近年の産業社会の情報化・グローバル化の中で社員が自身の専門性を十分に発揮するためには、自律的な働き方を可能とする必要があります。他方で、節度のない長時間労働を抑止する必要もあり、労働者の健康・福祉を確保することが重要な課題となります。今回は、新たに2018年働き方改革関連法案として成立した(施行は2019年4月1日)高度プロフェッショナル制度について解説します。
目次
高度プロフェッショナル制度とは
高度プロフェッショナル制度とは、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として、労使委員会の決議及び労働者本人の同意を前提として、年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずることにより、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度をいいます。ホワイトカラーエグゼンプションともいわれます。
高度プロフェッショナル制度の導入に当たっては、当初、2007年2月に法案要綱化された際には、「残業代ゼロ法案」との強い批判を浴びて、国会上程が見送られました。その後、対象労働者の健康・福祉確保措置を含めて練り直され、2018年通常国会提出の働き方改革関連法案の一つとして成立した経緯があります。
高度プロフェッショナル制度のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
【企業のメリット・デメリット】
・メリット
①業務効率性が上がり残業代が削減される
・デメリット
①導入手続や導入後の管理・報告が煩雑
②成果に対する評価が不公正である場合に労働者の不満につながる
【労働者のメリット・デメリット】
・メリット
①労働時間や休暇につき柔軟な働き方が可能となる。
②成果に重点を置いて評価してもらうことができる
・デメリット
①時間をかけても成果を上げることができなかった場合には評価を得ることができない
②成果を上げるために長時間労働が必要となる可能性がある
高度プロフェッショナル制度の導入事例は、令和元年12月末時点において、わずか11件と低迷しています。
厚生労働省:高度プロフェッショナル制度に関する届出状況(令和元年度)
高度プロフェッショナル制度の要件
総論
高度プロフェッショナル制度の要件は、以下のとおりです(労働基準法41条の2)。
①労働委員会が設置された事業場において、
②当該委員会がその委員の5分の4以上の多数によって一定の事項に関する決議をし、かつ、
③使用者が厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、
④対象労働者の範囲に属する労働者であって
⑤書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意を得たものを
⑥当該事業場における対象業務に就かせたとき
労働基準法41条の2
1「賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の5分の4以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、第2号に掲げる労働者の範囲に属する労働者(以下この項において『対象労働者』という。)であつて書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意を得たものを当該事業場における第1号に掲げる業務に就かせたときは、この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。ただし、第3号から第5号までに規定する措置のいずれかを使用者が講じていない場合は、この限りでない。」
一「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この項において『対象業務』という。)」
二「この項の規定により労働する期間において次のいずれにも該当する労働者であつて、対象業務に就かせようとするものの範囲」
イ「使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること」
ロ「労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を1年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまつて支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者1人当たりの給与の平均額をいう。)の3倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。」
三「対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(この項の委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間(第5号ロ及び二並びに第6号において『健康管理時間』という。)を把握する措置(厚生労働省令で定める方法に限る。)を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。」
四「対象業務に従事する対象労働者に対し、一年間を通じ104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を当該決議及び就業規則その他これに準ずる者で定めるところにより使用者が与えること。」
五「対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずる者で定めるところにより使用者が講ずること。」
イ「労働者ごとに始業から24時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、第37条第4項に規定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。」
ロ「健康管理時間を1箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲とすること。」
ハ「1年に1回以上の継続した2週間(労働者が請求した場合においては、1年に2回以上の継続した1週間)(使用者が当該期間において、第39条の規定に夜有給休暇を与えたときは、当該有給休暇を与えた日を除く。)について、休日を与えること。」
二「健康管理時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に健康診断(厚生労働省令で定める項目を含むものに限る。)を実施すること。」
六「対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間の状況に応じた当該対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置であつて、当該対象労働者に対する有給休暇(第39条の規定による有給休暇を除く。)の付与、健康診断の実施その他の厚生労働省令で定める措置のうち当該決議で定めるものを使用者が講ずること。」
七「対象労働者のこの項の規定による同意の撤回に関する手続。」
八「対象業務に従事する対象労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。」
九「使用者は、この項の規定による同意をしなかつた対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。」
十「前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項」
2「前項の規定による届出をした使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、同項第4号から第6号までに規定する措置の実施状況を行政官庁に報告しなければならない。」
3「第38条の4第2項、第3項及び第5項の規定は、第1項の委員会について準用する。」
4「第1項の決議をする委員は、当該決議の内容が前項において準用する第38条の4第3項の指針に適合したものとなるようにしなければならない。」
5「行政官庁は、第3項において準用する第38条の4第3項の指針に関し、第1項の決議をする委員に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。」
①労使委員会
労使委員会とは
「労使委員会」とは、賃金、労働時間、その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項に関し意見を述べることを目的とする委員会をいいます。
労使委員会の委員
労使委員会の委員の半数は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者に任期を定めて指名される必要があります(労働基準法38条の4第2項第1号)。
そして、管理官監督者は、労働者側の代表委員になることはできません。
労働基準法38条の4
2「前項の委員会は、次の各号に適合するものでなければならない。」
一「当該委員の半数については、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者に厚生労働省令で定めるところにより任期を定めて指名されていること。」
労働基準法施行規則24条の2の4
「法第38条の4第2項第1号の規定による指名は、法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者以外の者について行わなければならない。」
委員会の議事の保管期間・周知
労使委員会の議事については、3年間保存しなければならず、労働者に周知しなければなりません(労働基準法38条の4第2項第2号、労働基準法施行規則24条の2の4第2項、第3項)。
労働基準法38条の4
2「前項の委員会は、次の各号に適合するものでなければならない。」
二「当該委員会の議事について、厚生労働省令で定めるところにより、議事録が作成され、かつ、保存されるとともに、当該事業場の労働者に対する周知が図られていること」
労働基準法施行規則24条の2の4
2「法第38条の4第2項第2号の規定による議事録の作成及び保存については、使用者は、労使委員会の開催の都度その議事録を作成して、これをその開催の日(法第38条の4第1項に規定する決議及び労使委員会の決議並びに第25条の2に規定する労使委員会に置ける委員の5分の4以上の多数による議決による決議が行われた会議の議事録にあつては、当該決議に係る書面の完結の日(第56条第5号の完結の日という。))から起算して3年間保存しなければならない。」
3「法第38条の4第2項第2号の規定による議事録の周知については、使用者は、労使委員会の議事録を、次に掲げるいずれかの方法によつて、当該事業場の労働者に周知させなければならない。」
一「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。」
二「書面を労働者に交付すること。」
三「磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。」
その他の要件
労使委員会は、労使委員会の招集、定足数、議事その他労使委員会の運営について必要な事項に関する規程が定められていることを要します(労働基準法38条の4第2項第3号、労働基準法施行規則24条の2の4第4項)。
労働基準法38条の4
2「前項の委員会は、次の各号に適合するものでなければならない。」
三「前2号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める要件」
労働基準法施行規則24条の2の4
4「法第38条の4第2項第3号の厚生労働省令で定める要件は、労使委員会の招集、定足数、議事その他労使委員会の運営について必要な事項に関する規程が定められていることとする。」
5「使用者は、前項の規程の作成又は変更については、労使委員会の同意を得なければならない。」
②一定の事項に関する決議(対象業務・対象労働者等)
総論
高度プロフェッショナル制度を導入するに当たり労使委員会では、以下の事項を決議する必要があります。
⑴ 対象業務
⑵ 対象労働者
⑶ 健康管理時間の把握
⑷ 休日の確保
⑸ 働きすぎ防止措置
⑹ 健康・福祉確保措置
⑺ 同意の撤回手続
⑻ 苦情処理
⑼ 不利益取扱いの禁止
⑽ その他の決議事項
上記決議をしても、⑶健康管理時間の把握、⑷休日の確保、⑸働きすぎ防止の措置のいずれかを使用者が講じていない場合には、高度プロフェッショナル制度は適用されません(労働基準法41条の2第1項但書)。
⑴対象業務
高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務を決議する必要があります。
厚生労働省令で定める業務は、以下のとおりです(労働基準法施行規則34条の2第3項)。ただし、当該業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示(業務量に比して著しく短い期限の設定その他の実質的に当該業務に従事する時間に関する指示と認められるものを含む。)を受けて行うものを除きます。
一 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
二 資産運用(指図を含む。)の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づく自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務
三 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務
四 顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務
五 新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務
労働基準法施行規則34条の2
3「法第41条の2第1項第1号の厚生労働省令で定める業務は、次に掲げる業務(当該業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示(業務量に比して著しく短い期限の設定その他の実質的に当該業務に従事する時間に関する指示を認められるものを含む。)を受けて行うものを除く。)とする。」
一「金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務」
二「資産運用(指図を含む。以下この号において同じ。)の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づく自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務。」
三「有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務」
四「顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務」
五「新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務」
⑵対象労働者
高度プロフェッショナル制度により労働する期間において次のいずれにも該当する労働者であって、対象業務に就かせようとするものの範囲を決議する必要があります。
一 使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること
二 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を1年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまって支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者1人当たりの給与の平均額をいう。)の3倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。
「厚生労働省令で定める額」は、1075万円と定められています(労働基準法施行規則34条の2第6項)。そのため、見込まれる賃金の額を1年間当たりの賃金の額に換算した額が、1075万円を下回労働者には、高度プロフェッショナル制度は適用できません。
労働基準法施行規則34条の2
6「法第41条の2第1項第2号ロの厚生労働省令で定める額は、1075万円とする。」
⑶健康管理時間の把握
対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(この項の委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間を把握する措置(厚生労働省令で定める方法に限る。)を当該決議で定めるところにより使用者が講ずることを決議する必要があります。
「厚生労働省令で定める労働時間が以外の時間」とは、休憩時間その他対象労働者が労働していない時間とされています(労働基準法施行規則34条の2第7項)。
「厚生労働省令で定める方法」とは、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法とされています。ただし、事業場外において労働した場合であって、やむを得ない理由があるときは、自己申告によることができます(労働基準法施行規則34条の2第8項)。
労働基準法施行規則34条の2
7「法第41条の2第1項第3号の厚生労働省令で定める労働時間以外の時間は、休憩時間その他対象労働者が労働していない時間とする。」
8「法第41条の2第1項第3号の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法とする。ただし、事業場外において労働した場合であつて、やむを得ない理由があるときは、自己申告によることができる。」
⑷休日の確保
対象業務に従事する対象労働者に対し、一年間を通じ104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を当該決議及び就業規則その他これに準ずる者で定めるところにより使用者が与えることを決議する必要があります。
⑸働きすぎ防止措置
対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずる者で定めるところにより使用者が講ずることを決議する必要があります。
一 労働者ごとに始業から24時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、第37条第4項に規定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。
二 健康管理時間を1箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲とすること。
三 1年に1回以上の継続した2週間(労働者が請求した場合においては、1年に2回以上の継続した1週間)(使用者が当該期間において、第39条の規定に夜有給休暇を与えたときは、当該有給休暇を与えた日を除く。)について、休日を与えること。
四 健康管理時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に健康診断(厚生労働省令で定める項目を含むものに限る。)を実施すること。
一「厚生労働省令で定める時間」は、11時間とされています(労働基準法施行規則34条の2第9項)。「厚生労働省令で定める回数」は、4回とされています(労働基準法施行規則34条の2第10項)。
二「厚生労働省令で定める時間」は、1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間について、1カ月100時間、3カ月240時間とされています(労働基準法施行規則34条の2第11項)。
四「厚生労働省令で定める要件」とは、1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間が1カ月当たり80時間を超えたこと又は対象労働者から申出があったこととされています(労働基準法施行規則34条の2第12項)。「厚生労働省令で定める項目」は、労働安全衛生規則第44条第1項第1号から第3号まで、第5号及び第8号から第11号までに掲げる項目(同項第3号に掲げる項目にあっては、視力及び聴力の検査を除く)、労働安全衛生規則第52条の4各号に掲げる事項の確認とされています(労働基準法施行規則34条の2第13項)。
労働基準法施行規則34条の2
9「法第41条の2第1項第5号イの厚生労働省令で定める時間は、11時間とする。」
10「法第41条の2第1項第5号イの厚生労働省令で定める回数は、4回とする。」
11「法第41条の2第1項第5号ロの厚生労働省令で定める時間は、1週間当たりの健康管理時間(同項に規定する健康管理時間をいう。以下この条及び次条において同じ。)が40時間を超えた場合におけるその超えた時間について、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める時間とする。」
一「1箇月 100時間」
二「3箇月 240時間」
12「法第41条の2第1項第5号二の厚生労働省令で定める要件は、1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間が1箇月当たり80時間を超えたこと又は対象労働者からの申出があつたこととする。」
13「法第41条の2第1項第5号二の厚生労働省令で定める項目は、次に掲げるものとする。」
一「労働安全衛生規則…第44条第1項第1号から第3号まで、第5号及び第8号から第11号までに掲げる項目(同項第3号に掲げる項目にあつては、視力及び聴力の検査を除く。)」
二「労働安全衛生規則第52条の4各号に掲げる事項の確認」
⑹健康・福祉確保措置
対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間の状況に応じた当該対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置であって、当該対象労働者に対する有給休暇(第39条の規定による有給休暇を除く。)の付与、健康診断の実施その他の厚生労働省令で定める措置のうち当該決議で定めるものを使用者が講ずることを決議する必要があります。
労働基準法施行規則34条の2
14「法第41条の2第1項第6号の厚生労働省令で定める措置は、次に掲げる措置とする。」
一「法第41条の2第1項第5号イから二までに掲げるいずれかの措置であつて、同項の決議及び就業規則その他これに準ずる者で定めるところにより使用者が講ずることとした措置以外のもの」
二「健康管理時間が一定時間を超える対象労働者に対し、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うこといい、労働安全衛生法…第66条の8の4第1項の規定による面接指導を除く。)を行うこと」
三「対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること。」
四「対象労働者の心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること。」
五「対象労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換すること。」
六「産業医等による助言若しくは指導を受け、又は対象労働者に産業医等による保健指導を受けさせること。」
⑺同意の撤回手続
対象労働者のこの項の規定による同意の撤回に関する手続を決議する必要があります。
⑻苦情処理
対象業務に従事する対象労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずることを決議する必要があります。
⑼不利益取扱いの禁止
使用者は、この項の規定による同意をしなかった対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないことを決議する必要があります。
⑽その他の決議事項
前各号に掲げるもののほか、以下の厚生労働省令で定める事項を決議する必要があります。
一 決議の有効期間および当該決議は再度決議しない限り更新されないこと
二 労使委員会の開催頻度および開催時期
三 常時50人未満の労働者を使用する事業場である場合には、労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する医師を選任すること
四 高度プロフェッショナル制度への同意とその撤回、合意された職務内容、見込みの賃金額、健康管理時間の状況、休日確保措置の実施状況、選択的措置および健康・福祉確保措置のうち講じたもの、医師の選任等の記録を、決議の有効期間およびその満了後3年間保存しなければならないとすること
労働基準法施行規則34条の2
15「法第41条の2第1項第10号の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げるものとする。」
一「法第41条の2第1項の決議の有効期間の定め及び当該決議は再度同項の決議をしない限り更新されない旨」
二「法第41条の2第1項に規定する委員会の開催頻度及び開催時期」
三「常時50人未満の労働者を使用する事業場である場合には、労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する医師を選任すること」
四「使用者は、イからチまでに掲げる事項に関する対象労働者ごとの記録及びリに掲げる事項に関する記録を第1号の有効期間中及び当該有効期間の満了後3年間保存すること。」
イ「法第41条の2第1項の規定による同意及びその撤回」
ロ「法第41条の2第1項第2号イの合意に基づき定められた職務の内容」
ハ「法第41条の2第1項第2号ロの支払われると見込まれる賃金の額」
二「健康管理時間の状況」
ホ「法第41条の2第1項第4号に規定する措置の実施状況」
ヘ「法第41条の2第1項第5号に規定する措置の実施状況」
ト「法第41条の2第1項第6号に規定する措置の実施状況」
チ「法第41条の2第1項第8号に規定する措置の実施状況」
リ「前号の規定による医師の選任」
⑤対象労働者の同意
対象労働者の同意に関する書面その他の厚生労働省令で定める方法とは、以下の事項を明らかにした書面に対象労働者の署名を受け、当該書面の交付を受ける方法(当該対象労働者希望した場合にあっては、当該書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録の提供を受ける方法)とされています(労働基準法施行規則34条の2第2項)。
一 対象労働者が法第41条の2第1項の同意をした場合には、同項の規定により、法第4章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定が適用されないこととなる旨
二 法第41条の2第1項の同意の対象となる期間
三 前号の期間中に支払われると見込まれる賃金の額
使用者は、労働者が同意しなかった場合においても、これについて労働者に不利益な取り扱いをしてはなりません。
【書式例 高度プロフェッショナル制度に関する説明書】
※厚生労働省:「高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説」19頁
【書式例 高度プロフェッショナル制度の適用を受けることに関する同意書】
※厚生労働省:「高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説」20頁
【書式例 高度プロフェッショナル制度に関する同意の撤回申出書】
※厚生労働省:「高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説」20頁
労働基準法施行規則34条の2
2「法第41条の2第1項各号列記以外の部分に規定する厚生労働省令で定める方法は、次に掲げる事項を明らかにした書面に対象労働者(同項に規定する『対象労働者』をいう。以下同じ。)の署名を受け、当該書面の交付を受ける方法(当該対象労働者が希望した場合にあつては、当該書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録の提供を受ける方法)とする。」
一「対象労働者が法第41条の2第1項の同意をした場合には、同項の規定により、法第4章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定が適用されないこととなる旨」
二「法第41条の2第1項の同意の対象となる期間」
三「前号の期間中に支払われると見込まれる賃金の額」
労働基準監督署への報告義務
使用者は、健康管理時間の状況、休日の確保措置、働きすぎ防止措置、健康・福祉確保措置の実施状況を決議が行われた日から起算して6カ月以内ごとに労働基準監督所に報告しなければなりません。
労働基準法41条の2
2「前項の規程により届出をした使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、同項第4号から第6号までに規定する措置の実施状況を行政官庁に報告しなければならない。」
労働基準法施行規則34条の2の2
1「法第41条の2第2項の規定による報告は、同条第1項の決議が行われた日から起算して6箇月以内ごとに、様式第14号の3により、所轄労働基準監督署長にしなければならない。」
2「法第41条の2第2項の規定による報告は、健康管理時間の状況並びに同条第1項第4号に規定する措置、同項第5号に規定する措置及び同項第6号に規定する措置の実施状況について行うものとする。」
高度プロフェッショナル制度の効果
高度プロフェッショナル制度の要件を満たす場合には、労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用されません。
深夜労働に対する割増賃金も適用除外とされている点で、管理監督者等と異なります。
就業規則例
以下の、就業規則規定例が参考になります。
第〇条 高度プロフェッショナル制度は、〇〇株式会社△△事業場労使委員会の決議(以下「決議」という。)で定める対象労働者であって、決議で定める同意を得た者(以下「高プロ従事者」という。)に適用する。
② 前項の同意は、決議の有効期間ごとに個々の労働者から高度プロフェッショナル制度の適用を受けることに関する同意書に署名を得る方法によるものとする。
③ 始業・終業時刻及び休憩時間は、第〇条の所定終業時刻、所定休憩時間の規定にかかわらず、高プロ従事者の裁量により勤務時間帯、時間配分を決定するものとする。なお、使用者が、高プロ従事者の健康管理を行うため、高プロ従事者が事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間との合計の時間(以下「健康管理時間」という。)を把握する措置を講ずることから、高プロ従事者は当該健康管理時間把握に協力しなければならない。」
④ 休日は、第〇条の規定にかかわらず、年間104日以上、かつ4週を通じ4日以上与えるものとする。
⑤ 前項の休日の起算日は、高度プロフェッショナル制度の適用開始日とする。
⑥ 第4項の休日の指定は、高プロ従事者が自ら行うものとし、あらかじめ年間の休日の取得予定を決定し、使用者に通知するものとする。その際、使用者は、高プロ従事者に対し、疲労の蓄積を防止する観点から、長期間の連続勤務とならないよう休日を適切に取得することが重要であることについて、あらかじめ周知するものとする。
⑦ 使用者は、高プロ従事者に対し、労使委員会が対象業務ごとに決議した措置に応じて、次のいずれかの措置を実施することとする。高プロ従事者は、当該措置の実施に関し、協力しなければならない。
1 始業から24時間を経過するまでに11時間以上の休憩時間の確保及び深夜時間帯に労働させる回数を1か月4回以内にすること。
2 高プロ従事者の1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間の上限として、1か月について100時間以内又は3か月について240時間以内にすること。
3 1年間に1回以上の連続2週間の休暇を付与すること。ただし、対象労働者が請求した場合は、1年間で2回以上の連続1週間の休暇を付与することに代えることができる。
4 高プロ従事者について1週間当たり40時間超えた健康管理時間が1か月当たり80時間を超えた場合又は高プロ従事者からの申出により臨時の健康診断を実施すること。
⑧ 高プロの従事者が時間外、休日及び深夜に業務を行った場合の割増賃金については、第〇条の規定を適用しないこととする。
⑨ 高プロ従事者が同意の撤回を申し出た場合には、撤回後の配置、処遇等の労働条件について、撤回前の部署において、同職種の労働者に適用される人事規定〇条及び賃金規定〇条により決定するものとする。なお、使用者は、高プロ従事者が同意を撤回したことを理由として、撤回後の配置、処遇等の労働条件について不利益な取扱いをしてはならない。
⑩ 使用者は、前項までの事項の他に労使委員会の決議について、必要な措置を講ずることとする。
※厚生労働省:「高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説」23頁
参考リンク
厚生労働省:高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説
厚生労働省:高度プロフェッショナル制度について リーフレット