労働者は、会社から解雇された場合、経済的な不利益のみならず、精神的苦痛を被ることになります。
では、会社からされた解雇が不当である場合には、労働者は、会社に対してどのような請求をすることができるのでしょうか。
今回は、不当解雇された場合に労働者は何を請求できるのかについて解説します。
目次
解雇の現状
JILPTによる「従業員の採用と退職に関する実態調査-労働契約をめぐる実態に関する調査(Ⅰ)-」を見ると、ここ5年間での解雇の実施の有無について、解雇を実施した企業は「20.7%」となっています。
(出典:JILPT「従業員の採用と退職に関する実態調査-労働契約をめぐる実態に関する調査(Ⅰ)-」38頁)
また、解雇した従業員との紛争状況について、紛争が「あった」とする企業は、普通解雇が「15.0%」、整理解雇が「10.2%」となっています。
(出典:JILPT「従業員の採用と退職に関する実態調査-労働契約をめぐる実態に関する調査(Ⅰ)-」50頁)
解雇後の賃金を請求できる
労働者は、解雇が無効である場合には、会社に対して、解雇された日以降の賃金を請求することができます(民法536条2項)。なぜなら、解雇された日以降、労働者は、労務の提供をしていませんが、これは会社に原因があるためです。
もっとも、労働者が他の職場で働いているような場合には、平均賃金の6割を超える部分については、控除の対象になりますので注意が必要です。
請求できる賃金の範囲について、通勤手当や時間外手当については、否定される傾向にあります。
賞与については、雇用契約書や労働条件通知書で、具体的な金額や算定基準が定められている場合には、請求できることがあります。
バックペイ(解雇後の賃金)については、以下の動画でも詳しく解説しています。
遅延損害金を請求できる
また、解雇された日以降の賃金につき、本来支払われるべき給料日よりも遅れて支払われる場合には、遅延損害金を請求することができます。
令和2年4月1日から令和5年3月31日までに遅滞となった債権の法定利率は、年3%とされています。
慰謝料も請求できる場合がある
労働者は、解雇が無効であるにとどまらず、会社に故意過失が認められ、かつ、労働者に解雇の無効が確認されその間の賃金が支払われるだけでは償えない精神的苦痛が生じている場合には、会社に対して、慰謝料を請求することができます。
不当解雇を理由に慰謝料が認められる場合、その相場は、
とされています。
不当解雇の慰謝料については、以下の動画でも詳しく解説しています。
弁護士費用を請求できる場合がある
損害賠償請求が認められる場合には、その1割程度の弁護士費用が肯定されるのが通例です。
そのため、例えば、100万円の慰謝料請求が認められる場合には、その1割である10万円程度の弁護士費用が認められる余地があります。
解決金は請求できる?
では、労働者は、会社に対して、解決金を請求することができるのでしょうか。
これについて、法律上、解決金の請求権というものは定められていません。解決金というのは、労働者と会社が解雇につき和解する中で支払われるものです。そのため、会社が、その支払いを拒否した場合には、労働者は解決金の請求をすることはできません。
もっとも、労働者も、会社が解決金を支払わない場合や、会社の提示する解決金額に納得できない場合には、和解に応じる必要はありません。
不当解雇の解決金の相場は、
といわれることがあります。もっとも、解決金について決まりがあるわけではありませんので、解雇が無効であることが明らかであるような場合には、賃金の1年分以上の解決金が支払われることもあります。
解雇を争うにはどうすればいいのか
では、労働者が解雇を争う場合には、どうすればいいのでしょうか。
労働者は、解雇を争うには、解雇の理由を知る必要があります。解雇の理由がわからなければ、解雇が不当なのかどうか、どのような証拠を集めればいいのなどが分からないためです。そのため、まずは、会社に対して、解雇理由証明書の交付を請求することになります。
また、解雇を争う場合には、会社に対して、解雇の撤回及び解雇日以降の業務内容の指示を求めるべきでしょう。
解雇を争う場合には、それと矛盾するような行為を行うと、それが不利益に考慮されることがありますので注意が必要です。
早い段階で、一度、弁護士に相談に行かれるのがいいでしょう。