退職勧奨により退職した場合に会社都合退職として取り扱ってもらえるか不安に感じていませんか?
次の転職先も決まっていない状況だと、退職後の「失業保険」や「社会保険」については少しでも有利に取り扱ってもらいたいですよね。
結論として、退職勧奨により退職した場合には、会社都合退職(特定受給資格者)として取り扱われることになります。
つまり、失業保険や国民健康保険等について、有利に取り扱ってもらうことができます。
離職票上は、離職理由欄の4⑶の「希望退職の募集又は退職勧奨」の①「事業の縮小又は一部休廃止に伴う人員整理を行うためのもの」又は②「その他」にチェックされることになります。
もしも、離職票において他の欄にチェックがされていたら、「⑯離職者本人の判断」の欄について「事業主が〇を付けた離職理由に異議」との部分は「有り」に丸をつけてハローワークに提出します。
退職勧奨の際に、退職届を会社から提出されるように求められることもありますが、「一身上の都合」などと記載してしまうと自己都合とされるリスクがありますので注意を要します。
会社都合退職として処理することについては、トラブルを避けるため、退職合意書に明記しておくといいでしょう。
退職勧奨の際には、特別退職金や退職日等の退職条件についても会社と交渉することができ、会社都合か否かは他の退職条件に納得できた後に交渉することが多いです。
実は、退職勧奨の際の会社都合か自己都合かの取り扱いについては、労働者の方にとって非常に関心が高い事項ですが、日々相談を受ける立場からすれば、離職理由の前にそれ以外の退職条件こそしっかりと検討していただきたいです。
この記事をとおして、退職勧奨をされた場合に会社都合となることについて、その他の退職条件等も含めて、しっかりと理解していただければと思います。
今回は、退職勧奨の離職票は会社都合となることを説明したうえで、退職届や合意書の書式と4つの交渉手順を解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、退職勧奨の際に会社都合とするためにどう対応していけばいいのかがよくわかるはずです。
会社都合退職については、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次
退職勧奨による退職は会社都合となる!失業保険と国民健康保険の取扱い
退職勧奨により退職した場合には、会社都合退職として取り扱われることになります。
会社都合退職とは、会社側の都合により雇用契約が終了することを言い、失業保険上は特定受給資格者と言われます
ハローワークインターネットサービスの特定受給資格者の範囲にも、「事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者」が掲げられています。
出典:ハローワークインターネットサービス – 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要 (mhlw.go.jp)
試用期間中であっても、退職勧奨により退職する場合には、会社都合退職となるのは本採用後と同様です。
会社都合退職となれば、失業保険や国民健康保険について、有利に取り扱ってもらうことができます。
以下では、失業保険や国民健康保険について次の順序で説明していきます。
・失業保険の在籍要件が短くなり・待期期間がなくなり・受給日数が増える
・国民健康保険料について給与所得を30/100として算定してもらえる
失業保険の在籍要件が短くなり・給付制限期間がなくなり・受給日数が増える
退職勧奨の際に会社都合となれば、失業保険について有利に取り扱ってもらうことができます。
具体的には、在籍要件が短くなり、待期期間がなくなり、受給日数が増えることになります。
まず、自己都合の場合には、失業保険を受給するには、離職前2年間に被保険者期間が12か月以上あることが必要となります。これに対して、会社都合の場合には、離職前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あれば足ります。
次に、自己都合の場合には、7日間の待期期間の後に、2~3か月の給付制限期間があります。これに対して、会社都合の場合には、7日間の待期期間の後に、給付制限期間がありません。
また、自己都合の場合には、雇用保険の加入期間により、給付日数は90日~150日です。これに対して、会社都合の場合には、年齢と雇用保険の加入期間により90日~330日です。
国民健康保険料について給与所得を30/100として算定してもらえる
退職勧奨の際に会社都合となれば、国民健康保険料について軽減してもらうことができます。
国民健康保険料は、通常、前年の所得などにより算定されます。
これに対して、会社都合退職の場合には、前年の給与所得をその30/100とみなして計算することで、国民健康保険料を軽減してもらうことができるのです。
国民健康保険料の軽減期間は、離職の翌日から翌年度末までの期間です(国民健康保険に加入中は、途中で就職しても引き続き対象となりますが、会社の健康保険に加入するなど国民健康保険を脱退すると終了します)。
ただし、お住まいの区の区役所・総合支所国民健康保険担当課で申請することが必要となりますので忘れないように注意しましょう。
以下の厚生労働省ページが参考になります。
倒産などで職を失った失業者に対する国民健康保険料(税)の軽減措置の創設及びハローワーク等での周知について |報道発表資料|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
~国民年金の免除・納付猶予制度~
国民年金についても、退職により納付が困難な場合には全部又は一部の免除を申請をすることができます。
免除される期間は、失業等のあった月の前月から翌々年6月までです。
以下の、リーフレットが参考になります。
国民年金保険料の納付が困難な方へ 国民年金保険料の免除・納付猶予申請が可能です.pdf (nenkin.go.jp)
ただし、自己都合か会社都合かで審査結果に影響はないとされています。
以下のページにも「退職事由による審査結果の変化はありません。」と記載されています。
退職勧奨の離職票を会社都合ではなく自己都合にされたら異議を出す!
退職勧奨の離職票を会社都合ではなく、自己都合にされたら異議を出しましょう。
本来、離職票上は、離職理由欄の4⑶の「希望退職の募集又は退職勧奨」の①「事業の縮小又は一部休廃止に伴う人員整理を行うためのもの」又は②「その他」にチェックされることになります。
これに対して、退職勧奨による退職であるにもかかわらず、会社側が、5⑵の「労働者の個人的な事情による離職」のうちのいずれかにチェックしてくることもあるので注意が必要です。
もしも、離職票において退職勧奨外の欄にチェックがされていたら、「⑯離職者本人の判断」の欄について「事業主が〇を付けた離職理由に異議」との部分は「有り」に丸をつけてハローワークに提出します。
ただし、ハローワークが離職理由につき、会社側の認識と労働者側の認識いずれが正しいのかを調査するに当たり、何らの証拠もないと異議がとおらないことがあります。
そのため、退職勧奨の面談を録音するなど退職勧奨の証拠を残しておくようにしましょう。
退職勧奨の録音については、以下の記事で詳しく解説しています。
退職勧奨の際に退職届はNG?合意書に会社都合と明記する方法|書式付き
退職勧奨の際に、退職届を会社から提出されるように求められることもありますが、「一身上の都合」などと記載してしまうと自己都合とされるリスクがあります。
退職勧奨の際に退職する場合には、退職届ではなく退職合意書として、他の退職条件も含めて明記しておくとともに、会社側の押印も求めるべきです。
トラブルとなりやすいのは退職理由だけではありませんし、退職届は労働者が一方的に提出するもので会社側が認識する離職理由とは異なるとの反論があり得るためです。
例えば、以下のような退職合意書を作成します。
※合意書のダウンロードはこちら
※こちらのリンクをクリックしていただくと、合意書のテンプレが表示されます。
表示されたDocumentの「ファイル」→「コピーを作成」を選択していただくと編集できるようになりますので、ぜひご活用下さい。
もしも、退職合意書ではなく、退職届を提出する場合には、「一身上の都合」ではなく「退職勧奨を受けたため」と記載します。
例えば、以下のような退職届を作成します。
※退職届のダウンロードはこちら
※こちらのリンクをクリックしていただくと、退職届のテンプレが表示されます。
表示されたDocumentの「ファイル」→「コピーを作成」を選択していただくと編集できるようになりますので、ぜひご活用下さい。
退職勧奨の際の退職合意書と退職届については、以下の記事で詳しく解説しています。
退職勧奨の際の退職条件の交渉手順|会社都合かを交渉するのは最後
退職勧奨の際には、特別退職金や退職日等の退職条件についても会社と交渉することができます。
会社都合か否かは、他の退職条件に納得できた後に交渉するようにしましょう。
先に会社都合とするよう会社に求めると、その他の条件の交渉が決裂した場合にも、一方的に離職手続きを進められてしまうケースがあります。
具体的には、退職勧奨の際の退職条件の交渉は以下の手順で行っていきます。
手順1:提案された条件では退職に納得できないことを示す
手順2:特別退職金の金額につき交渉を行う
手順3:退職日や退職理由につき交渉を行う
手順4:退職合意書に署名押印を行う
それでは順番に解説していきます。
退職勧奨された場合のNG行動と正しい対処法は、以下の動画でも詳しく解説しています。
手順1:提案された条件では退職に納得できないことを示す
退職条件の交渉をする際には、まず提案された条件では退職に納得できないことを示すことになります。
退職勧奨についてはあくまでも労働者の任意の退職を促すものにすぎず、これに応じるかどうかは労働者の自由であるためです。
転職先も決まっていない状況で退職することになれば生活に困ることになりますし、キャリアにもブランクが生じてしまい再就職活動も行いにくくなります。
そのため、これらの不安を払しょくするような補償がないようであれば、あえて退職に応じる理由はありません。
退職勧奨を拒否できることについては、以下の記事で詳しく解説しています。
手順2:特別退職金の金額につき交渉を行う
退職条件の中で、最初に交渉すべきは、特別退職金の金額です。
労働者と会社で最も意見が食い違いやすく、折り合いがつきにくい事項であるためです。
その他の退職条件だけ先に決めてしますと、特別退職金の協議で決裂した場合に、退職日や退職理由を決めていたことを根拠に退職手続きを進められてしまうことがあります。
日本の法律上、特別退職金を請求する権利はありませんので、退職してしまった後は特別退職金の交渉をすることはできません。
特別退職金は、あくまでも退職したくない労働者に対して、退職を納得してもらうための補償として企業が提案するものだからです。
特別退職金については、以下の記事で詳しく解説しています。
特別退職金については、以下の動画でも詳しく解説しています。
手順3:退職日や退職理由につき交渉を行う
特別退職金の金額につき折り合いがついたら、退職日や退職理由等の細かい条件も詰めていきましょう。
退職日を先に延ばしてもらいたい場合には、就労を免除したうえで特別退職金の一部を給与として支給してもらうことを交渉することもあります。
就労免除をしたうえでの在籍期間延長については以下の記事で詳しく解説しています。
また、会社側から再就職支援をつけてもらえることもあります。
再就職支援については以下の記事で詳しく解説しています。
再就職支援については、以下の動画でも詳しく解説しています。
最後に、「退職」に関する条項につき、退職理由が記載されていない場合には、一言「会社都合により」という文言を付け足すよう求めます。
手順4:退職合意書に署名押印を行う
退職条件について話し合いがまとまったら、最後に退職合意書にして、会社と労働者双方で署名押印を行います。
退職勧奨の際に企業が会社都合を拒む理由は助成金が原因のことが多い!
退職勧奨の際に企業が会社都合とすることを拒む場合には、助成金が原因のことがよくあります。
一部の助成金については、会社都合退職を出していないことが支給の条件となっているものがあるためです。
例えば、以下の助成金です。
・トライアル雇用奨励金
受給するには、トライアル雇⽤を開始した⽇の前⽇から起算して6か⽉前の⽇からトライアル雇⽤期間を終了する⽇までの期間に、トライアル雇用を行った事業所において、雇用保険被保険者を解雇等(退職勧奨等を含む。)事業主の都合により離職させた事業主以外の者であることが必要とされています。
出典:000858496.pdf (mhlw.go.jp)
・特定求職者雇用開発助成金
支給対象とならない場合として、対象労働者の雇入れの日の前日から起算して6か月前の日から1年間を経過する日までの間に、雇入れ事業主が、当該雇入れに係る事業所で雇用する雇用保険被保険者(短期雇用特例被保険者および日雇労働被保険者を除く。以下同様)を事業主都合によって解雇(勧奨退職等を含む)したことがある場合が挙げられています。
出典:000617402.pdf (mhlw.go.jp)
・キャリアアップ助成金
支給申請日において、対象労働者が離職(本人の都合による離職および天災その他やむを得ない理由のために事業の継続が困難となったことまたは本人の責めに帰すべき理由による解雇を除く。)していないことが条件とされています。
出典:000923177.pdf (mhlw.go.jp)
これらの場合には、労働者側としては、自己都合とすることに応じる代わりに、失業保険や健康保険料の不利益分を特別退職金に加算するように交渉することも考えられます。
ただし、企業によっては、「感情的な理由」や「会社都合退職を解雇と勘違いしているなどの原因」で、会社都合とすることを拒んでいることがあります。
このような場合には、企業に対して、会社都合退職がどのようなものかを説明するなどして理解を求めていくことになります。
退職勧奨による会社都合退職は転職(再就職)に不利?履歴書の記載方法
退職勧奨による会社都合退職は、転職(再就職)において必ずしも不利になるわけではありません。
離職票は、失業保険を受給する際にハローワークに提出することになりますので、転職先に提出する必要はありません。
また、雇用保険受給資格者証についても同様です。退職勧奨の際には離職理由のコードが「31」と記載されますが、失業保険受給の際にハローワークに提出することになるので、転職先に提出することにはなりません。
履歴書については、「〇〇会社 退社」とのシンプルな記載にとどめる例が増えてきておりますので、とくに会社都合と気視する必要はありません。
そのため、会社都合退職ということについては、転職活動の際の応募書類から、直ちに応募先の企業に知られるということにはなりません。
ただし、採用面接の際に質問された場合には嘘をつくことは禁止されていますので、実際の退職理由と矛盾しないように回答する必要があります。
離職理由と再就職への影響については以下の記事で詳しく解説しています。
退職勧奨の際に労働者が望めば自己都合とすることもできる
退職勧奨の際に労働者が望めば自己都合により退職することもできます。
退職勧奨の有無にかかわらず、労働者がもともと辞めたいと考えていたとしても何らおかしいことはないためです。
例えば、会社と協議して退職合意書に自己都合により退職すると明記することができます。
また、一身上の都合により退職する旨を記載した退職届を会社に提出することもできます。
ただし、念のため、会社に自己都合による退職として処理するように伝えておいた方がいいでしょう。
退職勧奨対応はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
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まとめ
以上のとおり、今回は、退職勧奨の離職票は会社都合となることを説明したうえで、退職届や合意書の書式と4つの交渉手順を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・退職勧奨により退職した場合には、会社都合退職として取り扱われることになります。
・退職勧奨の離職票を会社都合ではなく、自己都合にされたら異議を出しましょう。
・退職勧奨の際に、退職届を会社から提出されるように求められることもありますが、「一身上の都合」などと記載してしまうと自己都合とされるリスクがあります。
・退職勧奨の際の退職条件の交渉は以下の手順で行っていきます。
手順1:提案された条件では退職に納得できないことを示す
手順2:特別退職金の金額につき交渉を行う
手順3:退職日や退職理由につき交渉を行う
手順4:退職合意書に署名押印を行う
・退職勧奨の際に企業が会社都合とすることを拒む場合には、助成金が原因のことがよくあります。
・退職勧奨による会社都合退職は、転職(再就職)において必ずしも不利になるわけではありません。
・退職勧奨の際に労働者が望めば自己都合により退職することもできます。
この記事が退職勧奨をされて会社都合として取り扱ってもらえるか不安に感じている方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。