自分が勤めている会社が労働基準法に違反しているのではないかと悩んでいませんか?
労働環境が悪いと法律に違反しているのではないか、罰則はないのかと気になりますよね。
よくある事例だと以下のようなケースが挙げられ、労働基準法違反として罰則が定められています。
しかし、会社が労働基準法に違反していたからといって、直ちに罰則が科されて状況が改善するわけではありません。
なぜなら、ほとんどの労働基準法違反については、表面化することなく見過ごされてしまうためです。
あなたが現在の職場環境に問題があると感じているのであれば、社長や人事担当者に労働基準法に違反しているとしっかり知らせる必要があります。
そして、社長や人事担当者に是正の様子がないようであれば、労働基準監督者や弁護士、労働組合への相談を行うべきです。
実は、近年、このような労働基準法違反の相談が非常に多くなっており、労働者の関心も高まってきています。
この記事をとおして、どのような場合に労働基準法違反になるのか、労働基準法違反に気が付いたらどのように対処していけばいいのかを知っていただければと思います。
今回は、労働基準法違反となる事例12個を紹介したうえで、罰則と告発・通報方法と相談先3つを解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、労働基準法違反に直面した場合にどうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次
- 1 よくある労働基準法違反となる事例12個
- 1.1 事例1:労働条件が明示されないケース|労働基準法15条違反
- 1.2 事例2:違約金を定めるケース|労働基準法16条
- 1.3 事例3:解雇予告違反となるケース|労働基準法20条違反
- 1.4 事例4:賃金の全部又は一部が支払われないケース|労働基準法24条違反
- 1.5 事例5:賃金額が最低賃金に満たないケース|労働基準法28条違反
- 1.6 事例6:法定労働時間を超えるケース|労働基準法32条違反
- 1.7 事例7:休憩時間が与えられないケース|労働基準法34条違反
- 1.8 事例8:週に1日の休日がないケース|労働基準法35条違反
- 1.9 事例9:残業代が支払われないケース|労働基準法37条違反
- 1.10 事例10:年次有給休暇が与えられないケース|労働基準法39条違反
- 1.11 事例11:10人以上の職場で就業規則がないケース|労働基準法89条違反
- 1.12 事例12:タイムカードや勤怠記録がないケース|労働基準法109条
- 2 労働基準法違反の罰則
- 3 労働基準法違反の就業規則や雇用契約の効力
- 4 労働基準法違反の相談先3つ
- 5 労働基準法違反の通報・告発方法
- 6 まとめ
よくある労働基準法違反となる事例12個
労働基準法は、全121条にわたり会社が守るべき労働基準を定めており、幅広い内容が規定されています。
そのため、どのような行為が労働基準法違反となるのかすべてを列挙しようとすると膨大な量となってしまいます。
もっとも、実際に問題となることの多い労働基準法違反の事例に限定すると、以下の12個を例として挙げることができます。
事例1:労働条件が明示されないケース|労働基準法15条違反
事例2:違約金を定めるケース|労働基準法16条
事例3:解雇予告違反となるケース|労働基準法20条違反
事例4:賃金の全部又は一部が支払われないケース|労働基準法24条違反
事例5:賃金額が最低賃金に満たないケース|労働基準法28条違反
事例6:法定労働時間を超えるケース|労働基準法32条違反
事例7:休憩時間が与えられないケース|労働基準法34条違反
事例8:週に1日の休日がないケース|労働基準法35条違反
事例9:残業代が支払われないケース|労働基準法37条違反
事例10:年次有給休暇が与えられないケース|労働基準法39条違反
事例11:10人以上の職場で就業規則がないケース|労働基準法89条違反
事例12:タイムカードや勤怠記録がないケース|労働基準法109条
それでは各事例について順番に紹介していきます。
事例1:労働条件が明示されないケース|労働基準法15条違反
労働基準法違反の事例の1個目は、労働条件が明示されないケースです。
会社は、労働契約を締結する際に、労働者に対して、一定の労働条件を明示しなければならないとされています(労働基準法15条1項)。
とくに以下の6つの事項については、書面を交付する方法により明示しなければなりません(労働基準法施行規則5条3項、4項本文)。
⑴ 労働契約の期間
⑵ 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
⑶ 就業の場所及び従事すべき業務
⑷ 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換
⑸ 賃金(退職手当及賞与を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給
⑹ 退職(解雇の事由を含む)
例えば、以下のような労働条件通知書が交付されることが通常です。
労働基準法15条(労働条件の明示)
1「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」
労働基準法施行規則第5条
使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。…
一「労働契約の期間に関する事項」
一の二「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」
一の三「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項」
二「始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項」
三「賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」
四「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」
四の二「退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項」
五「臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項」
六「労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項」
七「安全及び衛生に関する事項」
八「職業訓練に関する事項」
九「災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項」
十「表彰及び制裁に関する事項」
十一「休職に関する事項」
2 略
3「法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める事項は、第一項第一号から第四号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く。)とする。」
4「法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。…」
労働条件の明示については、以下の記事で詳しく解説しています。
事例2:違約金を定めるケース|労働基準法16条
労働基準法違反の事例の2個目は、違約金を定めるケースです。
会社は、労働契約の不履行について、違約金を定めたり、損害賠償額を予定したりする契約を行うことが禁止されています。
例えば、以下のような約束をさせられるケースは、労働基準法違反となります。
・遅刻をしたら違約金として2万円を請求する
・取引先からのクレームがあったら違約金として3万円を請求する
・退職した場合には違約金として10万円を請求する
・事故を起こ会社に損害を与えたら50万円を請求する
労働基準法第16条(賠償予定の禁止)
「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」
事例3:解雇予告違反となるケース|労働基準法20条違反
労働基準法違反の事例の3個目は、解雇予告違反となるケースです。
会社は、労働者を解雇する場合には、原則として、30日前に解雇の予告をしなければならず、予告をしない場合には30日以上の平均賃金を支払わなければなりません。
かみ砕いていうと、会社があなたを解雇しようとする場合には、30日前には解雇することを伝えておかなければならず、もしも予告をしない場合には30日分程度の手当を払わないといけないということです。
ただし、例外的に天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合は、解雇予告は不要とされています。
労働基準法第20条(解雇の予告)
1「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。」
解雇予告については、以下の記事で詳しく解説しています。
事例4:賃金の全部又は一部が支払われないケース|労働基準法24条違反
労働基準法違反の事例の4個目は、賃金の全部又は一部が支払われないケースです。
会社は、労働者に対して賃金を全額支払わなければならいとされています。
社会保険料や税金の源泉等の一定の事項を除き賃金から天引きを行うことは禁止されています。
また、経営が芳しくない等の理由で賃金を全額支払わないことも当然許されません。
労働基準法第24条(賃金の支払)
1「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。」
給与の未払いについては以下の記事で詳しく解説しています。
事例5:賃金額が最低賃金に満たないケース|労働基準法28条違反
労働基準法違反の事例の5個目は、賃金額が最低賃金に満たないケースです。
会社は、労働者に対して、1時間当たり最低でも一定金額の賃金を支払うことが義務付けられています。
労働基準法第28条(最低賃金)
「賃金の最低基準に関しては、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)の定めるところによる。」
例えば、令和4年度について、東京では1072円、神奈川では1071円、大阪では1023円、愛知では986円が最低賃金時間額となっています。
令和4年度の最低賃金については、以下のリンクから確認することができます。
地域別最低賃金の全国一覧 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
事例6:法定労働時間を超えるケース|労働基準法32条違反
労働基準法違反の事例の6個目は、法定労働時間を超えるケースです。
会社は、原則として、労働者を1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて働かせることはできないとされています。
労働基準法第32条(労働時間)
1「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」
2「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」
ただし、例外的に36協定により法定労働時間を超えて働かせられることを定めている場合には、上記法定労働時間を超えても違法とはなりません。
労働時間については、以下の記事で詳しく解説しています。
事例7:休憩時間が与えられないケース|労働基準法34条違反
労働基準法違反の事例の7個目は、休憩時間が与えられないケースです。
会社は、労働者に対して、6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩を与えなければなりません。
労働基準法34条(休憩)
1「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。」
休憩時間については、以下の記事で詳しく解説しています。
事例8:週に1日の休日がないケース|労働基準法35条違反
労働基準法違反の事例の8個目は、週に1日の休日がないケースです。
会社は、労働者に対して、週に1回の休日を与えなければならないとされています。
ただし、例外的に4週間を通じて4日以上の休日を与えている場合、36協定により法定休日にも労働をさせられることを定めている場合には、1週間以上の連続勤務を行わせても違法となりません。
労働基準法35条(休日)
1「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。」
2「前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。」
事例9:残業代が支払われないケース|労働基準法37条違反
労働基準法違反の事例の9個目は、残業代が支払われないケースです。
会社は、法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えて労働させた場合、法定休日に労働させた場合、深夜(午後10時~午前5時)に労働させた場合には、割増賃金を支払わなければならないとされています。
労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
1「使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」
労働基準法上の残業代に関するルールについては、以下の記事で詳しく解説しています。
事例10:年次有給休暇が与えられないケース|労働基準法39条違反
労働基準法違反の事例の10個目は、年次有給休暇が与えられないケースです。
会社は、6か月間継続勤務し、かつ、労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、10日以上の有給休暇を与えなければならないとしています。
また、1年6か月以上継続勤務した労働者に対しては、2年間は6か月を超える勤務年数1年につき1日を、それ以降は2日を10日に加算するものとされ、最大で年間20日発生することになります。
事例11:10人以上の職場で就業規則がないケース|労働基準法89条違反
労働基準法違反の事例の11個目は、10人以上の職場で就業規則がないケースです。
会社は、常時10人以上の労働者がいる事業場については、就業規則を作成して届け出なければなりません。
就業規則とは、事業場の労働者に適用される労働条件や職場規律に関する規則類のことです。
労働基準法第89条(作成及び届出の義務)
「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。…」
就業規則については、以下の記事で詳しく解説しています。
事例12:タイムカードや勤怠記録がないケース|労働基準法109条
労働基準法違反の事例の12個目は、タイムカードや勤怠記録がないケースです。
会社は、タイムカードや勤怠記録等の重要な書類を保管しておく義務があります。
裁判例は、会社は請求された場合にはタイムカードを開示する義務があるとしています(大阪地判平22.7.15労判1014号35頁[医療法人大生会事件])。
労働基準法第109条(記録の保存)
「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。」
~パワハラは労働基準法違反?~
パワハラについては、労働基準法には規定されていません。
パワハラに関して規定しているのは、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律です。
雇用主は、パワハラを防止するため雇用管理上必要な措置を講じなければならないとされています。
また、パワハラが不法行為になる場合には、民法上、慰謝料が発生することになります。
そのため、パワハラは、労働基準法の問題ではないのです。
労働基準法違反の罰則
労働基準法違反については、罰則が定められています。
労働基準法に違反した場合には、懲役や罰金といった刑が定められており、会社や社長・上司に刑罰が科されることになります。
具体的には、罰則は以下のとおりです。
・事例1:労働条件が明示されないケース|30万円以下の罰金
・事例2:違約金を定めるケース|6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金
・事例3:解雇予告違反となるケース|6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金
・事例4:賃金の全部又は一部が支払われないケース|30万円以下の罰金
・事例5:賃金額が最低賃金に満たないケース|50万円以下の罰金
・事例6:法定労働時間を超えるケース|6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金
・事例7:休憩時間が与えられないケース|6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金
・事例8:週に1日の休日がないケース|6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金
・事例9:残業代が支払われないケース|6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金
・事例10:年次有給休暇が与えられないケース|6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金
・事例11:10人以上の職場で就業規則がないケース|30万円以下の罰金
・事例12:タイムカードや勤怠記録がないケース|30万円以下の罰金
労働基準法第109条
「次の各号のいずれかに該当する者は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」
一「第三条、第四条、第七条、第十六条、第十七条、第十八条第一項、第十九条、第二十条、第二十二条第四項、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第三十六条第六項、第三十七条、第三十九条(第七項を除く。)、第六十一条、第六十二条、第六十四条の三から第六十七条まで、第七十二条、第七十五条から第七十七条まで、第七十九条、第八十条、第九十四条第二項、第九十六条又は第百四条第二項の規定に違反した者」
労働基準法第120条
「次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。」
一「第十四条、第十五条第一項若しくは第三項、第十八条第七項、第二十二条第一項から第三項まで、第二十三条から第二十七条まで、第三十二条の二第二項(第三十二条の三第四項、第三十二条の四第四項及び第三十二条の五第三項において準用する場合を含む。)、第三十二条の五第二項、第三十三条第一項ただし書、第三十八条の二第三項(第三十八条の三第二項において準用する場合を含む。)、第三十九条第七項、第五十七条から第五十九条まで、第六十四条、第六十八条、第八十九条、第九十条第一項、第九十一条、第九十五条第一項若しくは第二項、第九十六条の二第一項、第百五条(第百条第三項において準用する場合を含む。)又は第百六条から第百九条までの規定に違反した者」
最低賃金法第40条
「第四条第一項の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る。)は、五十万円以下の罰金に処する。」
~労働基準法違反と企業名の公表~
厚生労働省は、「労働基準関係法令違反に係る公表事案」として、労働基準関係法令違反に係る企業として公表された事案をリスト化しています。
「労働基準関係法令違反に係る公表事案 令和〇年」といったワードで検索すると、上位にヒットすることが多いので試してみてください。
厚生労働省のブラックリストについては、以下の記事で詳しく解説しています。
労働基準法違反の就業規則や雇用契約の効力
雇用契約や就業規則が労働基準法に違反している場合には、その部分については無効となります。
なぜなら、労働基準法は、労働条件の最低基準を定める法律なので、これよりも労働者に不利な労働条件を許さないためです。
例えば、雇用契約書や就業規則で1日の労働時間が10時間と定められていても無効となり、労働基準法に従い8時間とされることになります。
例えば、雇用契約書や就業規則で残業代を支払わないとしていても無効となり、労働基準法に従い残業代を請求することができます。
例えば、雇用契約書や就業規則で年次有給休暇は与えないとされていても無効となり、労働基準法に従い年次有給休暇を取得することができます。
労働基準法第13条(この法律違反の契約)
「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。」
労働基準法第92条(法令及び労働協約との関係)
「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。」
労働基準法違反の相談先3つ
ブラック企業の相談先については、以下のとおり複数あります。
とくに、労働基準法違反の相談先については、労働基準監督署、弁護士、労働組合のいずれかがおすすめです。
労働基準監督署は、労働基準法違反に関して相談することができ、無料で、調査や指導・是正勧告等により対処してもらうことができます。
弁護士は、地位の確認や金銭的な請求等の法的な問題を相談することができ、有料で、調査や交渉、裁判等により対処してもらうことができます。
労働組合は、労働条件や職場環境について相談することができ、有料で、団体交渉や将棋行為等により対処してもらうことができます。
無料で対応してもらいたい場合は労働基準監督署がおすすめです。他方で、有料でも、実効的な解決をしてもらいたい場合には弁護士がおすすめです。これに対して、自分も一員となり主体的に活動していきたい場合には労働組合がおすすめです。
ブラック企業の相談先については以下の記事で詳しく解説しています。
~労働基準法違反の相談先は警察ではない~
労働基準法違反の相談先は、警察ではありません。
なぜなら、労働基準法違反については労働基準監督署が扱うとされており、警察は介入しないためです。
例えば、警察に労働基準法違反を相談しても、民事不介入を理由に断られたり、よくわからないと返答されたりすることになります。
労働基準法違反の通報・告発方法
労働基準法違反を労働基準監督署に通報・告発する方法は以下のとおりです。
①事実関係と証拠を整理しておく
②労働基準監督署に面談に行く
③助言に従った上で調査や指導の報告を待つ
まず、どのような事実が何故労働基準法に違反するのかを証拠とともに整理しましょう。労働基準監督署に違反の事実が伝わらなかったり、証拠がなかったりすると動いてもらいにくいためです。
次に、労働基準監督署に面談を行きましょう。事前に連絡をしてアポイントを取っておくとスムーズです。匿名で電話するより直接実名で面談をする方が対応してもらいやすくなります。
相談をしたら、労働基準監督署の助言に従い調査や指導の報告を待ちましょう。
なお、自分が労働基準監督署に通報・告発したと会社に知られないためには、以下の3つが大切です。
・通報したことを他の従業員に言わないこと
・通報するタイミングに気を付ける
・会社内で通報の準備をしない
ブラック企業の告発については以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
以上のとおり、今回は、労働基準法違反となる事例12個を紹介したうえで、罰則と告発・通報方法と相談先3つを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・労働基準法違反となる事例12個と罰則を整理すると以下のとおりです。
・雇用契約や就業規則が労働基準法に違反している場合には、その部分については無効となります。
・労働基準法違反の相談先については、労働基準監督署、弁護士、労働組合のいずれかがおすすめです。
・労働基準法違反を労働基準監督署に通報・告発する方法は以下のとおりです。
①事実関係と証拠を整理しておく
②労働基準監督署に面談に行く
③助言に従った上で調査や指導の報告を待つ
この記事が労働基準法違反に悩んでいる方の助けになれば幸いです。