不当解雇・退職扱い

懲戒解雇でも失業保険はもらえる!いつから・いくらの金額かを解説

懲戒解雇でも失業保険はもらえる!

懲戒解雇されてしまい、いつから・いくらの失業保険をもらうことができるのか不安に感じていませんか?

懲戒解雇されてしまうと、賃金が支払われなくなり、会社によっては退職金も支払わないなどと言ってくることがありますので、生活が心配ですよね。

まず、懲戒解雇された場合でも、失業保険をもらうことができますのでご安心ください

しかし、懲戒解雇の場合には、重責解雇として自己都合退職として扱われてしまうことがあります

この場合には、以下の3つの点において、不利益に扱われてしまうことがあります。

・失業保険を受給するために必要な加入期間が長くなる
・失業保険をもらえるまで待つ期間が長くなる
・失業保険をもらえる給付日数が短くなる傾向にある

また、失業保険は何もせずにもらえるものではありませんので、これを受給するには手続きが必要です

更に、あなたが懲戒解雇された場合にもらえる可能性のあるお金は、失業保険だけではありません

退職金や未払い残業代など、会社に対して請求できる可能性のあるお金がいくつかあります。

今回は、懲戒解雇でも失業保険をもらえることについて説明した上で、具体的な給付の内容や金額について解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事を読めば、懲戒解雇でも失業保険をもらえることやその内容がよくわかるはずです。

 

 

 

懲戒解雇でも失業保険はもらえる

会社から懲戒解雇された場合であっても、失業保険はもらうことができます

なぜなら、失業保険を受給できるかどうかに関して、懲戒解雇かどうかは問題とされていないためです。

懲戒解雇された場合であっても、あなたが失業している状態であることに違いはないため、受給条件さえ満たせば、失業保険を受給することが可能です

そのため、懲戒解雇されてしまったからといって、失業保険の受給をあきらめる必要はありません。

ただし、懲戒解雇の場合には、普通解雇の場合と異なり、失業保険の受給につき不利益に扱われてしまう可能性がありますので、以下で一緒に確認していきましょう。

懲戒解雇だと失業保険は自己都合になる?|まずは重責解雇かを確認

懲戒解雇だと失業保険の受給につき、自己都合退職として、不利益に扱われてしまうことがあります

しかし、懲戒解雇の場合に常に自己都合退職とされてしまうわけではありません

実は、懲戒解雇された場合であっても、自己都合退職として不利益に扱われるのは、重責解雇と呼ばれる特に悪質性の高いケースに限定されていますハローワークインターネットサービス 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要参照)。

重責解雇とそれ以外の解雇

具体的には、以下の7つのケースでは、重責解雇に該当します。

ケース1:刑法や職務に関連する法令に違反して処罰を受けたケース
ケース2:故意又は重過失により設備又は器具を破壊したケース
ケース3:故意又は重過失により会社の信用を失墜させ又は損害を与えたケース
ケース4:労働協約又は労働基準法に基づく就業規則に違反したケース
ケース5:会社の機密を漏らしたケース
ケース6:会社の名をかたり、利益を得又は得ようとしたケース
ケース7:他人の名を詐称し、又は虚偽の陳述をして就職したケース

つまり、懲戒解雇であっても、上記7つのケースに該当せず、重責解雇ではない場合もあるのです

しかし、会社によっては、本当に重責解雇に該当するのかを十分に検討せずに、重責解雇に該当するものとチェックしていることがあります

あなたが会社から離職票を交付された場合には、以下の画像を参考に重責解雇にチェックされていないか確認してください。

離職票-2 重責解雇

もしも、上記7つのケースに該当しないにもかかわらず、重責解雇にチェックされている場合には、ハローワークに異議を述べるようにしましょう。

以上のとおり、懲戒解雇の場合に、必ずしも重責解雇(=自己都合退職)となるわけではありません。

~横領による懲戒解雇だと失業保険はどうなる?~

横領による懲戒解雇については、ケース1の刑法に違反して処罰を受けたケース又はケース3の故意により損害を与えたケースとして、重責解雇となる可能性が高いでしょう。

そのため、横領による懲戒解雇の場合であっても、失業保険を受給することはできますが、自己都合退職として不利益に扱われてしまう部分があります。

 

懲戒解雇の場合に失業保険を受給するのに必要な加入期間

懲戒解雇の場合に失業保険を受給するのに必要な加入期間は、「重責解雇」か「それ以外の解雇」かにより異なります。

懲戒解雇の場合に必要な加入期間重責解雇の場合には、失業保険の受給の要件は、原則として、離職前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上あることが必要となります

これに対して、それ以外の解雇の場合には、失業保険の受給要件は、離職前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上必要となります

つまり、重責解雇とされる場合には、失業保険を受給するために必要な被保険者期間が長くなりますので、その点で不利益と言えます。

懲戒解雇の失業保険の給付はいつから?

懲戒解雇の場合の失業保険の給付開始時期については、「重責解雇」か「それ以外の解雇か」により異なります。

失業保険受給開始時期重責解雇の場合には、7日の待期期間の後に、3か月間の給付制限期間があります。そのため、受給を開始できるのは、これらの期間の後になります

それ以外の解雇の場合には、7日の待期期間の後に、給付制限期間はありません。そのため、7日の待期期間満了後に失業の認定がされれば、すぐに失業保険をもらうことができます

 

懲戒解雇の失業保険の給付日数(期間)はどのくらい?

懲戒解雇の場合の失業保険の給付日数(期間)は、「重責解雇」か「それ以外の解雇か」により異なります。

重責解雇の場合には、給付日数は、雇用保険の加入期間により、以下のとおり90日~150日です

重責解雇と失業保険の給付日数

それ以外の解雇の場合には、給付日数は、年齢と雇用保険の加入期間により90日~330日です

それ以外の解雇と失業保険の給付日数

懲戒解雇の場合の失業保険の金額はいくら?

懲戒解雇であっても、失業保険で受給できる1日あたりの金額自体は、普通解雇の場合と異なりません。

おおよそ以下の計算式により算定します。

失業保険の受給金額の計算式

 

懲戒解雇の場合の失業保険の受給手続|ハローワークへ行こう

会社から懲戒解雇された場合に失業保険を受給するには手続きが必要です

失業保険は何もせずに受給できるものではありません。

具体的には、失業保険を受給するためには、ハローワークに行き、以下のような手続きを行う必要があります。

手続1:ハローワークでの求職の申し込み
手続2:雇用保険説明会
手続3:失業の認定
手続4:失業保険の受給

失業保険を受給する流れ

それでは各手続きについて、順番に説明していきます。

手続1:ハローワークでの求職の申し込み

まず、失業保険を受給するためには、自己の居住地を管轄するハローワークで求職の申し込みをする必要があります。

離職票を提出して、受給資格の決定を受けましょう。

その際には、以下の物を持参するようにしましょう。

・印鑑
・雇用保険被保険者証
・本人確認書類
・預金通帳

手続2:雇用保険説明会

求職の申し込みをすると、その2~3週間後に雇用保険説明会があります。

職員の方から、雇用保険制度等の説明を受けることになります。

手続3:失業の認定

ハローワークの長は、受給資格を認めたときは、失業の認定日を定めて、雇用保険受給資格者証に必要な事項を記載した上で、交付をします。

解雇された方は、原則として4週間に1回程度、認定日ごとに出頭して、失業の認定を受ける必要があります。

手続4:失業保険の受給

失業の認定を受けると、5~7日後に、指定した口座に失業保険の振り込みがされることになります。

失業保険以外にもらえる可能性のあるお金5つ

懲戒解雇をされてしまった場合には、失業保険以外にも、もらえる可能性があるお金があります。

具体的には、もらえる可能性があるお金としては、以下の5つがあります。

・解雇予告手当
・退職金
・解雇後の賃金
・慰謝料
・未払い残業代

順番に説明していきます。

解雇予告手当

懲戒解雇をされた場合にもらえる可能性のあるお金の1つ目は、解雇予告手当です。

会社は、解雇する際には、本来30日以上前に解雇の予告をする必要があります。

解雇予告手当とは、予告期間に足りない日数分の平均賃金を手当として支給しなければならないものです。

しかし、会社は、懲戒解雇の場合には、例外的に解雇予告手当を支給しなくていい「労働者の責めに帰すべき事由」に該当すると主張して、支払い拒むことがよくあります

もっとも、本来は、懲戒解雇の場合に、必ず「労働者の責めに帰すべき事由」に該当するとは限らず、個別の事案に応じて、解雇予告なしに解雇されてもやむを得ないかが判断されています

そのため、懲戒解雇の場合であっても、解雇予告手当を請求できる場合があるのです。

解雇予告手当については、以下の記事で詳しく解説しています。

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退職金

懲戒解雇をされた場合にもらえる可能性のあるお金の2つ目は、退職金です。

会社によっては、退職金規程に懲戒解雇の場合には退職金を支給しないとの規定を設けている場合があります。

このことから、懲戒解雇であることを理由に退職金の支給を拒まれることがよくあります

しかし、このような規定がある場合であっても、常に退職金の支給を拒むことができるわけではありません。

裁判例では、不支給が許されるのは著しく信義に反する行為があった場合に限定されています

そのため、懲戒解雇をされた場合であっても、退職金を請求できる可能性があります。

懲戒解雇の場合の退職金については、以下の記事で詳しく解説しています。

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解雇後の賃金

懲戒解雇をされた場合に請求できる可能性のあるお金の3つ目は、解雇後の賃金です。

懲戒解雇は、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当といえない場合には、懲戒権の濫用として無効となります

懲戒解雇が無効となる場合には、解雇後にあなたが会社で働くことができない原因は、会社にあることになります。

そのため、懲戒解雇の無効が確認された際に、解雇後解決までの期間の賃金を事後的に払ってもらうことができるのです

例えば、懲戒解雇の無効を争い解決に1年の期間を要した場合には、その期間働いていなかったとしても、後から1年分の賃金を支払ってもらえることになります。

解雇後の給料(不当解雇の裁判)バックペイ(解雇後の賃金)については、以下の動画でも詳しく解説しています。

そのため、懲戒解雇をされた場合であっても、解雇後の賃金を請求できる可能性があります。

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慰謝料

懲戒解雇をされた場合に請求できる可能性のあるお金の4つ目は、慰謝料です。

懲戒解雇が濫用となるにとどまらず、その悪質性が特に高い場合に認められることがあります。

不当解雇で慰謝料が認められる場合の相場は、50万円~100万円程度です。

そのため、懲戒解雇をされた場合であっても、慰謝料を請求できる可能性があります。

不当解雇の慰謝料については、以下の記事で詳しく解説しています。

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未払い残業代

懲戒解雇をされた場合に請求できる可能性のあるお金の5つ目は、未払い残業代です。

懲戒解雇が有効か無効かにかかわらず、未払いの残業代があれば、これを請求することができます。

あなたが会社を退職することになった後であっても、あなたが残業した事実がなくなるわけではありませんので未払い残業代はなくなりません

あなたの未払い残業代のおおよその金額については、以下の残業代チェッカーで簡単に確認することができます。

ただし、残業代には時効がありますので請求する場合には早めに行動するようにしましょう。

退職後の残業代請求については、以下の記事で詳しく解説しています。

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懲戒解雇された場合には弁護士に相談しよう!

あなたが懲戒解雇をされた場合には、弁護士に相談することがおすすめです。

弁護士に相談すれば、あなたの懲戒解雇が不当なものではないかを確認してもらうことができます。

実際、多くの会社で行われている懲戒解雇は、その条件を満たしていない不当なものです

万が一、懲戒解雇が有効であっても、退職金や解雇予告手当、未払い残業代などを請求することができる可能性があります

初回無料相談を利用すれば費用をかけずに相談することができますので、これを利用するデメリットは特にありません。

そのため、懲戒解雇された場合には、弁護士に相談するようにしましょう。

まとめ

以上のとおり、今回は、懲戒解雇でも失業保険をもらえることについて説明した上で、具体的な給付の内容や金額について解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

・会社から懲戒解雇された場合であっても、失業保険はもらうことができます。

・懲戒解雇された場合であっても、自己都合退職として不利益に扱われるのは、重責解雇と呼ばれる特に悪質性の高いケースに限定されています。
⑴重責解雇の場合には、失業保険の受給の要件は、原則として、離職前2年間に被保険者期間が12か月以上あることが必要となります。
⑵重責解雇の場合には、7日の待期期間の後に、3か月間の給付制限期間があります。
⑶重責解雇の場合には、給付日数は、雇用保険の加入期間により、以下のとおり90日~150日です。

・失業保険を受給するためには、ハローワークに行き、以下のような手続きを行う必要があります。
手続1:ハローワークでの求職の申し込み
手続2:雇用保険説明会
手続3:失業の認定
手続4:失業保険の受給

・失業保険以外にもらえる可能性がるお金としては、以下の5つがあります。
①解雇予告手当
②退職金
③解雇後の賃金
④慰謝料
➄未払い残業代

この記事が懲戒解雇されてしまい失業保険を受給できるか悩んでいる方の助けになれば幸いです。

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弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、区民ニュース2023年8月21日
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