管理職になって給与が下がってしまい困っていませんか?
責任ばかり増えて、お給料が減ってしまったら不満ですよね。
管理監督者の給与逆転現象とは、管理職になったことで、一般職の頃よりも、お給料が下がってしまうことを言います。
管理職になって給与が下がるのは、残業代が支給されなくなるためであり、年収が下がってしまう場合や時給単価が下がってしまう場合があります。
管理職と一般職の給与差としては、一般職の方が残業をしてももらえないほどの固定給料をもらっていることが目安です。
給与が逆転したら直ちに名ばかり管理職と言えるわけではありませんが、管理監督者に該当しない方向の重要な事実の一つとなります。
管理職になって給与が下がった場合には、これまで支払ってもらえていなかった残業代を請求することも検討しましょう。
実は、管理職の中でも管理監督者に該当するのはほんの一握りにすぎません。管理職と言われていても、本来は残業代を支払ってもらえるはずの方がたくさんいるのです。
この記事をとおして、管理職になって給与が下がってしまった方々に、管理監督者についての法律知識やノウハウをわかりやすく説明することができれば幸いです。
今回は、管理監督者の給与逆転現象とは何かを説明したうえで、管理職で給与が下がるケースと、一般職との給与差の目安を解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、管理職になって給与が下がってしまった場合にはどうすればいいのかよくわかるはずです。
目次
管理監督者の給与逆転現象とは?
管理監督者の給与逆転現象とは、管理職になったことで、一般職の頃よりも、お給料が下がってしまうことを言います。
管理監督者には労働時間の裁量が求められる一方で、時間外手当や休日手当が支給されないため、基本給の設定次第では収入が減少する可能性があるためです。
また、責任の重さに見合った報酬が支払われない場合、管理職に昇進するメリットを感じられなくなることがあります。
もし、あなたが管理監督者とされているにもかかわらず、これまでよりも給与が下がってしまっている場合には、労働基準法違反となる可能性もあります。
このように管理監督者の給与逆転現象は、給与体系の不整合から生じるもので、職場のモチベーションに悪影響を与えることになり、コンプライアンス上も深刻な問題なのです。
管理職になったことによって、一般職よりも給与が下がってしまうというのは、決して当たり前のことなどではなく、異常な事態なのです。
管理職で給与が下がるケース2つ
管理職の給与が下がってしまうケースについては、残業が大きくかかわっています。
管理監督者とされると、会社側は時間外手当と休日手当を支給してくれなくなるためです。
具体的には、管理職で給与が下がるケースは以下の2つです。
ケース1:一般職の時に残業代が多かったケース
ケース2:管理職になり残業が増えたケース
それでは、これらのケースについて順番に説明していきます。
ケース1:一般職の時に残業代が多かったケース
管理職で給与が下がるケースの1つ目は、一般職の時に残業代が多かったケースです。
管理監督者になると時間外手当と休日手当がなくなってしまう結果、年収が減ることがあります。
例えば、一般職の時には、月額30万円の基本給のほかに、時間外手当として15万円程度をもらっていたとしましょう。月給の額面は45万円で、年収にすると540万円となります。
これに対して、管理監督者になった後は、月額の基本給が35万円に昇給し、5万円の役職手当がつくようになったとします。もっとも、時間外手当はなくなりますので、月給の額面は40万円で、年収にすると480万円となります。
このように一般職の時に残業代が多かった方は、管理職になることで給与が下がってしまうケースがあるのです。
ケース2:管理職になり残業が増えたケース
管理職で給与が下がるケースの2つ目は、管理職になり残業が増えたケースです。
管理監督者とされると、何時間残業をしても時間外手当や休日手当は支給されなくなる結果、時給換算した場合の金額が著しく低廉になることがあります。
例えば、月の所定労働時間を160時間として、月に200時間の残業をしたと仮定します。
月額の基本給30万円と役職手当5万円で合計35万円の支給を受けていたとしても、月に360時間働いていたとすると時給は、972円となります
このように管理職になり著しい長時間残業を行うようになった場合には、たとえ年収は減っていなくても、時給単価が少なくなってしまうことがあります。
管理職と一般職の給与差の目安
管理職と一般職の給与差としては、一般職の方が残業をしてももらえないほどの固定給料をもらっていることが目安です。
労働時間や休日に関する労働基準法の規定が適用されなくても十分な待遇がされている必要があるためです。
例えば、固定給の金額が増えていたとしても、一般職の人が通常程度の残業を行えば超えてしまうような給与差では不足していることになります。
固定給の金額が会社内で上位数人に入っていたとしても、そのことから当然にふさわしい待遇と言えることにはならないのです。
また、裁判例には、891万9300円の年収が客観的に特に高額であるとまではいえないとした裁判例もあります。
(参考:大阪地判令2年12月17日労働判例ジャーナル109号22頁福屋不動産販売事件)
管理監督者にふさわしい待遇については、以下の記事で詳しく解説しています。
給与が逆転したら名ばかり管理職?
給与が逆転したら直ちに名ばかり管理職と言えるわけではありませんが、管理監督者に該当しない方向の重要な事実の一つとなります。
管理職とされている方の中でも、法律上、時間外手当や休日手当を支給しなくてもよいとされる管理監督者はほんの一部です。
管理監督者に該当するためには、以下の3つの条件をいずれも満たしている必要があるとされています。
条件1:経営者との一体性
条件2:労働時間の裁量
条件3:対価の正当性
経営者との一体性とは、経営会議等をとおして積極的に経営に関わっていたり、部下のマネジメントや新人の採用等の労務管理に関わっていたりすることです。
労働時間の裁量とは、出勤日や出勤時間を自由に自分で決めることができることをいい、会社を休んでも欠勤控除等をされないことです。
対価の正当性とは、労働時間や休日に関する規定が適用されなくてもいいだけの待遇が与えられていることです。
管理職になったことによって給与が逆転している場合には、対価の正当性を満たしていないとされる方向の事情となり、管理監督者ではないとされやすいのです。
もし、管理監督者の条件を満たしていない場合には、これまで支払ってもらえていなかった残業代を3年の時効にかかっていない範囲で遡って請求することできます。
管理職になって給与が下がった場合の対処法
管理職になって給与が下がった場合には、これまで支払ってもらえていなかった残業代を請求することも検討しましょう。
会社はあなたが管理監督者に該当するものと扱っている以上、あなたが何も行動を起こさなければ、残業代を取り戻すことはできません
具体的には、管理職になって給与が下がった場合には、以下の手順で対処していきましょう。
手順1:名ばかり管理職の証拠を集めておく
手順2:弁護士に相談する
手順3:残業代を請求する
手順4:労働審判・訴訟を提起する
それでは、これらの手順について順番に説明していきます。
手順1:名ばかり管理職の証拠を集めておく
管理職になり給与が下がった場合の対処法の1つ目は、名ばかり管理職の証拠を集めておくことです。
会社側は、管理監督者であると指摘してきますので、反論できるようにしておく必要があるためです。
経営会議に参加していない証拠、組織図、労務管理に関わっていない証拠、新人の採用に関わっていない証拠、労働時間を自由に決めることができない証拠、給与明細などを集めていきます。
残業代については、3年の時効にかかっていない範囲で、退職した後に遡って請求することもできますので、請求するときのために準備をしておくといいでしょう。
以下の記事で名ばかり管理職の証拠として集めていただきたいものを整理しています。
手順2:弁護士に相談する
管理職になり給与が下がった場合の対処法の2つ目は、弁護士に相談することです。
管理監督者に該当するかどうかについては、法的な事項であり、弁護士に見通した相談したうえで、方針を決めるべきだからです。
また、不足している証拠や事案に応じて集めてほしい証拠なども助言してもらうことができます。
そのため、管理職になって給与が下がってしまった場合には、弁護士に相談するのがおすすめです。
ただし、弁護士であれば誰でもいいというわけではなく、専門性が高い分野となりますので、管理職の残業代問題に実績のある弁護士を探すといいでしょう。
手順3:残業代を請求する
管理職になり給与が下がった場合の対処法の3つ目は、残業代を請求することです。
内容証明郵便により、未払いの残業代があるため請求する旨を通知しましょう。
これによって時効を一時的に止めることができ、6か月間の猶予ができます。
この間に正確な未払い残業代金額を計算し、話し合いで解決することができるかどうか交渉することになります。
併せて、会社側が持っている証拠で必要なものがあれば、開示を求めるといいでしょう。
手順4:労働審判・訴訟を提起する
管理職になり給与が下がった場合の対処法の4つ目は、労働審判・訴訟を提起することです。
話し合いにより解決することが難しい場合には、裁判所を用いた解決を検討しましょう。
労働審判というのは、全3回の期日で調停を目指すものであり、調停が成立しない場合には裁判所が一時的な判断を下すものです。
労働審判については、以下の記事で詳しく解説しています。
訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。
残業代の訴訟については、以下の記事で詳しく解説しています。
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とくに管理職の場合には、管理監督者性についての見通しを分析したうえで、有利な証拠や反論を準備することが成功の鍵となります。
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まとめ
以上のとおり、今回は、管理監督者の給与逆転現象とは何かを説明したうえで、管理職で給与が下がるケースと、一般職との給与差の目安を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・管理監督者の給与逆転現象とは、管理職になったことで、一般職の頃よりも、お給料が下がってしまうことを言います。
・管理職で給与が下がるケースは以下の2つです。
ケース1:一般職の時に残業代が多かったケース
ケース2:管理職になり残業が増えたケース
・管理職と一般職の給与差としては、一般職の方が残業をしてももらえないほどの固定給料をもらっていることが目安です。
・給与が逆転したら直ちに名ばかり管理職と言えるわけではありませんが、管理監督者に該当しない方向の重要な事実の一つとなります。
・管理職になって給与が下がった場合には、以下の手順で対処していきましょう。
手順1:名ばかり管理職の証拠を集めておく
手順2:弁護士に相談する
手順3:残業代を請求する
手順4:労働審判・訴訟を提起する
この記事が管理職になって給与が下がってしまい困っている労働者の方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。