未払残業代・給料請求

残業150時間は違法!異常な生活から抜け出すための対処法4つを解説

残業150時間は違法!異常な生活から抜け出すための対処法4つを解説

悩み月150時間という長時間残業をしている現状に、疑問を覚えていませんか

150時間の残業で心身共に疲弊してしまい、仕事を続けられるのか不安になりますよね。

結論から言うと、残業時間が月150時間にも及ぶのは、異常です

月の残業時間の上限は36協定で定められており、特別な事情がない場合は月45時間、年360時間までとされています。

それだけでなく36協定に特別条項が定められている場合であっても、1ヶ月の残業時間の上限は100時間までとなっているのです。

月に150時間を超える残業は、過労死のリスクが非常に高い危険な状態にあるため、早急に対応しなければ心身に重大な悪影響を及ぼすおそれがあります

実際、過労死する1ヶ月前の残業時間が100時間を超えている場合、過労死と残業との間に因果関係が認められやすいとされているのです。

このような状況から抜け出す最も確実な方法は、残業の少ない会社に転職することです。

というのも、残業が常態化している会社では改善されるまでにある程度時間が必要となり、改善されるのを待っていたのでは心身がもたないためです。

加えて、違法な状態にある会社は、残業代をしっかりと払っていない場合が多く、未払いの残業代を請求できる可能性があります。

実は、私が相談を受ける中でも、月150時間という異常な残業で心身ともにボロボロであるにも関わらず、十分な残業代すら支給されていないというケースを目にします

この記事を通して、長時間残業による影響や請求できる残業代、違法な残業に対する対処法について解説していきます。

今回は、残業150時間の異常性を説明したうえで、残業150時間から抜け出すための対処法について解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事で分かること

この記事を読めば、残業150時間から抜け出す方法がよくわかるはずです。

残業時間の平均や生活、健康への影響については、以下の動画で詳しく解説しています。

       

残業150時間は危険!健康を害する異常な生活

1か月の残業が150時間を超えている状態は異常です

月22日出勤する方で、150時間の残業をする場合には、平均で毎日

150時間÷22日
=約6時間50分

の残業をすることになります。

昨年の日本の平均残業時間は24時間程度であるため、月150時間の残業時間は約6倍となっており、異常であることが分かります。

1か月の平均残業時間

(データ出典:⽇本の残業時間 定点観測 OpenWork 働きがい研究所 (vorkers.com)

1日に約6時間50分の残業をした場合のタイムスケジュールは、以下のようになります。

残業150時間の生活

このように、残業を終えて帰宅するのは25時50分ごろとなります

そこから食事、入浴としていると、それだけで3時近くになってしまうスケジュールです。

そもそも退勤する時間が終電の時間を過ぎてしまい、帰宅することすらできていない可能性もあります。

このようなスケジュールでは、当然家族と過ごすことは難しいですし、プライベートな時間はおろか、睡眠時間すら削らなければいけません。

睡眠時間を確保するために、食事や入浴の時間を削って、ただ寝る為だけに家に帰るということになってしまう方もいるでしょう。

そのため、月150時間の残業は異常であり、労働者にとって多大な負担となるのです。

残業150時間は違法!36協定の限度時間

月に150時間もの残業をさせるのは、違法です

そもそも、労働基準法では、労働時間の上限を1日8時間週40時間までと定めています。

労働基準法32条(労働時間)
1「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。」
2「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」

残業や長時間の労働を含めて、この時間を超えて労働をさせる場合には、会社は労働者との間に事前に協定を結んでおく必要があります。

この協定を、36協定といいます。

36協定は、会社と労働組合などの労働者の代表者の間で、毎年結ぶことが通常です。

この協定は、締結後労働基準監督署に届け出る必要があり、協定を結んでいない場合は1日の労働時間である8時間を超えて残業をさせること自体が違法となります。

そして、36協定でも労働者に残業させることができる時間の上限は、1か月45時間までとされています

労働基準法36条(時間外及び休日の労働)
4「……限度時間は、一箇月について四十五時間……とする。」

加えて、36協定には不測の事態への対応などのために、残業時間の上限を超えることを許容するための条項を定めておくことができます。

これを、特別条項といいます。

特別条項において、具体的には以下のような場合に、例外的に45時間を超えて時間外労働をさせることができるとされています。

(ⅰ)通常予見できない業務量の大幅な増加により残業をする必要が生じたこと
(ⅱ)特別協定が締結されており、その範囲内で残業を命じていること

ただし、特別条項で残業時間を延長する場合でも、上限が存在します

その上限は、月100時間未満年720時間以内と定められています。

労働基準法第36条(時間外及び休日の労働)
5「……当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。……」

現状これ以上の残業時間の延長は原則として認められておらず、時間外労働が100時間を超えた時点で違法となります。

そのため、月に150時間もの残業をさせることは違法なのです。

残業時間の上限については、以下の記事で詳しく解説しています。

残業時間の法律上の上限は何時間?
残業時間の法律上の上限は何時間?36協定があっても違法となる5例会社は、労働者に残業を命じる場合には、36協定が必要とされており、これがある場合でも無制限に残業を命じることができるわけではありません。今回は、残業時間の法律上の上限と36協定があっても残業が違法となるケースについて解説します。...

~公務員の残業150時間は違法?~

結論から言うと、公務員に関しても残業時間が100時間を超えることは原則として許されませんが、違法になるわけではありません

公務員は、民間企業とは違いその職務が公的性質を帯びているため、労働基準法が全面的に適用されるわけではありません。

国家公務員法附則16条
第六条 ……労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)、……並びにこれらの法律に基づく命令は、職員には適用しない

しかし、労働基準法が適用されない場合でも、これに準ずる規定が別途設けられるなどして、実質的に民間企業と同等の労働条件になるように調整されていることがあります。

 

例えば、国家公務員に適用される人事院規則16条の2などがこれにあてはまります。

人事院規則一五―一四(職員の勤務時間、休日及び休暇)
(超過勤務を命ずる時間及び月数の上限)
第十六条の二の二 ……それぞれ当該各号に定める時間及び月数の範囲内で必要最小限の超過勤務を命ずるものとする。
一 次号に規定する部署以外の部署に勤務する職員……
イ ロに掲げる職員以外の職員 次の(1)及び(2)に定める時間
(1) 一箇月において超過勤務を命ずる時間について四十五時間
(2) 一年において超過勤務を命ずる時間について三百六十時間
ロ 一年において勤務する部署が次号に規定する部署からこの号に規定する部署となった職員 次の(1)及び(2)に定める時間及び月数
(1) 一年において超過勤務を命ずる時間について七百二十時間
(2) (略)
二 他律的業務(業務量、業務の実施時期その他の業務の遂行に関する事項を自ら決定することが困難な業務をいう。)の比重が高い部署として各省各庁の長が指定するものに勤務する職員……
イ 一箇月において超過勤務を命ずる時間について百時間未満
ロ 一年において超過勤務を命ずる時間について七百二十時間
ハ ~ ニ (略)

(出典:人事院規則一五―一四(職員の勤務時間、休日及び休暇) | e-Gov法令検索

配属部署によって異なりますが、大規模災害や外交などの緊急対応を除いて、どこであっても100時間を超えることは許されていません。

ただし、これはあくまでも規則であるため、労働基準法が適用されているわけではありません。

違反時にも違法となるわけではなく、罰則が存在しないことに注意が必要です

他方で、地方公務員については、労働基準法の上限規制の対象外である上に、人事院規則の適用もありません。

地方公務員法や各自治体の条例、規則に沿って勤務条件が決められています。

上限を設けるかどうかやその内容は各自治体に任せられているのです。

そのため、上限が定められているか、どの程度の上限なのかは各自治体の制度を確認する必要があります。

総務省が上限規制を設けるように通知を出していますが、令和4年末現在、依然として上限規制制度を定めていない自治体も存在するため注意が必要です
地方公共団体における時間外勤務の上限規制及び健康確保措置を.pdf (soumu.go.jp)

       

残業150時間は過労死ラインのほぼ倍!非常に高い過労死のリスク

月150時間を超える残業をしていると、健康被害・死亡のリスクがあります

具体的には、以下の2つのリスクがあります。

①脳・心臓疾患-過労死
②うつ病・適応障害等-過労自殺

それでは、各リスクについて順番に解説していきます。

脳・心臓疾患のリスク

残業150時間による過労死のリスク1つ目は、脳・心臓疾患のリスクがあることです。

月に150時間もの残業をする場合、脳・心臓疾患のリスクが非常に高い状況にあります。

厚生労働省は、発症前の1か月間に100時間、または2~6か月平均で月80時間を超える時間外労働は、脳・心臓疾患との関連性が強いとしています。

脳・心臓疾患の労災認定基準を改正しました|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

直前1か月間で100時間以上残業をしていると、それだけで関連性が認められる可能性が高いのです。

所謂過労死ラインというのも、この脳・心臓疾患の労災認定基準を基にして、月80時間と言われているのです。

つまり、月に150時間もの残業をしている場合、過労死ラインから考えると約2倍、労災認定基準の1.5倍もの残業をしていることになります

そのため、脳・心臓疾患のリスクが非常に高いのです。

下記のような症状がある場合には、脳・心臓疾患の可能性があるため、受診を検討しましょう。

・手足が動かしづらい
・呂律が回らない
・急なめまい
・運動後に動悸がする
・胸の圧迫感、痛み

もし症状がなくても、リスクが高いことには変わりはないため、すぐに残業を減らす対策を講じましょう。

うつ病などの精神疾患のリスク

残業150時間による過労死のリスク2つ目は、うつ病などの精神疾患のリスクがあることです。

月に150時間もの残業をする場合、うつ病などの精神疾患のリスクがあります。

行政通達では、うつ病等の精神疾患の労災認定基準に関して、1か月に80時間以上の時間外労働を行っている場合は心理的負荷「中」、連続した2か月間に1月当たり120時間以上の時間外労働を行っていると、心理的負荷「強」とされています。

他にも、仕事内容・仕事量の変化や連続勤務の日数などを総合的に勘案して、うつ病発症との関連を評価されますが、この基準に照らしても月150時間の残業は非常にリスクが高いことが分かります。

以下のような症状がある場合には、うつ病等のサインの可能性があるため、受診することを検討しましょう。

・気分が落ち込む、考えが悪い方向に向いてしまう(抑うつ)
・イライラして落ち着かない
・死にたいと考えてしまう(希死念慮:消えてなくなりたい、楽になりたいといった感情)
・様々なことに対する興味の喪失、意欲の低下
・眠れない
・食欲がない
・周囲の人から体調を心配されることが増えた
・動機、息苦しさがある

もし症状がなかったとしても、精神疾患のリスクは高いため、残業を減らすための対策を講じましょう。

残業150時間の残業代と手取りはいくら?大まかな月給ごとに紹介

月に150時間の残業をした場合の手取りと、残業代がいくらになるかについて解説していきます。

残業代の計算方法は、以下のとおりです。

基礎賃金÷所定労働時間×割増率×残業時間数

基礎賃金は、家族手当や通勤手当などの各種手当や、臨時で支払われた賃金などを除いたものになります。

そのため、基礎賃金=基本給というわけではないため注意が必要です。

所定労働時間は、会社において定められている労働時間になります。

割増率は、法定時間外労働は1.25倍、深夜労働にあたる22時~5時の時間外労働は0.25倍をさらに追加し、法定休日労働は1.35倍です。

残業時間は、法定時間外労働や法定休日、深夜には働いた時間の合計です。

残業代の詳しい計算に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

会社の計算は正確?5ステップで簡単にできる残業代の正しい計算方法残業代の計算方法は、労働基準法で決められていますので、会社がこれよりも不利益な計算ルールを定めても無効です。今回は、残業代を計算する方法を5つのステップで誰でも分かるように簡単に説明します。...

それでは、以下の月収における手取りと残業代、万が一恒常的に月150時間の残業をしていた場合に発生する残業代を計算していきます。
※手取りについては、具体的な事案によって異なります。

・月給20万円の場合
・月給25万円の場合
・月給30万円の場合
・月給40万円の場合

この後計算も交えて解説しますが、計算した結果は以下のようになります。

残業150時間の残業代と手取り

なお、所定労働時間を160時間と仮定し、手取りに関しては額面の75~85%で計算していきます。

また、月150時間の時間外労働をするためには、22時以降の深夜労働か休日労働が必要になる可能性が高いですが、今回は計算の分かりやすさを重視して一律1.25倍で計算しています。

そのため、実際の残業代よりも低くなっている可能性があります。

月給20万円の場合

月収20万円の場合には、1か月あたりの残業代は、以下のとおりとなります。

20万円÷160時間×1.25倍×150時間

23万4375円

1か月の額面を43万4375円(20万+23万4375円)とすると、1か月のおおよその手取りは以下のとおりになります。

43万4375円×75%~85%

32万5781円~36万9218円

そして、残業代の時効は3年のため、もしも恒常的に150時間の残業をしていた場合の3年間の残業代を計算すると、以下のとおりとなります。

23万4375円×3年(36か月)分

843万7500円

月給25万円の場合

月収25万円の場合には、1か月あたりの残業代は、以下のとおりとなります。

25万円÷160時間×1.25倍×150時間

29万2968円

1か月の額面を54万2968円(25万+29万2968円)とすると、1か月のおおよその手取りは以下のとおりになります。

54万2968円×75%~85%

40万7226円~46万1522円

そして、残業代の時効は3年のため、もしも恒常的に150時間の残業をしていた場合の3年間の残業代を計算すると、以下のとおりとなります。

29万2968円×3年(36か月)分

1054万6848円

月給30万円の場合

月収30万円の場合には、1か月あたりの残業代は、以下のとおりとなります。

30万円÷160時間×1.25倍×150時間

35万1562円

1か月の額面を65万1562円(30万+35万1562円)とすると、1か月のおおよその手取りは以下のとおりになります。

65万1562円×75%~85%

48万8671円~55万3827円

そして、残業代の時効は3年のため、もしも恒常的に150時間の残業をしていた場合の3年間の残業代を計算すると、以下のとおりとなります。

35万1562円×3年(36か月)分

1265万6232円

月給40万円の場合

月収40万円の場合には、1か月あたりの残業代は、以下のとおりとなります。

40万円÷160時間×1.25倍×150時間

46万8750円

1か月の額面を86万8750円(40万+46万8750円)とすると、1か月のおおよその手取りは以下のとおりになります。

86万8750円×75%~85%

65万1562円~73万8437円

そして、残業代の時効は3年のため、もしも恒常的に150時間の残業をしていた場合の3年間の残業代を計算すると、以下のとおりとなります。

46万8750円×3年(36か月)分

1687万5000円

       

残業代を請求する4つのステップ

未払いの残業代を請求するためには、手順を踏む必要があります

踏むべき手順は以下のとおりです。

STEP1:通知書の送付
STEP2:残業代の計算
STEP3:交渉
STEP4:労働審判・訴訟

それでは、残業代を請求する方法を順番に解説していきます。

残業代請求の方法・手順については、以下の動画でも詳しく解説しています。

STEP1:通知書の送付

残業代を請求するためのSTEPの1つ目は、通知書の送付です。

最初に内容証明郵便などを利用し、会社に通知書を送付することになります。

通知書を送付する理由は以下の2つです。

・時効を一時的に止めるため
・資料の開示を請求するため

残業代の時効は3年のため、3年以上勤務している場合、月日が経つにつれて残業代の時効に達した月が発生します

残業代の時効は、請求する意思を見せることで一時的に止めることができるため、まず最初に通知書を送付することが重要です。

残業代の時効に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

残業代請求の時効は3年!例外ケース2つと時効を止める方法3つ【記載例付き】
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送付する通知書は、以下のようなものになります。

 

STEP2:残業代の計算

残業代を請求するためのSTEPの2つ目は、残業代の計算です。

会社から返答があったら、開示された資料をもとに残業代を計算していくことになります。

もしも開示してもらえない場合などは、自分で記録しておいたタイムカードの写真などの出退勤の時刻が分かる資料を使って計算しましょう。

残業代の計算方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

会社の計算は正確?5ステップで簡単にできる残業代の正しい計算方法残業代の計算方法は、労働基準法で決められていますので、会社がこれよりも不利益な計算ルールを定めても無効です。今回は、残業代を計算する方法を5つのステップで誰でも分かるように簡単に説明します。...

STEP3:交渉

残業代を請求する方法の3つ目は、交渉です。

残業代を計算し終わったら、会社との間で残業代の支払いについて交渉していくことになります。

それに対して、通常は会社からも計算方法などについて、何らかの反論があるでしょう。

そうして会社と争うことになった箇所については、裁判例や法律と照らして、説得的に主張を行っていくことになります。

STEP4:労働審判・訴訟

残業代を請求する方法の4つ目は、労働審判・訴訟です。

月150時間もの残業をしている場合、未払い残業代も非常に高額になっていると考えられるため、交渉だけで話がまとまらない可能性も高いでしょう

交渉しても話がまとまらない場合は、労働審判や訴訟などの申立てを行っていくことになります。

労働審判とは、裁判官を交えた話し合いである期日を3回まで行って、調停による解決を図るものです。

労働審判でも調停が成立しない場合には、裁判所から一時的な判断が出されることになります。

労働審判とはどのような制度かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。

訴訟は、労働審判とは違い回数制限などはなく期日を行い、交渉していくことになります。

概ね1か月に1回程度の期日をしていき、解決まで1年以上かかることもあります。

残業150時間から抜け出すための対処法4つ

月の残業150時間というのは非常に危険な状態であり、心身への大きな影響を伴うため、早急に改善する必要があります

もちろん転職することが一番確実な解決方法になりますが、転職するのは難しいという方もいるでしょう。

そのため、まずは転職以外の残業を減らすための対処法を解説していきます。

具体的な対処法は、以下の4つになります。

対処法1:上司に相談する
対処法2:残業を拒否する
対処法3:産業医面談を希望する
対処法4:労働基準監督署に相談する

残業150時間から抜け出すための対処法4つ

 

それでは、対処法について解説していきます。

対処法1:上司に相談する

残業150時間から抜け出すための対処法の1つ目は、上司に相談することです。

まずは、素直に上司に残業を減らしてほしい旨を相談しましょう。

月に150時間もの長時間残業は違法である可能性が非常に高いため、正直に申し出れば調整してもらえる可能性もあるでしょう。

その際には、なるべく具体的に説明する必要があります。

例えば、以下のような内容です。

・先月の残業は何時間だったか
・体調不良がある場合には、どのような症状が出ているか(診断書があるか)
・睡眠時間やプライベートへの支障

状況を具体的に説明することで、上司の理解を得やすくなります。

 

会社は労働者の健康や安全に配慮する義務を負っているため、このような相談があれば業務の再配分など何らかの配慮をしてくれる可能性はあります。

ただし、違法な残業をさせている会社は確信犯の場合もあり、月150時間という異常な残業を強いている時点で、これだけを持って改善するというのはあまり期待できないでしょう

対処法2:残業を拒否する

残業150時間から抜け出すための対処法の2つ目は、残業を拒否することです。

何度も説明しているように、公務員などの一部の例外を除いて、月150時間もの残業を強いるのは、労働基準法に違反し、違法となります。

36協定の特別条項があっても違法であることに変わりはありません。

例え会社が自社規定などを持ち出しても、それは労働基準法に違反していい理由にはなりません。

このような違法な長時間残業は、拒否することを検討しましょう

残業を拒否することによって、会社は解雇や懲戒をちらつかせて脅してくる可能性もあるでしょう。

しかし、会社が労働者を解雇したり懲戒したりできるのは

客観的に合理的な理由があり、かつ、社会通念上相当

と言える場合のみです。

違法な残業の拒否がこれにあたる可能性は低く、違法な残業の拒否を理由とする解雇や懲戒は無効となる可能性が高いのです。

残業を拒否する具体的な方法などに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

残業拒否したらクビになる?拒否できる6つの場合と上手に断る方法会社から残業を命じられても拒否できる場合があります。今回は、残業を拒否できる場合や上手に残業を断る方法、残業拒否を理由とするクビや懲戒が許されない場合について解説します。...

対処法3:産業医面談を希望する

残業150時間から抜け出すための対処法の3つ目は、産業医面談を希望することです。

産業医と面談することで、必要に応じて措置の指示が出ます。

この措置は、重いものでは要休業というものから、時間外労働の制限、禁止、就業時間の制限など、様々な措置があります。

また、措置が出た場合、産業医からその措置に関して会社に勧告してくれます

例えば、月150時間の残業で極度の疲労感が持続してしまい、産業医面談を受けたとしましょう。

そこで産業医が残業時間を抑えるべきだと判断した場合、産業医から上司に掛け合って、時間外労働を○○時間まで抑えるように、といったような提言をしてもらえるのです。

この提言は、労働安全衛生法により定められている、産業医の勧告権に基づくものになります。

これを受けた会社は、産業医の意見を尊重して、対応を行う必要性が生じます。

勧告を受けると、対応・対策として何をしたのか、しなかったのかを、その理由も含めて明確に文書として残す必要があります。

そのため、勧告を合理的な理由なく拒否することは難しくなっています。

加えて会社は、労働安全衛生法により、労働者が産業医への面接指導を申し出た際に、その労働者が月80時間を超えて残業をしていた場合、産業医面談を実施することを義務付けられています

例え会社の規模が小さく、専任の産業医がいなかったとしても、80時間以上残業している労働者の申し出を拒否することは違法となります。

自社に産業医がいないから産業医面談は行わない、というような言い訳は通用しないのです。

会社に産業医がいなかったとしても、地域産業保健センターの登録医に面接指導の実施を依頼するなど、なんらかの対応を行い産業医面談を実施する必要が生じるのです。

対処法4:労働基準監督署に相談する

残業150時間から抜け出すための対処法の4つ目は、労働基準監督署に相談することです。

月150時間の残業をさせることは違法であるため、労働基準監督署に相談することが考えられます。

労働基準監督署に相談することで、会社に対して労働基準法違反の事実があるか調査を行い、調査の結果に応じて指導をしてもらうことができます

しかし、労働基準監督署もすべての事案に対応できるわけではありません。

というのも、労働基準監督署は相談の中から緊急性の高い事案を優先して調査しやすい傾向にあるためです

そのため、匿名や電話のみでの相談の場合、緊急性の低い事案として扱われる可能性があります。

動いてもらえる可能性を高くするためにも、実際に労働基準監督署に赴き、氏名、会社名を告げた上で相談することをおすすめします

名前などが会社に伝わらないようにしたければ、その旨を労働基準監督署に伝えることで配慮してもらうことができます。

労働基準監督署への通報については、以下の記事で詳しく解説しています。

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残業150時間の会社から抜け出す手順3つ

月150時間という異常な残業をさせている会社から抜け出す最も確実な方法は、転職することです

転職するために退職する際には、順序を踏んでおく必要があります。

具体的には、以下の手順です。

方法1:証拠を集める
方法2:退職届を出す
方法3:残業の少ない会社に転職する

残業150時間の会社から抜け出す手順3つ

それでは、手順を順番に解説していきます。

手順1:証拠を集める

残業150時間の会社から抜け出す手順の1つ目は、証拠を集めることです。

月150時間の残業が心身への影響が非常に大きいことは既に説明しました。

残業代の請求以外にも、後から何らかの健康被害が生じてしまった場合や失業保険を受給する場合に備えて、長時間の残業をしていたことを証明するための証拠が必要になります

そのため、退職前に残業時間が分かる証拠を残すようにしましょう。

最も明確な証拠になるものは、タイムカードです

しかし、明らかに違法な残業をさせている会社だと、そもそもタイムカードが存在しなかったり、タイムカードを定時で打刻させるなどの何らかの対策をしている場合もあるかもしれません。

そのような場合には、入退館記録や業務メール、日報の営業記録などの、誰が見ても会社にいたと分かるようなものを探しましょう。

それすらもなければ、自分で各日の業務開始時間、休憩時間、業務終了時間、業務内容を細かくメモしておくことをおすすめします。

具体的なメモの書き方など、残業の証拠については以下の記事で詳しく解説しています。

残業代請求の証拠がない人も必見!必要な証拠と簡単な証拠集めの方法会社に対して、残業代を請求するには証拠が必要です。しかし、今手元に証拠がなくても焦る必要はありません。今回は、残業代請求に必要な証拠とその集め方を解説します。...

手順2:退職届を出す

残業150時間の会社から抜け出す2つ目は、退職届を出すことです。

提出する方法は、手渡しでも、内容証明郵便でも構いません。

また、手渡しする場合はコピーを取っておくべきです。

退職届には、具体的に以下の内容を記載しておきましょう。

・退職する意思と退職の日付
・離職票の交付請求
・退職する理由(必須ではありません)
・有給休暇の取得申請(必須ではありません)

例えば、以下のような内容を記載します。

 

期間の定めのない労働契約の場合は、退職日から2週間前には提出しておく必要があるので注意しましょう

他方で、期間の定めのある労働契約の場合、期間中に退職するためにはやむを得ない理由が必要となります

月150時間にも及ぶ違法な残業を強いられたことを理由に退職するとしても、場合によっては会社から損害賠償請求される可能性があります

そうなると、月150時間残業していたことを証明した上で、やむを得ない理由にあたるかを争っていく必要が生じるのです。

そのため、期間の定めのある労働契約を結んでいて期間内に退職したい場合は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

また、稀に退職に際して復讐のために会社への嫌がらせを考える方がいます。

しかし、会社への嫌がらせは、内容によっては会社から訴えられる可能性があります。

長時間の残業を強いられていた怒りは分かりますが、ここは冷静に対応する必要があります。

もしも会社に対して何かしたいと考えているなら、労働基準監督署に相談するなどの合法的な手段のみを行うように気を付けましょう。

手順3:残業の少ない会社に転職する

残業150時間の会社から抜け出す手順の3つ目は、残業の少ない会社に転職することです。

残業の少ない会社に転職するためのポイントは、以下の4つです。

・長時間分の固定残業代がないかを確認する
・タイムカードがあるかを確認する
・業務量と比較して人員が少なすぎないかを確認する
・社員数に対して採用人数が多すぎないかを確認する

これらの点に注意して、転職先を探しましょう。

~残業150時間は会社都合退職にできる?~

ハローワークでは、特定受給資格者の条件について、以下の項目を挙げています。

「離職の直前6か月間のうちに[1]いずれか連続する3か月で45時間、[2]いずれか1か月で100時間、又は[3]いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため離職した者。」
ハローワークインターネットサービス – 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要 (mhlw.go.jp)

そのため、会社都合退職として失業保険を受給する際に有利に扱ってもらえる可能性があります

会社都合退職については、以下の動画でも詳しく解説しています。

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まとめ

今回は、残業150時間の異常性を説明したうえで、残業150時間から抜け出すための対処法について解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると、以下の通りです。

 

・日本の平均残業時間は約24時間であり、月150時間の残業は異常です。

・月150時間の残業をしていると、帰宅は深夜1時前となり、家族との時間はおろか睡眠時間すら削る必要があります。

・月150時間もの残業は、公務員などの一部の例外を除いて違法となります。

・月150時間の残業は、過労死ラインから考えると約2倍、労災認定基準の1.5倍もの残業をしていることになり、心身への影響が非常に大きく、心不全や精神疾患など、多数のリスクがある。

・残業150時間の月の残業代、手取り、もしも3年間続けた場合の残業代の総額は、以下の通りです。
残業150時間の残業代と手取り

・残業代を請求するステップは、以下の4つです。
STEP1:通知書の送付
STEP2:残業代の計算
STEP3:交渉
STEP4:労働審判・訴訟

・残業150時間から抜け出すための対処法は、以下の4つです。
対処法1:上司に相談する
対処法2:残業を拒否する
対処法3:産業医面談を希望する
対処法4:労働基準監督署に相談する

・残業150時間の会社から抜け出す手順は、以下の3つです。
手順1:証拠を集める
手順2:退職届を出す
手順3:残業の少ない会社に転職する

この記事が、月150時間の長時間残業で苦しんでいる方の助けになれば幸いです。

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弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、区民ニュース2023年8月21日
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