定年再雇用後に会社から契約の更新を拒絶されて困っていませんか?
定年後も5年間は今の会社で働き続けることができると期待している方も多いですよね。
結論としては、定年再雇用後の雇い止めは違法の可能性が高い類型となります。
なぜなら、定年後再雇用規程に嘱託社員として雇用される期間が明示されている場合には、再雇用の条件を満たしている限り、その期間については更新の期待が認められるためです。
特に、65歳までは希望者全員を再雇用することが法律上義務付けられていますので更新の期待は強いものと言えます。
ただし、会社によっては、定年再雇用後の雇い止めが認められにくいことを知らずに、安易に契約の更新を拒絶してくることがあります。
また、会社は雇い止め以外にも嘱託社員を企業から排除するために様々な手口を講じてくることがあります。
このような場合には、嘱託社員としても、正しい手順で対処していくことが必要となります。
今回は、定年再雇用後の雇い止めの違法性を説明したうえで、嘱託社員の権利と正しい対処手順を解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、定年再雇用後に雇い止めされた場合にどのように行動すればいいのかがよくわかるはずです。
目次
定年再雇用後の雇い止めとは?
定年再雇用後の雇い止めとは、定年再雇用後に契約更新を拒絶されてしまうことです。
定年後の再雇用では、1年ごとに契約の更新を行い、60歳から65歳までの5年間程度の間、嘱託社員として働くことができるとの規定を置いている会社が多くなっています。
しかし、会社によっては、例えば1~2年程度嘱託社員として雇った後に契約の更新を拒絶することがあります。
嘱託社員の方としては65歳まで働くことを期待していたわけですから、契約の更新を拒絶されると生活に困ってしまうことになります。
そのため、定年再雇用後の雇い止めが不当ではないか争いになるのです。
定年再雇用後の雇い止めは違法の可能性が高い
定年再雇用後の雇い止めについては、違法の可能性が高い類型となっています。
更新の合理的な期待がある場合には、期間満了までの間、又は、期間満了後遅滞なく更新の申し込みをすれば、原則として、会社はこれを承諾したものとみなされます。
労働契約法第19条(有期労働契約の更新等)
「有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。」
一 …
二「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。」
そして、定年後再雇用規程に嘱託社員として雇用される期間が明示されている場合には、再雇用の条件を満たしている限り、通常は、その期間については更新の期待が認められます。
特に、65歳までは希望者全員を再雇用することが法律上義務付けられていますので更新の期待は強いものと言えます。
65歳までの再雇用義務については、以下の記事で詳しく解説しています。
そのため、定年再雇用後の嘱託社員が継続雇用制度の範囲内で契約の更新を希望した場合には、原則として、会社はこれを拒絶することができないのです。
ただし、例外的に解雇事由が認められる場合には、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」として雇い止めが有効とされることがあります。
もっとも、解雇事由が認められるのは特に限定的な場合ですので容易にはこれに該当しません。
解雇の条件については、以下の記事で詳しく解説しています。
定年後再雇用であっても5年を超えて契約が更新されれば、原則として、無期転換権が発生します。
労働契約法18条により有期契約が5年を超えて更新された場合には、無期転換権が発生するとされているためです。
例えば、60歳から嘱託社員として有期契約を締結して65歳まで勤務した後、更に契約が更新された場合には、会社に対して、無期契約として雇用するように求めることができるのです。
ただし、例外的に、定年後再雇用の場合には、会社が適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けている場合には、5年を超えて契約を更新されても無期転換権が発生しません。
定年再雇用後の雇い止めが違法な場合の権利3つ
定年再雇用後の雇い止めが違法な場合には、労働者には以下の3つの権利が認められる可能性があります。
権利1:雇用契約上の権利を有する地位
権利2:雇い止め後の賃金
権利3:慰謝料
それでは順番に説明していきます。
権利1:雇用契約上の権利を有する地位
定年再雇用後の雇い止めが違法な場合に認められる権利の1つ目は、雇用契約上の権利を有する地位となります。
つまり、雇い止めをされた後も引き続きその会社の従業員であることを確認することができます。
なぜなら、会社は、労働者からの契約更新の希望を承諾したものとみなされるためです。
雇い止め後、あなたが従業員としての地位を有するかどうかを確認することで、不安定な法律関係を明確にすることができます。
権利2:雇い止め後の賃金
定年再雇用後の雇い止めが違法な場合に認められる権利の2つ目は、雇い止め後の賃金です。
雇い止めが違法であり、あなたに働く意思があるにもかかわらず、会社が業務を指示してくれない場合には、働くことができない原因は会社にあることになります。
そのため、雇い止めをされた後、あなたが従業員であることを争っている間の賃金についても、後から支払ってもらうことができます。
例えば、雇い止めの有効性を争うのに1年程度を要したような場合には、後からその期間の賃金をまとめて支払ってもらうことができるのです。
そのため、定年再雇用後の雇い止めを争う場合には、この雇い止め後の賃金が大きな請求となります。
権利3:慰謝料
定年再雇用後の雇い止めが違法な場合に認められる権利の3つ目は、慰謝料です。
定年再雇用後の雇い止めの悪質性が特に高く、雇い止め後の賃金が支払われても精神的苦痛が癒えないような場合には、慰謝料が認められる可能性があります。
ただし、雇い止め後の賃金の金額が高額になるため、慰謝料については認められにくい傾向にあります。
以下の解雇の慰謝料の記事が参考になりますので読んでみてください。
定年再雇用後の雇い止めで集めるべき証拠
定年再雇用後の雇い止めをされた場合には、自分の権利を守るための証拠を集めるようにしましょう。
なぜなら、裁判所は証拠に基づいて判断をするためです。
例えば、定年再雇用後の雇い止めの場合に集めていただきたい証拠は以下のとおりです。
・嘱託雇用契約書
・給与明細
・定年後再雇用規程
・定年再雇用制度に関する社内パンフレットや周知メール
・契約更新希望書
・契約期間満了通知書又は契約不更新通知書
・契約不更新を伝えられた際の面談の録音
ただし、これらの証拠すべてが必須というわけではありません。
手元になくても後から会社に請求できるものもありますので、ひとまず簡単に集められるものを準備しておきましょう。
定年再雇用後の雇い止めへの対処手順
定年再雇用後に違法な雇い止めをされた場合であっても、何もしないでいると、雇い止めが有効であるものとして手続きが進められてしまいます。
そのため、嘱託社員としても雇い止めに不満がある場合には、これに適切に対処していく必要があります。
具体的には、以下の手順で対処していきましょう。
手順1:通知書の発送
手順2:交渉
手順3:労働審判・訴訟
それでは順番に解説していきます。
手順1:契約更新希望書の発送
定年再雇用後に違法な雇い止めをされた場合の対処手順の1つ目は、契約更新希望書の発送です。
労働契約法上の雇い止め法理が適用されるというためには、契約の更新を希望することが前提となります。
そのため、会社が契約を更新しない旨を述べた場合には、書面により契約更新を希望する意思があることを証拠に残しておきましょう。
具体的には、内容証明郵便に配達証明を付して送付することがおすすめです。
例えば、定年後再雇用希望書の書き方の例は以下のとおりです。
※雇用契約更新希望書(嘱託社員)のダウンロードはこちら
※こちらのリンクをクリックしていただくと、雇用契約更新希望書のテンプレが表示されます。表示されたDocumentの「ファイル」→「コピーを作成」を選択していただくと編集できるようになりますので、ぜひご活用下さい。
手順2:交渉
定年再雇用後に違法な雇い止めをされた場合の対処手順の2つ目は、交渉です。
契約更新希望書を提出すると、通常、2週間程度で会社からの回答が届きます。
会社が契約を更新しない場合には、その理由などが記載されている場合がありますので、どこに主張の食い違いがあるのか争点が明確になります。
これを踏まえて双方折り合いをつけることが可能かについて交渉を行うことになります。
手順3:労働審判・訴訟
定年再雇用後に違法な雇い止めをされた場合の対処手順の3つ目は、労働審判・訴訟です。
話し合いでの解決が難しい場合には、裁判所を用いた手続きを検討することになります。
労働審判というのは、全3回の期日で調停を目指すものであり、調停が成立しない場合には裁判所が一時的な判断を下すものです。労働審判を経ずに訴訟を申し立てることもできます。
労働審判については以下の記事で詳しく解説しています。
労働審判とはどのような制度かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。
注意!契約更新をしたくない会社の3つの手口
嘱託社員との契約を更新したくない会社は、雇い止め以外にも様々な手段を講じてくることがあります。
例えば、会社が嘱託社員を企業から排除しようとする際の手口としては、以下の3つがあります。
手口1:給料を減額する
手口2:慣れない職種へ配置転換する
手口3:同意書や退職届にサインさせる
それでは順番に説明していきます。
手口1:給料を減額する
契約を更新したくない会社の手口の1つ目は、給料を減額することです。
雇い止め法理では、更新への合理的な期待がある場合には、原則として、従前と同一の労働条件で契約を更新したものとみなすと規定されています。
そのため、会社に対して、給料減額の理由を説明するように求めて、合理的な説明がなければ従前と同一の労働条件で更新するように求めていくことになります。
手口2:慣れない職種へ配置転換する
契約を更新したくない会社の手口の2つ目は、慣れない職種への配置転換です。
これについても、これまでの嘱託契約で職種が限定されており、職種の変更にも合理的な説明がないような場合には、従前と同一の労働条件で更新するように求めていきましょう。
また、企業から排除するために嫌がらせ的な業務を命じることは、慰謝料の対象となることがあります。
手口3:同意書や退職届にサインさせる
契約を更新したくない会社の手口の3つ目は、同意書や退職届にサインさせることです。
会社は雇い止めを争われることを防ぐために、嘱託社員が再雇用を希望していなかったことの証拠を残そうとすることがあります。
例えば、嘱託社員の方が、会社から更新を断られてしまったのだから仕方がないと考えて、同意書や退職届にサインしてしまうと、不利な証拠として使われることになってしまいます。
そのため、契約を更新してもらえないことに不満がある場合には、同意書や退職届にはサインしないようにしましょう。
定年再雇用後の雇い止めの相談はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
定年再雇用後の雇い止めについては、是非、リバティ・ベル法律事務所にご相談ください。
定年再雇用後の雇い止めに対する慰謝料や賃金請求については、法的な事項ですので弁護士のサポートを受けるのが安心です。
ただし、定年再雇用後の雇い止めについては、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」や「定年後再雇用の判例の傾向」を熟知している必要があり、専門性の高い分野になります。
そのため、定年再雇用後の雇い止めに注力している弁護士を探すことがおすすめです!
リバティ・ベル法律事務所では、解雇問題に注力していることに加えて、更に定年後の再雇用の問題についても圧倒的知識とノウハウを有しております。
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まとめ
以上のとおり、今回は、定年再雇用後の雇い止めの違法性を説明したうえで、嘱託社員の権利と正しい対処手順を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・定年再雇用後の雇い止めとは、定年再雇用後に契約更新を拒絶されてしまうことです。
・定年再雇用後の雇い止めについては、違法の可能性が高い類型となっています。
・定年再雇用後の雇い止めが違法な場合には、労働者には以下の3つの権利が認められる可能性があります。
権利1:雇用契約上の権利を有する地位
権利2:雇い止め後の賃金
権利3:慰謝料
定年再雇用後の雇い止めに不満がある場合には、以下の手順で対処していきましょう。
手順1:通知書の発送
手順2:交渉
手順3:労働審判・訴訟
この記事が定年再雇用後に雇い止めをされてしまい困っている方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。