未払残業代・給料請求

労働基準法の残業代に関するルールと13個の疑問をわかりやすく解説

労働基準法の残業代に関するルール

労働基準法では残業代に関してどのようなルールが定められているか知りたいと悩んでいませんか?

「残業代」という言葉は、日常でもよく使われますが、その根拠がどのように定められているのか気になりますよね。

残業代は、労働基準法では、割増賃金という名称で、労働基準法37条に規定されています。

割増賃金というのは、簡単に言うと、労働者が、法定時間外、法定休日、深夜に働いた場合に、会社が、通常の賃金よりも割り増しして支払わなければいけない賃金です。

そして、労働基準法上、割増賃金の計算方法についてはルールがあり、会社が支払いを怠ると刑事罰や付加金などのペナルティもあります

「労働基準法」と聞くと難しいのではないかと感じてしまうかもしれませんが、割増賃金の考え方の大枠がわかれば、誰でも簡単に理解することができます

また、残業代については、会社のルールが労働基準法違反なのではないかと感じることも多いでしょうから、よくある残業代に関する疑問についても、この記事で網羅していきます。

今回は、労働基準法の残業代に関するルール13個の疑問について、わかりやすく解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明します。

この記事を読めば、残業代に関するルールが法律上どのようになっているのかがわかるはずです。

 

 

 

労働基準法上の残業代のルール

残業代は、労働基準法において、割増賃金という名称で、労働基準法37条に規定されています。

労働基準法37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
1「使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」
4「使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」

割増賃金というのは、簡単に言うと、労働者が、法定時間外、法定休日、深夜に働いた場合に、会社が、通常の賃金よりも割り増しして支払わなければいけない賃金です。

割増賃金の支払いを怠った場合の刑事罰として、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が規定されています

労働基準法119条
「次の各号のいずれかに該当する者は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」
一「…第三十七条…の規定に違反した者」

割増賃金の支払いを怠った場合の罰則については、以下の記事で詳しく解説しています。

残業代未払いには罰則がある!申告方法と労働者が請求できる倍の制裁会社が労働者に残業代を支払っていない場合には、罰則が科されるとされています。今回は、労働者が会社に罰則を科す方法や罰則とは別に民事上請求できる3つのお金を紹介します。...

以下では、もう少し詳しく、

・労働基準法上残業代が出る3つの類型
・労働基準法上残業代が出ない5つの例外

について解説していきます。

労働基準法上の割増賃金が出る3つの類型

労働基準法上、割増賃金が出る類型としては、以下の3つがあります。

類型1:法定時間外労働
類型2:法定休日労働
類型3:深夜労働

法定時間外労働

法定時間外労働は、1日8時間又は週40時間を超えて働く場合です。

労働基準法では、労働時間は、1日8時間、週40時間とされています。

労働基準法32条
1「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」
2「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」

法定労働時間の例 1日8時間 法定時間外労働の例 1週40時間

法定休日労働

法定休日労働とは、法定休日に労働した場合です。

労働基準法では、会社は労働者に週に1日以上の休日を与えなければならないとされています。

労働基準法35条
1「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。」
2「前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。」

法定休日労働の例

深夜労働

深夜労働とは、午後10時から午前5時までの間に働いた場合です。

労働基準法では、午後10時から午前5時までの間に働いた場合につき割り増しの対象としています。

労働基準法37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
4「使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」

深夜労働の例

労働基準法上の割増賃金が出ない5つの例外

これに対して、労働基準法では、割増賃金が出ない例外についても定められています

例えば、以下の5つのケースでは、割増賃金が支給されない可能性がありますので留意が必要です。

例外1:管理監督者に該当するケース
例外2:農業等に従事しているケース
例外3:秘書業務等に従事しているケース
例外4:高度プロフェッショナル制度が取られているケース
例外5:裁量労働制がとられているケース

管理監督者に該当するケース

労働基準法上の割増賃金が出ない例外の1つ目として、管理監督者に該当するケースがあります。

労働基準法において、管理監督者には、法定労働時間や法定休日の規定は適用されないためです

労働基準法41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
「この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。」
二「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者…」

しかし、管理監督者に該当するのは、以下の3つの条件を満たす方に限られています。

・経営者との一体性
・労働時間についての裁量
・対価の正当性

そのため、実際には、課長や係長などの役職についていても、「名ばかり管理職」に過ぎないケースが多いのです

なお、管理監督者に該当する場合でも、深夜割増賃金の規定については適用されます。

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農業等に従事しているケース

労働基準法で割増賃金が出ない例外の2つ目として、農業等に従事しているケースがあります。

労働基準法において、農業、畜産業、漁業、水産養殖業、養蚕業等に従事する者には、法定時間外労働や法定休日労働の規定は適用されないためです

労働基準法第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
「この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。」
一「別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

なお、農業等に従事している者でも、深夜割増賃金の規定については適用されます。

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秘書業務等に従事しているケース

労働基準法で割増賃金が出ない例外の4つ目として、秘書業務等に従事しているケースがあります。

労働基準法において、機密事務取扱者には、法定時間外労働者や法定休日労働の規定は適用されないためです

労働基準法41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
「この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。」
二「事業の種類にかかわらず…機密の事務を取り扱う者

そして、機密事務取扱の例として、「秘書」が挙げられます。ただし、単なる秘書ではなく、社長秘書や役員秘書など管理監督者と一体となっている方に限定されています。

高度プロフェッショナル制度が取られているケース

労働基準法で割増賃金が出ない例外の4つ目として、高度プロフェッショナル制度が取られているケースがあります。

労働基準法において、高度プロフェッショナル制度が適用される労働者については、割増賃金に関する規定が適用されないためです

労働基準法41条の2
1「賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の五分の四以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者(以下この項において「対象労働者」という。)であつて書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意を得たものを当該事業場における第一号に掲げる業務に就かせたときは、この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。…」
一「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この項において「対象業務」という。)」
二「この項の規定により労働する期間において次のいずれにも該当する労働者であつて、対象業務に就かせようとするものの範囲」
イ「使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること。」
ロ「労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまつて支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額をいう。)の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。」

ただし、高度プロフェッショナル制度は、例えば、以下のような条件を満たす必要があるとされており、条件が厳格なため、これを導入している会社はほとんどありません

・対象の労働者の年収が1075万円以上であること
・労使委員会の決議
・行政官庁への届出
・対象労働者の書面による同意

裁量労働制がとられているケース

労働基準法で割増賃金が出ない例外の5つ目として、裁量労働制がとられているケースがあります。

労働基準法において、裁量労働制がとられている場合には、実際の労働時間数に関係なく一定の時間労働したものとみなすとされているためです

労働基準法38条の3
「使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、労働者を第一号に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、第二号に掲げる時間労働したものとみなす。」
一「業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この条において「対象業務」という。)」
二「対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間」

例えば、1日12時間働いたような場合でも、労働した時間は8時間とみなされることがあることになります。

裁量労働制

裁量労働制については、以下の記事で詳しく解説しています。

裁量労働制は残業代が出ない?
裁量労働制は残業代が出ない?残業代ゼロが違法な3つの例と計算方法裁量労働制のもとでも、残業代を請求できる可能性があります。今回は、裁量労働制について、その意味や条件などの基本的な知識を説明した上で、残業代が出る3つのケースと正確な残業代の計算方法について解説します。...

これって労働基準法違反?よくある残業代の13個の疑問

残業代について、よく「労働基準法違反ではないか?」と疑問に思う方が多い問題として、以下の13個があります。

疑問1:代休や振替休日
疑問2:みなし残業代
疑問3:残業代込みの基本給
疑問4:歩合に含まれているという理由で残業代が出ない
疑問5:会社が設けた残業代の上限
疑問6:1分単位で残業代が出ない
疑問7:パートやアルバイトという理由で残業代が出ない
疑問8:移動時間に残業代が出ないの
疑問9:休憩時間に働いた場合に残業代が出ない
疑問10:試用期間中に残業代が出ない
疑問11:許可がないという理由で残業代が出ない
疑問12:変形労働時間制だからという理由で残業代が出ない
疑問13:年俸制と言う理由で残業代が出ない

これらの疑問について、順番に解消していきます。

疑問1:代休や振替休日

残業代についてよくある疑問の1個目は、代休や振替休日です。

労働基準法上、代休や振替休日についての明文の規定はありません。

そのため、休日出勤をした場合に代休や振替休日を与えないことも、直ちに労働基準法違反となるわけではありません

ただし、以下の場合には結果的に違法となることがあります。

⑴振替休日を与えないことにより週休1日を下回る場合で、かつ、36協定が締結されていない場合
⑵十分な残業代が支給されていない場合

これに対して、会社は、労働者に代休や振替休日を与えることについては、就業規則などに根拠がある限り適法に行うことができます
なお、労働者は、就業規則に代休や振替休日の根拠がない場合や就業規則に記載された条件が満たされていない場合には、これを拒否することができます。

疑問2:みなし残業代

残業代についてよくある疑問の2個目は、みなし残業代です。

みなし残業代は、労働者が残業をしたかどうかにかかわらず、定額の残業代が支給されるものです。

みなし残業代自体は、労働基準法で禁止されているわけではありませんので、直ちに違法となるわけではありません

ただし、例えば、以下のケースについて、みなし残業代を理由に残業代が支払われない場合には、違法となる可能性があります。

☑個別の合意又は周知がない場合
☑基本給にみなし残業代が含まれている場合で、みなし残業代の金額が不明である場合
☑役職手当などの名称で支給されている場合で、その手当に残業代以外の性質が含まれている場合
☑みなし残業代が想定している残業時間が月45時間を大きく上回っている場合
☑みなし残業代が想定する時間を超えて残業をした場合

みなし残業代については、以下の記事で詳しく解説しています。

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疑問3:残業代込みの基本給

残業代についてよくある疑問の3個目は、残業代込みの基本給です。

基本給に「みなし残業代」を組み込んで支給する、いわゆる基本給組み込み型についても労働基準法において禁止されているわけではありません

そのため、残業代込みの基本給も直ちに違法とはいえません。

しかし、先ほどの疑問2で説明したように、「基本給に組み込まれているみなし残業代の金額が不明確である場合」や「みなし残業代が想定する時間を超えて残業をした場合」に別途残業代が支給されない場合には、違法となります

疑問4:歩合に含まれているという理由で残業代が出ない

残業代についてよくある疑問の4個目は、歩合に含まれているという理由で残業代が出ないことです。

歩合給にみなし残業代を含めて支給することも、労働基準法において禁止されているわけではありません

そのため、残業代込みの歩合給も直ちに違法とはいえません。

しかし、先ほどの疑問2で説明したように、「歩合給に組み込まれているみなし残業代の金額が不明確である場合」や「みなし残業代が想定する時間を超えて残業をした場合」に別途残業代が支給されない場合には、違法となります

疑問5:会社が設けた残業代の上限

残業代についてよくある疑問の5個目は、会社が設けた残業代の上限です。

会社は、勝手に「月に20時間分以上の残業代は支給しない」などの上限を設けることがあります

しかし、このような会社が作った独自ルールは、労働基準法が定めている割増賃金の規定よりも労働者に不利なものですので、許されません

そのため、会社が勝手に残業代の上限を設けて、上限を超える残業代を支給しないことは労働基準法違反となります。

疑問6:1分単位で残業代が出ない

残業代についてよくある疑問の6個目は、1分単位で残業代が出ないことです。

裁判実務では、残業代については、1分単位で支払わなければならないとされています

例えば、労働者が1日に8時間01分働いた場合、会社は、その「1分」についても残業代を支払わなければいけないのです。

そのため、会社は1分単位で残業代を支給しないことは裁判実務上許されません。

疑問7:パートやアルバイトという理由で残業代が出ない

残業代についてよくある疑問の7個目は、パートやアルバイトという理由で残業代が出ないことです。

労働基準法では、パートやアルバイトなどについても、正社員と区別せずに、割増賃金の支払い義務が規定されています

そのため、パートやアルバイトという理由で、残業代を支払わないことは労働基準法違反に当たります。

疑問8:移動時間に残業代が出ない

残業代についてよくある疑問の8個目は、移動時間に残業代が出ないことです、

「通勤時間」「用務先間の移動時間」「出張後の移動時間」に分けて説明します。

通勤時間については、原則として、労働時間には当たらないとされています。もっとも、始業してからの労働時間と同様のものであると言える場合には、労働時間に該当する可能性があります。

用務先間の移動時間については、原則として、労働時間に当たります。ただし、業務から離脱し、当該時間を自由に利用することが認められる特段の事情がある場合には、労働時間には当たりません。

出張前後の移動時間については、原則として、労働時間に当たらないとされています。ただし、出張の異動をすること自体が業務とされているケースでは労働時間に該当することがあります。

以上の移動時間につき、労働時間に該当するにもかかわらず、これが残業時間の計算の基礎に含まれない場合には違法となります。

疑問9:休憩時間に働いた場合に残業代が出ない

残業代についてよくある疑問の9個目は、休憩時間に働いた場合に残業代が出ないことです。

業務を行っていたために休憩時間を取ることができなかった場合には、その時間も労働時間に該当します

そのため、休憩時間に働いた場合に残業代が出ない場合にも、違法となる可能性があります。

ただし、休憩時間を取ることができなかったことについては、労働者側に何らかの裏付けを求められる傾向にありますので注意しましょう。

疑問10:試用期間中に残業代が出ない

残業代についてよくある疑問の10個目は、試用期間中に残業代が出ないことです。

労働基準法では、試用期間中についても、本採用後と区別せずに、割増賃金の規定が適用されます

そのため、試用期間中という理由で、残業代を支払わないことは労働基準法違反に当たります。

疑問11:許可がないという理由で残業代が出ない

残業代についてよくある疑問の11個目は、許可がないという理由で残業代がでないことです。

労働時間と言うのは、会社の指揮命令下に置かれた時間をいいます。

そのため、会社が知らないところで勝手に業務を行っているような場合には残業代が出ないことが違法とはいえない場合があります

ただし、会社の明示の許可までは不要ですので、会社があなたの残業を知りつつこれに異議を唱えない場合に、残業代を支給しないことは違法となる可能性が高いでしょう

疑問12:変形労働時間制だからという理由で残業代が出ない

残業代についてよくある疑問の12個目は、変形労働時間制だからという理由で残業代が出ないことです。

変形労働時間制とは、あらかじめ法定労働時間を超えて労働させることができる日や週を定めておき、一定期間において平均して週の法定労働時間を超えなければ、残業代は発生しないとする制度です。

変形労働時間制が取られている場合には、一定期間の労働時間が平均して週40時間を超えなければ、1日や1週の法定労働時間を超えていても、残業代が出ない可能性があります

変形労働時間制の例

ただし、変形労働時間制が取られている会社でも、以下の場合に残業代が出ないのであれば、労働基準法違反となります

☑法定労働時間を超える時間が定められた日や週においてその時間を超えた場合
☑法定労働時間を超えない時間が定められた日や週において法定労働時間を超えた場合
☑変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した場合

変形労働時間制と残業代については、以下の記事で詳しく解説しています。

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疑問13:年俸制と言う理由で残業代が出ない

残業代についてよくある疑問の13個目は、年俸制と言う理由で残業代が出ないことです。

労働基準法は、年俸制の場合であっても、月給制や日給制等の場合と同様に割増賃金を支払う必要があるとしています

そのため、年俸制と言う理由だけで残業代の支払いをしないことは労働基準法違反となります。

年俸制と残業代については、以下の記事で詳しく解説しています。

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労働基準法上の残業代の計算方法

労働基準法上、残業代については、以下の方法により計算することになります。

残業代の計算式と5つのステップ

STEP1:基礎賃金は、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金以外の賃金の合計額です。

STEP2:所定労働時間というのは、会社において決められた労働時間です。

STEP3:割増率は以下のとおりです。
・法定時間外:1.25倍
・法定休日:1.35倍
・深夜:0.25倍

STEP4:残業時間は、法定労働時間外や法定休日、深夜に働いた時間です。

残業代早見表を作成しましたので、確認してみてください。

また、以下のリンクから簡単に残業代チェッカーを利用することができます。

残業代の計算方法については、以下の記事で詳しく説明しています。

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残業代の請求方法

残業代の請求手順は以下のとおりです。

残業代請求の手順

まず、残業代を請求するためには、時効を一時的に止めたり、資料の開示を請求したりするために、内容証明郵便により、会社に通知書を送付することになります。

会社から資料が開示されたら、それをもとに残業代を計算することになります。

残業代の金額を計算したら、その金額を支払うように会社との間で交渉することになります。

話し合いでの解決が難しい場合には、労働審判などの裁判所を用いた手続きを検討することになります。

交渉や労働審判での解決が難しい場合には、最終的に、訴訟を申し立てることになります。

残業代の請求方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

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労働基準法上の残業代に関連する規定

労働基準法上の残業代に関連する重要な規定として、以下の2つがあります。

・時効
・付加金

時効

労働基準法上、残業代の消滅時効は、2020年3月末までに発生したものは2年2021年4月1日以降に発生したものは3年になります。

令和2年の労働基準法改正で、残業代の消滅時効は、2年から3年になったためです。

旧労働基準法115条(時効)
「この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。」
新労働基準法115条(時効)
「この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から5年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から2年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。」
新労働基準法附則143条
3「第115条の規定の適用については、当分の間、同条中『賃金の請求権はこれを行使することができる時から5年間』とあるのは、『退職手当の請求権はこれを行使することができる時から5年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から3年間』とする。」

残業代の時効については、以下の記事で詳しく解説しています。

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付加金

労働基準法上、会社は、残業代の支払いをしない場合には、付加金というペナルティを課されることがあります。

付加金とは、使用者が一定の金員の未払いがある場合に、労働者の請求により、裁判所が未払金と同一額の支払いを命じることができるとされるものです(労働基準法114条)。

労働基準法114条(付加金の支払)
「裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第九項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から五年以内にしなければならない。」

つまり、労働者は、付加金も併せて支給することにより、残業代の未払分と付加金で2倍の支払いを受けることができる可能性があるのです

労働基準法に規定されていない残業代|所定外残業代

労働基準法に規定されていない残業代として、所定外残業代があります

所定外残業代は、労働基準法の定める時間外や休日、深夜ではないものの、労働条件で決められた範囲外の労働をする場合に発生する残業代です。

具体的には、所定時間外残業代所定休日残業代があります。

所定時間外残業代は、所定労働時間を超えて働いた場合に支給される残業代です。所定労働時間とは、会社が決めた労働時間です。

所定休日残業代は、所定休日に働いた場合に支給される残業代です。所定休日とは、法定休日以外の休日です。

所定外残業代の割増率は、原則として1.0倍とされていますが、これよりも高い割増率が雇用契約書や就業規則で規定されている場合には、それに従うことになります。

残業代についての疑問は弁護士に相談しよう!

残業代についての疑問は弁護士に相談することがおすすめです。

残業代についての問題を正確に理解するには、これまで見てきたとおり、労働基準法の知識が必要不可欠です。

法律の専門家である弁護士に相談すれば、あなたの残業代についての悩みもきっと解消するはずです

ただし、残業代についての悩みを相談する場合には、残業問題に注力している弁護士に相談することをおすすめします

弁護士にも得意分野や不得意分野があります。残業問題を多く扱っている弁護士に相談すれば、これまでの経験を踏まえた実践的な助言をしてもらうことができるでしょう。

初回無料相談を利用すれば費用をかけずに相談することができますので、これを利用するデメリットは特にありません。

そのため、残業代についての疑問は弁護士に相談してみましょう。

まとめ

以上のとおり、今回は、労働基準法の残業代に関するルールと13個の疑問について解説しました。

この記事の要点を簡単にまとめると以下のとおりです。

残業代は、労働基準法において、割増賃金という名称で、労働基準法37条に規定されています。

割増賃金というのは、簡単に言うと、労働者が、法定時間外、法定休日、深夜に働いた場合に、会社が、通常の賃金よりも割り増しして支払わなければいけない賃金です。

労働基準法上、残業代は以下の方法により計算します。

残業代の計算式と5つのステップ

会社は、残業代の支払いを怠ると、未払い残業代の支払いだけではなく、刑事罰や付加金などのペナルティを課される可能性があります。

労働基準法に規定されていない残業代として、所定時間外残業代と所定休日残業代があります。

この記事が、残業代に関する法律上のルールがどのようになっているかを知りたい方の助けになれば幸いです。

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弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。主な取扱分野は、人事労務、離婚・男女問題、相続、企業法務、紛争解決(訴訟等)、知的財産、刑事問題等。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。
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