大規模なレイオフの対象となり、どうすればいいか困っていませんか?
日本においてレイオフが法律上、どのように考えられているのか分かりにくいですよね。
結論としては、レイオフについては、日本の法律上、退職勧奨や整理解雇と同じように考えることができます。
なぜなら、直接レイオフについて規定した法律はなく、解雇に関する法律および退職勧奨に関する判例をもとに考えていくことになるためです。
レイオフと解雇の違いは業績回復後に再雇用することを約束しているか否かにあります。しかし、明確な再雇用の時期や再雇用後の労働条件を合意していない限り、再雇用の合意を法的に有効と考えることは難しいでしょう。
つまり、レイオフ後に再雇用を希望しても拒否される可能性があり、再雇用を拒否された場合に法的な救済を求めることは困難となる可能性があります。
このような意味においても、労働者としてレイオフを考えるにあたっては、再雇用については強制力がないものとして、退職勧奨や整理解雇と同様に対処していくことになります。
最近では、日本でも有名な外資系企業が大規模なレイオフを行うことを決定したとするニュースを目にすることも多くなってきました。
私が日々相談を受ける中でも、大企業のレイオフなどでは、短期間に同じ企業からのレイオフの相談が数件来ることも出てきています。
この記事をとおして、日本ではレイオフについて法律上どのように考えられているのかを説明していきたいと思います。
今回は、レイオフに関する日本の法律について、ケース別の違法性と再雇用の可能性、2つの対処法を解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、日本におけるレイオフが法律上どのようなものかがよくわかるはずです。
レイオフと日本の法律については、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次
レイオフを直接規制した日本の法律はない
レイオフを直接規制した日本の法律はありません。
レイオフとは、業績回復後に再雇用することを約束して、一時的に従業員を解雇することをいいます。
例えば、売り上げに比して人件費が高いと判断した場合に、経営の合理化を図るために、世界全体で数千人を退職させるといったような場合です。
レイオフの意味については以下の記事で詳しく解説しています。
レイオフは、「従業員を退職させること+再雇用する約束」に分解して考えることができます。
そのため、日本におけるレイオフの法律上の取扱いについては、「退職に関する日本の法律」と「再雇用に関する日本の法律」の両側面から検討することになります。
外資系企業であっても、労働者が日本で働いている場合には、日本の法律が適用されます。
原則として最も当該法律行為に密接な関係がある地の法が適用されるためです(法の適用に関する通則法第8条)。
もしも、会社と労働者との契約書に日本ではなく外国の法律を適用する旨が記載されていたとしても、日本で働く以上は労働基準法等の強行法規の適用は排除できません(法の適用に関する通則法第12条)。
外資系企業に労働基準法が適用されるかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
レイオフは違法?日本の退職に関する法規制|退職に関する日本の法律
まず、レイオフが退職に関する日本の法律との関係において、どのように考えられているかについて説明していきます。
レイオフの際に、企業が労働者を退職させる方法は、以下の2つがあります。
方法1:退職勧奨
方法2:整理解雇
上記のいずれかの方法により、法規制についても異なってきますので、これらを区別したうえで、それぞれ見ていきましょう。
方法1:退職勧奨
レイオフの際の退職方法の1つ目は、退職勧奨です。
退職勧奨とは、企業が労働者に対して自発的に退職するように促すものです。
退職勧奨とは何かについては以下の記事で詳しく解説しています。
労働者がこれに合意した場合には合意退職ということになり、解雇とは異なることになりますので、解雇規制は適用されないことになります。
ただし、裁判例において、退職勧奨は、社会的相当性を逸脱した態様により、半強制的ないし執拗な態様で行われた場合には、違法になるとされています(東京地判平23年12月28日労経速2133号3頁[日本アイ・ビー・エム事件])。
あくまでも労働者の自発的な退職意思を形成する限度で許されるにすぎず、退職を強要することはできないためです。
退職勧奨が違法となる場合については、以下の記事で詳しく解説しています。
レイオフが行われる場合のほとんどは、この退職勧奨に労働者が同意することにより紛争化することなく解決されています。
方法2:整理解雇
レイオフの際の退職方法の2つ目は、整理解雇です。
整理解雇とは、経営上の理由により、合意なく一方的に労働者を退職させることです。
解雇については、労働者の意思にかかわらず一方的に退職させるものなので、法律上、厳格な規制があります。
すなわち、労働契約法16条は、解雇は、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当と言えない場合には、無効になるとしているのです。
とくに、整理解雇の場合には、労働者に落ち度がないことから、人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、手続の相当性という4つの要素につき厳しく判断されることになります。
整理解雇とは何かについては、以下の記事で詳しく解説しています。
そして、解雇が無効と判断された場合には、解雇を争っていた期間につき労働者が出勤していなくても、会社は後から遡って賃金を支払わなければなりません。これをバックペイと言います。
例えば、整理解雇がされてから1年後に解雇が無効であると判断された場合には、遡って1年分の賃金が支払われることになるのです。
そのため、レイオフと言っても、労働者の承諾なく行う場合には、日本の法律は労働者を強く保護しており、会社としては大きなリスクとなります。
レイオフ後も再雇用されない可能性に要注意|再雇用に関する日本の法律
次に、レイオフにおける再雇用が日本の法律との関係において、どのように考えられているかについて説明していきます。
結論としては、レイオフの場合には、再雇用される権利が法的に保障されているということは難しく、再雇用を拒否された場合でもこれを争うことは困難なことが多いでしょう。
なぜなら、「再雇用する日」や「再雇用後の労働条件」が具体的でないことがほとんどであるためです。
すなわち、企業への採用が決定し、正式に入社するまでの関係のことを内定といいます。
仮に内定が成立していれば、始期付解約権留保付雇用契約が成立していることになり(最判昭54年7月20日民集33巻5号582頁[大日本印刷事件])、再雇用を拒否すれば、内定取り消しに当たり、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当と言えない場合には、無効となります。
内定取り消しが違法となる場合については、以下の記事で詳しく解説しています。
しかし、内定が成立しているといえるためには、入社日や労働条件(とくに賃金額等)が具体的に決められていることが必要となります。
例えば、業績が回復したら勤続期間が長い方から順次再雇用します等の合意では、内容が抽象的過ぎて内定ないしは始期付の雇用契約が成立していたとは言えないでしょう。
そのため、レイオフの際には、業績が回復した場合でも再雇用してもらえない可能性があり、その場合に法的な救済を求めることは困難であることに十分留意する必要があります。
日本でレイオフを言い渡された場合の対処法
日本でレイオフを言い渡された場合には、上記にて説明した法律関係を踏まえて、冷静に対処していくことが大切です。
とくに十分な検討をしないままに会社から渡された退職合意書(separation agreement)にサインすることは厳に慎むべきです。
サインをしてしまった後に後悔してもどうしようもないことがほとんどなのです。
具体的には、日本でレイオフを言い渡された場合には、以下の2つの対処法があります。
対処法1:拒否して撤回を求める
対処法2:退職条件を交渉する
それぞれの対処法を説明していきますので一緒に見ていきましょう。
退職勧奨された場合のNG行動と正しい対処法は、以下の動画でも詳しく解説しています。
対処法1:拒否して撤回を求める
日本におけるレイオフへの対処法の1つ目は、拒否して撤回を求めることです。
退職に納得できず、整理解雇の条件も充足していないと考えられる場合には、退職には応じられない旨を明確に回答します。
例えば、面談室に呼ばれ、退職合意書(separation agreement)を示されたら、退職に同意することはできないので、サインできませんと回答しましょう。
この場合は、会社は、退職勧奨を終了するか、整理解雇を強行するかのいずれかになります。
もしも、整理解雇を強行された場合には、その解雇が無効であることを指摘したうえで、解雇日以降の出社できなかった期間の賃金についても支払うように求めていくことになります。
不当解雇の裁判については、以下の記事で詳しく解説しています。
対処法2:レイオフの条件を交渉する
日本におけるレイオフへの対処法の2つ目は、退職条件を交渉することです。
条件次第では退職を検討してもいいと考えている場合には、退職条件を交渉します。
退職勧奨の際の退職条件の交渉については以下の記事で詳しく解説しています。
とくに、会社側は、労働者に自発的に退職してもらうために、パッケージと呼ばれる特別退職金の提案がされる傾向にあります。
特別退職金とは何かについては以下の記事で詳しく解説しています。
特別退職金については、以下の動画でも詳しく解説しています。
パッケージの相場は3か月分~1年6か月分程度であり、交渉するかどうかや交渉の方法により、その金額が大きく変わります。
外資系企業のパッケージ相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
そのほか、退職時期について、いわゆるガーデンリーブとして、数か月間籍を残しておきながら、労働義務を免除してもらう場合もあります。これにより、再就職活動が格段に行いやすくなります。
外資系企業における退職勧奨のパッケージについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
レイオフの相談はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
外資系企業におけるレイオフのご相談については、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
この分野は、専門性が高い分野であるため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
解雇された場合の見通しを分析したうえで、あなたの意向を踏まえて、外資系企業の性質に応じて適切に方針を策定する必要があります。
リバティ・ベル法律事務所では、解雇や退職勧奨事件に力を入れており、特に外資系企業とのパッケージ交渉について圧倒的な知識とノウハウを蓄積しています。
以下のページでリバティ・ベル法律事務所の実績の一部を公開していますので読んでみてください。
解決事例 | 外資系労働者特設サイトbyリバティ・ベル法律事務所 (libertybell-tokusetu.com)
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まとめ
以上のとおり、今回は、レイオフに関する日本の法律について、ケース別の違法性と再雇用の可能性、2つの対処法を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・レイオフを直接規制した日本の法律はありません。
・レイオフの際に、労働者が退職勧奨に同意した場合には、合意退職となり解雇ではないため、日本の労働契約法における解雇規制は適用されません。
レイオフの際に、労働者が退職に同意しない場合に会社が整理解雇を強行してきた場合には、労働契約法上の解雇規制が適用されます。
・レイオフの場合には、再雇用される権利が法的に保障されているということは難しく、再雇用を拒否された場合でもこれを争うことは困難なことが多いことに注意が必要です。
・日本でレイオフを言い渡された場合には、以下の2つの対処法があります。
対処法1:拒否して撤回を求める
対処法2:退職条件を交渉する
この記事がレイオフの対象となってしまい困っている方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。