、賃金の〇か月分などの形で決まることが多い傾向にあります。
そのため、慰謝料の金額を何百万円も記載してしまうと、無駄な印紙代を支払うことになってしまいます。
他方で、あなたが請求している金額は、認容される可能性のある金額や和解の話し合いの金額の上限となってしまいます。
そのため、請求金額が低すぎても、請求自体に影響が出てしまいますので注意が必要です。
以上より、請求金額を決める際には、相場や見通しを十分に立てたうえで、現実的な金額を請求することになります。
節約方法2:争点を意識したメリハリのある主張をする|コピー代の節約
労働審判の費用の上手な節約方法の2つ目は、争点を意識したメリハリのある主張をすることです。
労働審判では、申立書は裁判所に5部提出する必要があり、提出部数が多くなっています。そのため、主張が多くなると印刷代も高額になります。
労働審判の申立書は、たくさん書けばいいというわけではありません。
労働審判では、通常、第1回期日の前半の1時間程度でほとんど労働審判委員会の心証が決まってしまいますので、短い時間で十分に理解してもらえるように記載する必要があります。
具体的には、争点を理解したうえでその争点において重要な事実や主張に力を入れて記載をするべきであり、争点とは関係ない事実についてはそこまで厚く書く必要はありません。
良くない申立書の例として、争点と関係のない会社に対する不満を長々と記載するようなものがあります。
それぞれの記載がどのような意味を持っているのか一見して分からないと、あなたの主張を労働審判委員会に十分に考慮してもらえない可能性があり、請求自体においても悪影響となります。
そのため、労働審判申立書は、長々書くべきではなくメリハリをつけて書くべきなのです。
節約方法3:自分の記録は電子データを活用する|コピー代の節約
労働審判の費用の上手な節約方法の3つ目は、自分の記録は電子データを活用することです。
自分の記録を電子データにすることで、印刷代を節約することができます。
実際、弁護士にも、PCやタブレットで訴訟記録を持ち歩いている方が増えてきています。
ただし、電子機器の取り扱いについては裁判所により運用がありますので、不安がある場合には事前に確認をしておいた方がいいでしょう。
なお、労働審判という性質上、その場ですぐに受け答えをしなければならず、インデックスなどをつけておけば書面の方がすぐに該当箇所や証拠を探せる場合もあります。
そのため、電子化することで印刷代を節約をすることはできますが、書面の記録の方が自分にあっているという方は無理に電子化する必要はないでしょう。
節約方法4:証拠は質の高いものを厳選する|コピー代の節約
労働審判の費用の上手な節約方法の4つ目は、証拠は質の高いものを厳選することです。
証拠については、あるものを全て出そうとすると量が膨大になりがちです。労働審判では、期日の回数も限られているので、手元にある証拠の中で質の高いものを厳選しましょう。
例えば、規程類などは頁数も多くなりがちですので、争点とは関係ない規程や協定は出す必要がないこともあるでしょう。
また、メールやLINEの履歴などについては、整理したうえで提出するのがよいでしょう。関係のないメールやLINEが紛れていると趣旨が伝わりにくくなります。
節約方法5:近くの裁判所に申し立てる|交通費の節約
労働審判の費用の上手な節約方法の5つ目は、近くの裁判所に申し立てることです。
労働審判は、WEB会議などを実施している裁判所もありますが、実際に現地に赴くことが必要となる場合も多く、遠方の裁判所ですと交通費が高額になります。
労働審判は、地方裁判所において行われます。本庁で行われるのが通常ですが、一部労働審判を取り扱っている支部もあります。
労働審判を申し立てる地方裁判所は、通常、以下のいずれかです。
①会社の本店所在地(法務局で登記をとり確認できます)を管轄する地方裁判所
②あなたが現に働いている事業所又は最後に働いていた事業所の所在地を管轄する地方裁判所
③会社と労働者が書面で合意した地方裁判所
裁判所の管轄については、以下のページで確認できます。
裁判所の管轄区域
知っておいていただきたいのは、「あなたが現に働いている事業所又は最後に働いていた事業所の所在地を管轄する地方裁判所」にも管轄があるということです。
会社の本店が遠方にある場合であっても、あなたが働いていた地域で労働審判を行うことができますので活用しましょう。
労働審判法第2条(管轄)
「労働審判手続に係る事件(以下「労働審判事件」という。)は、相手方の住所、居所、営業所若しくは事務所の所在地を管轄する地方裁判所、個別労働関係民事紛争が生じた労働者と事業主との間の労働関係に基づいて当該労働者が現に就業し若しくは最後に就業した当該事業主の事業所の所在地を管轄する地方裁判所又は当事者が合意で定める地方裁判所の管轄とする。」
節約方法6:弁護士の報酬体系と金額の見積もりを確認する|弁護士費用の節約
労働審判の費用の上手な節約方法の6つ目は、弁護士の報酬体系と金額の見積もりを確認することです。
特に、労働問題で弁護士の報酬体系を確認する際には、以下の3つの点が重要なポイントとなりますので、必ず確認するようにしましょう。
①完全成功報酬制かどうか
②交渉・労働審判・訴訟における報酬割合の相違
③不当解雇事案で復職が認められた場合の報酬の算定方法
それでは、注意点を順番に説明していきます。
①完全成功報酬制かどうか
まず重要なのは、完全成功報酬制かどうかの確認です。
完全成功報酬制とは、着手金無料で事件終了時に獲得できた経済的利益の範囲で報酬を支払うという制度です。
つまり、完全成功報酬制の場合には、事件が失敗に終わってしまった場合に、弁護士費用だけ支払うことになってしまうリスクを回避することができるのです。
これに対して、着手金が必要な事務所に依頼する場合には、着手金は事件が失敗に終わっても戻ってこないお金であることを理解しておく必要があります。
この点についての説明や理解が不十分であり、事件が失敗してしまった際にトラブルとなるケースもあるのです。
労働事件は会社側があなたの予期せぬ反論をしてくることが往々にしてあります。委任した際に弁護士に伝えていないような反論が出てきてしまうと、見通しが変わってしまうこともないとはいえません。
例えば、解雇の事案ですと、会社側に代理人が就いたり、代理人が変わったりした途端に解雇理由が追加されるというケースもあります。
もしも、着手金を支払う必要がある場合には、事案について正確に説明した上で、失敗してしまうリスクがどの程度あるのかを十分に確認しておきましょう。
②交渉・労働審判・訴訟における報酬割合の相違
次に重要なのは、交渉・労働審判・訴訟における報酬割合の相違です。
交渉の報酬割合は他の事務所よりも安価であるものの、労働審判や訴訟の報酬割合は他の事務所よりも高いということがあります。
そのため、報酬割合を確認するときは、交渉により解決した場合の報酬割合だけではなく、労働審判や訴訟により解決した場合の報酬割合についても確認しておくことが大切です。
③不当解雇事案で復職が認められた場合の報酬の算定方法
最後に見落としてしまいがちなのが、不当解雇事案で復職が認められた場合の報酬の算定方法です。
不当解雇を争う場合には、通常、「雇用契約上の権利を有する地位の確認」をしますが、これについては報酬の計算方法が事務所により大きく異なります。
特に、以下の2点については注意しておいた方がいいでしょう。
注意点1:地位の確認が認められた場合の利益の算定方法
注意点2:解雇後の賃金(バックペイ)も認められた場合の関係
注意点1について、雇用契約上の権利を有する地位の確認が認められた場合の経済的利益の算定方法としては、大きく分けると、「旧弁護士報酬基準の算定不能の場合を基準にして800万円とするケース」と「年収を基準とするケース」があります。なお、年収を基準とするケースでは1年程度を基準にすることが多い印象ですが、これも事務所によります。
注意点2について、雇用契約上の権利を有する地位の確認が認められる場合には、通常、解雇後の賃金の請求も認容されることになります。この解雇後の賃金が認められた場合には、雇用契約上の権利を有する地位が認められたことによる経済的利益と合算するのか、それともいずれか高いほうだけを基準にするのか等、事務所の計算の方法を確認しておいた方がいいでしょう。
これらの点についてどのように算定するのかにより弁護士費用が大きく異なりますので、試しに計算してみて、あなたにあった事務所を選びましょう。
可能な限り、報酬体系が明確な弁護士に依頼することをおすすめします。
【想定例】
X氏(年収500万円)のY社に対する①雇用契約上の権利を有する地位の確認と、②解雇後の賃金(バックペイ)の請求200万円が認容された事案を想定しましょう。
X氏は弁護士に依頼しており、成功報酬は経済的利益の20%とされています。
ルール1:雇用契約上の権利を有する地位の経済的利益は800万円を基準に算定
ルール2:解雇後の賃金(バックペイ)が認められた場合の経済的利益は雇用契約上の権利を有する地位の確認の経済的利益と合算
①雇用契約上の権利を有する地位の確認の経済的利益は800万円(ルール1)
②解雇後の賃金の経済的利益は200万円
③①と②は合算されるので最終的な経済的利益は合計1000万円(ルール2)
⇒弁護士報酬は1000万円×20%=200万円
ルール1:雇用契約上権利を有する地位の経済的利益は年収1年分を基準に算定
ルール2:解雇後の賃金(バックペイ)が認められた場合の経済的利益は雇用契約上の権利を有する地位の経済的利益と比較して高い方のみを基準として合算はしない
①雇用契約上の権利を有する地位の確認の経済的利益は500万円(ルール1)
②解雇後の賃金の経済的利益は200万円
③①と②はいずれか高い方を基準にするので最終的な経済的利益は500万円(ルール2)
⇒弁護士報酬は500万円×20%=100万円
労働審判費用の節約で失敗しがちなのは、弁護士費用を節約しようとして、自分で行う場合です。
勿論、労働事件の経験や法律の知識が十分にある方であれば、弁護士をつけずに解決できるケースがないとは言いません。
しかし、訴訟になってしまった後に、途中からご相談いただくケースの中には、法律構成自体が不利なものとなってしまっており、修正が困難な場合も見受けられます。
方針を誤っていたり、ポイントを押さえていなかったりすることにより、請求できる金額に大きな差が生じてしまうことも珍しくありません。
どうしても自分だけで労働審判を行う場合には、申立の前に、方針や注意点の相談だけでも弁護士にしておくのがいいでしょう。
弁護士に依頼したいけど着手金が払えない場合の2つの選択肢
もしも、あなたが弁護士に依頼したいけど着手金が払えないという場合には、以下の2つの選択肢があります。
・法テラスを利用する
・完全成功報酬制の弁護士に依頼する。
選択肢1:法テラスを利用する
法テラスを利用することで、着手金と実費を一時的に立て替えてもらうことができます。
ただし、着手金や実費が無料となるわけではないので、原則として、月額5000円から10000円程度の分割で返済をしていくことになります。
また、法テラスを利用する場合の注意点として、以下の点が挙げられます。
注意点1:飛び込み相談では担当弁護士を選べない
注意点2:資力要件がある
注意点3:審査に必要な書類を集める必要がある
注意点1:飛び込み相談では担当弁護士を選べない
法テラスを利用する際には、飛び込み相談では担当弁護士を選べない点に注意が必要です。
労働問題にあまり詳しくない弁護士に当たってしまうことがあります。
労働審判事件は、通常の訴訟とは異なりますので、どの程度労働審判事件の経験があるのかを確認しておいた方がいいでしょう。
注意点2:資力要件がある
法テラスは誰でも利用することができるわけではありません。
収入要件と資産要件がありますので、収入や資産が多い場合には、利用できないことがあります。
注意点3:審査に必要な書類を集める必要がある
法テラスを利用する際には、審査に必要な書類を集める必要があります。
具体的には、審査に必要な書類としては、以下のものが挙げられます。
【審査に必要な書類】
1 資力を証明する書類(申込者及び配偶者の提出が必要)
・給与明細(直近2ヵ月)
・課税証明(直近のもの)
・確定申告書の写し(直近1年分、収受印のあるもの。)
・生活保護受給証明書(援助申込みから3ヵ月以内に発行されたもの)
・年金証書(通知書)の写し(直近のもの) ※基礎年金番号の記載がないもの
・その他これらに準ずる書類
2 資力申告書(生活保護受給中の方以外)
3 世帯全員の住民票の写し(本籍、筆頭者及び続柄の記載のあるもの)
※マイナンバーの記載がないもの
4 事件に関する書類
・多重債務事件・・・債務一覧表
・離婚事件・・・戸籍謄本
・交通事故事件・・・交通事故証明書、診断書
・医療過誤事件・・・診断書
・遺産分割事件・・・戸籍謄本 など
選択肢2:完全成功報酬制の弁護士に依頼する
完全成功報酬制の弁護士に依頼すれば、着手金はかかりませんので、着手金を支払うことができない場合でも、弁護士に依頼することが可能です。
ただし、実費についてはご負担いただく必要があるのが通常ですので、労働審判の申し立てを行う場合には、委任時または委任中におおよそ7500円~3万3000円程度の支払いが必要となる可能性があります。
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まとめ
以上のとおり、今回は、労働審判の費用を説明したうえで、私の労働審判事件の経験をもとに上手に費用を節約する方法を紹介しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・労働審判に必要な費用の概要と相場を整理すると、以下のとおりまとめることができます。
・労働審判の費用は、原則、会社に請求することはできません。自分が負担しなければならないものと考えておいた方がいいでしょう。
・労働審判費用を上手に節約する方法としては、例えば、以下の6つがあります。
節約方法1:現実的な金額を請求する|印紙代の節約
節約方法2:争点を意識したメリハリのある主張をする|コピー代の節約
節約方法3:自分の記録は電子データを活用する|コピー代の節約
節約方法4:証拠は質の高いものを厳選する|コピー代の節約
節約方法5:近くの裁判所に申し立てる|交通費の節約
節約方法6:弁護士の報酬体系と見積もりを確認する|弁護士費用の節約
・あなたが弁護士に依頼したいけど着手金が払えないという場合には、以下の2つの選択肢があります。
選択肢1:法テラスを利用する
選択肢2:完全成功報酬制の弁護士に依頼する。
この記事が労働審判の費用に悩んでいる方の助けになれば幸いです。
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