2019年に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が成立しました。これによって、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」が改正され、職場におけるパワーハラスメント防止対策が事業主に義務付けられることになります。
また、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法について、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントに係る規定が一部改正され、これらの防止対策が強化されることになります。
今回は、パワハラ対策の義務化やセクハラ等の対策の強化について解説します。
パワーハラスメントの実態
パワーハラスメントを受けたことがある者の推移
平成28年の厚生労働省が実施した「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間のパワーハラスメントの経験について、「パワーハラスメントを受けたことがある」と回答した者は、「32.5%」とされています。平成24年の調査では、「25.3%」ですから、平成28年の調査ではこれを上回っていることになります。
パワーハラスメントを受けたと感じた後の勤務先の対応の推移
平成28年の厚生労働省が実施した「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」によると、パワーハラスメントを受けたと感じた者が社内の担当部署や相談窓口等に相談した場合の勤務先の対応をみると、以下のとおりとなっています。
【平成28年度実態調査】
これに対して、平成24年度の調査では、以下のとおりとなっていました。
【平成24年度実態調査】
上記の調査からは、「特に何もしなかった」の比率は、「20.7%」から「18.3%」に減少しているものの、未だ十分な対応がとられているとはいい難い状況です。
パワーハラスメント対策の義務化
パワーハラスメントの定義
職場におけるパワーハラスメントとは、①「優越的な関係を背景とした言動であって」、②「業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより」、③「労働者の就業環境が害されるもの」をいいます。
かかる内容につき、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)は、更に具体的に告示しています。
⑴ 「職場」
「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、「職場」に含まれます。
⑵ ①「優越的な関係を背景とした言動」
「優越的な関係を背景とした」言動とは、当該事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が当該言動の行為者とされる者(以下「行為者」という。)に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指し、例えば以下のもの等が含まれます。
・職務上の地位が上位の者による言動
・同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
・同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
⑶ ②「業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより」
「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものを指し、例えば、以下のもの等が含まれます。
・業務上明らかに必要性のない言動
・業務の目的を大きく逸脱した言動
・業務を遂行するための手段として不適当な言動
・当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
この判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者との関係性等)を総合的に考慮することが適当です。また、その際には、個別の事案における労働者行動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導の態様等の総体的な関係性が重要な要素となります。
⑷ ③「労働者の就業環境が害されるもの」
「労働者の就業環境が害される」とは、当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当です。
<パワハラの類型とパワハラに該当する例・しない例>
「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)は、パワハラの類型ごとにパワハラに該当する例としない例を以下のように挙げています。なお。個別の事案の状況等によっては判断が異なる場合もあり、またこれらは限定列挙ではないとされています。
イ 身体的な攻撃(暴行・傷害)
(イ)該当すると考えられる例
①殴打、足蹴りを行うこと
②相手に物を投げつけること。
(ロ)該当しないと考えられる例
①誤ってぶつかること
ロ 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
(イ)該当すると考えられる例
①人格を否定するような言動を行うこと。相手方の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む
②業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。
③他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと
④相手方の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信すること
(ロ)該当しないと考えられる例
①遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意すること
②その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。
ハ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(イ)該当すると考えられる例
①自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。
②一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。
(ロ)該当しないと考えられる例
①新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施すること。
②懲戒規程に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。
二 過大な要求(業務上明らかに不要な事や遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
(イ)該当すると考えられる例
①長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること
②新卒採用者に対し、必要な苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること。
③労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。
(ロ)該当しないと考えられる例
①労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること
②業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること
ホ 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(イ)該当すると考えられる例
①管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。
②気に入らない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。
(ロ)該当しないと考えられる例
①労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。
②労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと。
事業主等の責務
事業主は、労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければなりません。また、事業主は、自らも労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければなりません。
労働者は、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる措置に協力するように努めなければなりません。
<施行期日>
施行期日は、令和2年6月1日です。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律30条の3(国、事業主及び労働者の責務)
1「国は、労働者の就業環境を害する前条第1項に規定する言動を行つてはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「優越的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。」
2「事業主は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。」
3「事業主(その者が法人である場合にあつては、その役員)は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。」
4「労働者は、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第1項の措置に協力するように努めなければならない。」
雇用管理上の措置
事業主は、パワハラに関する労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。そして、必要な措置の内容については、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)が告示されています。
⑴ 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
事業主は、職場におけるパワーハラスメントに関する方針の明確化、労働者に対するその方針の周知・啓発として、次の措置を講じなければなりません。
ア 職場におけるパワーハラスメントの内容及び職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
→例1 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること。
→例2 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を記載し、配布等すること。
→例3 職場におけるパワーハラスメントの内容及びその発生の原因や背景並びに職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施すること
イ 職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
→例1 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること
→例2 職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者は、現行の就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、これを労働者に周知・啓発すること
⑵ 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
事業主は、労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ、適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、次の措置を講じなければなりません。
ア 相談への対応のための窓口(以下「相談窓口」という。)をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
→例1 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること。
→例2 相談に対応するための制度を設けること
→例3 外部の機関に相談への対応を委託すること。
イ アの相談窓口の担当者が相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、相談窓口においては、被害を受けた労働者が委縮するなどして相談を躊躇する例もあること等を踏まえ、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止め等その認識にも配慮しながら、職場におけるパワーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるパワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。
→例1 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。
→例2 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。
→例3 相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと。
⑶ 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
事業主は、職場におけるパワーハラスメントに係る相談の申出があった場合において、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処として、次の措置を講じなければなりません。
ア 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること
→例1 相談窓口の担当者、人事部門又は専門の委員会等が、相談者及び更衣者の双方から事実関係を確認すること。その際、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮すること。
また、相談者と行為者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずること。
→例2 事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などにおいて、法第30条の6に基づく調停の申請を行うことその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねること。
イ アにより職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害を受けた労働者(以下「被害者」という。)に対する配慮のための措置を適正に行うこと。
→例1 事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者又は事実上ない産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずること。
→例2 法第30条の6に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対して講ずること。
ウ イにより、職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこと。
→例1 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者について厳正に対処する旨の方針を、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に改めて掲載し、配布等すること。
→例2 労働者に対して職場におけるパワーハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施すること。
⑷ ⑴から⑶までの措置と併せて講ずべき措置
⑴から⑶までの措置を講ずるに際しては、併せて次の措置を講じなければなりません。
ア 職場におけるパワーハラスメントに係る相談者・行為者等の情報は当該相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又は当該パワーハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。なお、相談者・行為者等のプライバシーには、性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれるものであること。
→例1 相談者・行為者等のプライバシー保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、当該マニュアルに基づき対応するものとすること。
→例2 相談者・行為者等のプライバシーの保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行うこと。
→例3 相談窓口においては相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に掲載し、配布等すること。
イ 法30条の2第2項、第30条の5第2項及び第30条の6第2項の規定を踏まえ、労働者が職場におけるパワーハラスメントに関し相談をしたこともしくは事実関係の確認等の事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと、都道府県労働局に対して相談、紛争解決の援助を求めもしくは調停の申請を行ったこと、又は調停の出頭の求めに応じたこと(以下「パワーハラスメントの相談等」という。)を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
→例1 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、パワーハラスメントの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発すること
→例2 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に、パワーハラスメントの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取り扱いをされない旨を記載し、労働者の配布等すること。
<施行期日>
施行期日は、令和2年6月1日です。
ただし、中小企業主は、令和4年3月31日までは努力義務とされています。
<行うことが望ましい取り組み>
事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関し行うことが望ましい取り組みの内容としては、以下のものが挙げられます。
⑴ 職場におけるパワーハラスメントは、セクシュアルハラスメント、妊娠、出産等に関するハラスメント、育児休業等に関するハラスメント、その他のハラスメントと複合的に生じることも想定されることから、事業主は、例えば、セクシュアルハラスメント等の相談窓口と一体的に、職場におけるパワーハラスメントの相談窓口を設置し、一元的に相談に応じることのできる体制を整備すること
⑵ 事業主は、職場におけるパワーハラスメントの原因や背景となる要因を解消するため、①コミュニケーションの活性化や円滑化のために研修等の必要な取り組みを行うこと、②適正な業務目標の設定等の職場環境の改善のための取組を行うこと。
⑶ 事業主は、雇用管理上の措置を講じる際に、必要に応じて、労働者や労働組合等の参画を得つつ、アンケート調査や意見交換等を実施するなどにより、その運用状況の的確な把握や必要な見直しの検討等に努めること。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律30条の2(雇用管理上の措置等)
1「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者から相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」
3「厚生労働大臣は、前2項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において「指針」という。)を定めるものとする。」
4「厚生労働大臣は、指針を定めるに当たつては、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴くものとする。」
5「厚生労働大臣は、指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。」
6「前2項の規定は、指針の変更について準用する。」
相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
労働者が相談等を行うことに躊躇することがないよう、労働者がパワーハラスメント等に関して事業主に相談したこと等を理由とした不利益取り扱いが禁止されています。
<施行期日>
施行期日は、令和2年6月1日です。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律30条の2(雇用管理上の措置等)
2「事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」
紛争解決の援助・調停、措置義務等の履行確保
パワーハラスメントに関する労使紛争について、都道府県労働局長による紛争解決援助、紛争調整員会による調停の対象とするとともに、措置義務等について履行確保のための規定が整備されました。
<施行期日>
施行期日は、令和2年6月1日です。
ただし、中小企業主は、措置義務については、令和4年3月31日までは対象外とされています。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律30条の4(紛争の解決の促進に関する特例)
「第30条の2第1項及び第2項に定める事項についての労働者と事業主との間の紛争については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律…第4条、第5条及び第12条から第19条までの規定は適用せず、次条から第30条の8までに定めるところによる。」
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律30条の5(紛争の解決の援助)
1「都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。」
2「第30条の2第2項の規定は、労働者が前項の援助を求めた場合について準用する。」
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律30条の6(調停の委任)
1「都道府県労働局長は、第30条の4に規定する紛争について、当該紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があつた場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第6条第1項の紛争調整委員会に調停を行わせるものとする。」
2「第30条の2第2項の規定は、労働者が前項の申請をした場合について準用する。」
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律30条の7(調停)
「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律…第19条から第26条までの規定は、前条第1項の調停の手続について準用する。この場合において、同法第19条第1項中『前条第1項』とあるのは『労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律…第30条の6第1項』と、同法第20条中『事業場』とあるのは『事業所』と、同法第25条第1項中『第18条第1項』とあるのは『労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第30条の4』と読み替えるものとする。」
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律30条の8(厚生労働省令への委任)
「前2条に定めるもののほか、調停の手続に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。」
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律33条(助言、指導及び勧告並びに公表)
1「厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、助言、指導又は勧告をすることができる。」
2「厚生労働大臣は、第30条の2第1項及び第2甲(第30条の5第2項及び第30条の6第2項において準用する場合を含む。第35条及び第36条第1項において同じ。)の規定に違反している事業主に対し、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる。」
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律35条(資料の提出の要求等)
「厚生労働大臣は、この法律(第27条第1項、第28条第1項並びに第30条の2第1項及び第2項を除く。)を施工するために必要があると認めるときは、事業主に対して、必要な資料の提出及び説明を求めることができる。」
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律36条(報告の要求)
1「厚生労働大臣は、事業主から第30条の2第1項及び第2項の規定の施行に関し必要な事項について報告を求めることができる。」
2「都道府県知事又は公共職業安定所長は、職業転換給付金の支給を受け、又は受けた者から当該給付金の支給に関し必要な事項について報告を求めることができる。」
セクシュアルハラスメント防止対策の強化
責務の明確化
セクシュアルハラスメント等を行ってはならないこと等に対する関心と理解を深めることや、他の労働者に対する言動に注意を払うことを等が関係者の責務として明記されました。
<施行期日>
施行期日は、令和2年6月1日です。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律11条の2(職場における性的な言動に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務)
1「国は、前条第1項に規定する不利益を与える行為又は労働者の就業環境を害する同項に規定する言動を行つてはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「性的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。」
2「事業主は、性的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。」
3「事業主(そのものが法人である場合にあつては、その役員)は、自らも性的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。」
4「労働者は、性的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第1項の措置に協力するように努めなければならない。」
相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
労働者が相談等を行うことに躊躇することがないよう、労働者がセクシュアルハラスメント等に関して事業主に相談したこと等を理由とした不利益取り扱いが禁止されています。
<施行期日>
施行期日は、令和2年6月1日です。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律11条(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
2「事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」
自社の労働者等が他社の労働者にセクシュアルハラスメントを行った場合の協力対応
事業主に対し、他者から雇用管理上の措置の実施(事実確認等)に関して必要な協力を求められた場合に、これに応じることが努力義務とされました。
<施行期日>
施行期日は、令和2年6月1日です。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律11条(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
3「事業主は、他の事業主から当該事業主の講ずる第1項の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には。これに応ずるように努めなければならない。」
調停の出頭・意見聴取の対象者の拡大
セクシュアルハラスメント等の調停制度について、紛争調整委員会が必要と認めた場合には、関係当事者の同意の有無にかかわらず、職場の同僚等も参考人として出頭の求めや意見聴取が行えるよう、対象が拡大されました。
<施行期日>
施行期日は、令和2年6月1日です。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律16条(紛争の解決の促進に関する特例)
「第5条から第7条まで、第9条、第11条第1項及び第2項(第11条の3第2項において準用する場合を含む。)、第11条の3第1項、第12条並びに第13条第1項に定める事項についての労働者と事業主との間の紛争については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律…第4条、第5条及び第12条から第19条までの規定は適用せず、次条から第27条までに定めるところによる。」
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律17条(紛争の解決の援助)
2「第11条第2項の規定は、労働者が前項の援助を求めた場合について準用する。」
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律18条(調停の委任)
2「第11条第2項の規定は、労働者が前項の申請をした場合について準用する。」
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律20条
「委員会は、調停のため必要があると認めるときは、関係当事者又は関係当事者と同一の事業場に雇用される労働者その他の参考人の出頭を求め、その意見を聴くことができる。」
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律30条(公表)
「厚生労働大臣は、第5条から第7条まで、第9条第1項から第3項まで、第11条第1項及び第2項(第11条の3第2項、第17条第2項及び第18条第2項において準用する場合を含む。)、第11条の3第1項、第12条並びに第13条第1項の規定に違反している事業主に対し、前条第1項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。」
参考リンク
事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)
平成28年度厚生労働省委託事業「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」
厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!