未払残業代・給料請求

中間管理職は残業代なし!?残業時間や違法となる例3つと請求手順

中間管理職は残業代なし!?残業時間や違法となる例3つと請求手順

悩み
中間管理職に残業代が出ないことに疑問を感じていませんか

中間管理職だと上司と板挟みになりストレスも増えるのに、お給料も大して増えないので、不満に思っている方も多いですよね。

中間管理職の場合には、残業代なしが許されるとは限りません

残業時間が長いのは、課長や課長代理クラスの中間管理職です。

中間管理職については、大きな権限や裁量がなく、待遇も不十分なことが多いので、残業代なしは違法となりやすい傾向にあります。

中間管理職が残業代を請求するには、労働者自身で行動を起こしていく必要があります。

実は、法律上、管理監督者に該当するかは厳格に判断されることになるため、裁判所も簡単には残業代を支払わなくていいとはしません

この記事をとおして、中間管理職として働く方々に法律上の残業代についての考え方をわかりやすく伝えていくことができれば幸いです。

今回は、中間管理職は残業代について説明したうえで、残業時間や違法となる例3つと請求手順を解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事でわかること

この記事を読めば、中間管理職の方が適正な残業代を支払ってもらうにはどうすればいいのかがよくわかるはずです。

中間管理職は残業代なし?

中間管理職は残業代なし?

中間管理職の場合には、残業代なしが許されるとは限りません

労働基準法上、時間外手当と休日手当を支払わなくていいとされているのは、管理監督者に該当する場合に限られているためです。

管理職が全員管理監督者に該当するわけではなく、管理監督者に該当するのは管理職の中のほんの一握りにすぎません

管理監督者の説明

労働基準法は、労働者が人たるに値する生活を営むための最低基準を定めたものです。労働基準法の労働時間や休日の規定を適用しないとする以上、慎重に判断されるのです。

例えば、管理監督者だと、1日8時間労働、週に1日の休日、6時間以上働く場合は45分・8時間以上働くと1時間の休憩という規制も適用されなくなってしまうのです。

中間管理職は、管理職の中でも立場が高いわけではなく、権限も裁量も、待遇も乏しい傾向にありますので、管理監督者には該当しないと判断されることも多いのです。

しかし、会社は、課長以上になると一律に管理監督者に該当するものとして、実態にかかわらず、残業代を支払わない取り扱いをしていることがあります

このような場合には、法律上は、残業代なしとすることは許されないことがあり、3年の時効にかかっていない範囲で未払いの残業代を遡って請求できる可能性があります。

中間管理職の残業時間が一番多い

残業時間が長いのは、課長や課長代理クラスの中間管理職です

中間管理職はマネジメント業務だけではなく、現場業務もこなさなければいけません。ときには、部下のフォローとして自分以外の業務も行う必要が出てきてしまいます。

また、上層部の指示と現場の状況を調整する必要があり、両者の意見や要望をすりあわせるのに時間がかかってしまいます。

加えて、昨今では、働き方改革により残業時間を減らす動きが広まっていますが、やるべき仕事が減ったわけではなく、そのしわ寄せが管理職に来ています

例えば、役職別の残業時間の分布をみてみると、平均時間は以下のとおりとなっています。

中間管理職の残業時間が一番多い

課長クラスが21.0時間、課長代理クラスが22.9時間となっており、支社長や部長、部次長、係長よりも長いことが分かります。

出典:調査シリーズNo.212『管理職の働き方に関する調査』43頁|労働政策研究・研修機構(JILPT)

このように中間管理職の残業時間が最も長いのです。

管理職の時間外労働については、以下の記事で詳しく解説しています。

管理職の時間外労働は平均19.5時間!上限時間や時間外手当なし?
管理職の時間外労働は平均19.5時間!上限時間や時間外手当なし?管理職であっても、時間外労働について、労働基準法が適用されるのが原則です。ただし、例外的に、管理職の中でも、「管理監督者」と言われる方だけは、時間外や休憩、休日に関する労働基準法の規定が適用されません。今回は、管理職の時間外労働について、上限時間や時間外手当等の労働基準法の規制が及ぶのかについてわかりやすく解説します。...

中間管理職の残業代なしが違法となりやすい例3つ

中間管理職については、大きな権限や裁量がなく、待遇も不十分なことが多いので、残業代なしは違法となりやすい傾向にあります

管理監督者に該当するためには、経営者との一体性、労働時間の裁量、対価の正当性という条件をいずれも満たす必要があります。

中間管理職の場合には、これらの条件を満たしておらず、管理監督者に該当しないことが多いため、残業代なしが違法となりやすいのです。

具体的には、中間管理職の残業代なしが違法となりやすい例としては、以下の3つがあります。

例1:経営や人事の最終決定権がない
例2:出勤日や出勤時間を自由に決められない
例3:十分な待遇がもらえていない

中間管理職の残業代なしが違法となりやすい例3つ

それでは、これらの例について順番に説明していきます。

例1:経営や人事の最終決定権がない

中間管理職の残業代なしが違法となりやすい例の1つ目は、経営や人事の最終検定権がない場合です

経営者との一体性については、経営への関与や労務管理の有無・程度により判断されます。

経営会議等に参加している場合でも、発言権が乏しい場合や報告をしているにすぎない場合などには、経営への関与の程度は弱いと判断される傾向にあります。

労務管理も、人事考課の一次考課者にすぎず二次考課者等が別にいる場合、採用面接に立ち会っても決定権がない場合などには、権限は弱いと判断される傾向にあります。

中間管理職の場合には、経営や労務管理について、一定の関与をしていることはありますが、ほとんど権限がないことが多い傾向にあります

そのため、経営や労務管理の程度が弱いものとして、経営者とは一体とは判断されにくいのです。

例2:出勤日や出勤時間を自由に決められない

中間管理職の残業代なしが違法となりやすい例の2つ目は、出勤日や出勤時間を自由に決められない場合です

労働時間の裁量については、働く日や働く時間を自分で自由に決めることができるかどうかにより判断されます。

例えば、遅刻や早退、欠勤をするとお給料が控除されたり、人事考課で不利益な評価をされたりするような場合には、裁量は弱いと判断されます。

また、会社側にシフトが決められていたり、業務が忙しすぎて現実問題として自由に働く時間を決めることができなかった場合なども裁量は弱いと判断されます。

中間管理職の場合には、社長や役員のような重役出勤などできないことがほとんどであり、労働時間の裁量が認められないことが多いのです

管理職とタイムカードについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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例3:十分な待遇がもらえていない

中間管理職の残業代なしが違法となりやすい例の3つ目は、十分な待遇がもらえていない場合です

十分な待遇かどうかは、時間外や休日の労働基準法の規定が適用されなくても十分なほどの賃金が支払われているかにより判断されます。

例えば、時給換算するとアルバイトやパートと同水準の賃金になるような場合には、十分な待遇とは言えない傾向にあります

また、管理職になる前よりも年収が下がっているような場合にも、十分な待遇とは言えないことがあります。

管理監督者にふさわしい待遇については、以下の記事で詳しく解説しています。

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中間管理職が残業代を請求する手順

中間管理職が残業代を請求するには、労働者自身で行動を起こしていく必要があります

会社は、労働者が管理監督者に該当するものとして扱っていますので、あなたが何も行動を起こさなければ、いつまでも残業代は支払われないままだからです。

具体的には、中間管理職が残業代を請求する手順は以下のとおりです。

手順1:弁護士に相談する
手順2:通知書を送付する
手順3:交渉する
手順4:労働審判・訴訟を提起する

中間管理職が残業代を請求する手順

それでは、これらの手順について順番に説明していきます。

手順1:弁護士に相談する

中間管理職が残業代を請求する手順の1つ目は、弁護士に相談することです

管理監督者に該当するかどうかは法的な事項であり、弁護士に見通しや方針について助言とサポートをしてもらうべきだからです。

弁護士に相談することで残業代を請求するべきか、費用倒れにならないか、どのような手続きをとるべきなど教えてもらうことができるでしょう。

ただし、管理職の残業代問題については、専門性が高いため、労働問題に注力していて、管理職の残業代問題に実績のある弁護士を探すといいでしょう。

手順2:通知書を送付する

中間管理職が残業代を請求する手順の2つ目は、通知書を送付することです

残業代には3年の時効があり、給料日から3年が経過した部分から消滅時効が完成していっています。

まずは内容証明郵便により残業代を請求する旨の通知書を送付しましょう。これにより6か月間時間の完成が猶予されることになります。

時効の完成が猶予されているうちに正確な残業代を計算したり、残業代を交渉したりするようにしましょう。

手元に証拠がない場合には、併せて、会社に対して、残業代を計算するための資料の開示を求めましょう。

手順3:交渉する

中間管理職が残業代を請求する手順の3つ目は、交渉することです

会社から回答があったら、話し合いにより折り合いをつけることが可能か協議してみましょう。

会社も管理監督者性を争うことが難しいと判断すれば、裁判をせずとも素直に支払いに応じてくることがあります。

裁判をすると時間も労力もかかりますので、まずは話し合いにより解決することが可能か試してみるといいでしょう。

手順4:労働審判・訴訟を提起する

中間管理職が残業代を請求する手順の4つ目は、労働審判・訴訟を提起することです

話し合いにより解決することが難しい場合には、裁判所を用いた解決を検討しましょう。

労働審判というのは、全3回の期日で調停を目指すものであり、調停が成立しない場合には裁判所が一時的な判断を下すものです。

労働審判については、以下の記事で詳しく解説しています。

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訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。

残業代の訴訟については、以下の記事で詳しく解説しています。

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とくに管理職の場合には、管理監督者性についての見通しを分析したうえで、有利な証拠や反論を準備することが成功の鍵となります。

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まとめ

以上のとおり、今回は、中間管理職は残業代について説明したうえで、残業時間や違法となる例3つと請求手順を解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

・中間管理職の場合には、残業代なしが許されるとは限りません。

・残業時間が長いのは、課長や課長代理クラスの中間管理職です。

・中間管理職の残業代なしが違法となりやすい例としては、以下の3つがあります。
例1:経営や人事の最終決定権がない
例2:出勤日や出勤時間を自由に決められない
例3:十分な待遇がもらえていない

・中間管理職が残業代を請求する手順は以下のとおりです。
手順1:弁護士に相談する
手順2:通知書を送付する
手順3:交渉する
手順4:労働審判・訴訟を提起する

この記事が中間管理職に残業代が出ないことに疑問を感じている方の助けになれば幸いです。

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弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日
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