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5分で分かる事業場外労働のみなし時間制

みなし時間制とは

 事業場外労働のみなし時間制とは、労働者が事業場外で業務に従事した場合について、その労働時間を算定し難いときは、一定の労働時間業務に従事したものとみなす制度です。
 労働者が事業場外で行う労働に関しては、使用者の具体的な指揮監督及ばず、労働時間の算定が困難なことがあるため使用者の労働時間算定義務を免除したものです。
 みなし時間制は、労働時間規制のうち労働時間の算定方法について適用されるものです。そのため、みなし労働時間制の適用によって労働時間とみなされる時間が法定労働時間を超える場合には、時間外割増賃金が発生することになります。また、休日や深夜割増賃金についても、通常どおり発生することになります。
 労働基準法は以下のように規定しています。

労働基準法38条の3
1「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。」
2「前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。」
3「使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。」

みなし時間制が適用される条件

 事業場外労働のみなし時間制の要件は、以下のとおりです。

➀「労働者が…事業場外で業務に従事した場合」
➁その事業場外での「労働時間を算定し難いとき」

⑴ ➀「事業場外で業務に従事した場合」
 「事業場外で業務に従事した」とは、労使協定の締結単位や就業規則の制定単位である事業場とは必ずしも一致せず、自己の本来の所属事業場の労働管理組織から離脱した場所的状況の下で、他のいかなる労働時間管理組織からの具体的かつ継続的指揮命令を受けることなく行う労務提供行為をいいます。
 例えば、記事の取材、外勤営業、タクシー等の運転手、在宅勤務がこれに当たるとされています。
 労働者が自宅でパソコン等の情報通信機器を用いて行う在宅勤務については、行政解釈上、

ア 当該業務が起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
イ 当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態に置くこととされていないこと
ウ 当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと

のいずれの要件も満たす場合には、原則として事業場外労働のみなし時間制の適用があるとされています(平成16年3月5日基発0305001号、平成20年7月28日基発0728002号)。
⑵ ➁「労働時間を算定し難いとき」
 行政解釈は、以下の場合には、使用者の具体的な指揮監督が及んでいるとして、労働時間の算定が可能であるとしています(昭和63年1月1日基発1号)。

⑴ 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をするものがいる場合
⑵ 事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合
⑶ 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後事業場に戻る場合

【最二小判平26.1.24集民246号1頁[阪急トラベルサポート事件・上告審]】
 企画旅行の添乗乗務員について、日報によって、業務の遂行状況の報告を求めていること、その報告内容について、ツアー参加者のアンケートを参照することや関係者に問合せをすることによって、その正確性を確認することができることから、「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとされました。

みなし時間制が認められた場合

⑴ 所定労働時間
 事業場外労働のみなし時間制が適用される場合には、所定労働時間労働したものとみなされるのが原則です(労働基準法38条の2第1項本文)。そのため、例えば、所定労働時間が8時間とされている場合には、8時間労働したものとみなされるのが原則です。
⑵ 通常必要とされる時間
 「当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合」には、例外的に、通常必要とされる時間労働したものとみなされます(労働基準法38条の2第1項ただし書)。
 行政解釈は、通常必要時間について、「通常の状態でその業務を遂行するために客観的に必要とされる時間」をいうとしています(昭和63年1月1日基発1号)。客観的に必要とされる時間とは、経験則上の平均値をいうものと解されています。
例えば、所定労働時間が8時間とされている場合であっても、通常必要とされる時間が12時間であれば、4時間の法定外労働時間が発生することになります。

【東京地判平22.7.2労判1011号5頁[阪急トラベルサポート事件・第一審]】
 「業務の遂行に通常必要とされる時間」の意義について、「各日の状況や従事する労働者等により実際に必要とされる時間には差異があっても、平均的にみて当該業務の遂行に必要とされる時間」を指すものと解したうえで、日報に記載されたおおよその拘束時間から非労働時間を控除した時間を平均して1日のみなし労働時間を算出しています。

労使協定

 通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合に、労働時間数を労使協定で定めることもできます(労働基準法38条の2第2項)。労使協定において定める通常必要とされる時間は、1日についての時間数であり、月単位で定めることはできないとされています。
 そして、労使協定によるみなし時間制は、これに従った賃金の計算方法になることを労働協約、就業規則又は個別の契約により定めることで労働契約になります。

一部事業場外で業務をした場合

 行政解釈によると事業場外労働が1日の所定労働時間帯の一部を用いてなされる場合、事業場内労働を含めて、➀1日の所定労働時間だけ、または、➁事業場内労働の時間と事業場外労働に「通常必要とされる時間」とを合計した時間だけ労働したこととなるとされています(昭和63年1月1日基発1号、昭和63年3月14日基発150号)。
 すなわち、事業場外労働と事業場内労働の労働時間が所定労働時間帯(始業時刻・終業時刻)に収まっている限り、労働時間は所定労働時間とされますので、時間外割増賃金は問題となりません。これに対して、事業場外労働が始業・終業時刻の前後に及んでいる場合、事業場内労働時間と事業場外労働時間(「当該業務遂行に通常必要とされる時間」)を加えた時間が労働時間となり、法定労働時間よりも長い場合には、時間外割増賃金が発生することになります。

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