レイオフの対象とされた場合にどのような補償があるか悩んでいませんか?
レイオフにより、給与や退職金、有給の残日数、失業保険がどのように取り扱われるのか不安ですよね。
結論からいうと、退職日以降は給与が支払われない一方で、通常の退職金のほかに特別の退職金や有給買取が提案されることが多いです。
また、再雇用される予定がなく積極的に就職活動を行う場合には、会社都合として失業保険を受給できる傾向にあります。
他方で、再雇用の予定があり、再就職活動をする意思がない場合には失業保険をもらうことはできません。
レイオフの際には、会社から退職合意書(separation agreement)が提示されることが通常です。
退職合意書には、会社が労働者に提案する補償の内容等が記載されており、労働者は提案内容が補償として適切かどうかを判断する必要があります。
実は、退職合意書の補償内容を十分に確認することなく、安易にサインしてしまう労働者が非常に多いのです。
この記事をとおして、レイオフの際に給与や退職金、有給残日数、失業保険がどのように取り扱われるのかを知っていただければと思います。
今回は、レイオフにおける補償に関して、給与・退職金・有給買取・失業保険の4つを解説します。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、レイオフの際に受けられる補償がよくわかるはずです。
レイオフとは何かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次
レイオフに給与・退職金・有給買取・失業保険等の補償はある?
レイオフの際にはいくつかの補償を受けられる場合があります。
もっとも、レイオフと言っても、法律上、どのような補償をしなければいけないのかが決まっているわけではありません。
なぜなら、レイオフの際の補償は、会社が労働者に任意で退職するために説得の材料として提案するものにすぎないためです。その内容も交渉次第で大きく変わってきます。
例えば、会社から示された退職合意書には、特別退職金の金額が2か月分と記載されていたとします。これについて交渉をすることで6か月分となったり、1年分となったりすることがあります。
レイオフの際の給与や退職金、有給買取、失業保険等の相場や傾向を簡単に整理すると以下のとおりです。
それでは、個別の項目について、以下で詳しく説明していきます。
レイオフと給与|退職日まで支払われる傾向
レイオフの際の給与は、退職日まで支払われる傾向にあります。
退職日までは労働者であり、仮に退職日までの間に出勤することができない日があったとしても、それは会社側の原因による場合が多いためです。
他方で、退職日以降については、労働者ではない以上、会社側に給与の支給義務はないことになります。
レイオフの際に給与の支給の有無が問題になることがあるのは、以下の2つのケースです。
ケース1:自宅待機(ロックアウト)期間
ケース2:在籍延長(ガーデンリーブ)期間
それでは、各ケースについて順番に説明していきます。
自宅待機(ロックアウト)期間と給与
退職日までの自宅待機(ロックアウト)期間の給与は、全額支払われる傾向にあります。
なぜなら、退職日までの間、業務を行わせることができないことにつき、やむを得ない理由が存在しないことが多いためです。
会社側がレイオフの際に自宅待機(ロックアウト)を命じるのは、労働者側にレイオフに応じるかどうかを判断する機会を与えたり、再就職活動を行う機会を与えたりするためです。
つまり、会社側は、レイオフに応じてもらいやすいような状況にするために自宅待機を命じる傾向にあります。
そのため、債権者(会社)の責めに帰すべき事由に基づき出勤できなかったものとして、民法536条2項により全額の給与の支払い義務が認められることが多いのです。
例えば、レイオフの面談の後に、「最終出勤日は3月15日です」などと告知され、同日までに貸与物の返却を求めたり、アカウントの権限を締結されたりします。
もっとも、退職日3月31日とされているような場合には、3月15日から3月31日までの間の給与も支払われる傾向にあります。
自宅待機期間中の給与については、以下の記事で詳しく解説しています。
在籍延長(ガーデンリーブ)期間と給与
在籍延長(ガーデンリーブ)期間についても、給与が支払われる傾向にあります。
ただし、在籍延長期間について給与の支給を受ける場合には、その分特別退職金の金額が少なくなる傾向にあります。
在籍延長については、特別退職金と同様の目的により設けられることが多いためです。
例えば、会社と退職条件を交渉する際には大枠の補償金額(パッケージ金額)を決めた後に、その支給方法を協議する傾向にあります。
在籍期間が短く1年に満たない方や、籍を残した状態で就職活動を行いたい方などは、特別退職金として一括で支給を受けるのではなく、延長期間中の就労免除を得たうえで給与として支給を受けることを望む傾向にあります。
実際上の問題としても、在籍延長をする場合に同期間の給与を無給とすると、労働者側は源泉徴収票上の金額から再就職先の会社に不審が生じるというリスク、会社側は社会保険料等の源泉ができないリスクがあります。
ガーデンリーブ期間中の給与については、以下の記事で詳しく解説しています。
ガーデンリーブについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
レイオフと退職金
レイオフの際の退職金には、通常の退職金(retirement allowance)と特別の退職金(解雇手当[severance pay])があります。
これらは支給の根拠や金額の考え方が大きく異なるので、区別して以下の順番で説明します。
・通常の退職金(retirement allowance)
・特別の退職金(解雇手当[severance pay])
レイオフと通常退職金(retirement allowance)|退職金規程に従う
レイオフの際の通常退職金(retirement allowance)は、退職金規程に従い支払われます。
通常退職金とは、会社ごとに退職金規程等の規定により定めている退職金です。
法律上、通常の退職金を定めることは義務とはされていませんので、通常退職金がある会社とない会社があります。
雇用契約書や労働条件通知書、オファーレターにおいて、退職金がありとされている場合には、通常の退職金がある可能性が高いので規程を確認してみるといいでしょう。
通常の退職金については、会社ごとにその支給金額や計算方法が定められていますが、多くの会社では自己都合退職と会社都合退職により金額が区別されています。
レイオフの際には、会社都合退職として、自己都合退職の場合よりも有利に通常の退職金を計算してもらえる傾向にあります。
通常退職金については、以下の記事で詳しく解説しています。
レイオフと特別退職金(解雇手当[severance pay])|給与の3か月分~1年6か月分程度が相場
レイオフの際の特別退職金(解雇手当[severance pay])の相場は、給与の3か月分~1年6か月分程度です。
特別退職金については、会社が労働者に退職に応じてもらうために説得の材料として提案する退職金です。
会社に支払い義務があるわけではないので、会社側が特別退職金を支給しないことにした場合には、労働者からこれを請求することはできません。
その代わり、労働者は退職条件に納得できなければ退職に応じないことができます。
特別退職金とは何かについては以下の記事で詳しく解説しています
外資系の退職勧奨パッケージの金額を決める視点について、わかりやすいものを一部紹介すると以下の8つです。
視点1:解雇するだけの理由があるか
視点2:勤続年数がどの程度か
視点3:残業代等の未払い賃金があるか
視点4:外資系企業本土の慣習
視点5:外国本社の意思が強固か
視点6:業務に応じることが可能か
視点7:貯金がどの程度あるか
視点8:今後の再就職等が決まっているか
特別退職金の相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
特別退職金については、以下の動画でも詳しく解説しています。
レイオフと有給休暇の買い取り|残日数に応じて手当が払われる傾向
レイオフの際には、有給休暇の残日数に応じて手当が支払われる傾向にあります。
法律上は、残りの有給休暇がある場合であっても、会社にその日数に応じた手当を支給する義務はありません。
しかし、労働者としては、有給化の残日数がある場合には、これを消化したうえで退職したいと考えることが通常です。
そこで、労働者は、会社側が有給の残日数に応じた手当の支給をしない場合には、早期の退職には応じず、退職日を後ろにずらすよう求めたうえで有給休暇の申請をするという対応をとります。
これに対して、外資系企業におけるレイオフでは、いつまでに何人の人員削減を行うなどの目標を掲げている場合が多く、労働者に早期に退職してもらうことを望む傾向にあります。
したがって、上記の無用なやり取りを避けるため、会社側から有給休暇の残日数に応じた手当を支給することを退職条件に含めてくることが多いのです。
例えば、会社から交付される退職合意書に「退職時点で残った年次有給休暇に相当する手当を支給すること」及び「支給する手当の金額を1日あたり●●円とすること」などが規定されていることが通常です。
有給の買取については、以下の記事で詳しく解説しています。
退職時の有給休暇の買い取りについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
レイオフと失業保険|再雇用の予定がない場合には会社都合で受給できる傾向
レイオフにより退職することになった場合でも、失業保険を受給できる場合があります。
ただし、退職条件等によっては失業保険を受給することが問題となってしまうこともあります。
以下では、次の順序で説明していきます。
・失業保険の受給の可否
・失業保険の受給資格
レイオフと失業保険受給の可否-再雇用との関係
レイオフにおいて再雇用される予定がない場合には、(その他の受給要件を満たしていれば)失業保険を受給できます。
これに対して、レイオフにおいて再雇用が予定されている場合には、失業保険を受給できない傾向にあります。
失業保険を受給するためには、求職の申し込みを行い就職しようとする積極的な意思があることが必要となるためです。
失業保険を受給する条件は以下のハローワークのページで詳しく解説されています。
ハローワークインターネットサービス – 基本手当について (mhlw.go.jp)
しかし、本来のレイオフとは、一時的に解雇を言い渡すものであり、一定期間経過後に再雇用することが予定されています。
レイオフの意味については、以下の記事で詳しく解説しています。
一定期間経過後に再雇用が予定されている場合には、再就職が決まっているものとして、求職の申し込みを行い就職しようとする積極的な意思がないものと判断される可能性が高いのです。
厚生労働省における、新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)「4 労働者を休ませる場合の措置(休業手当、特別休暇など)」の問12では、「雇用保険の基本手当は、再就職活動を支援するための給付です。再雇用を前提としており従業員に再就職活動の意思がない場合には、支給されません。」とされています。
(出典:新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)|厚生労働省 (mhlw.go.jp))
例えば、ロイヤルリムジンの解雇の際にも、レイオフにおける失業保険の受給に関して議論となりました。
そのため、再雇用が予定されている場合には、失業保険は受給できない可能性があることに注意が必要です。
ただし、近年のIT・金融業界における大規模なレイオフについては、レイオフという言葉を使っていても、再雇用は予定されておらず、実質ただのリストラであるケースがほとんどです。
このような場合には、(その他の受給要件を満たしていれば)失業保険を受給できることになります。
レイオフと失業保険の受給資格-会社都合か自己都合か
レイオフの際の失業保険の受給資格は、会社都合退職となるのが通常です。
退職勧奨、又は、整理解雇に位置付けられ、これらについては会社都合として扱うこととされているためです。
会社都合退職の範囲については以下のハローワークのページでまとめられています。
ハローワークインターネットサービス – 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要 (mhlw.go.jp)
会社都合退職の場合には、2~3か月の給付制限なく失業保険の受給が可能となります。
また、会社都合退職の場合は給付日数が90日~330日となり、自己都合退職の90日~150日に比べて長期間受給が可能となります。
退職勧奨と会社都合退職については、以下の記事で詳しく解説しています。
会社都合退職については、以下の動画でも詳しく解説しています。
レイオフの場合において、再度、同じ会社に雇用されても再就職手当をもらうことはできません。
再就職手当をもらうためには、離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと(雇保則82条2項)が必要であるためです。
雇用保険法施行規則第82条(法第五十六条の三第一項の厚生労働省令で定める基準)
2 法第五十六条の三第一項第二号に該当する者に係る同項の厚生労働省令で定める基準は、同号に該当する者が次の要件に該当する者であることとする。
二 離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと。
レイオフにおける補償の交渉方法
レイオフを言い渡された場合における補償の交渉方法は、その条件では退職を検討することはできない旨を明確に伝えることです。
なぜなら、会社が提示してくる退職条件は、労働者に退職に応じてもらうように説得するものであり、労働者が退職に納得した時点でそれ以上の条件を提示する理由はなくなるためです。
例えば、会社側が一方的に解雇する条件が揃っていないことや今後も長期にわたり継続して働き続けたいことを指摘して交渉していきます。
ただし、退職条件の交渉については、一つ一つの発言や提案により不利になってしまうこともあります。
また、リスク判断を誤り、見通しを十分に立てることができていないと、経済的に不合理な結論となることもあります。
そのため、レイオフにおける補償を交渉したいと考えた場合には、外資系企業とのパッケージ交渉に力を入れている弁護士に相談した方がいいでしょう。
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まとめ
以上のとおり、今回は、レイオフにおける補償に関して、給与・退職金・有給買取・失業保険の4つを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・レイオフの際にはいくつかの補償を受けられる場合があります。
・レイオフの際の給与は、退職日まで支払われる傾向にあります。
・レイオフの際の通常退職金(retirement allowance)は、退職金規程に従い支払われます。
・レイオフの際の特別退職金(解雇手当[severance pay])の相場は、給与の3か月分~1年6か月分程度です。
・レイオフの際には、有給休暇の残日数に応じて手当が支払われる傾向にあります。
・レイオフにおいて再雇用される予定がない場合には、(その他の受給要件を満たしていれば)、会社都合として失業保険を受給できる傾向にあります。
・レイオフを言い渡された場合における補償の交渉方法は、その条件では退職を検討することはできない旨を明確に伝えることです。
この記事がレイオフの対象となってしまい補償があるか、補償が適切か不安に感じている方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。