未払残業代・給料請求

残業代の平均はいくら?あなたの残業代が平均よりも少ない6つの原因

残業代の平均はいくら?

自分の残業代が他の人よりも少ないのではないかと悩んでいませんか?

厚生労働省の資料によると、一般労働者とパートタイム労働者を合わせた残業代(所定外給与)の平均額は、

月1万7357円

とされています。
なお、一般労働者に限定すると2万3997円パートタイム労働者に限定すると2678円となります。
(参考:毎月勤労統計調査 令和2年分結果確報)

ただし、実際には、残業代の平均額はこれよりも高いとうかがわれ、「民間企業の調査した残業時間の平均」や「労働者全体の賃金の平均」からは、

月5万円~6万円程度

の残業代をもらっている方又はもらうべき方が多いものと推測されます。

なお、残業代の金額は、「業界」や「年代」、「都道府県」によっても異なってくる点に留意が必要です。

もしも、あなたの残業代が平均よりも少ない場合には、例えば以下のような原因が想定されます

原因1:基礎賃金が少ない
原因2:残業時間が少ない
原因3:残業代の計算が誤っている
原因4:残業代がカットされている
原因5:固定残業代扱いされている手当がある
原因6:管理監督者として扱われている

また、平均より残業代が多かったとしても、自分の残業時間や賃金に比べて、残業代が「少ない」と感じる場合には、やはり上記③~⑥のような原因がある可能性があります

いずれにせよ、あなたの残業代が正しく支払われているかについて、計算してみることをおすすめします。

今回は、残業代の平均額、並びに、残業代が少ない原因について、わかりやすく解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明します。

この記事を読めば、あなたの残業代が「平均金額」や「実際に支払われるべき金額」よりも少ないかどうか、並びに、正当な残業代を支払ってもらうにはどうすればいいのかがわかるはずです。

 

 

 

残業代の平均額

厚生労働省の資料によると、一般労働者とパートタイム労働者を合わせた残業代(所定外給与)の平均額は、

月1万7357円

とされています。
なお、一般労働者に限定すると2万3997円パートタイム労働者に限定すると2678円となります。
(参考:毎月勤労統計調査 令和2年分結果確報)

平成27年から令和元年までの残業代(所定外給与)の平均額の推移を整理すると以下のとおりとなっています(参考:毎月勤労統計調査)。

残業代の平均額の推移

ただし、厚生労働省による調査は、雇用主が対象とされています。
違法な長時間残業などが正確に申告されていない可能性があり、残業代についても実際に支払うべき金額よりも低額になっている可能性がある点に注意が必要です

例えば、厚生労働省による調査では、一般労働者とパートタイム労働者を合わせた残業時間(所定外労働時間)は

月9.2時間

とされています。
なお、一般労働者に限定すると12.4時間、パートタイム労働者に限定すると2.1時間です。
(参考:毎月勤労統計調査 令和2年分結果確報)

これに対して、労働者を対象とした民間企業による調査では、令和2年の平均残業時間は

月24時間程度

により推移しているとされています(1~3月24.86時間、4~6月23.53時間、7月~9月24.11時間、10~12月24.02時間)。

日本の残業時間定点観測(出典:OpenWork 働きがい研究所「日本の残業時間 定点観測」 四半期速報)

労働者を対象とした民間企業の調査の方が、より説得力があると言えるでしょう。

そして、令和2年の労働者全体の賃金(6月分の所定内給与額)の平均は、

月30万7700円

とされています。
(出典:厚生労働省 令和2年賃金構造基本統計調査の概況)

民間企業が調査した残業時間の平均をもとに、労働者全体の賃金の平均に従い、月平均所定労働時間を160時間と仮定して、残業代を算出してみると、

30万7700円÷160時間×24時間×1.25倍
=月5万7693円

となります。

このことからも、実際には、月に5万円~6万円程度の残業代をもらっている方又はもらうべき方が多いものと推測されます。

以下では、もう少し詳しく、

・業界別の残業代平均額
・年代別の残業代平均額
・都道府県別の残業代平均額
・みなし残業代の平均額

について、説明していきます。

業界別の残業代平均額

厚生労働省が調査した業界別の残業代平均額をまとめると以下のとおりとなります。
(参考:毎月勤労統計調査 令和2年分結果確報)

業界別 就業形態合計

これを見ると業界により残業代の金額が大きく異なることがわかります。

「電気・ガス業」、「運輸業,郵便業」、「情報通信業」については、残業代の金額が比較的高い傾向にあります

これに対して、「生活関連サービス」、「教育,学習支援業」、「飲食サービス業」などは、残業代の金額が比較的低い傾向にあります

年代別(20代・30代・40代・50代)の残業代平均額

次に年代別(20代・30代・40代・50代)の残業代平均額については、具体的な調査資料を確認することができませんでした。

そのため、「民間企業が調査した年代別の残業時間」と「賃金構造基本統計調査による年代別の賃金の平均」から分析していきます。

まず、民間企業が調査した年代別の残業時間は、以下のとおりです。

年代別の平均残業時間(出典:2018年「OpemWork残業時間レポート」)

賃金構造基本統計調査による年代別の賃金の平均額は、以下のとおりです。

賃金構造基本統計調査 年代別

(参考:毎月勤労統計調査 令和2年分結果確報)

これを踏まえて、月平均所定労働時間を160時間として、残業時間(法定時間外残業時間)と賃金(所定内給与)を以下のように仮定すると、年代ごとの残業代の金額は以下のとおりとなります。

年代別 残業代平均額

都道府県別の残業代平均額

厚生労働省の調査によると都道府県別の残業代の平均額は、以下のとおりです。

都道府県別の平均残業代(参考:毎月勤労統計調査地方調査 令和元年平均分結果概要)

みなし残業代の平均額

当サイトでは、一般に公開されている求人票のうち、みなし残業代(固定残業代)が支給されている100件を抽出して、平均額を調べました。

具体的には、みなし残業代(固定残業代)の下限と上限、想定残業時間を整理したうえで、それぞれの平均を算出しています。

みなし残業代の平均額

平均より残業代が少ない原因

もしも、あなたの残業代が平均よりも少ない場合には、例えば以下のような原因が想定されます。

原因1:基礎賃金が少ない
原因2:残業時間が少ない
原因3:残業代の計算が誤っている
原因4:残業代がカットされている
原因5:固定残業代扱いされている手当がある
原因6:管理監督者として扱われている

順番に見ていきましょう。

原因1:基礎賃金が少ない

残業代が平均より少ない原因の1つ目は、基礎賃金が少ないことです。

後述するように、残業代は、基礎賃金をもとに計算されます。

そのため、残業時間が多くても、基礎となる賃金が少ない場合には、残業代が平均よりも少なくなることがあるのです。

原因2:残業時間が少ない

残業代が平均より少ない原因の2つ目は、残業時間が少ないことです。

後述するように、残業代は、残業時間をもとに計算されます。

そのため、残業時間が少ない場合には、残業代が平均よりも少なくなることがあります。

原因3:残業代の計算が誤っている

残業代が平均より少ない原因の3つ目は、残業代の計算が誤っていることです。

残業代の計算については、法律上のルールがあり、計算方法の違いによりその金額に影響が出てきます。

実際、残業代について正確に計算をし直してみると、未払いの残業代が見つかることが非常に多いのです

残業代の計算方法については、後述していますので確認してみましょう。

原因4:残業代がカットされている

残業代が平均より少ない原因の4つ目は、残業代がカットされていることです。

会社によっては、例えば、「月30時間分以上の残業代は支払わない」などの独自ルールを定めていることがあります

その結果、実際に支払われるべき残業代が支払われていないことがあるのです。

しかし、このようなルールは労働基準法よりも、労働者に不利益なものであって許されません。

もしも、そのようなルールがある場合には、弁護士に相談してみましょう。

原因5:固定残業代扱いされている手当がある

残業代が平均より少ない原因の5つ目は、固定残業代扱いされている手当があることです。

固定残業代は、残業の有無にかかわらず、定額の残業代を支給するものです。

しかし、「固定残業代」と言う名目で支給されているものばかりではなく、「基本給の一部に組み込まれているケース」や「役職手当という名目で支給されているケース」があります

そのため、固定残業代扱いされている手当がある場合には、残業代が平均よりも少なくなる可能性があるのです。

ただし、固定残業代は、以下のような場合には残業代の支払いと認められない可能性があるので確認してみましょう

☑個別の合意又は周知がない場合
☑基本給に固定残業代が含まれている場合で、固定残業代の金額が不明である場合
☑役職手当などの名称で支給されている場合で、その手当に残業代以外の性質が含まれている場合
☑固定残業代が想定している残業時間が月45時間を大きく上回っている場合

固定残業代については、以下の記事で詳しく解説しています。

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原因6:管理監督者として扱われている

残業代が平均より少ない原因の6つ目は、管理監督者として扱われていることです。

管理監督者には、労働基準法上、時間外残業代と休日残業代の支払いが不要とされています

そのため、管理監督者として扱われている場合には、残業代が平均よりも少なくなる可能性があるのです。

ただし、以下の事項に多く該当する場合に、名ばかり管理職として、時間外残業代と休日残業代を請求できる可能性があるので確認してみましょう

経営会議に参加していない方
☑経営会議に参加しても発言権に乏しい方
☑従業員の採用や配置について決定権がない方
☑職務内容がマネージャー業務ではなく現場作業である方
☑タイムカード等により出退勤の管理がされている方
☑遅刻や欠勤等をした場合に給料が控除される方
☑業務予定や結果の報告が求められている方
☑休日を自由に決められない方
☑その残業時間に比較して支給されている給料が著しく少ない方
☑他の労働者に比べて優遇されているとはいえない方

管理監督者については、以下の記事で詳しく解説しています。

管理職も残業代を請求できる!?チェックリストで分かる確認事項3つ法律上、管理職の方でも、残業代を請求できるケースがほとんどです。実際には、名ばかり管理職にすぎない方が多いのです。今回は、あなたが名ばかり管理職か確認するポイントを解説します。...

管理監督者とは何かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。

 

残業代の計算方法

残業代の計算式は以下のとおりです。

残業代の計算式と5つのステップ

STEP1:基礎賃金は、以下の7つの賃金以外の合計額です。
①家族手当
②通勤手当、
③別居手当
④子女教育手当
⑤住宅手当
⑥臨時に支払われた賃金
⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

STEP2:所定労働時間というのは、会社において決められた労働時間です。

STEP3:割増率は以下のとおりです。
・法定時間外:1.25倍
・法定休日:1.35倍
・深夜:0.25倍

STEP4:残業時間は、法定労働時間や法定休日、深夜に働いた時間です。

残業代早見表を作成しましたので、確認してみてください。

また、以下のリンクから簡単に残業代チェッカーを利用することができます。

残業代の計算方法については、以下の記事で詳しく説明しています。

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残業代の請求方法

残業代の請求手順は以下のとおりです。

STEP1:通知の送付
STEP2:残業代の計算
STEP3:交渉
STEP4:労働審判
STEP5:訴訟

残業代請求の手順残業代請求の方法・手順については、以下の動画でも詳しく解説しています。

STEP1:通知の送付

残業代を請求するためには、内容証明郵便により、会社に通知書を送付することになります。

理由は以下の2つです。

・時効を一時的に止めるため
・資料の開示を請求するため

具体的には、以下のような通知書を送付することが多いです。

御通知(残業代請求:時効3年)※御通知のダウンロードはこちら
※こちらのリンクをクリックしていただくと、御通知のテンプレが表示されます。
表示されたDocumentの「ファイル」→「コピーを作成」を選択していただくと編集できるようになりますので、ぜひご活用下さい。

STEP2:残業代の計算

会社から資料が開示されたら、それをもとに残業代を計算することになります。

残業代の計算方法については、先ほど説明したとおりです。

STEP3:交渉

残業代の金額を計算したら、その金額を支払うように会社との間で交渉することになります。

交渉を行う方法については、文書でやり取りする方法、電話でやり取りする方法、直接会って話をする方法など様々です。相手方の対応等を踏まえて、どの方法が適切かを判断することになります。

残業代の計算方法や金額を会社に伝えると、会社から回答があり、争点が明確になりますので、折り合いがつくかどうかを協議することになります。

STEP4:労働審判

話し合いでの解決が難しい場合には、労働審判などの裁判所を用いた手続きを検討することになります。

労働審判というのは、全3回の期日で調停を目指すものであり、調停が成立しない場合には裁判所が一時的な判断を下すものです。

労働審判を経ずに訴訟を申し立てることもできます。

労働審判とはどのような制度かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。

STEP5:訴訟

交渉や労働審判での解決が難しい場合には、最終的に、訴訟を申し立てることになります。

訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。

残業代の請求方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

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残業代の悩みは弁護士への相談がおすすめ

残業代の悩みは、弁護士への相談がおすすめです。

未払い残業代の請求については、法的な問題です。

弁護士に相談することで、あなたの残業代に未払いがないかどうかを確認してもらうことができます

また、あなたが会社に対して残業代を請求した場合の見通しやリスクについても助言してもらうことができるでしょう。

加えて、あなたは弁護士に依頼した場合には、残業代の計算や会社との交渉を丸投げしてしまうことができます

初回無料相談を利用すれば費用をかけずに相談することができますので、これを利用するデメリットは特にありません。

そのため、残業代の悩みは弁護士に相談することがおすすめなのです。

まとめ

以上のとおり、今回は、残業代の平均額、並びに、残業代が少ない原因について、解説しました。

この記事の要点を簡単にまとめると以下のとおりです。

厚生労働省の資料によると、一般労働者とパートタイム労働者を合わせた残業代(所定外給与)の平均額は月1万7357円とされています。

ただし、実際の残業代の平均金額はこれよりも高いとうかがわれ、「民間企業の調査した残業時間の平均」や「労働者全体の賃金の平均」からは、月5万円~6万円程度の残業代をもらっている方又はもらうべき方が多いものと推測されます。

もしも、あなたの残業代が平均よりも少ない場合には、例えば以下のような原因が想定されます。

原因1:基礎賃金が少ない
原因2:残業時間が少ない
原因3:残業代の計算が誤っている
原因4:残業代がカットされている
原因5:固定残業代扱いされている手当がある
原因6:管理監督者として扱われている

基礎賃金や残業時間に比して残業代が少ないと感じる場合には、弁護士に相談してみましょう。

この記事が、自分の残業代が他の人よりも少ないのではないかと悩んでいる方の助けになれば幸いです。

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弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日
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