
残業代請求をしようと考えた場合、自分で請求できるのか、それとも弁護士に依頼した方がいいのか迷いますよね。
多くの方は、弁護士を利用したことがないでしょうし、
・どのくらいの費用がかかるのか
・どのように弁護士を選べばいいのか
・そもそも弁護士をつけずに残業代を請求することもできるのではないか
との疑問を持っているはずです。
結論からいうと、残業代請求については弁護士に依頼することがおすすめです。
その理由は以下の5つです。
①獲得できる残業代金額が増額する可能性が高い
②代わりに証拠を集めてもらえる
③残業代の計算を代わりにしてもらえる
④会社との交渉を有利に進めることができる
⑤労働審判や訴訟を代理してもらうことができる
実際、私が担当した事件の中では、月100時間を超える残業があったケースにおいて、ご依頼いただいたことにより、1000万円を超える残業代の請求に成功した事件もあります。更に、残業代とは別に長時間労働を理由とする精神疾患についての損害賠償請求が認められることもあります。
もっとも、どの弁護士に依頼しても最高の結果が得られるというわけではありません。
そのため、弁護士を選ぶ際には慎重に選ぶ必要があります。
具体的には、依頼する弁護士を選ぶ際には以下の5つを重視して選ぶべきです
①残業代請求が得意な弁護士を選ぶ
②実績のある弁護士を選ぶ
③話しやすい弁護士を選ぶ
④料金体系が分かりやすく、かつ、完全成功報酬制の弁護士を選ぶ
⑤少しでも多くの残業代を回収するために全力を尽くしてくれる弁護士を選ぶ
この記事では以下の流れに沿って説明していきます。

この記事を読んでくださっている方々が、いい弁護士を見つけることができ、正当な残業代を回収することができれば幸いです。



目次
残業代請求を弁護士に依頼すべき5つの理由
残業代請求は、自分自身で請求するよりも弁護士に依頼することを強くおすすめします。
その理由は以下の5つです。
①獲得できる残業代金額が増額する可能性が高い
②代わりに証拠を集めてもらえる
③残業代の計算を代わりにしてもらえる
④会社との交渉を有利に進めることができる
⑤裁判手続を代理してもらうことができる

順に説明していきます。
獲得できる残業代金額が増額する可能性が高い
弁護士に依頼すると獲得できる残業代の金額が、自分で請求する場合と比較して、増額する可能性が高いです。
自分自身で残業代の請求を行うとなると、残業代に関するルールについて分からないことも多いでしょう。
例えば、残業代を請求する場合には、残業代の支払いが遅れていることについて遅延損害金の請求や会社への制裁として付加金というものの支払いを命じるよう裁判所に求めることができます。他にも、残業代請求に関して様々なルールがあります。
弁護士は、法律に関する専門家であるため、残業代に関する知識が豊富にあります。
そのため、弁護士に依頼すれば、残業代を多く獲得できるように、法律上の知識を駆使してもらうことができます。そのため、獲得できる残業代金額が増額する可能性が高いのです。
代わりに証拠を集めてもらえる
残業に関する証拠が手元にない場合でも、諦める必要はありません。弁護士に依頼すれば、裁判例や法律上の手続きを用いて、証拠を代わりに集めてもらうことができます。
弁護士であれば、以下のことができるためです。
・過去の裁判例をもとに会社に対して証拠を開示させること
・法律の知識を使って証拠を提出させる手続きを行うこと
自分自身で残業代を請求する場合に、裁判例を指摘したり、法律の知識を使って証拠を提出させたりすることは、難易度が高いでしょう。
以下では、それぞれについて説明します。
過去の裁判例をもとに会社に対して証拠を開示させること
弁護士に依頼すれば過去の裁判例をもとに会社に対して証拠を開示させることができます。
例えば、タイムカードについては、会社が労働者に対して開示する義務を負っていることを認めた裁判例があります。
そのため、会社が、タイムカードの開示を拒むような場合には、このような裁判例を指摘して、タイムカードを開示するように求めることができます。
法律の知識を使って証拠を提出させる手続を行うこと
弁護士に依頼すれば法律の知識を使って会社に証拠を提出させる手続きを行うことができます。
例えば、会社が、存在するはずの就業規則や給与規程を提出しなかったとしましょう。
このような場合、弁護士は、裁判所に文書を提出する命令を出すように求めるなどの方法により証拠を提出させることができます。
残業代の計算を代わりにしてもらえる
弁護士に依頼すれば、残業代の計算を代わりにしてもらうことができます。
自分自身で計算しようとすると、以下のようなデメリットがあります。
・基礎となる賃金や残業時間が分からず自分に不利に残業代を計算してしまう
・700日以上の労働時間を計算することが大きな負担になってしまう
これに対して、弁護士に依頼すれば、より正確に、かつ労力をかけずに残業代の計算をしてもらうことができます。
残業代に注力している弁護士であれば、日ごろから残業代を計算しているので、計算するためのポイントを押さえています。
そのため、残業代の計算については、弁護士に任せるべきなのです。
会社との交渉を有利に進めることができる
弁護士に依頼すれば、自分で交渉するよりも、会社との交渉を有利に進めることができます。
残業代を請求していると、多くの争点が生じます。例えば、以下のとおりです。
・その時間は労働時間に当たるのか
・その手当はどのような性質のものなのか
・労働条件の変更は有効なのか
自分自身で残業代を請求する場合には、会社に顧問弁護士がついて、このような反論をしてきた場合に、これが適切かどうかを判断することはハードルが高いでしょう。
これに対して、弁護士に依頼すれば、会社の反論について裁判例等を調査し、会社の主張が不合理である場合や労働者に有利な裁判例がある場合には、説得的に主張をしてもらうことができます。
そのため、残業代請求について交渉する場合には、会社からの反論に適切に対処できる弁護士に依頼するべきなのです。
裁判手続を代理してもらうことができる
弁護士に依頼すれば、裁判手続を代理してもらうことができます。
労働者の主張が正しくても、会社が不合理な主張に固執することがあります。
自分自身で残業代を請求しようとすると、会社が正当な残業代の支払いに応じてくれない場合に、裁判手続のやり方が分からずに低い金額での和解に応じざるを得ないこともあります。
これに対して、弁護士に依頼すれば、会社が正当な残業代の支払いに応じてくれない場合でも、裁判手続きを行うことで、正当な残業代を獲得することができます。
そのため、正当な残業代金額を請求するためには、裁判手続のプロである弁護士に依頼すべきなのです。
[1000万円を超える残業代の請求に成功した事例]
実際に、私が担当した事件では、1000万円を超える残業代の請求に成功した事例もあります。
この事例では、残業時間が月に100時間を超えているにもかかわらず、管理職として、残業代は全く支払われていませんでした。
役職手当の性質や名ばかり管理職と言えるかなどが争いになりましたが、当方に有利な裁判例などを用いることで、当方の主張を裁判所に分かってもらうことができ、有利な金額により解決することができました。
誰でもこのような金額を獲得できるわけではありませんが、このように著しく長時間の残業をしている方や、残業代が全く支払われていないような方は、特に金額が大きくなる傾向にあります。
時効により残業代が消滅する前に、実績のある弁護士に相談してみるのがいいでしょう。
※残業代の時効期間は各給料日から2年(2020年4月1日以降が支払日のものは3年)です。
簡単に理解できる!残業代請求の弁護士費用!
残業代請求の弁護士費用は、残業代金額や報酬体系により異なります。
ただし、費用ごとの相場はありますので、以下では、
・残業代請求の弁護士費用の相場
・弁護士費用早見表
・弁護士費用を抑える方法
・弁護士費用の支払い時期と支払い方法
について解説します。
残業代請求の弁護士費用の種類
弁護士費用の種類には、以下のようなものがあります。
・相談料
・着手金
・報酬金
・出頭日当
・出張日当
順に説明していきます。

相談料の相場は0円~1万円
相談料とは、弁護士に相談をすることについてかかる費用です。
相談料の相場は、
です。
現在は、初回無料相談の法律事務所も増えてきましたので、その様な事務所では、1回目の相談は0円となります。
相談料につき有料の事務所や初回無料相談の事務所でも2回目以降の相談は、1回1万円、30分5000円などの料金を設定している事務所が多いです。
ただし、弁護士に事件を依頼した後であれば、その依頼した事件について面談をすることがあっても、通常、相談料は別にかかることはありません。
着手金の相場は0円~30万円
着手金とは、弁護士に事件を依頼して、弁護士が実際に事件にとりかかるために必要となる費用です。
仮に、事件が不成功に終わった場合であっても戻ってこないものです。
着手金の相場は、
です。
着手金無料の事務所も増えてきています。
着手金無料の事務所では、成功報酬の割合が高めに設定されることになります。
報酬金の相場は獲得金額の16%~30%
報酬金とは、弁護士に事件を依頼して、事件が実際に解決した場合に、その成功の程度に応じてかかる費用です。
事件が完全に不成功に終わった場合には発生しないものです。
報酬の相場は、獲得金額の
となります。
着手金・報酬金制の場合には、成功報酬の相場は、16%程度です。但し、獲得金額が300万円を超える場合には16%よりも低く設定している事務所もあります。
完全成功報酬制の場合には、成功報酬の相場は、24%~30%程度です。詳しくは、以下のコラムをご覧ください。
完全成功報酬制とは、着手金を0円として、事件が成功した場合にのみ報酬金が発生する制度です。
完全成功報酬制のメリットは、残業代請求が失敗に終わった場合に、弁護士費用で赤字になってしまうリスクを回避できる点です。
他方で、着手金が0円である反面、報酬の割合が高めに設定されているのが通常です。
具体的な料金体系については、獲得できた金額の中から
パターン1 〇%
パターン2 〇〇万円+〇%
とされているのが通常です。
パターン1の場合には、先ほど説明したように、おおよそ24%~30%程度が相場です。
パターン2の場合には、20~30万円+16%~24%程度が相場です。
出頭日当の相場は0円~3万円
出頭日当とは、弁護士が労働審判や訴訟の期日に出席することについてかかる費用です。
期日に出席するたびにかかることになりますので、期日の回数が多くなれば金額も大きくなります。
出頭日当の相場は、1期日当たり
となります。
出張日当の相場は3万円~10万円
出張日当とは、弁護士が長時間の移動を伴う場合に必要となる費用です。
会社の管轄が遠方にあり、遠方の裁判所に訴訟を提起せざるを得ない場合などに必要となります。
出張日当の相場は、1回当たり、
となります。
具体的には以下のとおりです。
往復2時間を超え4時間まで 3万円以上5万円以下
往復4時間を超える場合 5万円以上10万円以下
長時間の移動を伴わない場合には、出張日当は発生しません。
あなたの残業代の弁護士費用早見表
あなたの弁護士費用がいくらになるかについて、早見表で確認してみましょう。
以下では、「着手金・報酬金制」がとられている場合と、「完全成功報酬制」がとられている場合のそれぞれについて見ていきます。
着手金・報酬金制
着手金・報酬金制がとられている場合における弁護士費用は、以下のとおりとなります。
完全成功報酬制
完全成功報酬制の場合には、「割合のみが定められているケース」と「固定金額+割合」が定められているケースがあります。
それぞれについての弁護士費用は以下のとおりとなります。


弁護士費用を抑える方法
弁護士費用を抑える方法には、以下の4つがあります。
・着手金や報酬金が安い弁護士を探す
・依頼する際に費用の種類や見通しを十分に確認しておく
・自分の事案に有利な報酬体系を選ぶ
・自分で請求する

それでは順に説明します。
着手金や報酬金が安い弁護士を探す
弁護士費用を抑える最も単純な方法として、着手金や報酬金が安い弁護士を探すという方法があります。
着手金や報酬金が安ければ、当然弁護士費用を抑えることが可能となるためです。
そのため、相談に行く前に、その弁護士の報酬体系を確認してから行くようにしましょう。
ただし、後で説明しますが、弁護士費用が安い弁護士に頼むことが必ずしもいい結果につながるとは限りません。費用以外にも重視すべき点は多く存在することには注意が必要です。
依頼する際に費用の種類や見通しを十分に確認しておく
弁護士費用を抑える2つ目の方法として、依頼する際に費用の種類や見通しを十分に確認しておくという方法があります。
弁護士によっては、着手金や報酬金の他に「出頭日当」が必要になる場合や、労働審判や訴訟に至った場合に「移行時の着手金」が発生することがあります。
そのため、着手金や報酬金の他に必要な弁護士費用がないか、おおよその見通しがどの程度になるかを確認しておいた方がいいでしょう。
自分の事案に有利な報酬体系を選ぶ
弁護士費用を抑える3つ目の方法として、自分の事案に有利な報酬体系を選ぶという方法があります。
例えば、完全成功報酬制の場合ですと、おすすめは以下のとおりとなります。

完全成功報酬制では、獲得金額が200万円以下の場合には「割合のみ」の方が費用を抑えることができる傾向にあります。
これに対して、獲得金額が500万円以上の場合には「固定+割合」の方が費用を抑えることができる傾向にあります。
獲得金額が200万円~500万円の場合には、固定部分の金額や報酬の割合により、どちらが費用を抑えられるかは異なる傾向にあります。
自分で請求する
弁護士費用を抑える4つ目の方法として、自分で請求するという方法があります。
自分で請求すれば弁護士費用はかかりません。
しかし、弁護士費用を節約するために自分で請求するというのは、おすすめはできません。
なぜなら、弁護士費用は節約できるかもしれませんが、獲得できる金額が少なくなってしまうリスクの方が大きいためです。
残業代請求をした場合に、会社との間で和解をすると、多くの場合「解決金」という名目で和解金が支払われることになります。
その結果、税務上の扱いとしては、「一時所得」として取り扱われる傾向にあります。
一時所得として取り扱われる場合には、弁護士費用は経費として所得金額から控除することができます。
そのため、残業代請求において、和解金が支払われた場合には弁護士費用は経費として申告できるのです。
弁護士費用の支払い時期と支払い方法
弁護士費用の支払い時期と支払い方法について、その種類により異なります。
以下では、
・着手金
・成功報酬
・出頭日当や出張日当
の順で説明します。
着手金は委任時に振り込むことが多い
着手金は、原則として、委任時に支払います。
支払いの方法は、振り込みによることが多いですが、委任する弁護士に確認してみてください。
成功報酬は委任終了時に回収金額から精算することが多い
成功報酬は、委任終了時に、支払います。
支払いの方法は、回収した残業代金額から精算することが多い傾向にあります。
弁護士が回収した残業代を労働者に返還し、労働者が報酬金を弁護士に振り込むという方法をとることは煩雑です。そのため、回収した残業代金額から弁護士報酬を差し引いて、労働者に返還するという方法がとられるのです。
出頭日当や出張日当の支払い時期と方法は事務所に次第
出頭日当や出張日当の支払い時期と方法は事務所次第です。
委任する際に弁護士に確認してきましょう。
弁護士に依頼する際の注意点
弁護士に依頼する際の注意点として、以下の2点が挙げられます。
・着手金が必要な場合には赤字になる可能性がある
・残業代請求の弁護士費用は会社に請求できない
それでは、順に見ていきましょう。
着手金が必要な場合には赤字になる可能性がある
着手金が必要な場合には、弁護士費用により、赤字になる可能性があります。
着手金というのは、基本的には、残業代請求が失敗に終わった場合にも、戻ってこないものだからです。
そのため、着手金が必要である場合には、残業代請求の回収見込みについて、赤字になってしまうリスクについて、十分に確認してから依頼するようにしましょう。
残業代請求の弁護士費用は会社に請求できない
残業代請求の弁護士費用を会社に請求することはできません。
不法行為の場合を除き、判例は、相手方に弁護士費用を負担させていないためです。
そのため、相手方に弁護士費用を支払ってもらうことができると勘違いして、よく考えずに弁護士に依頼してしまうと、不測の出費が必要となりますので注意が必要です。
残業代請求を弁護士に依頼する方法
残業代請求を弁護士に依頼する方法としては、以下の4つがあります。
・インターネットから探す
・知り合いに紹介してもらう
・法テラスを使う
・弁護士会の法律相談センターを使う
それでは、順に説明します。
インターネットから探す
弁護士を探す方法に、インターネットから探すという方法があります。
インターネットから弁護士を探すメリットとデメリットは、以下のとおりです。
【メリット】
・報酬体系が分かりやすい
・実績が分かりやすい
・色々な弁護士を比較できる
・労働問題が得意な弁護士を探すことができる
【デメリット】
・その弁護士の人となりが分かりにくいことがある
インターネットから弁護士を探す場合のメリットは、情報が集めやすく、自分が頼みたい弁護士を自由に選ぶことができます。
確かに、画面越しではその弁護士の人となりが分かりにくいというデメリットがあります。しかし、初回無料相談などを利用すれば、どのような弁護士かを知ることもできます。
そのため、現在において、インターネットを利用することは、弁護士を探す方法のスタンダ―ドになりつつあります。
知り合いに紹介してもらう
弁護士を探す方法に、知り合いに紹介してもらうという方法があります。
知り合いに弁護士を紹介してもらうというメリットとデメリットは、以下のとおりです。
【メリット】
・その弁護士の人となりについて知り合いから教えてもらうことができる
・その弁護士の実績を知り合いに確認できる
【デメリット】
・労働問題が得意な弁護士とは限らない
・報酬体系が分からない
・委任を断りにくい
知り合いに弁護士を紹介してもらう方法のメリットは、その弁護士の人となりや実績を具体的な体験などを踏まえて、教えてもらうことができる点です。
他方で、デメリットとして、労働問題が得意な弁護士とは限らず、また報酬体系が明確でないこともあります。また、実際に紹介されて相談に行くと、心理的に委任を断りにくいでしょう。
そのため、弁護士を紹介してもらう場合には、どの分野が得意な弁護士なのかについて聞いておいた方がいいでしょう。また、弁護士費用についても、事前にホームページなどで確認しておくべきです。
法テラスを使う
弁護士を探す方法に、法テラスを使うという方法があります。
法テラスは、国により設立された法的トラブルのための案内所であり、法律相談を受けることもできます。
法テラスより弁護士を探すメリットとデメリットは、以下のとおりです。
【メリット】
・弁護士費用を一時的に立て替えてもらうことができる
・弁護士費用が低めに設定されている
【デメリット】
・飛び込み相談では担当弁護士を選べない(やる気のない弁護士や労働問題に詳しくない弁護士に当たる可能性がある)
・資力要件がある
・委任のための手続きが煩雑
・審査までに時間がかかる
法テラスを使う場合には、一時的に弁護士費用を立て替えてもらうことができるというメリットがあります。しかし、残業代については、完全成功報酬制を採用している弁護士が増えていますので、あまり大きなメリットとはいえないでしょう。
法テラスを使う場合には、飛び込み相談では担当弁護士を選べないというデメリットがあります。自分と合わない弁護士に当たってしまうことや労働問題に詳しくない弁護士に当たってしまうことがあります。
それに加えて、資力要件がある、手続きが煩雑である、審査に時間がかかるなどのデメリットがあります。
弁護士会の法律相談センターを使う
弁護士を探す方法に、弁護士会の法律相談センターを使うという方法があります。
弁護士会の法律相談センターとは、弁護士会が運営する法律相談機関です。
弁護士会の法律相談センターにより弁護士を探す場合のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
【メリット】
・資力の関係で法テラスを利用できない方も利用できる
【デメリット】
・相談料30分(5000円程度)がかかる場合がある(※)
・担当弁護士を選べない(やる気のない弁護士や労働問題に詳しくない弁護士に当たる可能性がある)
・依頼した場合の弁護士費用は担当する弁護士に聞く必要がある
※相談料がかかるかどうか及び正確な相談料については弁護士会にご確認ください。
弁護士会の法律相談センターを使うメリットは、資力の関係で法テラスを利用できない方も利用できる点です。
デメリットは、相談料30分(5000円程度)がかかる場合があること、担当弁護士を選べずに自分と合わない弁護士や労働問題に詳しくない弁護士に当たってしまう可能性があること、弁護士費用を担当の弁護士に確認しなければいけないこと等です。
残業代請求について最高の弁護士を選ぶために重視すべき点5つ
残業代請求について最高の弁護士を選ぶために重視すべき点は、以下の5つです。
①労働問題が得意な弁護士を選ぶ
②実績のある弁護士を選ぶ
③話しやすい弁護士を選ぶ
④料金体系が分かりやすく、かつ、完全成功報酬制の弁護士を選ぶ
⑤少しでも多くの残業代を回収するために全力を尽くしてくれる弁護士を選ぶ

それでは順に説明していきます。
労働問題が得意な弁護士を選ぶ
残業代請求について最高の弁護士を選ぶためには、労働問題が得意な弁護士を選ぶべきです。
なぜなら、残業代請求については、専門性が高いためです。労働問題に注力している弁護士であれば、ノウハウが蓄積されていますし、新しい判例などにも目を通しているため、より質の高い弁護をしてもらうことができます。
また、残業代請求をしていく中では、労働に関連する付随的な問題も多く発生します。そのため、残業代のみを扱っている弁護士ではなく、労働問題全般を幅広く扱っている弁護士に依頼するのが安心です。
例えば、残業代請求をしたことがきっかけで、会社から配置転換や解雇などの嫌がらせを受けた場合や、在職中のミスなどを理由に損害賠償請求の反論をされた場合にも、適切に対処できる必要があります。
残業代請求の弁護士を選ぶ際に、「労働者側専門」の弁護士にこだわる必要はありません。
確かに、「会社側専門」の弁護士に依頼することはおすすめしません。なぜなら、残業代を請求する側のノウハウが蓄積されていない可能性があるためです。
しかし、「労働者側と会社側いずれも扱っている」弁護士に頼むことは、何の問題もありません。むしろ、請求する側に加えて、請求される側の視点も持ち合わせているため、会社側の代理人も行った経験があるというのは、望ましいことです。
稀に、労働者側だけではなく、会社側の事件も扱っていると、あまり熱心に弁護してもらえないのではないかと不安に感じている方のお話も聞きます。しかし、それは全くの杞憂です。
なぜなら、弁護士は、依頼者の利益のために行動するべき義務を負っているためです。会社側の事件を扱っている弁護士であっても、労働者から残業代請求の依頼を受けた場合に手を抜くことはあり得ないのです。
万が一、弁護士自身の考え方と合わないような事件である場合には、その弁護士は受任の段階で断るはずです。
そのため、労働者側専門の弁護士にこだわり、選択の幅を狭めてしまうということはおすすめしません。
実績のある弁護士を選ぶ
次に、残業代請求について最高の弁護士を選ぶためには、実績のある弁護士を選ぶべきです。
なぜなら、実績のある弁護士であれば、その知識や経験、ノウハウが一定程度、裏付けられているためです。
自分の事案に近い解決事例があるような弁護士であれば安心して頼むことができるでしょう。
話しやすい弁護士を選ぶ
更に、残業代請求について最高の弁護士を選ぶためには、話やすい弁護士を選ぶことが重要です。
理由は、以下の2点です。
・円滑なコミュニケーションが重要になること
・ストレスなくやり取りができること
順に見ていきましょう。
円滑なコミュニケーションが重要であること
残業代請求をするに当たっては、弁護士と依頼者の円滑なコミュニケーションが重要となります。
争点については、細かい事実関係を正確に書面に反映させる必要があるためです。
例えば、働いた時間について争いとなっている場合には、普段、どのようなスケジュールで業務を行っているのか、それぞれの業務にかかる時間や内容を正確に弁護士に伝える必要があります。
自分にとって話しにくいと感じる弁護士であると、うまく事実関係を伝えるのも難しくなるでしょう。
そのため、話にくい弁護士ですと、回収できる残業代金額にも影響が出てきてしまうリスクがあります。
ストレスなくやり取りができること
また、何よりも弁護士とのやり取りが依頼者自身にとってストレスになってしまうというのは望ましくありません。
残業代請求をする場合には、定期的に弁護士と打ち合わせをする必要がありますし、メールや電話により報告や質問などのコミュニケーションを行うことがあります。
慣れない会社とのやり取りに不安を感じている状況でしょうから、弁護士とのやり取りのたびに、ストレスを感じていては、精神衛生上も良くないでしょう。
そのため、ストレスなく話をすることができる弁護士を選ぶことが重要なのです。
料金体系が分かりやすく、かつ、完全成功報酬制の弁護士を選ぶ
残業代請求について最高の弁護士を選ぶためには、料金体系が分かりやすく、かつ、完全成功報酬制の弁護士を選ぶべきです。
なぜなら、料金体系が不明確であると、最終的にいくら自分の手元に残るのかを予測を立てづらいためです。
また、何よりも、依頼する際に気になるのが、弁護士に依頼することで「損」をしてしまう可能性があるかどうかということです。
つまり、回収できた残業代金額よりも、弁護士費用の方が高くなってしまったという事態は、依頼する際に絶対に避けたいはずです。
完全成功報酬制がとられている場合には、弁護士費用の方が回収金額よりも高くなってしまうということはありません。回収金額の中から、報酬を支払うことになるためです。
そのため、料金体系が分かりやすく、かつ、完全成功報酬制の弁護士に選ぶのがいいでしょう。
弁護士に依頼する際に、なるべく安い弁護士に頼みたいと考えている方も多いでしょう。
確かに、同じ残業代金額を回収できるのであれば、費用が安ければ、手元に残る金額は増えます。
しかし、それはあくまでも、「同じ残業代金額を回収できるのであれば」の話です。
弁護士によりその技量や知識、経験、ノウハウ、得意分野は様々です。
安いからという理由で依頼したものの、他の弁護士であればより多くの残業代を回収できていたということもあり得るのです。
数万円や数%の弁護士費用の違いで、回収できる金額が数十万円減ってしまったとなると、残念に感じるはずです。
そのため、弁護士費用も大切ではありますが、安さのみを重視してしまうと失敗することがありますので注意が必要です。
少しでも多くの残業代を回収するために全力を尽くしてくれる弁護士を選ぶ
残業代請求について最高の弁護士を選ぶためには、少しでも多くの残業代を回収するために全力を尽くしてくれる弁護士を選ぶべきです。
残業代請求については、少しでも多くの残業代を回収しようとすると、多くの手間がかかります。
例えば、以下のような作業が必要になります。
・契約書や規則について過去のものも含めて確認し、改正点なども含めて、労働者にとって最も有利な労働条件が何かを分析する
・遅延損害金の起算日や利率、充当について検討する
・労働時間について、タイムカードに記載されていない時間で労働時間として主張立証できるものはないかを検討する
・支払いが必要なのに支払われていない手当がないかを検討する
・支払われている手当がどのような性質のものなのかを分析する
・休日の日数を正確に把握する
:
このように残業代請求を少しでも増額しようと考えた場合には、やれることは無数にあります。そのため、全力を尽くしてくれる弁護士に頼むことが重要なのです。
① 少額だと残業代請求を弁護士に受任してもらえない場合がある
残業代の金額が少額であると、弁護士に受任してもらえないことがあります。
例えば、①費用倒れになり依頼者自身にとって不利益となってしまうリスクがある場合や、②弁護士が事件を受任してしまうと経営を維持できなくなってしまう場合などです。
少額で弁護士への依頼が難しい場合には、労基署に相談するという方法もあります。労基署に相談することで、調査や指導をしてもらえる場合もあるためです。
② 残業代請求の相談は早い段階でした方がいい
残業代請求の相談は早い段階でするべきです。
自分で交渉して無理だったら、弁護士に相談してみようと考えている方もいるでしょう。
しかし、自分で交渉した後に、相談に来る方は、自分自身に不利益な主張をしてしまっていることが多いのです。
一度主張をしてしまうと、それを撤回するのは難しくなります。
そのため、交渉を始める前に、早い段階で弁護士に相談しましょう。
③ 遠方の弁護士にも残業代請求を依頼することができる
遠方の弁護士にも残業代請求を依頼することはできます。
特に依頼したいと感じている弁護士がいる場合には、遠方であっても問い合わせてみるのがいいでしょう。
遠方の場合のデメリットとしては、直接会って面談することが難しい点や、訴訟などで出張日当が発生することがある点が挙げられます。
そのため、依頼する際には、どのようにやり取りをするかや、出張日当がいくら程度になるのかを確認しておきましょう。
残業代請求を弁護士に依頼した後の流れと解決までの期間
残業代請求を弁護士に依頼した後の流れは、以下のとおりです。
STEP1:受任通知の送付
STEP2:残業代の計算する
STEP3:交渉
STEP4:労働審判
STEP5:訴訟

順に説明していきます。
STEP1:受任通知の送付
弁護士は、事件を受任した場合には、相手方に対して、受任通知を送付します。
弁護士が代理人として就いたことを伝えて、以後は本人の連絡をしないように言うためです。
残業代請求の場合には、受任通知を送付する際に、併せて、残業代の時効を止めたり、資料の開示を求めたりも行います。
受任通知は、受任した後、1日~7日程度で発送されことが多いでしょう。
なお、会社での人間関係から、退職した後に送付したいなどの要望がある場合には、送付時期については調整をすることになります。
STEP2:残業代の計算
受任通知を送付し、会社からの資料の開示があったら、それを踏まえて、残業代の計算をすることになります。
残業代の計算に要する期間は、資料の入手後2週間~1か月程度です。
STEP3:交渉
残業代の金額を計算したら、具体的な金額を記載して、会社に対して残業代の支払いを請求します。
これに対して、会社からの回答がありましたら、会社と主張が食い違っている点などを確認し、裁判例や法律に照らして、交渉をすることになります。
交渉に要する期間は、受任通知送付後、1か月~6ヶ月程度ですが、会社の回答を見て交渉で解決する余地がどの程度ありそうかにより交渉期間は大きく変わります。
STEP4:労働審判
交渉で解決することが難しい場合には、労働審判を申し立てることになります。
労働審判というのは、全3回まで期日で調停を目指し、調停が整わない場合には、裁判所が一時的な判断を下すという、迅速な制度です。
解決率も高く、現在、多く利用されています。
解決までの期間は、労働審判申し立てから、2か月~4か月程度かかります。
労働審判とはどのような制度かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
STEP5:訴訟
労働審判でも解決が難しい場合には、訴訟により解決することになります。
訴訟は、期日の回数に制限はなく、通常、月に1回程度期日が入り、交互に主張を繰り返します。
解決までの期間は、訴訟提起後6か月~1年程度です。
弁護士に依頼する前にやっておくべきこと
弁護士に依頼する前にやっておくべきこととして、以下の2点があります。
・事実関係を整理しておく
・自分で集められる証拠を集めておく
それでは順に説明していきます。
事実関係を整理しておく
弁護士に依頼する際には、事実関係を整理しておくことが重要です。
なぜなら、弁護士は代理して残業代を請求するに当たって、例えば以下のような情報が必要となります。
・労働者がいつ入社をしたのか
・入社時から現在まで勤務場所や業務内容、役職の変動はあったか
・入社時から現在までの賃金額にどのような変動があったのか
・労働時間はどのように管理されているのか
・毎日何時間程度働いていたのか
・休日はいつか
依頼する際に、これらを正確に弁護士に伝えることができると、スムーズに進みます。
自分で集められる証拠を集めておく
弁護士に依頼する際にも自分で集められる証拠は集めておくことが大切です。
就業規則やタイムカードについては、弁護士が受任した後に、会社に対して、開示を求めていくことができますが、そもそも証拠が存在しないような場合や、十分に証拠の内容を特定できない場合には開示を求めることが難しい場合があります。
例えば、以下のような証拠について、依頼する前に可能な範囲で残しておく事が大切です。
・労働時間を記録したメモ
・残業を指示されているメール
・残業を指示されていることについての録音
・タイムカード打刻前や後に送信している業務メール
これらは、会社にタイムカードが存在しない場合には特に重要となります。
また、会社にタイムカードが存在する場合であっても、タイムカードの打刻後にも労働していたという場合には、その証拠を残しておくといいでしょう。
加えて、以下の証拠は、相手方に開示を求めることもできますが、手元にあるのであれば、弁護士に依頼する際に渡しておくと、よりスムーズに進みます。
・タイムカード
・就業規則
・給与規程
・雇用契約書
・労働条件通知書
・求人票
・給与明細
・源泉徴収票
依頼するか迷っている場合には弁護士の初回無料相談を利用しよう!
依頼するか迷っている場合には、弁護士の初回無料相談を利用することを強くおすすめします。
理由は以下の4つです。
・依頼した場合の見通しやリスク、費用を聞くことができる!
・その弁護士の人となりを知ることができる!
・残業代請求の方針について助言してもらうことができる!
・初回無料相談であれば費用はかからない!
それでは順に説明していきます。
依頼した場合の見通しやリスク、費用を聞くことができる!
弁護士に相談することで、依頼した場合の見通しやリスク、費用を聞くことができます。
どの程度未払いがありそうなのか、回収の見通しはどの程度なのか、回収するのにどの程度の費用がかかりそうなのかなどについて、聞いてみましょう。
もしも、残業代の請求をすることが費用や労力に見合わない場合には、そのように助言をしてもらうことができるはずです。
そのため、相談を利用して、依頼した場合の見通しやリスク、費用を聞くことが大切なのです。
その弁護士の人となりを知ることができる!
弁護士に相談することで、その弁護士の人となりを知ることができます。
弁護士に依頼するにあたって、その弁護士が自分に合う弁護士なのかどうかというのは非常に重要な事です。
依頼する前に、自分が話しやすい弁護士か、話を聞いてくれる弁護士かを確認しておくことは重要です。
そのため、相談を利用して、どのような弁護士なのかを確認しておきましょう。
残業代請求の方針やポイントについて助言してもらうことができる!
弁護士に相談することで、残業代請求の方針について助言してもらうことができます。
残業代請求に慣れていないと、
・どのようにして残業代を請求していくべきか、
・どのように残業代を計算すればいいのか
などの悩みがあるはずです。
弁護士に相談すれば、
・残業代請求をするための流れ
・残業代の計算でミスしがちなポイント
などを具体的に教えてもらうことができます
このような悩みを解消しておくことは、弁護士に依頼しない場合であっても意味があることです。
実際、相談せずに残業代を請求すると、正当な残業代金額よりも少ない金額の請求をしてしまっている例が多く、改めて、正当な残業代を請求しようとしても、会社から反発されることがあります。
そのため、残業代請求を実際に行う前に、まずは弁護士に相談して、残業代請求の方針について助言をしてもらえるというのは大きなメリットです。
初回無料相談であれば費用はかからない
弁護士の初回無料相談を利用すれば、費用をかけずに相談をすることができます。
初回無料相談を利用するデメリットは特にありません。
悩んでいる場合には、積極的に初回無料相談を利用するべきです。
まとめ
以上のとおり、今回は、残業代請求で損をしないための弁護士の選び方や費用の抑え方を解説しました。
この記事の要点を簡単にまとめます。
【残業代請求を弁護士に依頼すべき理由】
①獲得できる残業代金額が増額する可能性が高い
②代わりに証拠を集めてもらえる
③残業代の計算を代わりにしてもらえる
④会社との交渉を有利に進めることができる
⑤労働審判や訴訟を代理してもらうことができる
【弁護士費用の相場】
・相談料の相場は0円~1万円
・着手金の相場は0円~30万円
・成功報酬の相場は16%~30%
・出頭日当の相場は1期日当たり0円~3万円
・出張日当の相場は3万円~10万円
【弁護士費用を抑える方法】
・着手金や報酬金が安い弁護士を探す
・依頼する際に費用の種類や見通しを十分に確認しておく
・自分の事案に有利な報酬体系を選ぶ
・自分で請求する
【最高の弁護士の選ぶために重視すべき点】
①労働問題が得意な弁護士を選ぶ
②実績のある弁護士を選ぶ
③話しやすい弁護士を選ぶ
④料金体系が分かりやすく、かつ、完全成功報酬制の弁護士を選ぶ
⑤少しでも多くの残業代を回収するために全力を尽くしてくれる弁護士を選ぶ
この記事が残業代請求に悩んでいる皆様のお力になれば幸いです。
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