不当解雇・退職扱い

勤務成績不良を理由とする解雇-勤務成績不良の判断方法-

 会社から勤務成績を理由に解雇された場合、どうすればいいのでしょうか。自分では成績が悪くないと考えていても、会社から成績不良を理由に解雇される場合があります。どのような場合に勤務成績不良といえるのでしょうか。今回は勤務成績不良を理由とする解雇について解説します。

就業規則上の規定

 勤務成績不良を理由とする解雇につき、就業規則などでは以下のような規定がおかれている会社が多いです。

規定例

第〇条(解雇)
労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。
勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき
②…
③…

 会社によっては、就業規則において、「著しく」との文言を削除している場合があります。もっとも、「著しく」との文言が削除されていたとしても、解雇のハードルが下がるわけではありません

裁判例の判断基準

解雇権濫用法理

 解雇は、①「客観的に合理的な理由を欠き」、②「社会通念上相当であると認められない場合」は、解雇権を濫用したものとして無効になります(労働契約法16条)。

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「客観的に合理的な理由」の審査

 裁判例は、成績不良を理由とする解雇が「客観的に合理的な理由」によるものかどうかにつき以下のように審査しています。
 勤続年数が長くなれば、その間、解雇されてこなかった事実があるため、成績不良は厳格に判断されることになります。
 能力不足や勤務成績不良の程度が大きければ、その程度に応じて、求められる改善の機会付与の程度は低くなります。
 企業規模が大きくなれば、それに伴い、他業務への異動を検討する必要性が高まります。反面、小規模事業所であるような場合には、異動を検討する必要性は低下します。
 労働者が反抗的な場合などには、改善や是正の措置の程度は相対的に低いもので足りることになります。

【東京高判平29.10.18労判1176号18頁[学校法人D学園事件]】
 成績不良を理由とする解雇が客観的に合理的かは、「解雇事由の程度やその反復継続性のほか、当該労働者に改善や是正の余地があるか、雇用契約の継続が困難か否か等について、過去の義務違反行為の態様や、これに対する労働者自身の対応等を総合的に勘案し、客観的な見地からこれを判断すべき」としています。

【東京高判平25.4.24労判1074号75頁[ブルームバーグ・エル・ピー事件]】
 成績不良を理由とする解雇が客観的に合理的かにつき、「労働契約上、当該労働者に求められている職務能力の内容を検討した上で、当該職務能力の低下が、当該労働契約の継続を期待することができない程に重大なものであるか否か、使用者側が当該労働者に改善矯正を促し、努力反省の機会を与えたのに改善がされなかったか否か、今後の指導による改善可能性の見込みの有無等の事情を総合考慮して決すべき」とした第1審判決(東京地判平24.10.5判時2172号132頁)を引用しています。

【東京地決平13.8.10労判820号74頁[エース損害保険事件]】
 「長期雇用システム下で定年まで勤務を続けていくことを前提として長期にわたり勤続してきた正規従業員を勤務成績・勤務態度の不良を理由として解雇する場合は、労働者に不利益が大きいこと、それまで長期間勤務を継続してきたという実績に照らして、それが単なる成績不良ではなく、企業経営や運営に現に支障・損害を生じ又は重大な損害を生じる恐れがあり、企業から排除しなければならない程度に至っていることを要し、かつ、その他、是正のため注意し反省を促したにもかかわらず、改善されないなど今後の改善の見込みもないこと、使用者の不当な人事により労働者の反発を招いたなどの労働者に宥恕すべき事情がないこと、配転や降格ができない企業事情があることなども考慮して濫用の有無を判断すべきである。」

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「社会通念上相当」かの審査

 裁判例は、成績不良を理由とする解雇が「社会通念上相当」なものかどうか審査する方法につき以下のように判断しています。
 解雇に先立つ別の職務の提供、合意解約交渉、他の労働者との均衡性などが考慮されることになります。

【東京高判平29.10.18労判1176号18頁[学校法人D学園事件]】
 成績不良を理由とする解雇が社会通念上相当かは、「客観的に合理的な解雇事由があることを前提として、本人の情状や使用者側の対応等に照らして解雇が過酷に失するか否かという見地からこれを判断するべきである」としています。

【東京地決平13.8.10労判820号74頁(エース損害保険事件)】
 成績不良を理由とする解雇が社会通念上相当かにつき「当初から債権者らを他の適切な部署に配置する意思はなく、また、研修や適切な指導を行うことなく、早い段階から組織から排除することを意図して、任意に退職しなければ解雇するとして退職を迫りつつ長期にわたり自宅待機とした」ことを考慮した上で、解雇を無効としています。

小括

 以上より、成績不良を理由とする解雇が有効かどうかは、具体的事情として、当該企業の種類、規模、職務内容、労働者の採用理由(職務に要求される能力、勤務態度がどの程度か)、勤務成績、勤務態度の不良の程度(企業の業務遂行に支障を生じ、解雇しなければならないほどに高いかどうか)、その回数(1回の過誤か、繰り返すものか)、改善の余地があるか、会社の指導があったか(注意・警告をしたり、反省の機会を与えたりしたか)、他の労働者との取扱いに不均衡はないかなどを総合検討することになります。

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即戦力の中途採用者・高度専門職の場合

 即戦力の中途採用者・高度専門職の場合には、以下の考慮が必要とされます。
 即戦力の中途採用者や高度専門職の能力不足・勤務成績不良は、原則として、期待されたレベルに達しないことで足りるとされています(東京地判平12.4.26労判789号21頁[プラウドフットジャパン事件]、東京地判平14.10.22労判838号15頁[ヒロセ電機事件])。
 即戦力の中途採用者・高度専門職であっても、改善の機会の付与や将来の改善可能性は考慮されますが、これらの者は異動できないか、可能であってもその範囲が狭いため、改善可能性を検討するための職種転換や異動は不可欠なものではないとされています(東京地判平14.10.22労判838号15頁[ヒロセ電機事件])。
 専門性の高い内容を解雇の理由にする場合には、解雇の理由の開示と弁明の機会の付与の重要性が高まることになります(東京地判平29.3.23労判1180号99頁[国立研究開発法人国立A医療研究センター事件])。

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