給料差し押さえで会社をクビにならないか不安を感じていませんか?
会社が給料の差し押さえに慣れていないと労働者に対して厳しい対応をすることがあります。
しかし、あなたが給料の差し押さえられたとしても、それを理由にクビにすることは通常許されません。
あなたの仕事の問題と債務の未払いの問題は、別の問題であるためです。
もしも、あなたが給料の差し押さえを理由に会社からクビにされた場合には、これに適切に対処していく必要があります。
まず、給料の差し押さえを理由にクビにすることが法律上許されないとしても、あなたがこれを争わなければ、自分の権利や地位を守ることはできません。
また、給料の差し押さえ自体への対処として、支払いが難しい場合には「債務整理」を検討することになります。
今回は、給料差し押さえを理由とした「クビ」への対処法について解説していきます。
「差し押さえ」と聞くと難しそうと感じる方がいるかもしれませんが、誰でもわかりやすいように簡単に説明していきますのでご安心ください。
具体的には以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、給料差し押さえを理由とするクビへの不安が解消するはずです。
目次
給料の差し押さえとは
給料の差し押さえとは、債権者の申し立てにより、国の執行機関が会社に対して、あなたへの弁済を禁止するものです。
債権者は、給料を差し押さえた後、差し押さえた給料を取り立てることができるようになります。
給料の差し押さえは、以下のような流れで進んでいきます。
STEP1:給料の差し押さえは、債権者による申し立てにより開始されます。
STEP2:債権者が提出した申立書等に不備がなければ、裁判官により債権差押命令が発令されます。
STEP3:裁判所が、あなたに給料を支払っている会社に対して、債権差押命令正本を発送します。
STEP4:STEP3で発送した郵便物が会社に届いたことが確認できたら、裁判所があなたに対し、債権差押命令正本を発送します。
STEP5:STEP3(場合によってはSTEP4)の後、裁判所が、債権者へ債権差押命令正本(陳述催告の申立てがある場合は、陳述書を同封します。)を発送します。
STEP6:あなたに債権差押命令正本が届いた日の翌日から4週間(養育費等の扶養義務等に係る金銭債権が含まれているときは1週間)の経過後、債権者自身が会社に直接連絡をして、取り立てを行います。
以上のように、給料を差し押さえられてしまうと、あなたは差し押さえられた給料の支払いを受けることができず、債権者により会社に取り立てが行われることになるのです。
給料の差し押さえは当然会社にバレる
あなたが給料差し押さえられた場合には、当然会社にバレることになります。
なぜなら、先ほど見たように、給料の差し押さえがなされると、裁判所があなたに給料を支払っている会社に対して、債権差押命令正本を発送するためです。
会社は、裁判所から届いた差し押さえに関する書類を見ることにより、あなたの給料が差し押さえられたことを知ることになります。
通常は、裁判所からこのような書類が届くと、会社は顧問弁護士に相談します。その際に、差し押さえられた給料については、あなたに支払ってはいけないことや裁判所や債権者への対応などを指導されることになります。
そのため、あなたが給料を差し押さえられたことを会社に隠すことはできないのです。
派遣社員の場合には、派遣先からではなく、派遣元から給料をもらうことになります。
そこで、給料差し押さえの通知も派遣先ではなく、派遣元にいくことになります。
そのため、通常、派遣元が派遣先に漏らさない限りは、派遣先には給料差し押さえの事実が知られないことになります。
給料を差し押さえられるとクビになるのか
給料を差し押さえられたとしても、通常、これを理由に会社があなたをクビにすることは、法律上許されません。
会社があなたをクビにするには、客観的に合理的な理由が必要とされているためです。
あなたが給料を差し押さえられたとしても、それは業務とは関係のない私生活上の事項に関するものであり、クビを正当化する理由にはならないのです。
ただし、会社によっては、このような法律上のルールを知らないことがあります。
会社によっては、差押に関する書面が裁判所から届き、慣れない対応に煩わしく感じることがあります。
また、債務を滞納していることを会社に知られてしまうと、あなたの信頼が低下してしまう可能性があります。
このような理由により、中小企業などでは、法的にはそれが認められない場合であっても、給料の差し押さえを理由にクビを宣告されることがあります。
給料の差し押さえを理由にクビにされた場合の対処手順
万が一、あなたが給料の差し押さえを理由に会社からクビを宣告された場合には、これに適切に対処していく必要があります。
なぜなら、法律上はクビにすることが許されない場合であっても、あなたがそれを主張しなければ、クビが有効であることを前提に手続きが進められていってしまうためです。
具体的には、以下の手順で対処していくことになります。
手順1:解雇理由証明書の請求
手順2:解雇の撤回要求
手順3:交渉
手順4:労働審判・訴訟
各手順について順番に説明していきます。
手順1:解雇理由証明書の請求
クビにされた場合の対処手順の1つ目は、解雇理由証明書の請求です。
解雇理由証明書とは、あなたが解雇された理由や根拠となる就業規則が具体的に記載された書面です。
あなたは、解雇理由証明書を請求することで自分が解雇された理由を知ることができます。
例えば、会社は、給料の差し押さえ以外のことを理由にあなたにクビを宣告した可能性があります。
あなたがクビになった理由により、法的にクビにすることが許されるかどうかは変わってきます。
そのため、まずは書面によりあなたがクビにされた理由を明確にしておくべきなのです。
解雇理由証明書の請求方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
手順2:解雇の撤回要求
クビにされた場合の対処手順の2つ目は、解雇の撤回要求です。
クビにされた理由を確認し、あなたの給料が差し押さえられたことのみが理由とされているなど、合理的な理由がない場合には、解雇の撤回を要求しましょう。
また、併せて、解雇日以降の業務を指示するように求めておきましょう。
あなたが解雇日よりも後の賃金を請求するには、会社から業務を命じられればこれに応じる意思を持っていることが必要となるためです。
手順3:交渉
クビにされた場合の対処手順の3つ目は、交渉です。
会社との間で、双方の主張につき折り合いがつくかどうかを協議することになります。
例えば、会社から解決金をもらうことにより退職するという和解が成立することもありますし、会社に復職するという和解が成立することもあります。
手順4:労働審判・訴訟
クビにされた場合の対処手順の4つ目は、労働審判や訴訟です。
話し合いでの解決が難しい場合には、裁判所を用いた手続きを検討することになります。
労働審判というのは、全3回の期日で調停を目指すものであり、調停が成立しない場合には裁判所が一時的な判断を下すものです。労働審判を経ずに訴訟を申し立てることもできます。
労働審判とはどのような制度かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。
不当解雇の裁判については、以下の記事で詳しく解説しています。
解雇された場合に「やるべきこと」と「やってはいけないこと」は、以下の動画でも詳しく解説しています。
よくある給料の差し押さえ原因3つ
よくある給料差し押さえの原因としては、例えば以下の3つがあります。
・借金滞納
・養育費滞納
・税金滞納
順番に見ていきましょう。
借金滞納
よくある給料差押の原因の1つ目は、借金の滞納です。
例えば、クレジットカードを使いすぎてしまい返済することができなくなってしまったような場合です。
ただし、借金滞納により、あなたの給料が差し押さえられる場合でも、あなたの給料全額が差し押さえられてしまうわけではありません。
給料の差し押さえについては、税金等を控除した金額の4分の1までしか差し押さえの対象とすることはできないとされているためです。
養育費滞納
よくある給料差押の原因の2つ目は、養育費の滞納です。
養育費については長期間継続して支払いをしていくものであり、途中で支払いが滞ってしまうケースが非常に多く見られます。
養育費の未払いによる給料差し押さえについては、通常よりも差し押さえをできる給料の範囲が広く設定されており、税金等を控除した金額の2分の1までを差し押さえを対象とすることができるとされています。
税金滞納
よくある給料差押の原因の3つ目は、税金の滞納です。
サラリーマンの方でも、副業や不動産の収入がある場合には、確定申告が必要であり、税金が滞納してしまうことがあります。
このように税金を滞納した場合にも給料を差し押さえられてしまうことがあります。
税金の滞納の場合の差し押さえ手続や差し押さえの対象となる金額については、通常の差し押さえとは異なり、国税徴収法に定められています。
給料の差し押え自体を解決するには債務整理
給料の差し押さえ自体を解決するには、債務を弁済する資力がないのであれば、債務整理を検討することになります。
債務整理とは、あなたの債務を整理して負担を軽減するための手続きのことです。
債務整理には、例えば以下のような種類があります。
ただし、税金や養育費については債務整理によっても減額・免除されないので注意が必要です。
給料の差し押さえを解決するうえで、転職は根本的な解決にはなりません。
給料の差し押さえをされた場合に、今の会社を転職することにより差し押さえを逃れようとする方がいます。
確かに、給料の差し押さえは、今の職場に対して行われているものなので、転職をすれば一時的には差し押さえを逃れることができるかもしれません。
しかし、転職先についても再度差し押さえをされる可能性があり、差し押さえをされる度に転職をするということも現実的ではないでしょう。
また、近年の民事執行法の改正により、給与債権に関する情報の開示に関する手続きが新設されており、以前よりも職場の調査がしやすくなってきています。
そのため、あなたが給料の差し押さえに関する問題を根本的に解決したいと考えた場合には、転職ではなく、債務整理を検討するべきなのです。
給料の差し押さえに関するトラブルは弁護士に相談
給料の差し押さえに関するトラブルは、弁護士に相談するべきです。
弁護士に相談すれば、会社からクビにされた場合であっても、その正当性や対処法について助言してもらうことができます。
また弁護士に依頼すれば、会社との交渉や書面の作成などの煩雑な手続きを丸投げしてしまうことができます。
加えて、弁護士であれば、債務整理についても併せて相談することができますので、差し押さえに関する問題の根本的な解決を目指すことができます。
初回無料相談を利用すれば費用をかけずに相談することができますので、これを利用するデメリットは特にありません。
そのため、給料の差し押さえに関するトラブルは弁護士に相談することがおすすめなのです。
まとめ
以上のとおり、今回は、給料差し押さえを理由とした「クビ」への対処法について解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・給料の差し押さえとは、債権者の申し立てにより、国の執行機関が会社に対して、あなたへの弁済を禁止するものです。
・給料を差し押さえられたとしても、通常、これを理由に会社があなたをクビにすることは、法律上許されません。
・万が一、あなたが給料の差し押さえを理由に会社からクビを宣告された場合には、以下の手順で対処していきましょう。
手順1:解雇理由証明書の請求
手順2:解雇の撤回要求
手順3:交渉
手順4:労働審判・訴訟
この記事が給料差し押さえを理由とするクビに不安を感じている方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
差し押さえのリスクと対策については、債務急済の以下の記事でも解説されていますので読んでみてください。
任意整理の差し押さえリスクと対策を徹底解説!給料と口座を守る方法! | 債務急済 (saimu931.jp)