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外資のオファーレターの取り消しは違法?法的効力と簡単な対処法4つ

外資のオファーレターの取り消しは違法?

オファーレターを取り消すと言われてしまい困っていませんか

オファーをもらい、その会社に入社する前提で準備を進めていたのに、いきなり取り消すと言われても納得できませんよね。

オファーレターについては、その記載内容等にもよりますが、法的には内定が成立していたとされる可能性があります

内定が成立しているとされた場合には、入社日を始期とした雇用契約が成立していると解釈される傾向にありますので、オファーレターの取り消しは解雇に準じて厳格に考えられることになります。

例えば、外資系企業がオファーレターの取り消そうとしても、内定の時点から分かっていた事情や曖昧な理由、不合理な理由による場合には、違法となる可能性があります。

もし、オファーレターの取り消されてしまった場合には、焦らずに冷静に対処していく必要があります。

実は、オファーレターが出された際や取り消しを伝えられた際の行動によって、結果は大きく変わってくる可能性があります

私がこれまで内定に関する相談を受けてきた中でも、もう少し早く相談してほしかったと感じることが少なくありません

この記事をとおして、外資のオファーレターの取り消しについて是非知っておいていただきたい知識やノウハウをお伝えしていくことができれば幸いです。

今回は、外資のオファーレターの取り消しは違法かを説明したうえで、法的効力と簡単な対処法4つを解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事を読めば、オファーレターを取り消すと言われた際にどうすればいいのかがよくわかるはずです。

 

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オファーレターで内定成立?法的効力

オファーレターについては、その記載内容等にもよりますが、法的には内定が成立していたとされる可能性があります

どのような性質を有する文書であるかについては、オファーレターと言う名称だけに捉われるのではなく、その記載内容により判断をすることになります。

例えば、オファーレターに、「慎重に検討した結果、●●様の採用を決定いたしました。」等の記載がある場合には、内定通知書と同様の性質を有することになるでしょう。

オファーレターによって内定が成立していたとされる場合には、一般に、その時点で始期付の雇用契約の効力が生じることになります。

ただし、労働者の承諾が必要とされているケースなどについては、労働者の承諾があるまでは、始期付きの雇用契約が成立したとまでは言えないとされる余地もあります

オファーレターの取り消しは違法となり得る

オファーレターの時点で内定が成立していたと言える場合には、取り消しは違法となり得ます

内定が成立した時点で始期付きの雇用契約が成立していたとされるのが通常であり、取り消しの有効性は解雇に準じて厳格に判断されることになるためです。

判例は、内定取り消すことができるのは、内定当時知ることができないか、知ることが期待できないような事実であって、取り消すことが客観的に合理的と認められ、社会通念上相当である場合に限られるとしています

(参考:最二判昭54年7月20日判タ399号32頁[大日本印刷事件])

オファーレターの取り消しが無効となった場合には、労働者は、入社日以降その会社の労働者ということになります。

そして、入社日以降、あなたが出社することができないのは、会社側が不当な内定取り消しを行ったことが原因なので、入社日以降出勤できなかった期間の給料を請求できます。

例えば、入社日が2025年4月1日とされている方の場合には、2025年9月末に取り消しが不当とされれば、6か月分の給料を遡って請求できる可能性があります。

 

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オファーレターの取り消しが違法となりやすい例3つ

オファーレターの取り消しは、先ほど説明したように十分な理由がなければ違法となり得ます

内定が成立していたとされる場合には、始期付きの雇用契約が成立していたとして解雇に準じて考えられる傾向にあるためです。

具体的には、オファーレターの取り消しが違法となりやすい例としては以下の3つがあります。

例1:内定時点で明らかな理由のケース
例2:曖昧で主観的な理由のケース
例3:不合理な理由であるケース

オファーレターの取り消しが違法となりやすい例3つ

それでは、これらの例について順番に説明していきます。

例1:内定時点で明らかな理由のケース

オファーレターの取り消しが違法となりやすい例の1つ目は、内定時点で明らかな理由のケースです

元々分かっていた事情については、それを踏まえたうえでオファーレターを出すという判断をした以上、後からその判断を覆すことは許されないのです。

例えば、あなたの前職の勤務歴が6か月と短かったとします。あなたは履歴書や職務経歴書にも、前職の勤務期間は6か月であると記載していて、会社もこれを知っていました。

このような場合にオファーレターを出した後に、やはり前職の勤務期間が短く採用を取り消したいということは不当となりやすいのです。

例2:曖昧で主観的な理由のケース

オファーレターの取り消しが違法となりやすい例の2つ目は、曖昧で主観的な理由のケースです

内定を取り消す理由は客観的に合理的である必要があり、主観的な理由よることはできないためです。

例えば、「オファー面談でのあなたのやり取りをしてわかったが、あなたはうちの企業風土にマッチしないと思う」などとの理由を言われる場合です。

あなたのどのような発言からどのような企業風土になぜマッチしないのかよくわかりませんし、企業風土にマッチするかは定量化が難しく主観的な判断となりがちです。

例3:不合理な理由であるケース

オファーレターの取り消しが違法となりやすい例の3つ目は、不合理な理由であるケースです

内定取り消しの理由は合理的なものであることが必要とされているためです。

例えば、あなたがオファーレターを承諾した後に、育休やリモート勤務についての質問をしたとします。

会社側がこのような質問を受けたことで、従業員としてふさわしくないと判断し、内定を取り消すことにしたなどと言ってきたとします。

育休については労働者の権利ですし、リモート勤務の可否を知りたいと考えるのは労働者として当然のことでしょうから、これらの質問をしただけで取り消しの理由とすることは合理的とは言えないでしょう。

オファーレターの取り消しへの対処法

オファーレターの取り消されてしまった場合には、焦らずに冷静に対処していく必要があります

オファーレターを軽く見ている会社も多く、労働者が適切に行動を起こしていかなければ、あなた自身の生活やキャリアを守ることはできません。

あなたの対応次第で結果は大きく変わることになります。

具体的には、オファーレターの取り消しへの対処手順は以下のとおりです。

手順1:弁護士に相談する
手順2:通知書を送付する
手順3:交渉する
手順4:労働審判・訴訟を提起する

オファーレターの取り消しへの対処法

それでは、これらの手順について順番に説明していきます。

手順1:弁護士に相談する

オファーレターの取り消しへの対処手順の1つ目は、弁護士に相談することです

法的な見通しを分析したうえで、適切な方針に基づいて一貫した対応を行っていく必要があるためです。

一度行ってしまった発言や態様については後から撤回することが容易ではありません

とくに、内定り消しへの対応については、どのような法律構成で請求していくかによっても獲得できる金額が大きく変わってきます。

矛盾した態様などをしてしまうことでリカバリーが難しくなってしまうことが少なくありません。

そのため、オファーレターを取り消された場合には、まずは弁護士に相談したうえで、法的な見通しに基づいて適切な方針を作るべきなのです。

ただし、外資の労働問題についてはとくに専門性が高いため、外資系企業の労働問題に強い弁護士に相談するようにしましょう

手順2:通知書を送付する

オファーレターの取り消しへの対処手順の2つ目は、通知書を送付することです

会社側から取り消しを通知された場合に何もせずにいると、取り消しを認めたなどと指摘されたり、入社する意思がなかったと指摘されたりすることがあるためです。

例えば、内定取り消しが無効である旨を指摘したうえで、入社日以降、業務を行う意思がある旨などを通知しておくことになります。

ただし、通知書については、弁護士に送ってもらうようにするといいでしょう。交渉が決裂した場合には証拠となりますので、一貫した記載となるように注意が必要なためです。

手順3:交渉する

オファーレターの取り消しへの対処手順の3つ目は、交渉することです

会社側に通知書を送ったら2~3週間程度とすると会社側から回答があります。

まずは話し合いにより解決をすることが可能か協議してみることになります。

もし、話し合いにより納得できる解決が出来そうであれば、示談書を作成することになります。

手順4:労働審判・訴訟を提起する

オファーレターの取り消しへの対処手順の4つ目は、労働審判・訴訟を提起することです

話し合いにより解決することが難しい場合には、裁判所を用いた解決を検討することになります。

労働審判は、全三回の期日で調停による解決を目指す手続きであり、調停が成立しない場合には労働審判委員会が審判を下します。迅速、かつ、適正に解決することが期待できます。

労働審判については、以下の記事で詳しく解説しています。

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訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。

 

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オファーレターの取り消しでよくある疑問3つ

オファーレターの取り消しでよくある質問としては、以下の3つがあります。

Q1:年収交渉をしたら取り消されたのですが違法ですか?
Q2:慰謝料を請求することはできますか?
Q3:内定取り消しをされ得た後の対応で留意点はありますか?

それでは、これらの疑問について順番に解消していきましょう。

Q1:年収交渉をしたら取り消されたのですが違法ですか?

A.内定が成立した後に交渉をしたかどうかによって、結論が変わる可能性があります

オファーレターに対して労働者の承諾が必要とされているケースにおいて、労働者がこれを承諾する前に年収の増額を求めた場合には、取り消しは有効となる可能性があります。

労働者からの年収の増額の申し出が、会社側からのオファーを拒絶したうえで、新たな雇用契約の申し込みをしたものとされる可能性があるためです。

つまり、オファーレターについては労働者が拒絶をしたため、雇用契約が成立しなかったという整理となります

民法第528条(申込みに変更を加えた承諾)
「承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。」

これに対して、労働者がオファーレターを承諾した後に、年収の増額の可否を聞いたり、昇給制度について確認したりしたような場合には、既に内定が成立している以上、このような質問や確認がされたことを理由に取り消しを行うことは難しいでしょう。

Q2:慰謝料を請求することはできますか?

A.オファーレターの取り消しが違法な場合には、慰謝料を請求できる可能性があります

もっとも、内定取り消しの場合の慰謝料の相場は50万円~100万円程度であり、高額になりにくい傾向にあります。

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そのため、内定取り消しが違法な場合の金銭的な請求において中心的なものは入社日以降の給料の請求となることが多いです。

Q3:内定取り消しをされた後の対応で留意点はありますか?

A.内定取り消しをされた後の対応について、一貫した対応になるように注意する必要があります

労働者自身が入社する意思がなくなってしまったような場合には、オファーレターの取り消しが違法でも入社日以降の給料を請求できなくなってしまう可能性があります。

例えば、「もうこの会社に入社したいとは思わない」、「この会社で働くことは難しいと私も思う」、「入社しないこと自体には応じる」等の発言は安易に行うべきではありません。

また、労働者側から一度条件を提示してしまうと、それが上限として機能してしまい、それ以上の金額を交渉することが現実的に困難となることもあります

そのため、オファーレターの取り消しをされた場合には、まずは慎重に方針を検討し、これを決めてから矛盾しないように対応をしていくことが重要です。

オファーレターへのサイン後も辞退は可能【補足】

オファーレターへのサイン後も、労働者からこれを辞退できることが多いです

まず、辞退の連絡をして、会社がこれを承諾した場合は、合意により契約は終了することになりますので、辞退することができます。

次に、辞退の連絡をして、会社がこれを承諾しない場合でも、期間の定めのない雇用契約であれば、申し入れから2週間が経過することで雇用は終了します。

民法第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
1「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」

ただし、会社側も、コストをかけて採用活動を行っていますので、不誠実な対応にならないように注意が必要です

オファーレターへのサインがあれば、会社は、入社日以降は勤務してもらえるものと期待するのが通常なので、故意や過失により、この期待を害すれば損害賠償等の問題になるリスクがあります。

そのため、オファーレターへのサイン後に辞退したいと考えた場合には、早めに伝え、会社側の理解を求めるよう説明を尽くすなど真摯に対応するようにしましょう。

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法的な見通しを分析したうえで、あなたの意向を踏まえて、適切に方針を策定する必要があります

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まとめ

以上のとおり、今回は、外資のオファーレターの取り消しは違法かを説明したうえで、法的効力と簡単な対処法4つを解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

・オファーレターについては、その記載内容等にもよりますが、法的には内定が成立していたとされる可能性があります。

・オファーレターの時点で内定が成立していたと言える場合には、取り消しは違法となり得ます。

・オファーレターの取り消しが違法となりやすい例としては以下の3つがあります。
例1:内定時点で明らかな理由のケース
例2:曖昧で主観的な理由のケース
例3:不合理な理由であるケース

・オファーレターの取り消しへの対処手順は以下のとおりです。
手順1:弁護士に相談する
手順2:通知書を送付する
手順3:交渉する
手順4:労働審判・訴訟を提起する

この記事がオファーレターを取り消すと言われてしまい困っている労働者の助けになれば幸いです。

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弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日
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