労働一般

ブラック企業を訴えることができる5つのケースと成功のための全手順

ブラック企業を訴えることができる5つのケース

「ブラック企業を訴えたい!」けど、訴える方法や訴えたらどうなるのかがわからないと悩んでいませんか?

まず、ブラック企業を訴える場合には、「訴える」ことの目的を明確にしておかなければなりません。

訴えることによって「実現することができること」と「実現することができないこと」があるためです。

そして、ブラック企業であれば、どのようなケースでも訴えることができるわけではありません。ブラック企業を訴えるためには、あなたに「法的な請求権」があることが重要となります。

ブラック企業を訴えることができるのは、主に以下の5つのケースです。

ケース1:残業代が支払われないケース
ケース2:不当な解雇を行われたケース
ケース3:執拗な退職勧奨をされたケース
ケース4:ハラスメントにより精神的苦痛を受けたケース
ケース5:危険な業務により病気やケガをしたケース

ただし、ブラック企業を訴えるといっても、いきなり訴訟を行うことはおすすめしません。訴訟を行うには、通常、多くの時間と労力を要するためです。

あなたが最低限の労力で最高の結果を得るためには、事前にしっかりと準備をしたうえで、手順を踏んで手続きを進めていくべきです

具体的には、ブラック企業を訴えたい方に、私が「おすすめ」している手順は以下のとおりです。

手順1:通知書の送付
手順2:交渉
手順3:労働審判
手順4:訴訟

今回は、ブラック企業を訴えることができる5つのケースと成功のための全手順を解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明します。

この記事を読めばブラック企業を訴えるにはどうすればいいのかがよくわかるはずです。

ブラック企業の特徴や見分け方については、以下の動画でも詳しく解説しています。

 

 

 

 

 

ブラック企業を訴える目的

ブラック企業を訴える目的は、「裁判所にあなたの権利を認めてもらい、これを強制的に実現することを可能にする」点にあります。

ブラック企業を訴える目的

あなたが会社に対して権利を持っていたとしても、裁判所の判決などの根拠がなければ、勝手に会社の財産を差し押さえることはできないのです

例えば、あなたが会社に対して、未払いの残業代を請求する権利をもっていたとしましょう。

あなたが会社の預金口座を差し押さえて残業代を回収するためには、会社を訴えて判決等の根拠を獲得してから行う必要があるのです。

そのため、会社を「訴える」ことは、それ自体が目的なのではなく、強制執行を可能とするための過程に過ぎないのです。

以上のことから、ブラック企業を訴えたいと考えている場合には、以下の2つのことに留意しましょう。

留意点1:会社が任意に応じるのであれば訴訟は不要
留意点2:法的に具体化されていない請求は困難

留意点1:会社が任意に応じるのであれば訴訟は不要

留意すべきポイントの1つ目は、会社が任意に応じるのであれば訴訟は不要ということです。

訴訟をするのには多くの労力と時間がかかります。訴訟は、あくまでも強制執行を可能とする一つの過程に過ぎません。

会社が任意に請求に応じる場合には、強制執行をする必要はないので、訴訟は不要なのです

そのため、まずは会社に対して、交渉により任意の履行を促していくことが通常です。

留意点2:法的に具体化されていない請求は困難

留意すべきポイントの2つ目は、法的に具体化されていない請求は困難であることです。

訴訟では、あくまでも法的な権利が認められるかどうかが審理されますので、柔軟な解決には向いていません

例えば、よく以下のような請求をしたいという方がいますが、このような請求は訴訟では困難となります。

①職場環境の改善を求める請求
②他の従業員にも残業代を支払うようにとの請求
③タイムカードを導入してほしいとの請求
④残業時間を減らしてほしいとの請求
⑤安全に配慮するための具体的な措置を講じてほしいとの請求
⑥賃金を上げてほしいとの請求
※⑤については学説上争いがありますが裁判例は原則否定する傾向にあります。

そのため、これらの請求をしたい場合には、労働基準監督署や労働組合を利用するなどの他の解決方法を検討することになります。

ブラック企業の相談先については、以下の記事で詳しく解説していますので読んでみてください。

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ブラック企業を訴えることができる5つのケース

ブラック企業を訴えることができるのは、主に以下の5つのケースです。

ケース1:残業代が支払われないケース
ケース2:不当な解雇が行われたケース
ケース3:執拗な退職勧奨をされたケース
ケース4:ハラスメントにより精神的苦痛を受けたケース
ケース5:危険な業務により病気やケガをしたケース

それぞれのケースについて、順番に見ていきましょう。

ケース1:残業代が支払われないケース

ブラック企業を訴えることができるケースの1つ目は、残業代が支払われないケースです。

会社は、労働者に残業をさせた場合には、労働基準法上、残業代を支払わなければならないとされています。

残業代の計算方法は、以下のとおりです。

基礎賃金÷所定労働時間×割増率×残業時間

 

基礎賃金というのは、残業代の計算の基礎となる賃金で、以下の手当等を除いた賃金の合計額です。

・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時に支払われた賃金
・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

所定労働時間というのは、会社と労働者との間で働くことを合意した時間数であり、基礎賃金を1時間当たりの賃金に引き直すために必要となります。

割増率とは、残業をした場合に通常の賃金に一定割合を乗じるものであり、

・法定時間外残業は1.25倍
・法定休日残業は1.35倍
・深夜残業は0.25倍

となります。

残業時間というのは、法定の労働時間や所定の労働時間を超えて働いた時間、法定休日や所定休日に働いた時間、深夜に働いた時間のことです。

残業代金額の早見表を作りましたので参考にしてみてください。

以下の記事で残業代の計算方法を詳しく説明していますので、気になる方は是非読んでみてください。

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ケース2:不当な解雇が行われたケース

ブラック企業を訴えることができるケースの2つ目は、不当な解雇が行われたケースです。

不当な解雇が行われた場合には、労働者は、これを争い以下の2つの請求をすることが考えられます。

・解雇後の賃金請求
・慰謝料請求

解雇後の賃金請求

労働者は、解雇が濫用として無効になる場合には、解雇された日よりも後の賃金も請求することができます

つまり、あなたが解雇された日以降に出勤できなかったのは、会社に原因があることになります。

そのため、解雇された日から解決するまでの期間の賃金を支払ってもらうことができるのです。

解雇後の給料(不当解雇の裁判)

ただし、解雇後の賃金を請求するには、業務を指示された場合にはこれに応じる意思(就労の意思)を持っていることが必要です。

解雇後の賃金については、以下の記事で詳しく解説しています。

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バックペイ(解雇後の賃金)については、以下の動画でも詳しく解説しています。

慰謝料請求

労働者は、解雇が不当である場合には、それにより被った精神的苦痛について賠償を請求できることがあります

不当解雇につき慰謝料が認められる場合の相場は、50万円~100万円程度と言われています。

不当解雇の慰謝料については、以下の記事で詳しく解説しています。

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~不当解雇を和解で解決する場合の解決金~

不当解雇を和解により解決する場合については、解決金の相場は賃金の3か月分~6か月分と言われることがあります。

但し、事案により異なりますので、解雇が無効であることが明らかである場合には、賃金の1年分程度の解決金により和解が成立するケースもあります。

ケース3:執拗な退職勧奨をされたケース

ブラック企業を訴えることができるケースの3つ目は、執拗な退職勧奨をされたケースです。

退職勧奨は、労働者の意思を尊重しながら行わなければならず、相当性を逸脱するような態様で行うことは違法とされます

例えば、「あなたが断っているのに長時間にわたり何度も説得をするケース」、「暴言や暴力、嫌がらせを伴うケース」などは、違法となる可能性があるでしょう。

退職勧奨が違法とされた場合には、労働者は、それにより被った精神的苦痛につき、慰謝料を請求できる可能性があります。

違法な退職勧奨の慰謝料金額の相場は、20万円~100万円程度です。もっとも、名誉棄損行為や大きな不利益取り扱いを受けているような場合には、慰謝料金額は上記より高額となる場合があります。

執拗な退職勧奨の慰謝料については、以下の記事で詳しく解説しています。

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ケース4:ハラスメントにより精神的苦痛を受けたケース

ブラック企業を訴えることができるケースの4つ目は、ハラスメントにより精神的苦痛を受けたケースです。

会社は、労働者の職場環境に配慮する義務を負っており、ハラスメントを防止するための適切な措置を講じなければなりません。

会社がこのような義務を怠った場合には、労働者は、ハラスメントにより被った精神的苦痛につき、慰謝料を請求できるケースがあります

パワーハラスメントの慰謝料相場は、事案にもよりますが、罵倒を伴う事案につき5万円~100万円程度、暴行を伴う事案につき10万円~200万円程度とされています。

パワーハラスメントによる慰謝料については、以下の記事で詳しく解説しています。

パワハラの慰謝料相場はいくら?弁護士が7つの裁判例とともに解説業務を改善するように指導する中で、労働者のことを罵倒したり、暴力を振るったりすることは許されません。パワハラに対抗するための手段として、慰謝料の請求をすることが考えられます。今回は、パワハラの慰謝料相場はいくらかについて裁判例とともに解説します。...

セクシュアルハラスメントの慰謝料相場は、事案にもよりますが、性的言辞の事案につき10万円~100万円程度、性的接触の事案につき20万円~200万円程度とされています。

セクシュアルハラスメントの慰謝料については、以下の記事で詳しく解説しています。

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ケース5:危険な業務により病気やケガをしたケース

ブラック企業を訴えることができるケースの5つ目は、危険な業務により病気やケガをしたケースです。

会社は、労働者の安全に配慮する義務を負っています。会社がこれを怠ったことにより、労働者が病気やケガをしたケースでは、損害賠償を請求できる可能性があります

例えば、月100時間を超えるような長時間残業により、労働者がうつ病となり、働けなくなってしまったような場合にも、会社に損害賠償を請求できる可能性があります。

具体的には、損害賠償としては、医療費や薬品費、休業損害、慰謝料などを請求していきます。

安全配慮義務違反と損害賠償請求については、以下の記事で詳しく解説しています。

安全配慮義務違反と損害賠償請求労働者が業務に起因して負傷、疾病、障害、死亡した場合には、安全配慮義務違反を理由として、使用者に対して損害賠償請求をしていくことが考えられます。この場合、どのような損害を請求していくことができるのでしょうか。今回は、安全配慮義務違反と損害賠償請求について解説します。...

 

 

 

 

ブラック企業を訴える方法

ブラック企業を訴えたい方に、私が「おすすめ」している手順は以下のとおりです。

手順1:通知書の送付
手順2:交渉
手順3:労働審判
手順4:訴訟

ブラック企業を訴える方法

いきなり訴訟をするのではなく、まずは任意の話し合いにより解決する余地があるかを確認していくのが通常です。

それでは順番に説明していきます。

手順1:通知書の送付

ブラック企業を訴える手順の1つ目は、通知書を送付することです。

会社に対して、あなたの請求内容や金額、開示を求める資料を記載した書面を送付します。

残業代を請求する場合には、この通知書の送付により、一時的に時効を止めるための催告の役割を兼ねることになりますので特に重要な書面となります。

また、解雇の無効を主張する場合には、就労の意思を争われることを防ぐために、解雇の撤回と業務指示を求める旨も記載しておくといいでしょう。

いずれにせよ通知書は内容証明郵便に配達証明を付けて送付しましょう。これにより、あなたが会社に送付した内容を証拠として残すことができます。

内容証明郵便というのは、送付した文書の内容を証明できる郵送方法です。

配達証明とは、会社に通知書が届いたことやその日付を証明することができるものです。

手順2:交渉

ブラック企業を訴える手順の2つ目は、会社との交渉です。

通知書を送付すると会社から回答書が戻ってきて争点が明らかになります。多くの場合、会社は、労働者からの請求には応じられないとの回答をしてきます。

そのため、明らかになった争点を踏まえて、会社との間で、双方の主張につき折り合いがつくかどうかを協議することになります

協議する方法については、電話・面談・書面など様々であり、相手方の対応も踏まえながら検討することになります。

例えば、会社から解決金をもらうことにより和解が成立することもあります。

手順3:労働審判

ブラック企業を訴える手順の3つ目は、労働審判です。

話し合いでの解決が難しい場合には、裁判所を用いた手続きを検討することになります。

労働審判というのは、全3回の期日で調停を目指すものであり、調停が成立しない場合には裁判所が一時的な判断を下すものです

裁判所が下した判断に異議が出た場合には自動的に訴訟に移行します。

迅速、かつ、柔軟な解決が可能であり、解決率も高いため、近年よく使われる制度となっています。

なお、労働審判を経ずに訴訟を申し立てることもできます。

労働審判とはどのような制度かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。

手順4:訴訟

ブラック企業を訴える手順の4つ目は、訴訟です。

訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。

1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。

解決まで1年程度を要することもあります。

ブラック企業を訴える場所

ブラック企業を訴える場所は、

裁判所

となります。

労働事件では、先ほど見たように、交渉が難しい場合には、まず裁判所に労働審判を申し立てることが多いです。

そして、労働審判は、地方裁判所において行われます。本庁で行われるのが通常ですが、一部労働審判を取り扱っている支部もあります。

労働審判を申し立てる地方裁判所は、通常、以下のいずれかです。

①会社の本店所在地(法務局で登記をとり確認できます)を管轄する地方裁判所
②あなたが現に働いている事業所又は最後に働いていた事業所の所在地を管轄する地方裁判所
③会社と労働者が書面で合意した地方裁判所

裁判所の管轄については、以下のページで確認できます。
裁判所の管轄区域

なお、ブラック企業について、調査や是正勧告・指導、送検をしてほしい場合には、裁判所に訴えるのではなく、労働基準監督署への申告を検討することになります。以下の記事で詳しく解説しています。

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ブラック企業を訴えるための準備

ブラック企業を訴えるに当たっては、十分に準備をしてから行うことが望ましいです

なぜなら、ブラック企業を訴える場合には、あなたに権利があることを説明しなければいけないためです。

具体的には、以下の3つの準備をしておくことが重要となります。

準備1:請求する内容を明確しておく
準備2:事実関係を整理しておく
準備3:証拠を集めておく

ブラック企業を訴えるための準備

それでは順番に説明していきます。

準備1:請求する内容を明確しておく

ブラック企業を訴えるための準備の1つ目は、請求する内容を明確にしておくことです。

ブラック企業を訴える際には、あなたが求めている権利が認められるかどうかについて交渉・審理されていくことになります。

あなたがどのような権利を求めているのかが不明確ですと、交渉や審理をすることはできません

例えば、あなたが今勤めている会社で長時間残業に苦しんでいたとしましょう。ブラック企業を訴えるには、長時間残業は問題であると主張するだけでは足りません。長時間残業をしたのに残業代が未払いなので「残業代を請求する」など何を求めているのかを示す必要があります。

そのため、ブラック企業を訴えるには、あなたがどのような請求をするのかを明確にしておくことが重要なのです。

準備2:事実関係を整理しておく

ブラック企業を訴えるための準備の2つ目は、事実関係を整理しておくことです。

ブラック企業を訴えるに当たっては、あなたの権利が認められるに至る事実関係を説明する必要があります。

時系列に沿って、いつ、誰が、どこで、どのようなことをしたのかを具体的に整理しておきましょう

準備3:証拠を集めておく

ブラック企業を訴えるための準備の3つ目は、証拠を集めておくことです。

ブラック企業を訴えると、事実関係について多くの争点が生じます。そのような場合には、どちらの主張が正しいのかを証拠により明らかにすることになります。

例えば、以下のようなものを集めておきましょう。

・雇用契約書
・労働条件通知書
・就業規則
・給与規程
・タイムカード
・業務日報
・あなたの作成したメモ・日記
・給与明細
・違法な業務指示のメール・録音等
・会社から交付された書面

残業代の証拠については以下の記事で詳しく解説しています。

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ブラック企業を訴える場合の費用

ブラック企業を訴える場合には、以下のような費用がかかります。

・印紙代
・予納郵券代
・書面の印刷代・郵送費
・裁判所への交通費
・弁護士費用

印紙代

まず印紙代というのは、訴訟を提起する際に裁判所に納める手数料です。

印紙代はあなたが訴える金額によって変わってきます。

訴額が1000万円までの訴状の印紙代は、以下のとおりです。労働審判の場合の印紙代は、訴訟の半額程度となります。

訴額と訴状の印紙代

予納郵券代

予納郵券代とは、裁判所から事件当時者等に郵便物を送付するための郵便料を納めるものです。余れば返してもらえますし、足りなくなったら追納することになります。

横浜地方裁判所では、労働審判の場合3060円、通常訴訟の場合6000円とされています。

裁判所に電話すれば丁寧に教えてもらうことができます。

※詳しくは以下のサイトを参考にしてください。
裁判所:郵便料の納付について

書面の印刷代・郵送費

ブラック企業を訴える場合には、準備書面や証拠の写しなどの書面を裁判所や会社に送付する必要があります。

書面の分量や送付方法により、印刷代や郵送費は変わってきます。

裁判所への交通費

ブラック企業を訴える場合には、期日について、電話やWEBにより出頭できる場合もありますが、裁判所への出頭が必要となることがあります。

そのため、裁判所への交通費がかかります。

弁護士費用

ブラック企業を訴える場合に弁護士に依頼すると、着手金や報酬金がかかります。

着手金とは、弁護士に事件を依頼して、弁護士が実際に事件にとりかかるために必要となる費用です。

報酬金とは、弁護士に事件を依頼して、事件が実際に解決した場合に、その成功の程度に応じてかかる費用です。

事件類型によって異なりますが、ブラック企業を訴える場合には、おおよその相場として、着手金は0~30万円程度、報酬金は15%~30%程度となるでしょう。

着手金を無料にして、完全成功報酬制を採用している事務所などもあり、弁護士に頼みやすくなってきていますので、依頼する場合には料金体系について弁護士に確認してみるといいでしょう

訴えたらブラック企業から仕返しされない?

ブラック企業を訴えたいけど、訴えたら仕返しをされないか怖いという方もいますよね。

しかし、裁判を受けることは権利ですので、これを理由に仕返しをすることは許されません

よく心配されることが多い会社からの仕返しとしては、以下の3つがあります。

・会社からの損害賠償請求
・悪評の流布
・解雇

順番に説明していきます。

会社からの損害賠償請求

よく心配されることが多い仕返しの1つ目は、会社からの損害賠償請求です。

まず、ブラック企業を訴えたこと自体を理由とする損害賠償請求は通常許されません
判例も、訴訟を提起した者が敗訴した場合にこれが不法行為になるのは、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限るとしています(最判昭63年1月26日民集42巻1号1頁)。

また、業務中のミスなどを理由とする損害賠償請求についても、会社が労働者に対して、これを行うことができるのは、労働者に故意又は重大な過失がある場合に限定されています

そのため、会社からの損害賠償請求を過度に怖がる必要はありません。不安な場合には、事前に弁護士に相談してみるのがいいでしょう。

悪評の流布

よく心配されることが多い会社からの仕返しの2つ目は、悪評の流布です。

しかし、会社は、労働者から訴えられたからと言って、労働者の悪評を流すことは許されません

労働者にもプライバシーがありますし、会社の伝え方によっては労働者の社会的信用が低下する場合もあるためです。

また、和解が成立する場合は、通常、守秘義務条項を入れます。

そもそも、従業員から訴えられているというのは他の会社に知られたくない事柄ですので、あえて他人に話すことは少ないのです。

解雇

よく心配されることが多い会社からの仕返しの3つ目は、解雇です。

しかし、解雇をするには、法律上、とても厳格な条件があります。

会社が労働者から訴えられたことを理由に、その労働者を解雇しても、通常、解雇権の濫用として無効となります。また、悪質性が高い場合には、労働者は、会社に慰謝料を請求できる場合もあります。

ブラック企業を訴える場合の相談先は弁護士

ブラック企業を訴える場合の相談先は、弁護士がおすすめです。

なぜなら、法的な請求や手続きについては、その専門家である弁護士に任せてしまうのが安心だからです。

特に、ブラック企業を訴える場合には、労働問題に注力している弁護士に相談するのがいいでしょう。

弁護士に依頼すれば、通知書の送付や交渉、裁判所への申し立てなどの手続きを丸投げしてしまうことができます

初回無料相談を利用すれば、費用をかけずに、訴えた場合の見通しやリスクなどを教えてもらうことができますので、これを利用してみるのがおすすめです。

 

 

 

 

まとめ

以上のとおり、今回は、ブラック企業を訴えることができる5つのケースと成功のための全手順を解説しました。

この記事の要点を簡単にまとめると以下のとおりです。

・ブラック企業を訴えたいと考えている場合には、以下の2つのことに留意しましょう。
留意点1:会社が任意に応じるのであれば訴訟は不要
留意点2:法的に具体化されていない請求は困難

・ブラック企業を訴えることができるケースは、主に以下の5つのケースです。
ケース1:残業代が支払われないケース
ケース2:不当な解雇が行われたケース
ケース3:執拗な退職勧奨をされたケース
ケース4:ハラスメントにより精神的苦痛を受けたケース
ケース5:危険な業務により病気やケガをしたケース

・ブラック企業を訴えたい方に、私が「おすすめ」している手順は以下のとおりです。
手順1:通知書の送付
手順2:交渉
手順3:労働審判
手順4:訴訟

・ブラック企業を訴える場合には、以下の3つの準備をしておくことが重要となります。
準備1:請求する内容を明確しておく
準備2:事実関係を整理しておく
準備3:証拠を集めておく

この記事がブラック企業を訴えたいと考えている方の助けになれば幸いです。

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神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、区民ニュース2023年8月21日
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