労働一般

インターネットの私的利用の監視-プライバシー権・個人情報保護法との関係-

 労働者が、業務用の機器であるパソコンを使用し、使用者のサーバーを通してインターネットの利用をすることが増えており、使用者がこれを点検・監視することが許されるのかが問題となっています。そもそも、労働者が業務用のパソコンによりインターネットを利用することは許されるのでしょうか。また、点検・監視を行うことは、労働者のプライバシー権及び個人情報保護法との関係で問題はないのでしょうか。

私的利用の可否

 インターネットの私的利用は、職務専念義務違反及び企業秩序義務違反の観点から、原則として許されません。就業規則でインターネットの私的利用や私用メール等を禁止している場合には、同規定に違反することになります。また、就業規則で禁止していない場合にも、上記義務に違反するとされています。
 もっとも、勤務に付随した軽微な私的利用は、労働生活に必然的に伴うものとして社会通念上許容されることがあります(東京地判平15.9.22労判870号83頁[グレイワールドワイド事件])。

インターネットの私的利用による解雇インターネットの私的利用を理由に解雇することは許されるのでしょうか。どのような場合にインターネットの私的利用が解雇事由になるのでしょうか。今回は、インターネットの私的利用を理由とする解雇について解説します。...

私的利用の監視・点検

プライバシー権との関係

⑴ 権限が明示されている場合

 私的利用の監視・点検の権限が明示されている場合には、プライバシーのない通信手段と知った上で私用メールを行う以上、労働者のプライバシー保護の期待および必要性は高くないと考えられます。そのため、監視・調査を行っても、原則として、プライバシー権の侵害とはならないとされています。

⑵ 権限が明示されていない場合

 権限が明示されていない場合には、明示されている場合よりもプライバシーの保護の程度が強いとされています。そのため、監視の目的、手段及びその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合には、プライバシー権の侵害となるとされています。

【東京地判平13.12.3労判826号76頁[F社Z事業部事件]】
① プライバシー権の有無・保護の程度
 「日常の社会生活を営む上で通常必要な外部との連絡の着信先として会社の電話装置を用いることが許容されるのはもちろんのこと、さらに、会社における職務の遂行の妨げとならず、会社の経済的負担も極めて軽微なものである場合には、これらの外部からの連絡に適宜即応するために必要かつ合理的な限度の範囲内において、会社の電話装置を発信に用いることも社会通念上許容されていると解するべきであり、このことは、会社のネットワークシステムを用いた私的電子メールの送受信に関しても基本的に妥当する」。「社員の電子メールの私的利用が」この「範囲に止まるものである限り、その使用について社員に一切のプライバシー権がないとはいえない」。
 「しかしながら、…社内ネットワークシステムを用いた電子メールの送受信については、…利用者において、通常の電話装置の場合と全く同程度のプライバシー保護を期待することはできず、当該システムの具体的情況に応じた合理的な範囲での保護を期待し得るに止まる」。
② 監視・点検の可否
 「このような情況のもとで、従業員が社内ネットワークシステムを用いて電子メールを私的に使用する場合に期待し得るプライバシー保護の範囲は、通常の電話装置における場合よりも相当程度低減されることを甘受すべきであり、職務上従業員の電子メールの私的使用を監視するような責任ある立場にない者が監視した場合、あるいは、責任ある立場にある者でも、これを監視する職務上の合理的必要性が全くないのに専ら個人的な好奇心等から監視した場合あるいは社内の管理部署その他の社内の第三者に対して監視の事実を秘匿したまま個人の恣意に基づく手段方法により監視した場合など、監視の目的、手段及びその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシー権の侵害となると解するのが相当である。」

個人情報保護法との関係

 インターネットの私的利用の監視・点検は、個人上保護法による一般的な規制にも服します。
 使用者は、調査により取得する情報の利用目的を特定し、これを公表ないし通知しなければなりません(個人情報保護法15条、18条1項)。また、使用者は、本人の同意を得ないで、取得した情報を目的外に利用したり、第三者に提供したりしてはなりません(個人情報保護法16条1項、23条1項)。
※「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン」(平24・5・14厚労告357号)が参考になります。

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弁護士 籾山善臣
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